幕間劇「平和な日常」

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アサシンギルドクラブ騒乱・・・・クリスタルナイト・・・
アクアマリンが絡んだ二つの事件は終焉をむかえました。
そして、いつも通りの特別ではない、
平和な日常が流れてゆきます。



「よーし、では点呼取るぞー。・・・ミルザ!」
ミルザ「はい!」
「オイゲン!!」
オイゲン「あーい。」

いつものマルディアス学園、授業の日々。
今のこの時間は、『イフリート先生』が担当する『武闘家の修練』です。

イフリート先生「・・・・・・よし。みんないるようだな。では・・・」
イフリート先生は、『待ってました』と言わんばかりに口をにわぁっと歪ませました。
騎士団寮の生徒達の顔色が、目に見えるくらいの勢いで青くなっていきます。
イフリート先生「では・・こんな窮屈な姿をしている理由もないわけだ!!!!」
ドッパァァン!!!!
イフリート先生の着ていたぴちぴちのジャージが弾けとび、中から黒く光る筋肉が飛び出してきました!
生徒全員が唖然とした顔をしているのが見えていないかのように、イフリート先生は浪々と語り始めます。
イフリート先生「この赤黒く輝く筋肉は黒曜石のごとし!
         この美しき後背筋に浮かび上がる肉の紋様は鬼の顔の如し!
         この逞しきボディーより吹き上がるオーラは修羅の如し!
         そして、それら全てが相成る事により作り出されるパワーは・・・魔神のごとしいいいいYYYYYY!!」

ドガァァァン!!

「ふんぬっ!」とばかりにイフリート先生が繰り出したヘビースウィングが、
なぜか近くにあった鉄球を粉々に砕き割りました!
生徒達が誰一人として歓声のようなものをあげない中、イフリート先生は妙に自慢げな目で生徒達を見回しました。
オイゲン(またやってるよこのバカ先生は・・・)
ミルザくん(いつも点呼終わるとこれやるよね。あのセンセー。)
先生に聞こえないような小さい声で話し合うミルザくんとオイゲンくん。
オイゲン(ああ。しかも毎回微妙に口上が違うしな・・・)
ミルザくん(確かに、前のときは『黒曜石』の部分は『廃石』だったし、
      『魔神』の部分は『範馬一族』だったよね。まぁ、全く持ってどうでもいいことなんだけど。)
オイゲンくん(さてと、またあれやるか?怪我する前に・・・)
オイゲンくんが、見るからに悪そうな顔で、ミルザくんにそう言いました。
ミルザくん(うんうん。やろうやろう。うふふ・・・)
ミルザくんも悪そうな笑みを浮かべました。

オイゲンくん「先生!」
イフリート先生「あン?なんか用かねオイゲン。」
オイゲンくん「いやぁ〜先生のその肉体美、何回見てももの凄いですねぇ〜。
        やっぱり、陰でいっぱい努力したりしててるんですかぁ?」
イフリート先生「ああ、モチロンだとも。毎日5時間のトレーニングは絶対に欠かしておらん!」
ミルザくん「うわ〜、すごいなぁセンセー。僕も見習いたいものです!」
イフリート先生「そうかそうか?うははは」
オイゲンくん「ホントホント。先生のその筋肉、まるでボディビルダーみたい!」
イフリート先生「うはは、そうだろう!!」
ミルザくん「筋肉番付出たら絶対優勝狙えますね!」
イフリート先生「うははは、そうだろう!!」
オイゲンくん「胸がまるでケツみたいですね!」
イフリート先生「うはははは、そうだろう!!」
ミルザくん「そうそう。すごすぎてまるでモンスターみたいな筋肉ですよね!」
イフリート先生「うはは、そ、そうだろう!!」
オイゲンくん「フラーマ先生・・・頑張ってるあなたを最近見直してきているようですよ・・・?」
イフリート先生「!!!」
うかれていたイフリート先生の顔つきが突然変わりました。
ミルザくん「そうそう。僕聞いちゃったんですよね〜フラーマ先生が陰で
     『イフリート先生最近がんばってるなぁ・・・フラーマ好きになっちゃうかもぉ』って言ってるのを!!」
イフリート先生「ぬぁ、ぬぁっはぁんだとぉぉぅ!!??」
イフリート先生の顔にみるみる血管が浮き上がっていきます。
オイゲンくん「(それは言いすぎじゃないのかミルザ・・・?まぁ、いいや。)
        きっとフラーマさん。今すぐにでも貴方に会いたいはずです・・・!
        僕達のことは気にしなくていいです!
        いますぐに!フラーマさんに会いに行った方がいいのではないですか!?」
イフリート先生「・・・・・・!!」
生徒達みな笑いをこらえているのが見えてないかのように、シリアスな顔つきになるイフリート先生。
ミルザ「(オイゲン言い過ぎじゃないか・・・?まぁ、いいや。)
     さぁ・・・先生!今すぐに・・・フラーマ先生の棟へ!!」
オイゲンくん「僕達、先生を応援しますよ!!さぁ!!!・・・ほら、お前らも応援しろよ!」
傍観している生徒達に、オイゲンくんは手で合図しました。
生徒達は、すぐさま応援を始めました。

