幕間劇「エロールちゃんと愉快な下僕たち」

TOP / MENU



私は今、エロールちゃんの下で働いている。
事の発端は3ヶ月前に遡る。
私の、・・その・・た、大切な人シリルが大ケガを負ってしまったのだ。
原因は迷いの森の本体を、謎の狼藉者によって傷つけられたことだ。
瀕死の状態にあったシリルを助けてくれたのがエロールちゃん、というわけだ。
エロールちゃんはこう言った。
エロールちゃん「シリルくんの傷は深く、癒えるまでに相当の時間と労力が必要ですわ。
彼のケガが癒えるまでの間、私に力を貸していただけませんか?」
と。
シリルの命の恩人だ。私は喜んで手を貸すことにした。

―――そして今に至る。
手を貸す、と言ってもやっている事は事務仕事だった。最初のうちは。
次第に頼まれる仕事の内容がエスカレートしてきた。
支持票集めのための根まわし(勿論、現金による実弾射撃あり)、
後援会のコンパニオン役(バニーの格好をさせられた)、
対立候補の支持者への妨害(DOA(生死を問わず)とかいってるし)、
果ては対立候補の暗殺(さすがに直接的には言われなかったが、
サルーインちゃんが突然死んだりしないかしら、と事あるごとに囁いてきた)・・・etc
さらに、この頃は渋る私に対してシリルを人質のように使うようになった。
私のことを白犬とか呼ぶし!(私は銀狼だ!)
正直ストレスのあまり円形脱毛症になるんじゃないかと危惧していた、がそれも後一週間で終わる。
最初に交わした契約ではあと七日でシリルの治療が終わることになっているのだ。
私はエロールちゃんの呼び出しを請け、生徒会室に向かっている。
どんな難題を押し付けられることやら・・・。
そうそう、私の名前はエリス。エロールちゃんに運命を絡め取られた哀れな人狼だ。



エリスちゃん「失礼します。」
ノックをした後、返事も聞かず中に入る。
そんな私を咎めるでもなく偽善的な笑みを投げかけてくる女――エロールちゃん。
エロールちゃん「いらっしゃい、白犬ちゃん」
エリスちゃん「銀狼です」
エロールちゃん「大差はありませんし、そんなことはどうでもいいことですわ」
立場が対等ならこの女を正座させて
犬と狼の違いを半日かけてレクチャーしてやりたいところだが、ぐっと我慢する。
あと少しだから。
エリスちゃん「今日はどのような用件で?」
エロールちゃん「そうそう、エリスちゃんが些細なことにこだわるから話がそれてしまいましたわ。
私の仕事の邪魔をしては駄目ですわよ?白犬ちゃん♪」
・・・・このアマ。
エリスちゃん「はいはい、全面的に私が悪かったです。この空が青いのも、
海が青いのも、雨が降らないのも、
世界から貧困と疫病がなくならないのも、
クジャラート寮で諍いが絶えないのも、ゲッコ族が捕まってたのも、
そして、なんとなく味噌汁がまずいとかそんなくだらない理由で
明日世界を滅ぼす大魔王が復活しそうな気がしなくもないのも、
私のせいです。ごめんなさい。許してください。・・・満足ですか?」
エロールちゃん「ええ、とても♪」
この女の頭に『皮肉』と言う文字はないらしい。

エリスちゃん「じゃあさっさと用件を言ってください、この腹黒女」
エロールちゃん「最近シリルくんの枝振りがよくありませんの。
この際全部枝打ちしようと思っているのですけど・・・」
エリスちゃん「すいません私が悪かったです勘弁してください」
エロールちゃん「また話がそれてしまいましたわ。
学習する、と言うことはすばらしいことですわよ?白犬ちゃん?」
もう皮肉を言う気にも慣れない。さっさとこの超弩級腹黒女領域から逃げ出したい・・・。
エロールちゃん「まぁいいですわ。用件を伝えましょう。
今週のメルビルタイムスをご覧になりまして?」
エリスちゃん「ええ、『生徒会選挙に対する一般生徒の意識 前編。』って奴が載ってましたね」
エロールちゃん「その記事に載っていた『あなたが望む次期生徒会長』のコラムによると、
私の支持率は40%、サルーインちゃんは47%となっていました。
これはどういうことです?何故私が負けているのでしょう?」
ああ、それで焦っているのか。
エリスちゃん「聞くところによると、
彼女の手の者があなたの『本当の性格』について伝道しているそうですよ?」
エロールちゃん「性格が悪いのは相手も同じでしょう?情報操作とは卑怯ですわ!」
・・・自覚あったのか。
エリスちゃん「ただ性格の悪い女と、いい娘ぶった性根の腐った腹黒女なら、
後者の方がはるかに印象悪いですから。
それに『情報操作』っていうのは、
『情報をありのままに提供するのでなく、内容や公表の方法などに介入して影響を及ぼし、
世論形成をある方面に有利になるよう操作すること。』
と言う意味です。
この場合彼らは脚色もなしにあなたの性格の悪さを伝えているわけですから、
『情報操作』には当たりませんよ?」
エロールちゃん「ご高説ありがとう。ところでご存知ですか?
ルームインテリアではお馴染みの『リース』。
あれをヤドリギで作ると実によいものが出来ますの。
シリルくんくらい大きい木なら良質で太いヤドリギが採集できそうですわ♪
それでは、いまからヤドリギの種を植えに・・・」
エリスちゃん「嘘ですごめんなさい許してください」
エロールちゃん「口さがないものは長生きできませんわよ?白犬ちゃん♪」
シリルさえ人質にとられてなきゃこんな女に・・・!

