第8話「夜風の詩」

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ラミアちゃん「すみません・・・しくじってしまいました・・・お許しを・・・!」
バルバロイ「『肉の壁』を大量に消費してしまった・・・お許しください・・・」
リザードロード「予想以上にやる奴ばかりでして・・・」

島の頂上から、黒い海を見下ろす一人の男。
その男に群がる、禍々しいモンスター五匹。

???「まぁ、よい。そう自分を責めるな・・・
     お前ら。『糸石は糸石を呼び合う』という言い伝えを聞いた事があるか?」
バルバロイ「は?聞いた事ありませんが・・・」
モーロック「初耳ですね。」
???「わしの手には糸石の一つがある。
     ・・・いつか、糸石を9つ手に入れた物がこの島にやってくるだろう・・・
     わしはそれをただ・・・待つのみだ。」
自信満々にそう言いのける男に、5匹のモンスターが首をかしげます。
リザードロード「・・・なぜ、そんな事が分かるのですマスター?」
ラミア「糸石を9つ手に入れようとする狂人なんて、現れるのですか?」
???「ふん・・・言ったであろう。わしは未来が読める。
     未来とは運命・・・糸石に秘められたメッセージは知っておるだろう?そう。運命だ。
     守護者ではない何者かが糸石を手に入れたその時、
     運命は運命をつなぎ・・・最終的にはここに行き着くのだ。
     誰も運命からは逃れない・・・それこそが神の定義。」
ラミア「う〜ん?」
バルバロイ「・・・?」
???「まぁ、今は分からなくてもよい。じき分かる・・・
     ところでラミアよ。サルーインの弱点が分かったと言ったな?」
ラミア「あ、は、はい。あの人の弱点は、ずばり石化なんです。石化。
    石化への耐性が無いというか・・・」
???「そうか。
     あやつはただの女に見せかけて、実力はかなりの物・・・
     だが、弱点が分かればもうゴミ以下の何者でもあるまい。
     よくやったぞ・・・」
ラミア「は、はいっ!ありがとうございます!!きゃーーー♪♪♪おひゃひゃひゃぶべぇぇwwwww」
バルバロイ「黙れお前・・・」
ラミア「黙らいでかぁっ!!ゲジャジャふひふwwwwww」

???「くくく・・・
    この黒い海が・・・黒い空が・・・
    学園を覆いつくし、支配する・・・
    そうだ。このわしがこの学園を支配するのだ!
    この海も、この大地も、この空も!全てはわしの物となるのだ!
    堕つ希望・・・絶つ欲望・・・
    全ての道は生への願いへと行き着き、そして消える・・・
    そんな魔の世界が・・・黒い世界がやってくるのだ!
    このわしの術と・・・糸石の力によってな!!ぬっははははは・・・



ミルザくん「ん〜眠れないよお・・・!」
目を閉じて必死に気を失おうとするも、一向に睡魔が襲ってくる気配がありません。
目を瞑りながらずっと動かないでいるのも何かもどかしく、ベッドをごろごろ転がったりしてしまいます。
ミルザくん「ん〜・・・昼寝もしなかったのに何でこんなに眠れないんだ?」
耳鳴りがします。
ミルザくんは、たまらず目を開けて立ち上がりました。
ミルザくん「だめだ・・・全然眠れない・・・風でも浴びてこようかなっ・・・」
ミルザくんはふらふらした足取りで、騎士団寮を出て行きました。
『幻のアメジスト』を身につけたまま・・・

ぽろん・・・ぽろん・・・

風を浴びにクジャラート舎の校庭にまでに歩いてきたミルザくんの耳に、心地よい音が響いてきました。
耳を優しく叩くような、美しく、気味がよい音色・・・
ミルザくん「誰か・・・起きてるのか・・・?」
ミルザくんは、音の元を辿りました。
徐々に、大きな影と小さな影が見えていきます。
大きな影は・・・楽器?小さな影は・・・人間?
校庭なのに・・・椅子に座って・・・あれれ・・・?

ぽろろん・・・ぽろろん・・・

・・・ハープ?