生徒達「イッフリート!!イッフリート!!イッフリート!!イッフリート!!」

イフリート先生「ぬおおおぉぉぉ〜〜〜!!!お前らありがとう〜〜〜!!」
生徒達の歓声に、イフリート先生は応えました!
イフリート先生「ぬん、ぬん。筋肉も恋も何かを犠牲にしなくては成り立たぬものよ。
        貴様ら生徒をこのまま捨て置くのは私には耐えられん・・・
        が、貴様らがそこまで応援してくれるというのならばっ!!
        フラーマ先生の元へ行けない理由もないわけだっっ!!うぉぉーーっ!!!」
まんまと騙されたイフリート先生は、大またに走り去っていってしまいました。

・・・・・・・・・・・・

生徒達の間に、どっと笑いが巻き起こりました。
オイゲンくん「あ〜っはっは!まんまと騙されてやんの!」
ブラッツ「おまえらもよくやるな〜。おかげで怪我しないですんだぜ・・・」
ノーデン「武闘家の修練なんて無駄な修練だかんなー。先生自体はケッコーいい先生なのに・・・」
ミルザくん「センセーも単細胞だねー。っていうかこれで3回目・・・」
オイゲンくん「よーし、遊ぶぞー!」
生徒一同「よっしゃぁぁーー!!」

・・・平和な日常です。



イルちゃん&ヘイトちゃん「・・・・・・」
スペクターくん「・・・・・・」
あっちむいて〜・・・
ワイルちゃん&ヘイトちゃん「ホイッッッ!!」
スペクターくん「ぬおりゃあっ、だぁぁ〜〜っ!!また負けちゃったぁぁ〜!」
ワイルちゃん「あっはっはっ!弱いですよスペクターく〜ん!」
ヘイトちゃん「これで5800勝ねへぇぇぇぇぇらろろぉ〜〜ん!!★☆%>>!!
       弱すぎて歯ごたえなしゃしゅぎィィ〜〜っ!!♪!£m○或T魔煮亜!!」

サルーインちゃんとミニオンちゃん三人組は、今日ももいつもの場所で優雅な朝食タァイム。
そんな中『スペクターくん』という新しい遊び相手を見つけたワイルちゃんとヘイトちゃんは、四六時中彼に夢中でした。

ストライフちゃん「ふん・・・バカバカしい!」
しかしストライフちゃんはそれがすこし気に入らないようで・・・?
ストライフちゃん「おい、スペクター!おまえ、仮にも6将魔の一人だろう?
         こんな腐女子どもに弄ばれてプライドが疼かないのか!」
ヘイトちゃん「ふ、ふじょっ・・・!」
説教するようにそう言うストライフちゃんに、うかれていたスペクターくんは顔をおろしました。
スペクターくん「ふっ・・・プライドか・・・そう。俺は仮にも六将魔が一人、スペクターなり!!なのだからな・・・
        だがな、ストライフちゃんよ・・・」
スペクターくんが真っ直ぐにストライフちゃんの顔を見つめます。
ストライフちゃんもスペクターくんの顔を真っ直ぐ見ました。
・・・・・・さぁ、どういう答えを返してくるのだ?六将魔、スペクターよ!!