エロールちゃん「言葉遊びも飽きましたわ。本題に入りましょう。
白犬ちゃん、あなたにしてもらいたいことは一つ、
サルーインちゃんの支持率を下げること、以上。
手段は問いません。期限は一週間。来週号のメルビルタイムスが出るまで。
さあ、おかえりなさい」

いうなりさっさと追い出された。まぁこんな所に長居をするのはこっちから願い下げだけど。
とはいってもどうしよう?情報戦を仕掛けようにも、
サルーインちゃんは開き直っているから効果なさそうだし。
扉の前で逡巡していると、その奥からあの腹黒女の声。
エロールちゃん『早くお帰りなさい。私の部屋の前が獣臭くなってしまいますわ』
怒りのあまり血液が逆流しそうになって・・・閃いた。
手段は問わず・・・か。
私は笑みを浮かべつつ立ち去った。



―――、一週間後
契約の最終日。わたしはエロールちゃんの前にいた。
今日発売のメルビルタイムスを抱えて。
エリスちゃん「どうぞ。これが私の仕事の成果です」
エロールちゃん「ありがとう、あなたの仕事をみせていただきますわ」
エロールちゃんはパラパラとページをめくっている。

エロールちゃん「まぁ!サルーインちゃんの支持率が11%まで落ちていますわ!
・・・って何で私の支持率が2%ですの!?
それになんでアムトちゃんが80%越えで一位になってますの!?」

[アムトちゃんを選んだ理由〜男子生徒編]
「厳しさと優しさを兼ね備えているから」
「ょぅι"ょ (;' Д`)ハアハア」
「ょぅι"ょ (;' Д`)ハアハア」
「同上」
「同上」



[アムトちゃんを選んだ理由〜女子生徒編]
「候補の中では一番まともそう」
「やっぱり愛の女神だし」
「聖杯騎士団の神官騎士アグネス様素敵!抱いて欲しい!」
「同上」
「同上」




エロールちゃん「・・・この学園にはペドとレズしかいないのかしら?」
エリスちゃん「最近は『百合』って言うらしいですよ」
エロールちゃん「そんなことを聞いているのではありません!
何故このようなことになっているのですか!?」
食って掛かってくる。
エリスちゃん「手段は問わず、とのことでしたので、
アムトちゃんが立候補するらしいという噂を流布しました。
結果見事サルーインちゃんの支持率を下げることに成功しました」
エロールちゃん「私の支持率まで下がっていますわ!しかも地味に差が開いているし!」
エリスちゃん「私は『どんな手を使ってでもサルーインちゃんの支持率を下げろ』
と命を受けました。
『エロールちゃんの支持率を上げろ』とも『支持率の差を縮めろ』
とも言われておりませんので」
私はしれっと言ってやった。
エロールちゃん「ぐぅ!」

よし!一本とってやった!
エロールちゃん「はぁ・・もういいですわ。
それにしてもアグネスちゃんやアムトちゃんみたいなキャラが私にも必要ですわね・・」
エリスちゃん「第一秘書のニーサちゃんがいるじゃないですか」
ちなみに私は工作員その一だ。エロールちゃんに呪いあれ。
エロールちゃん「ニーサちゃんはトロいけど優しくて美人なお姉さんキャラですので。
凛々しいアグネスちゃんポジションには私がつくとして・・・・、
エリスちゃん・・・・、幼女になりませんか?」
エリスちゃん「出来ません」
とんでもないことを言う女だ。
エロールちゃん「大丈夫!私の力を使えば・・・」
エリスちゃん「可能不可能ではなく、い や だ といってるんです。メリットもないし」
エロールちゃん「特殊な趣味を持ったお兄さんたちにモテモテですわよ?」
エリスちゃん「それはむしろ罰ゲームです」
エロールちゃん「随分と強気ですわね。いいのですか?そんな態度を取って?」
だが私はあくまで強気に言ってやった。
エリスちゃん「残念。現時刻10時をもって契約期間は終了よ」
エロールちゃん「あら、残念。名残惜しいですわ」
エリスちゃん「私は清々したわ」
エロールちゃん「これは選別です。受け取ってください」
そういってエロールちゃんは小包を取り出した。
エリスちゃん「ありがとう」
帰りに捨ててやる。
エロールちゃん「そうそう、シリルくんですけどね。もう迷いの森に返していますよ」
エリスちゃん「なんですって?」
エロールちゃん「ですから早く帰ってあげてください。それではごきげんよう。白犬ちゃん♪」
エリスちゃん「銀狼だ!!」
そう叫ぶとともに私は一気に走り出した。



