幕間劇「その後の海賊さん」

TOP / MENU



メルビルの騒乱から約一ヶ月。
船を失ったキャプテン・ホークは副長であるゲラ=ハくんと共にヨービル寮の港に立っていました。

ホーク「そろそろか・・・。あ〜、あいつらなにやってんだっけ?」
ゲラ=ハくん「アレクセイとブラックは騎士団寮で遺跡修繕、
       クライド、ドレイク、エッグはブルエーレ寮で物資の積み込みを。
       シルバー親分は北エスタミル寮でウエイトレスをそれぞれやっているはずです」
ホーク「あいつに客商売なんかできんのか?」
ゲラ=ハくん「自信は満満でした」
ホーク「根拠がねぇだろ」

話し込む二人のもとに一隻の船が近づいてきました。
ゲラ=ハ「あの船です」
ホーク「おお、あれか!ホーク海賊団一月ぶりに結集ってわけだ!」



――ヨービル寮パブ
ホーク「なんだ!?おめぇら五人いてこんなもんかよ!」
部下達の稼ぎの少なさに思わずホークは語気を荒げました。
海賊A「んなこといわれてもなぁ」
海賊B「俺ら陸の仕事なんざやったこともねぇし」
海賊A「大体あの仕事気にいらねぇんだよ。俺らが直しても直しても誰かが穴あけやがるし」
海賊B「埋めるために穴掘らされてる囚人みてぇだよな」
ホーク「もういい!おめぇらは!?」
海賊C「ん〜、新入りだし足元みられんのは仕方ないんじゃないっすか?」
海賊E「陸の仕事は船酔いしないのがいいよね」
海賊D「お前海賊のクセに船酔いするのかよ」
ホーク「どいつもこいつも・・・シルバー、おめぇは?」
シルバー「バッチリだったよ。あたしにかかりゃ『うえいとれす』なんて敵じゃないね」
ゲラ=ハくん「そもそも戦う対象ではないのですが」
しかしシルバーは自分の武勇伝を語るのに夢中で聞いちゃいません。
シルバー「あたしの子分になりたいって客がわんさかいて毎日盛況だったよ」
ホーク「ほぉー、そいつはすげぇ。で、稼ぎは?」
シルバー「ない」
ホークの顔が固まりました。

ホーク「あ?」
シルバー「だから。ない」
顔に手を当て、ホークはしばらく熟考した後、口を開きました。
ホーク「俺はあまり頭のいい方じゃねぇ。だが、働いたら金がもらえる、これぐらいは知っている。
    しかし、おめぇは働いたのに金が無いという。これがわからない」
感情をどこかに置いてきたような棒読みでホークは聞きました。
シルバー「金はもらったよ。だけど、あたしがしばらく休むって言ったとき子分たちが泣いて引き止めてさ。
     そういうわけにもいかないだろ?だから最後にあたしの奢りでパーッと・・・」
巨大な拳骨がシルバーの頭に落ちました。
シルバー「いたぁ!な、殴ったなぁ!私は親分だぞ!えらいんだぞ!」
涙目で喚きます。
ホーク「馬鹿野郎!おめぇは客の親分である前にこいつらの親分だろうが!
    子分だけ働かせて自分は働かねぇなんざ最低の野郎がすることだ!」
シルバー「ちゃんと働いてたよ!」
ホーク「海賊は結果が全てだ!過程なんざクソの役にもたたねぇ!」
シルバー「!!・・・・あたしダメな親分だったのか・・・・」
がっくりと落ち込むシルバーの肩に手が置かれました。
海賊A「ミスは誰でもするもんですぜ。今後こんなことが無いように海賊のイロハを俺が教えて差し上げましょう!
    だから俺と一緒に別室へ・・・」
海賊B「てめぇ、その手に持ったハイヒールはなんだ!?
    さては親分に踏んでもらう気だな!?うらやm・・この変態が!!」
海賊C「親分が落ち込んでるのにつけこんで・・・油断ならn・・卑劣な!!」
海賊E「僕も踏んでください」
海賊D「ストレートだな」
海賊A「うるせぇ!!俺をお前らみたいな変態と一緒にするな!これは俺が履くんだよ!」
海賊D「お前が踏むのかよ」
わりと人の入ったパブでくだらないことを大声で喚きあうホークたちはたちまち注目の的になりました。