スペクターくん「もぉうそんなプライドなんか捨てちゃいましたぁぁーーっっ!!あひゃひゃひゃひゃ!!!」

ズコッ!
てっきり真面目で筋の通る答えが返ってくると思っていたストライフちゃんは、思い切りずっこけてしまいました。
スペクターくん「マスター共々の情報をもらすことは出来ないけど、こぉんな天国でプライドなんか必要ぬわぁぁいい!!
        おりゃぁキムタクじゃないんだよ!
        ・・・それよりもアンタのこけ方ンさいこーー!!うわははは!!」
ワイルちゃん「あっはっは!!ストライフちゃん今のこけかたナーイス!!」
ヘイトちゃん「スットライフちゅわぁんもォォまともなこけ方でキルのねへぇぇぇん!!☆a<◎rz=3!!!!」
三人の馬鹿笑いがストライフちゃんの身に染みます。
ストライフちゃんは、思わず火の鳥をやってしまいそうになるところを我慢しながら、集団から遠ざかりました。
ストライフちゃん「ふん・・・ほんっとにバカバカしい!」
サルーインちゃん「そうだな。バカバカしい!」
え? ストライフちゃんは耳を疑いました。
ストライフちゃん「サルーインちゃん、今何と・・・?」
サルーインちゃん「バカバカしいといったんだが?フン!私ゃあの幽霊野郎には痛い思いをさせられているんだ!」
ストライフちゃん「あ・・・あ・・・」
サルーインちゃん「なんだ?ストライフそのまぬけ顔は!」
ストライフちゃん「・・・・・・・サルーインちゃんと・・・意見が・・・合った・・・」
サルーインちゃん「ん・・・?・・・・・・あ!!」

決して相容れぬものと思っていた。しかし、それはただの若さならではの妄想だったのだ。
・・・ああ、これこそが花の思春期。
ああ、この甘酸っぱさこそが人生の醍醐味。
・・・そして、僕らにとって最後の夏は、地平線のむこうへと消えていったのだった・・・

ストライフちゃん「・・・・・・って、なんだこのナレーションは!バカバカしい!!!!」
サルーインちゃん「え、えっ!?相変わらずノリ悪いなーお前!」ストライフちゃん「ほっとけ!」

・・・平和な日常です。



エロールちゃん「旧マルディアス学園には、悪しき三大脅威が存在した!
        ・・・死を食らう、不死の女王!生命を食らう、虫の女王!欲望を食らう、鬼の王!
        三大脅威は恐ろしいモンスターを引きつれ、
        悪行に次ぐ悪行を行い、旧マルディアス学園を恐怖に陥れた!
        旧マルディアス学園の校長マルダーは、先生、生徒、善のモンスターを使い、三大脅威に戦いを挑んだ!
        激しい戦いだった。
        何週間にも渡る戦いの末三大脅威は学園の各地に封印されたが、そのための犠牲は多かった。
        旧マルディアス学園に見切りをつけた先生達は、次々にマルディアス学園を去っていき、
        ついには旧マルディアス学園は廃校となった!
        しかし、校長マルダーだけはマルディアス学園を去ることは出来なかった。
        彼の努力により、見事マルディアス学園は再復興を遂げたのだ!!
        ・・・旧マルディアス学園はこうして滅び、新丸ディアス学園はこうして生まれたという話ですが・・・
        本当でしょうか?」
アディリスちゃん「・・・・・・どーでもいいけど、エロちゃんそのギターくれない?」
エロールちゃん「ン聞いてなかったのかよ!!(ジャカジャーン!)」

バファル舎の中心部に位置する、ベイル高原。
その奥地には、『グレートピット』と呼ばれるそれはそれはとても深い空洞が存在します。
そしてその最深部で、現生徒会長であるエロールちゃんと、四寮長の一人アディリスちゃんが話しあっていました。