ミルザくんは、更にその影、音へと近づいてゆきました。
次第にその姿が明らかになってゆきます。

「だれ・・・?」

声の主は、演奏を止めるとミルザくんの方へ振り向きました。
その声の主は、ミルザくんも少し見覚えのある人物でした。
ミルザくん「えっと、君は・・・その、サルーインちゃんの妹の・・・?」
空ろな目をした女の子は、こくんとうなずきました。
シェラハちゃん「そう。私の名はシェラハ・・・あなた、ミルザさんね?・・・こんな所で何をしているの?」
ミルザくんは、なぜか相手の女が自分の名を知っている事に違和感を抱かずに、答えました。
ミルザくん「いやぁ、ちょっと眠れなくってさ・・・君はこんなところで楽器弾いて何やってるの?」
ミルザくんがそう言うと、シェラハちゃんは再び演奏を始め、演奏しながら言いました。
シェラハちゃん「奇遇ね。私も眠れないの・・・
         眠れない日や、不幸な事が起きた日は、こうやって夜風の詩を弾いて、
         自分を落ち着かせてるのよ・・・」
子守唄のような、大人しく、切ない旋律がクジャラート舎の校庭に響き渡ります。
ミルザくんは、しばらくその詩に聞きほれていました。
シェラハ「ところで・・・ミルザさん。あなたは・・・糸石を集めてるんだったわよね?
     ・・・好きな女の子と結ばれるために。」
突然思い出したようにそう言い出すシェラハちゃん。
ミルザくん「あ、うん・・・あ、あれ、君、なんでその事を?」
シェラハちゃん「欲望は欲望を生み、人は欲を追いかけ続ける事によって、何一つ満たされぬままに死んでゆく・・・
         抜き差しならない人の性ね。・・・悲しいわ。」
ミルザくんの質問を無視してそう言うシェラハちゃん。
ミルザくんは少しかちんときました。
ミルザくん「な、なんだよ。きみ・・・何が言いたいんだい?」
ミルザくんがそう言うと、シェラハちゃんは演奏をやめ、言いました。

シェラハちゃん「あなたを見ていると、悲しい事を思い出すわ。」



「 ある辺境の村に住んでいる貧乏な村人の話。
 彼は、隣の町に住んでいる大富豪の娘に恋をしていたの。
 しかし、身分は全く違う上に、相手にとっては自分はただの他人。
 告白したところで、結果は火を見るより明らかよね・・・
 そこで彼は、なんとか彼女に自分の存在をアピールさせようと、ある事をしたの。

 何だと思う?・・・・・・・・・盗みよ。

 隣町の民家という民家片っ端から物を盗んで盗んで・・・
 何年か経ったその時、彼は既にその町一帯に名を轟かせる、大犯罪者となっていたの。
 そして、勿論彼の名は大富豪の娘まで行き届いた・・・
 時は十分。彼は、慣れた手つきでその富豪の家へと侵入したの。
 彼は警備という警備を欺き、潜り抜け、ついには、娘をさらい出しその家を出たの。
 娘は怖がった。そこで、彼は自分の思いの内を彼女に伝えたの。
 今までやってきた事は全て君のためだという事を・・・
 今までやってきた事は全て君に見られるためだったと言う事を・・・
 彼は、今まで盗んできた盗品を全て娘に捧げたわ。
 娘は必死で拒否した。『そんな物はいらないから、お家へ帰らせて』そう言ったの。

 それに対して男は 『僕は君が好きだ。好きなんだ。
 君のためならば、何だって出来る。例えばそれが人道に外れた行為であったとしても・・・それはもう証明しただろう?
 今まで君が会ってきた人物の中で、これほど君の事を思う人物がいたか?
 僕の気持ちを分かってくれ。僕は君が好きなんだ。好きなだけなんだ。何も怖がる事じゃない。』 と。
 彼女は恐怖したわ。目の前の男の自分に対する異常な『愛』に。
 彼女は、あまりの恐怖にその場から逃げ出そうとしたの。
 男は当然のように逃げようとする娘の腕を掴んだわ。
 男は必死に言ったの。 『なぜ僕の気持ちを分かってくれない。
 君とこうして話し合うために、僕はどれ程の勇気を振り絞り、どれほどの良心を痛めたことか。
 ああ、そうだ。僕は君が全てなんだ。今君と話しているこの時間がどれ程の至福か、なぜ分かってくれない?
 僕の長年の努力を、苦労を、勇気を、愛を、君は無下にできるのか?』
 必死にそう言う男からは、娘は更なる狂気と恐怖しか感じ取れなかった。
 彼女は、叫び、暴れ、必死に彼を否定したわ。
 男も必死に自分の気持ちを分からせようと叫んだ。 『何故逃げる!僕は君が好きなのに!
 君を好きになる事がなぜ悪い!君を思うのがなぜ悪い!君のために尽くす事がなぜ悪い!
 ああ、なぜ君は逃げるんだ!僕は何年も君のためだけに生きてきたというのに!
 なぜ逃げられなければいけない!なぜ理解してもらえない!君を思う心は、誰よりも何よりも負けていないのに!!!!
 君が好きなのにぃぃぃぃぃぃーーーーーーーーーー!!!!!!!!』