ゲラ=ハくん「騒いですみません。この人たちちょっとおかしいんです」
周りの客にゲラ=ハくんがペコペコ頭を下げます。

ホーク「おめぇら少し静かにしろ」
海賊B「キャプテン!そういうあんたの稼ぎはどうなんだよ!」
海賊C「あんたさっきから文句言ってばっかじゃないか!」
海賊A「ちょっとおかしいとはなんだ!俺はかなりおかしいぞ!」
海賊D「いや、その主張はおかしい」
ホーク「俺か?ほれ」
テーブルの上にずっしりとした皮袋を放りました。
海賊E「すごい!500ジュエルはあるよ!」
ホーク「ゲラ=ハと一緒に果樹園でな。大変だったぜ、鳥どもがわんさか寄ってきやがってよ。
    そいつらを全部駆除した報酬ってわけだ」
海賊D「さすがキャプテンだぜ!!」
海賊A「俺たちに出来ないことを平然とやってのける!」
海賊B「そこに痺れる!憧れるゥ!」
海賊C「この分なら船くらいすぐ造れそうっすね!」
ゲラ=ハくん「いえ、果樹園の収穫は終わったので大きな儲けはここまでです。
       今月からは私とキャプテンも普通の仕事につくことになるので・・・、
       来年の今ごろくらいには骨組みくらいは何とかできそうです」

ゲラ=ハくんの冷静な言葉に場が凍りつきました。
今まで騒いでいたのが急に静かになったため、他の客達も訝しげにホークたちを見ています。

海賊A「ふ・・・ふざけんなぁーーーーーーー!!!」
先ほど以上の音量の怒声が響き渡りました。
海賊A「そんな長い間堅気の仕事ができるかよ!!まともな仕事が出来ねぇから海賊やってんだ!!」
海賊B「だいたいあんたなんでそんなに偉そうなんだよ!!
    船もってねぇキャプテンなんざ陸に上がったカッパみてぇなもんじゃねぇか!!」
海賊C「カッパか、ハッ!」
海賊E「でもしばらくは海に出なくていいんだ。僕泳げないからちょっと安心」
海賊D「お前なんで海賊やってんだ?」

音速で手の平を返した海賊達がホークに食って掛かります。
船の上では決して壊れない団結心も陸の上ではボロボロです。
ホーク「なんだとてめぇら!文句あるならかかってきやがれ!!」
テーブルを蹴り倒しホークも立ち上がりました。
ゲラ=ハくん「止めてください、キャプテン。こんなところで騒ぎを起こすのは危険です」
ホーク「こいつらがいうこと聞かねぇんだからしょうがねぇだろ!!」
そのときパブの扉を荒々しく開け放ち、警備隊が入ってきました。
警備隊員「暴れている海賊達というのはお前らだな!?」
ホーク「おめぇら!引き上げだ!!」
海賊達『 『 『応!!!』 』 』
ここぞとばかりに団結するとホークたちは裏口から逃亡しました。



――ヨービル、路地裏

ホーク「逃げきれたようだな」
海賊C「それはいいとしてキャプテン、どうするんです?」
海賊B「ちまちま働くのは勘弁っすよ」
海賊E「一月も働けば船買えると思ってたのにな〜」
その言葉に海賊達が相槌を打ちました。
ゲラ=ハ「その金銭感覚には素直に驚かされます」
ホーク「こいつらは船を手に入れた後にはいったからな」
シルバー「そうだ!!」
今まで黙っていたシルバーが突如声をあげました。
ホーク「どうした?元気になったのか?」
シルバーは勝ち誇ったような顔でホークに言い放ちました。
シルバー「あたしをダメ親分呼ばわりしたことを後悔させてやるよ!」
ふん!、っと嘲笑の笑みを浮かべましたが、童顔のせいで強がっている子供のようにしか見えませんでした。
ホーク「ほぉ、いってみろ」
シルバー「ふふん、あたしが龍だったときに集めていた宝がある。
     あれを売れば船の一隻や二隻すぐに買えるはずだよ!」
ホーク「そのお宝ってのはどんn・・・」
海賊E「すごいや!さすが親分!」
海賊A「ああ!どこぞのカッパなんかとは大違いだぜ!」
海賊B「頼りになる、かわいい、まったくオサレヒゲも見習えよ!
    これで俺のこと踏んでくれたら最高なんだけどなぁ」
海賊C「あ、こいつドサクサにまぎれて!その権利、俺に譲れ!」
海賊B「だが断る。あはは〜」
海賊C「こいつ〜」
海賊D「武器はやめとけ、な?」
ホークの声ははしゃぎだした海賊達にかき消されました。
ゲラ=ハくん「広い心。広い心です、キャプテン」
ホーク「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ああ」
シルバー「よぉし!じゃあいくよ!」
海賊達『 『 『応!!!』 』 』