エロールちゃん「人の話を聞かないとは、話し相手への最大の侮辱ですよ!っその癖止めましょうよアディリスちゃん!」
アディリスちゃん「ごめんねー。いやぁ、ついついエロちゃんのギターに目が行っちゃってさあ。あはは。」
エロールちゃん「もう。まったくもって仕方ないですね!よっ、ほっ、はっ!(ジャカジャカジャーン!)」
アディリスちゃん「いや、ギターさばきに目が行ってたんじゃなくて
         エロちゃんの『ギターそのもの』に目が行ってたんですけど・・・」
エロールちゃん「ちぎ〜れて〜はぐ〜れて〜く〜く〜もがぁ〜」
アディリスちゃん「ありゃりゃ、聞いてないや・・・やっぱ調子乗りやすい性格だなぁ、エロちゃんってば。」
エロールちゃん「それ〜は愛す〜る〜ひ〜との〜そ〜ばで、
        寄りそっているの〜でしょお〜おお〜お〜おお〜お〜ぅ・・・・・・」



デスちゃん「ウン。今日のお茶は美味いな。」
タイラントくん「悪いが前回のと一片たりとも変わらんのだが・・・」
デスちゃん「前言撤回だ。」

一方、ここはデスちゃんとタイラントくんがいつもお茶を飲み交わしている三途の川。
箱舟の上で、今日も二人はお茶を共に・・・?

タイニィくん「いやぁ〜あ、タイラントよ。ここのお茶は美味いな!五羽六腑に響き渡るぞ!」
デスちゃん&タイラントくん「おまえ、何でここにいるんだよ。」
タイニィくん「あ?い、いや〜誰かと杯を交わしたい気分だってのに、
       アディリスはエロールとお茶してて、水龍はハニーにご奉仕してもらってる途中らしいからさー。
       この前タイラント一度私の住処に無断で来ただろ?
       だから私も勝手におじゃましてきてもつべこべ言わんでくれ。お茶、うまっ!」
背中の七色の羽をぷるぷる震わせながら嬉々としてお茶を飲むタイニイくん。
タイラントくんはなぜかハァ、と残念そうにため息をつきました。
と、タイニイくんが思い出したように言いました。
タイニイくん「ああ、そうそう。重苦しい雰囲気についていけなくなる事を考慮して、重苦しい話題を持ってきたぞ。
       聞くか?」
タイラントくん「・・・相変わらず君は余計な事をつける癖があるな。で、どんな話だ?」
デスちゃん「雰囲気をそぐわない程度の重苦しい話を頼むぞ。」
タイニイくん「これはヵクラム砂漠を飛行していた時の話だ。
       カクラム砂漠の流砂に、タラールの者どもが飲み込まれていったのだ!
       それも、ただ飲み込まれただけではない。抵抗もなにもしていなかった。
       自ら飲まれにいっていたのだ!不思議な光景だったなー」
デスちゃん「・・・・・・だから、何?」
タイニイくん「・・・分かるか?つまりは・・・一族心中の場面をばっちり見てしまった、というワケなんだよおぉっ!」
デスちゃん&タイラントくん「心中?」
タイニイくん「そうだ。砂漠の流砂に抵抗もせずに飲み込まれるという事は、自殺以外の何者でもあるまい。
       ・・・どうだ。重苦しいだろう!」

・・・・・・・・・・・・・

デスちゃん「んなの話題に持ってくるなバカ!(ばきっ)」
タイラントくん「まさか本当に重苦しい雰囲気にされるとは思わなかったぞ!(がぶっ)」
タイニイくん「ぐああっ!」