会えるんだシリルに!ああ!早く帰ってシリル顔が見たい!
シリルシリルシリルシリルシリルシリルシリルシリルシリルシリルシリルシリルシリル
シリルシリルシリルシリルシリルシリルシリルシリルシリルシリルシリルシリルシリル
エリスちゃん「シリル!!!!!」
そう叫びつつ迷いの森にある小屋の扉を乱暴に開けた。



シリルくん「んん〜?ああ、エリス。おかえり〜」
そこにはいつもと変わらないのんびりとした表情のシリルがいて――
いつもと変わらない逞しい体躯を持ったシリルがいて――
いつもと変わらない声で話し掛けてくるシリルがいて――
たまらなくなった。
抱きついて泣いた。
シリルくん「ど、どうして泣いているの?エリス?」
エリスちゃん「うるさい!どれだけ私が苦労したと思ってるのよ!
どれだけ私があなたのこと心配したと思ってるのよ!」
シリルくん「とりあえず落ち着いて。だ、抱きつかれていたら恥ずかしいよ」
エリスちゃん「嫌なの?」
涙で濡れた目で見上げる。
シリルくん「嫌じゃないです」
エリスちゃん「私・・今回がんばったんだから・・、
ヒック・・ちょっと位・・ご褒美があってもいいじゃない・・グス」
シリルくん「(なんだかよくわからないけど)うん」



――30分後
シリルくん「落ち着いた?」
気遣わしげな視線を向けてくるシリル。
エリスちゃん「ん。もう大丈夫。シリルの方こそ大丈夫なの?」
シリルくん「僕の方はバッチリ。いや〜エロールちゃんのおかげで助かったよ〜」
素直に感謝できない。
シリルくん「エリスの方は?さっきの様子じゃなんか大変だったみたいだけど?」
エリスちゃん「え?あ?わ、私?私は大丈夫!もう全然!」
全然大丈夫じゃなかったけど。特にコンパニオン(バニー)は抹消したい記憶だ。
シリルくん「そうか〜。よかった。あれ?その包みは?」
エリスちゃん「ああ、エロールちゃんがくれた餞別よ・・・?」
しまったあああああああ!!!捨てるの忘れてたああああああああ!!
シリルくん「へぇ〜、開けてもいい?」
ああ、知られた以上もう捨てるわけには行かないし!
エリスちゃん「ま、待って!私が開けるわ!」
シリルを巻き込むわけにはいかない!
中に入っていたのは。缶詰だった。
あのアマ、あくまで私を犬扱いする気か!
いや待て。あの女ならマッチ箱にだって爆発物を仕込みかねない。缶詰だって油断は出来ない!
シリルくん「なにやってるの?エリスちゃん?」
注意深く缶詰を探る私にシリルくんが声をかける。
エリスちゃん「静かに!」
シリルくん「はい・・・」
最後に振動系・・これは帰るとき走ってたからいまさらだな。
エリスちゃん「ふぅ・・じゃあ開けてみましょう」
パキッ!!
瞬間、異臭。
エリスちゃん「キャイン!!」
シリルくん「うわ〜栄養がありそうな匂い〜ってエリスちゃん!!どうしたの!!」

『バルハラント産シュールストレミング』

そんなラベルが張ってあった。
遠のく意識の中、私は思った。
あのアマ・・いつか喉笛を食い千切ってやる・・!
私の意識は闇に落ちた。



――エロールちゃんの執務室
エロールちゃん「引き金を引いたのはあなた自身ですわよ」
ニーサちゃん「なにかおっしゃいました?」
エロールちゃん「ただの独り言ですわ。ニーサちゃん今日はもう上がってもかまいませんわ」
ニーサちゃん「それではお先に・・・」
ニーサちゃんが部屋から出て行き私一人だけになった。
エロールちゃん「さて報復は済んだけれど・・、
今回の『恩を売って下僕をゲット!大作戦』は失敗ですわね」
やっぱり忠実な下僕が必要ですわね。そうなると・・・
『信頼を勝ち得て私に心酔している部下を作る・・』
だめですわ。ニーサちゃんクラスの頭がよw・・純粋な子はそうはいませんわ。
それに工作員には向かないし・・。
『色々と薬物を・・・・』
これもだめ。人形に工作員は出来ませんわ。
となると・・『利害の一致している人間を取り込む』
やっぱりこれしかなさそうですわね。
エロールちゃん「・・・となると候補は二人。この子は・・・だめですわ。
妨害工作が出来るとは思えませんし。・・じゃあこの子ね。
学園にいないという噂も聞きましたが、まぁ私の手にかかればすぐにでも見つかりますわ」
エロールちゃん「待っていてください・・・すぐに迎えにいきますわ」
執務室の中でエロールちゃんは邪悪な笑みを浮かべた。


MENU / TOP





SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送