――龍の巣

サンゴ海のある岩山の頂上にホークたちはようやくたどり着きました。
ホーク「やれやれ、海賊が船借りてお出かけか。しまらねぇな」
シルバー「心配しなくてもすぐに新しい船が手に入るよ」
ホーク「だといいがな」

洞穴の内部は緑光を放つ岩石で形成されていました。
シルバー「気をつけなよ、そこらじゅうに罠が仕掛けてあるから」

海賊A「うわぁ!岩石だ!」
ゴシャ!
海賊B「惜しかったな!俺の右手が寄生生物なら切り裂いてたぜ!」
海賊A「この程度か。たいしたことないな!俺ら」
海賊D「・・・・・待て。何で当たったのに偉そうなんだお前ら?」

海賊C「いて!トラバサミだ!」
バシン!
海賊C「・・・この右のはさみは親分の上顎、この左のはさみは親分の下顎。ハァハァ」
海賊D「人じゃなくてもいいのかよ」

海賊E「な、なんかぬるま湯がでてきた〜」
でろ〜ん
海賊A「ああ!エッグがでろでろに!」
海賊B「くさったおにg、もといくさった卵に!」
海賊C「ゾンビが出てくるぞ!浄化の水、急げ!」
海賊D「どんな罠だよ」

ホーク「おめぇら言ってるそばから引っかかんなよ。しかもこんなみえみえの罠に」
そこらじゅうに仕掛けられた罠は数こそ多いものの、仕掛けた後が隠されていない状態でした。
海賊A「せっかく親分が仕掛けたんだし」
海賊B「無視しちゃかわいそうでしょ」
海賊C「だからわざと引っかかって優しさをアピール!その優しさに打たれる親分、そしてラヴ!」
海賊A「馬鹿!ばらすなよ、俺たちが打算的な奴だと思われるだろ!」
海賊B「すいませ〜ん、今のオフレコでお願いしま〜す」
ホーク「・・・・・」
ゲラ=ハくん「陸に上がって不安定になってるんですよ。
       船が手に入れば、またもとに戻りますよ・・・・・・・多分」
シルバー「何言ってんのかよくわかんないけど、この罠仕掛けたのあたしじゃないよ。
     生まれたときからあったんだ」
海賊A「死ね!罠仕掛けた奴!」
海賊B「きっとどんな奴よりも醜い心をもってたに違いないぜ!なあ?」
海賊C「きくまでも なかろうよ!」
ホーク「こいつら病気なんじゃねぇか?」
ゲラハ=くん「私に聞かれても・・・」

海賊E「ちなみに僕は普通に引っかかったよ」
海賊D「それは知ってる」



――龍の巣、大空洞

シルバー「さあ着いたよ!全部持っていきな!」
ホークたちの眼前にはきらきらと光る物が山のように積まれていました。
海賊達『 『 『  ヒャッホー!! 』 』 』

一時間後
ゲラ=ハくん「通貨とジュエルはほとんどありませんね。
       アニマルコインと虫アメ、キレイ石が大半ですね」
シルバー「どうだい?これで船は買えるだろ!?」
ゲラ=ハくん「・・・・渡し舟くらいならなんとか」
シルバー「そ、そんなああああ!こんなにキレイなのに!?」
ゲラ=ハくん「キレイであることと価値があるか否かは別の問題です。残念ながらこれらは大して価値がありません」
海賊E「なんだ、がっかり」
海賊D「見込みが外れたな」
海賊B「遠くから見たら宝の山だったんだけどな」
海賊C「まぁこんなもんだよな世の中」
シルバー「うう・・・」
子分たちの落胆の声にシルバーは心がチクチクと痛みました。
海賊A「お前ら!親分を責めるな!確かに思ってたよりは少ないが十分な稼ぎだろ?
    俺たちのために尽力してくれた親分に感謝してしかるべきじゃねぇのか!?」
シルバー「あんた・・・」
シルバーの心に日が差しました。
海賊A「とはいえお前らの気持ちもわかる」
シルバー「え?」
すぐさま雲がかかりました。
海賊A「そこで俺が皆を代表して親分にお仕置きをしたいと思う。この石下駄で。
    さあ、親分、お尻をこっちに向けてください!」
シルバー「ええと、キャプテン。あたしこういうときどうしたら良いかわからないんだけど」
ホーク「やればいいと思うぞ」