・・・平和な日常です。



クジャラート舎でも最も治安が悪く、様々な悪が白昼堂々と闊歩する南エスタミル寮。
ジャミルくんは、水竜の腕輪を見事持ち帰り、この南エスタミル寮へと帰ってきました。

ジャミルくん「よーぅファラ!約束どおり水龍の腕輪、持ち帰ってきたぜ!もちろん、ファラにやるよ!」
ファラちゃん「!まさか本当に持ってきてくれたのー!?わー、嬉しいー!」
目の色を変えたように水龍の腕輪に飛びつくファラちゃん。
そんな彼女の笑顔を見ることが、職業盗賊であるジャミルくんにとっての最大の目的であり、最大の喜びなのです。
ジャミルくん「水竜の腕輪、もちろんファラにやるぜ?
       だけど、その代わり・・・オレと、その、デデ、デ、デッデッデデデデッ、」
ファラちゃん「デデデ大王?」
ジャミルくん「ちがーう!デ、デートだ!デートにいくぞ!」
ジャミルくんは勢いに任せ言いました。
勢いとは恐ろしいもの。ジャミルくんはそう言ってしまった後に恥ずかしくなってしまいました
心の中でひたすら弁解しているジャミルくんに、ファラちゃんが優しい一言を投げかけます。
ファラちゃん「デートとかじゃなくて・・・『一緒に遊ぼう』っていってよね!・・・いきましょっ!」
そう言うなり、にこりと笑いかけるファラちゃん。
ジャミルくんは、心が洗われていくようでした。・・・同時に、差恥感も。
ジャミルくん「よっしゃーー!!さっすがファラだねぇ〜!
       まっ、お前ぐらいのいい女になれば、オレの魅力も自然と分かってくるってもんだ!
       さてっ、行くか二人の愛の巣へ!ふぁ・・・ろるぁ!」
自信満々に語るジャミルくんの顔に、ファラちゃんのパンチが飛びました。
鼻血を噴水よろしく吹き上げ、昏倒するジャミルくん。
ファラちゃん「ジャミルったらそういう調子に乗るところ嫌い!!・・・遊びに行くのはまた今度ね!」
ジャミル「あっあー!ファラちゅわぁ〜ん、僕ったらまた調子乗っちゃたのねぇ〜!(ぐねぐね)」



長「ふん。無事に帰ってきたか・・・人間をよく見るお前に目に物見せてやろうと思ったのだが・・・意外だったな。」
ゲラ=ハ「長!何を言うのですか!人間がみな悪い者だというのは、あなたの偏見です!」

うっそうと生い茂った熱帯雨林の中に隠れているかのように存在する洞窟。
その洞窟の奥には、それは綺麗な清流が存在し、そしてそれは珍妙なトカゲ、『ゲッコ族』が住んでいるのです。
その中で、ゲッコ族の長と、クリスタルナイトから帰ったゲラ=ハが口論を広げていました。

長「何を言うか。人間にはよい者ばかり、というのもお前の偏見ではないのか?
 『人間寮生と共存する』などと稚拙な意見を私に押し付けおって!」
ゲラ=ハ「・・・!そういう排他的主義にいつまですがり付いているのですか!ミルザさんの事を忘れたのですか!?」
長「・・・人間がみなあやつのような者だとは限らぬ!
  いいか、わしは他の者とは違うぞ!人間は絶対に信用せぬ!絶対にな!」
ゲラ=ハ「・・・!長、何があなたをそこまで・・・?」
長「黙れ!わしは一生ここで一人で過ごすつもりだ!され!薄汚い人間寮生と共に薄汚い生活を送っていくがよい!」
ゲラ=ハ「あなたがいなくなっては誰がゲッコの長を務めるというのですか!?」
長「長がいないのならばお前が長になればよい!わしの事はもう忘れろ。去れ!」
ゲラ=ハ「・・・長。そのような訳にはいきません!絶対にあなたをここから」
長「貴様は人間の綺麗な部分を知りすぎているのだ!昔のわしと同じだ。少しは人間の汚い部分を知ってみるがいい!
  貴様もわしと同じ考えになるぞ!」
ゲラ=ハ「!!」
長「・・・海賊、という物を知っているか?人間寮生の悪意の塊だ!!わしの妻は、奴らに殺されたのだ!理由もなしに!
  奴らはゲッコを虫か何かと同じように見ておる!・・・貴様も、奴らに触れてみればいい!
  そうすれば分かるぞ?人間の汚さがな!」
ゲラ=ハ「・・・・・・」
長「・・・す、すまんゲラ=ハ。少々わしも言い過ぎたかもしれ」