 娘も必死で叫んだわ。 『離してっ、離してよっ!!私あなたの事なんて全く知らないのっ!
 全く知らない人にそんなこと言われても怖いだけなの!!何でそれが分からないのっっ!?』
 男も必死で反論したわ。 『分からないなら今から分かり合えばいいじゃないか!!
 君こそなぜぼくの思いを受け止めようとしないんだ!?分かろうとしてくれてもいいじゃないか!!』
 『離せ離せ!!離せっ、離せっ、この犯罪者がーーーーーーーー!!!!!!!』
 『犯罪者で何が悪い!それこそが誰よりも君を思っているという証拠じゃないか!!!!』
 狂ったように叫ぶ男は、衝動的に女の首を掴んだの。

 『なんでだよなんでだよなんでだよ、なんでわからないんだよなんでうけとめてくれないんだよ
 ぼくはきみのことがすきなのにすきすぎてすきすぎてすきすぎるのになぜわからないの
 りかいしようとしないのぼくはきみがすきだからすきだからこそこんなことをしたんだなんでぼくはぼくは』

 男は呪文を唱えるようにそう呟きながら娘の首を絞めたわ。
 何分も経たない内に、娘は死んでしまったわ。
 男は、死んでしまった娘を改めて見て、ふと我に帰ったの。
 男は、自分の狂気と、足元に転がる娘の無様な顔を見て、自分に恐怖したわ。
 男は、今まで自分がやってた事の愚かさに気づき、その償いに自らの命を絶ったの。」



シェラハちゃん「・・・色欲と強欲に溢れ、そして傲慢だった男の悲しい・・・いや、哀れでそして愚かなお話よ。
         あなたは彼と同じ末路を辿ろうとしているんじゃないの?
         押し付ける事の愚かさをあなたは理解しているの?」
淡々とした口調でシェラハちゃんが言います。
ミルザくんは、少し迷った顔をした後、言いました。
ミルザくん「僕は・・・ちゃんと理解しているつもりだ。
      僕が彼女を好きな理由は・・・まぁ、あまり面白くない理由だけれど、
      それでも・・・僕は彼女をずっと見つめてきた。
      何ていうか・・・心配されないでも大丈夫だよ!」
ミルザくんがそう言うと、シェラハちゃんはふっ、と笑いました。
シェラハちゃん「・・・そう。安心したわ。あなたがそんなにも真っ直ぐな人で・・・
         ・・・ところで、あなたはこんな話を知っているかしら?『糸石は糸石を呼び合う。』」
ミルザくん「えっ・・・?どういう意味・・・・?」
ミルザくんがそう言うと、シェラハちゃんは微笑みながら首を横に振りました。
シェラハちゃん「いえ、何でもないの・・・もう夜が明けてしまうわね。じゃあ、あたしは北エスタミル寮の部屋に戻るわ。
         おやすみなさい。またいつか会いましょうね、ミルザさん。」
シェラハちゃんはそう言って一度にこりと微笑むと、ハープを持って建物の中に帰っていきました。
ミルザくん「・・・・・・・・・・・・」
ミルザくんも、何も言わずにゆっくりと騎士団寮へと帰ってゆきました。



サルーインちゃん「ロン!!ぶひゃひゃひゃひゃひゃーー!!倍満じゃ、者ども払えぇぇぇーーー!!」
ヘイトちゃん「はぃ残念ですとぅあああぁぁぁぁ♪☆#卍↑↑↓↓←→←→BA!!
       頭ハネでーーーっすぅぅ♪!!★◎マル!!」
サルーインちゃん「んぬぁんだとぅぅ!?んムカーー!!(がちゃーーん!)」
ストライフちゃん「ちょっとヘイト・・・少しぐらい遠慮したら・・・」
ヘイトちゃん「なーーんでエンリョしなきゃならんないのよーーーーーぅ!!!!
       勝負事に贔屓やら遠慮なんてそらもう★★★・・・勝負神への冒涜ですわよん・・・?ウフン・・・」
サルーインちゃん「んぁもう、滅びよ!(ぐわらごわらがちゃーーん!)」
ヘイトちゃん・ストライフちゃん「雀卓がぁぁぁぁ!!!!!!あああああああ」
ワイルちゃん「そもそも女子高生3人で麻雀ってのも何かねぇ・・・?・・・あはは・・・」
デスちゃん「相変わらず気品の欠片も無いな。あの3人は・・・」
ストライフちゃん・サルーインちゃん「だまれ!!」
ヘイトちゃん「だまれ!!」
ストライフちゃん・サルーインちゃん「いやいやいや、お前は否定するなよ。」
ヘイトちゃん「あひゃー」



シェラハちゃん(・・・ミルザさんはとても優しくて・・・とても芯の強い人・・・
         そんな人に・・・姉さんが見合うのかしら?
         ・・・彼と接すれば、姉さんも変わるのかしら・・・?
         ・・・ミルザさん。あなたは・・・本当に姉さんと結ばれるべきなの・・・?)


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