『かみかみ砕く』

海賊A「ああああああああああああああああああああああああああああああああああ」



――帰路、海上

船縁で物思いに沈むシルバーにホークが話し掛けました。
ホーク「気にしなくていいぞ。あの馬鹿が言った通りおめぇに非はねぇよ」
シルバー「ああ、でも自分の世間知らずぶりが情けなくなちゃってね」
ホーク「まだ人間になって一ヶ月だ。当然だろ」
シルバー「でも生まれて一ヶ月ってわけじゃないよ」
ホーク「・・・いいか?人が生きることと、知ることは同じことだ。
    長く濃く生きた分だけ知識も多くなる。おめぇが人としてたのは一ヶ月。卑下するこたぁねぇよ、上等だ。
    それでもなんとかしてぇなら今すぐ知る努力をしろ。悩んでるひまなんてねぇぞ?」
少し考えた後、うつむいていた顔を上げシルバーは微笑みました。
シルバー「・・・・なるほど。・・・キャプテンあんた器がでっかいな」
口の端を上げホークは笑いました。
ホーク「今ごろ気づいたのk」
海賊B「裏切り者センサー、探知、発見、驚愕。キャプテンです!」
海賊C「なんだと!ずるいっすよ、ぬけがけなんて!みんなの親分ですよ!?」
海賊A「はぁ〜、女にゃ興味ないみたいな顔してやるこたしっかりやってますなぁ、このカリビアンが!」
ホーク「てめぇらどこからわいて出やがった!」
シルバー「キャプテン、『やること』ってなんだ?」
ホーク「うるせぇ!自分で調べろ!」
ゲラ=ハくん「皆さん静かにしてください」

海賊E「うぇ〜、おえっぷ、ぐぇ〜」
海賊D「大丈夫か?背中さすってやろうか?」
海賊E(コクコク)
海賊D「やれやれ、世話の焼ける」



――ワロン島、ゴドンゴ寮

ゲラ=ハくん「さて、どうします?ローザリア寮に戻りますか?」
ホーク「ふふ、心配するな。さっきそこですごい物を手に入れた」
海賊C「また唐突ですね」
無視してホークは古めかしい羊皮紙を取り出しました。
ホーク「こいつを売ってたゲッコ族いわく、ジャングルの遺跡の近くで発見したそうだ。
    いまだ手つかずな遺跡らしいから期待できるぜ。さ、ゲラ=ハ解読してくれ」
ゲラ=ハくん「読めません。見た事も無い文字です」
ホーク「物知りなおめぇがしらねぇのか」
シルバー「これ古代文字って奴じゃない?昔見た事があるよ。読むことは出来ないけどね」
ホーク「古代文字ってこたあ信憑性が高まったな。お宝の匂いがするぜ」
海賊A「でも読めないんでしょう?使えないじゃないっすか」
ホーク「手がかりを探すんだよ。学園中を回ってな」
ゲラ=ハくん「仕事はどうするんです?」
ホーク「俺たちはともかく、こいつらにゃ仕事は無理って事がよくわかった」
海賊D「わりと心外なんですが」
聞いちゃいません。
ホーク「ちまちま堅気の仕事するよか、冒険してる方がいいだろ?おれたちゃ、

ホーク・ゲラ=ハくん・シルバー・海賊達『 『 『 『海賊!!』 』 』 』

だからな!」

海賊C「冒険ってのも良いな」
海賊B「働くよかよっぽど良いぜ!」
海賊E「お宝楽しみだなぁ」
シルバー「海賊には冒険もつきものだからね!」

騒ぐみんなをよそに、ゲラ=ハくんは小声でホークに尋ねました。
ゲラ=ハくん「その古文書いくらだったんです?」
ホーク「・・・・700ジュエル。この一ヶ月の稼ぎ全部使っちまった。ハハハ」
ゲラ=ハくん「笑い事ではないんですが」
ホーク「まぁ心配すんな。こいつは金になる。俺の直感がそう告げてる。
    俺はここ一番の勝負じゃ絶対負けねぇんだ。おめぇも知ってるだろ?」

ゲラ=ハくん「信用しますよ」


MENU / TOP





SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送