ゲラ=ハ「長。わかりました。」

長「はっ?」
ゲラ=ハ「ならば、私も海賊に触れて見ることにしましょう。人間寮生の汚さ、という者を直に見てきましょう。」
長「いや、わしは冗談で言っただけだ!やめろ、殺・・・」
ゲラ=ハ「そして次私がここに帰ってきて・・・まだ人間寮生との共存を謳っていたならば!
     ・・・長。人間寮生と触れてみる事を約束してください。」
長「・・・」
ゲラ=ハ「いいでしょう。答えは聞かない事にします。長。しばらく待っていて下さい。」
ゲラ=ハは、洞窟を出て行きました。聞き分けのない長を救うために。人間を更によく知るために・・・



・・・・・・・・・乱雲渦巻き、雷鳴が轟く秘境、魔の島・・・・・・・・・

デーモンコマンド「暇だな。」
ラミアちゃん「暇ですね。」
デーモンコマンド「マスターは研究室にこもりっきり・・・・
         リザードロードは格下フレンドリー将魔の座を捨てたのか、ここには来ない・・・
         他の3人はいわずもがな・・・そして私は何の任務もない・・・なぁ?スペ・・・カヤキス?」
奇妙な黒い鎧は、静かにこくんと一度頷きました。
デーモンコマンド「まったく・・・ん?」
デーモンコマンドは、部屋の端っこからモンスターがこちらをのぞき込んでいるのが目に入りました。
よくよく見ると、ラミアちゃんの方をちらちらと見ています。
デーモンコマンド「おい、ラミア。・・・・お前のお友達が呼んでるぞ。」
ラミアちゃん「お、お友達ぃ・・・?って、モーロックかよ!」
必死に手で『こちらに来い』という動作を繰り返すモーロック。
ラミアちゃんは、ため息をつきながらしぶしぶモーロックの方へ向かいました。

ラミアちゃん「なによアンタ?あたしに何のよう!?」
モーロック「お前・・・なんで将魔様にあんな馴れなれしく接してるんだ?」
ラミアちゃん「はぁ?」
モーロックの唐突な質問に、ラミアちゃんは眉をしかめました。
モーロック「だから・・・なんでお前みたいな下っ端がデーモンコマンド様と一緒に話してるのか、って事だよ!」
ラミア「・・・(はは〜ん。)」
モーロックのその焦ったような口ぶりと表情に、ラミアちゃんは彼が何を言わんとしているのかを理解しました。
ラミアちゃん「お前・・・嫉妬してるでしょ?」
モーロック(ギ、ギクッ!!)
嫉妬。それは当然の事でしょう。
今までは全く同じ『下っ端』だと思っていた者が、数日後には自分よりも格上の者と対等(?)に話している。
まるで置き去りにされたかのような、それとも出し抜かれたかのような、
とりわけ自分とは違う位置に行ってしまったという事を、歯がゆく思っているのでしょう。
モーロック「そうだそうだ!嫉妬して何が悪い!ラミアよ。
      オレとお前と、そしてバルバロイは『下っ端三人衆』として下っ端の中では特に頑張った仲間じゃないか・・・
      お前だけ将魔に取り入って・・・オレだけを置き去りにするというのかーっ!」
泣きそうな声でそう言うモーロック。
ラミアちゃんは心中すまないと思いながらも、おそらくは大分昔から考えていた事を、モーロックにぶつけました。

ラミアちゃん「言っちゃ悪いんだけど・・・あんた、『肉の壁』と見た目まったく同じじゃん・・・」

モーロック「!!!!!!!う、うわぁぁあーっ!!!ラミアなんてーーー!!」
恐るべき真実を知ってしまったモーロックは、今度は正真正銘泣きながら、どこかへ走り去っていってしまいました。
その切なさに溢れる後姿までも『肉の壁』と全く同じ・・・いやはや。
ラミアちゃん「さようならモーロック・・・もう会う事はないと思うわ・・・」

デーモンコマンド「話はつけてきたのか?」
ラミアちゃん「・・・つけてきました。」
デーモンコマンド「そうか。なんか悲痛な叫び声が聞こえてきたけどどんな会話してきたのだ?」
ラミアちゃん「・・話せる程内容はありませんよ。」
デーモンコマンド「そうか。」
ラミアちゃんは、その場に座り込みました。
モーロック、バルバロイと共に小さい事件やマスターの小さい研究の手伝いをした事が思い出されます。
ラミアちゃん(・・・モーロック・・・ばいばい・・・)
心の中でモーロックへの別れの挨拶をした、その次の瞬間のことです。

???「おやおや、将魔のお二方おそろいのようで!!」

ラミアちゃん「あ・・・っ!」
デーモンコマンド「ゴブリンセージ・・・!」
カヤキス「・・・?」

ピンク色の肌、緑色の目、そして頭上にある帆のような物が特徴的な、一匹のゴブリン。
ゴブリンセージが、部屋に入ってきました。
ゴブリンセージ「アクアマリンの件では随分と恥ずかしいまねをしちゃったそうですね!
        アクアマリンは取り逃がし、エメラルドも危険にさらした!」
デーモンコマンド「・・・何を言うつもりだ?」
ラミアちゃん「ちょっとアンタ下っ端のくせにでしゃばってんじゃないわよ!」
二人の怒声が聞こえていないかのように、ゴブリンセージは続けます。
ゴブリンセージ「うふふっ、将魔サンが優れているのは大抵、
        というよりもみんな『頭』のほうではなくて『力』ですからねーっ!
        まぁ、仕方ないというべきか、予想通りの結果なんですけど・・・」
嘲るように言うゴブリンセージ。
デーモンコマンド「貴様・・・!将魔にそのような口を聞いて許されると思ってるのか!?」
デーモンコマンドはがばっと立ち上がり、ゴブリンセージに爪を向けました。
一触即発の空気が辺りに漂います。
ゴブリンセージ「・・・・・・いやだなぁ、もう。やめて下さいよ将魔サマっ!僕は『戦えない』んですから。」
デーモンコマンド「・・・・・・!!」
デーモンコマンドは、爪をゆっくり下ろしました。
なにせデーモンコマンドは『格下に優しい将魔』と自ら名乗っているため、
自分から『戦えない』と言っている格下を攻撃するわけにはいきません。
ゴブリンセージは再び笑い出しました。
ゴブリンセージ「あははっ!そうそう。あなたは僕らに優しくなきゃいけませんよ!
        ・・・まぁ、そんな事よりも僕はスペクターサマに用があるんですよ。」
カヤキス「!」
トコトコと『カヤキス』に近づいてゆくゴブリンセージ。
デーモンコマンド「無礼は慎めよ!」
ゴブリンセージ「言われなくても分かってまーす!」
興味津々な顔で『カヤキス』の黒い鎧をぺたぺた触るゴブリンセージ。
ひとしきり触り終えると、にこにこした顔で何か言い始めました。
ゴブリンセージ「やっぱり強くなって帰っておいでのようだ!
        前々の貴方からは考えられないほどの邪気が漂っていますねぇー!
        ・・・・で、あなた、『カヤキス』と呼ばれたがってるんでしたっけ?」
カヤキス「そうだ。」
それを聞くと、ゴブリンセージは一層笑い出しました。

ゴブリンセージ「あははははは!『カヤキス』ですか!確かにあなたにとてもピッタリなあだ名だ!うふふっ!」
カヤキス「・・・どういう意味だ?」
ゴブリンセージ「言葉どおりの意味ですよ。カヤキス。『カヤキス・レビタ』!
        タラール語で『黒い悪魔』という意味ですよね。
        代々ローザリア舎の王族『カール』一族は、
        その漆黒の甲冑と果て無き野心により『黒い悪魔』すなわち『カヤキス』と呼ばれてたんですよね。
        ・・・で、貴方が着ているその鎧こそが、
        『カール』一族が『カヤキス』と呼ばれるに至った原因の鎧である、と。」
カヤキス「・・・そういうわけだな。」
ゴブリンセージ「いやはや、よく盗み出せたものですね。
        そしてその鎧をがっぽり着込んでおいて、呪われもしないとは、これまた流石ですねっ!
        うふふっ、だからこそここまで強くなられたのか・・・
        それとも・・・・うふふっ、どちらにせよ流石なものです。」
カヤキスの周りをぐるぐる回りながら舐めるように見つめるゴブリンセージ。
そんなゴブリンセージに、デーモンコマンドが耐えかねたように言いました。
デーモンコマンド「もう気は済んだろう?これ以上はいい加減無礼というものだ。さっさと糸石探しにでも行っていろ!」
ゴブリンセージ「何を言うんですかぁ?僕、肉体労働なんてゴメンですよ?」
デーモンコマンド「あ?」
デーモンコマンドの顔にぴくりと血管が浮き上がります。
ゴブリンセージ「肉体労働はいやだ、と言ったんです。まぁ、いいじゃないですかっ!
        マスターも肉体労働はしないでしょ?」
ゴブリンセージが『当然でしょ?』という風に言います。
その一言に、デーモンコマンドは完全に切れました。

ドガァァン!

ゴブリンセージ(・・・・・・たらっ)
ゴブリンセージの後ろの壁に、デーモンコマンドの爪が突き刺さりました。
デーモンコマンドのクロースピアは、それが固く塗り固められた石であろうとも、軽く貫いてしまいます。
ゴブリンセージが、ラミアちゃんが凍りつきました。
ゴブリンセージ「ちょっ、ちょ、嫌だなー。僕は戦えないんですよ?やめてくださいよしょ」
デーモンコマンド「相手が格下だろうともマスターを侮辱する者は許さぬ。死ね!」
デーモンコマンドは、再び爪をゴブリンセージに向かい伸ばしました!
ゴブリンセージ(・・・・・・くそっ!)

がちゃり

一同「!!」
扉から、今度は『マスター』ウェイ・クビンが入ってきました。
デーモンコマンドの手が止まります。
ゴブリンセージはホッとしたような目でクビンを見つめました。
ウェイ「・・・何の騒ぎだ?騒がしくて研究もできんぞ。」
デーモンコマンドは平静を装いながら言いました。
デーモンコマンド「それがですね、マスター。あのゴブリンセージめが、貴方の事を侮辱したんです!
         将魔としてはあやつの発言は到底許せぬ狼藉。奴を罰する権利を下さいマスター!」
ウェイ・クビンは、一瞬ゴブリンセージをちらりと見た後、静かに首を横に振りました。
デーモンコマンド「・・・・・・!!な、なぜ・・・?」
ウェイ・クビン「いい・・・奴の事は放っておけ・・・」
デーモンコマンド「ぐっ・・・・・・?」
ゴブリンセージ「さすがマスター、話が分かる!そうですよね、貴方には僕が必要ですものね!!」
デーモンコマンド「きさま・・・!」
クビン「ゴブリンセージの事は放っておけといっておる!!」
デーモンコマンド「・・・・・・!!」
ウェイ・クビンの怒声が、部屋中に響き渡ります。
デーモンコマンドは、ワケが分からないまま固まってしまいました。
ラミアちゃんも、カヤキスもクビンを見たまま固まります。
そんな中、ゴブリンセージだけは緑色の目を無邪気に輝かせながら、なにか言い出しました。
ゴブリンセージ「いやぁ、やはりマスターは話が分かる!デモコマ様も話が分かる!
        あ〜、『死神』や『反逆者』がいなくてホントによかったぁ!
        ・・・うふふっ、じゃあ、僕はゆっくり自室でゴブレンジャーの指揮でもしていますよ。
        じゃ、みなさんっ、よい夜を!」
ゴブリンセージはぴこぴこ手を振って、部屋を出て行きました。
とたんに部屋中が静まり返ります。
クビン「・・・わしも研究に戻る。騒がしくするでないぞ。」
続いてウェイ・クビンも部屋を出てゆきました。
・・・先程までの殺伐とした雰囲気が嘘だったかのように、部屋は重い沈黙に包まれました。

ゴブリンセージ「・・・・・・糸石をめぐる、サルーインちゃん、エロールちゃん、そしてマスターの三大勢力。
        いや、・・・うふふ、あいつも入れて四大勢力かな?
        ・・・何はともあれ、僕は傍観者としてこのゲームを楽しむ事にしましょう。
        ・・・その為に僕は作られたんですからね!」
彼の緑色の目は、まるで宝石のようにキラキラと輝いていました。


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