第15話「海底戦争」

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ウェイ・クビン「これからはお前がモンスター達に指令を下していけ。」
セージ「え?そんな事・・・いいんですか?」
ウェイ・クビン「わしの研究の一つが佳境を向かえているのだ。これから数日は誰にも接せずに部屋にこもりたい。」
セージ「そういう事ですか。いやぁ〜、それはそれは何と光栄な事か。」
ウェイ・クビン「お前はある意味わしの分身とも言えるからな。」
セージ「てれるなー」
ウェイ・クビン「では、頼むぞ・・・」
セージ「はい、マスター。」



ここは魔の島。
島の中心に高く聳え立つ塔の周辺に巨大な岩が無数に立ち並んでいます。
その目前に、将魔の一人、デーモンコマンドが立っています。傍らからラミアちゃんが好奇の目で見ています。
デーモンコマンドは、一度深呼吸すると、一声と共に岩に向かってその黒い爪を突き出しました!
ドガァン、と激しい音を立て、岩が砕け割れます。
デーモンコマンド「はっ!はっ!はっ!」
伸縮自在の爪が、幾つもの岩をどんどん砕き割っていきます。
ラミア「す、すげー・・・あんな硬そうな岩をこんな軽々と突き割ってくなんて・・・」
ラミアちゃんの顔色が感嘆に染まってゆきます。
デーモンコマンドは爪を突き出すのをやめると、術の構えを取りました。
闇色の力がデーモンコマンドの周辺からにじみ出ていきます。
突然、散らばった岩がふわりと宙に浮きました。
ラミア「おー、すげーすげー!重力操作すげー!!」
そして、デーモンコマンドが腕を振り下ろすと、岩がいっせいに床に叩きつけられました!
重力を一片に加えられた石達は、凄まじい力で床に激突し、さらにその体を細分化させました。
デーモンコマンド「フィニッシュだ・・・」
間髪いれずにデーモンコマンドは術を発動させます。
血の色をした魔力の雨雲が、小石の群の真上に発生しました。
そして、その雨雲は鮮血の刃と化して小石に襲い掛かります!
小石一つ一つを血の雨、
『デスレイン』が正確に貫いていき、雨がやんだときにはその場に既に石は存在していませんでした。
ラミア「・・・・・・わー!デーモンコマンド様さっすがぁーーー!!」
ラミアちゃんの声に、雰囲気は緩和されます。
デーモンコマンドは肩を下ろしました。
ラミア「すごいすごいすご〜〜い、ゴイスー、ゴイスー。」
デーモンコマンド「黙れ腐女子めが。普段は糞の役にも立たぬゴミ野郎の癖に、ほめるのだけは立派だな。」
ラミア「そんなそんなぁ〜ん、ラミアはデモコマ様が本当にゴイスーだと思ってほめてるんですよ〜〜ん。
    んもう、デモコマ様ったらぁん♪」
デーモンコマンド「キ、キモいわクズめが。」

『デーモンコマンド、デーモンコマンドよ。至急広場へ来い。至急だ!』

不意に、島全体に声が響き渡りました。
その声は、他ならぬ魔の主、マスターウェイ・クビンのモノです。
ラミアちゃんの言動に顔をしかめていたデーモンコマンドの顔つきが変わります。
デーモンコマンド「マスターがお呼びだ・・・何かあったのだろうか。」
ラミア「なに?なんかいけない事でもやったんですか?デモコマ様?」
デーモンコマンド「私がそのような事をやる人間に見えるかね?」
ラミア「ええ。バリバリ見えますね。同属殺しくらいは簡単にやってのけそうな気が・・・」
デーモンコマンド「ほう、そうか。ではまず手始めに貴様を殺してみようかな。」
ラミア「すいません、ごめんなさい、悪霊退散。」



魔の島、その内部の中心にある『広場』。
異様に広いその場の中心に、小さい生き物が一匹ぽつんと立っています。
どこからか差される日の光でもない人口の光でもない光が、その生き物を照らしています。
突如、広場とその外とを遮断する扉が開かれました。
「ようこそ、お二人さん。」
その生き物は口を開きました。
扉から入ってきた二人・・・デーモンコマンドと、ラミアちゃん。デーモンコマンドはいいました。
デーモンコマンド「ん・・・?私はマスターに呼ばれて来たはずだが、なぜ貴様がココに?」
セージ「僕は伝言板です。マスターは今研究でお忙しいので・・・」
デーモンコマンド「それで貴様が伝言板か。ふん、偉くなったもんだな。」
セージ「いやぁ、そんな褒めなくても・・・」
デーモンコマンド「皮肉だよ!バカかお前は!・・・で?マスターはなんと?」
ラミアちゃん「デモコマ様はっちゃけてますね」
セージ「あなた達には黒海へ行ってもらいます。」
デーモンコマンド「黒海?」
ラミア「え!?あたしも!?」
セージ「運命の糸石、『闇のブラックダイア』。その場所が明らかになりました。」
デーモンコマンド「ほう、闇のブラックダイアは黒海にあるというわけか。」
セージ「そういう事です。ゴブレンジャーが黒海の底に闇の漏れ出る神殿を見つけましてね。
    そこにブラックダイアがあるというワケなんですよ。」
デーモンコマンド「ほー。ゴブリン達で行かずに私達に頼むという事は、やはり危険なところっつーことか?」
セージ「そうそう。ナイトによると入り口付近で大量の水棲系モンスターに襲われたらしいです。
    化石魚とかデスクローカーとか・・・
    比較的ランクの高いモンスターですね。20匹前後いたとか。おーこわ。」
ラミア「おーこわ・・・ってあたしも行くんだっけ?」
デーモンコマンド「その神殿にブラックダイアがあるという確証はあるのだろうな?」
セージ「さぁ・・・中はどうなっているのか、金庫番はいるのか。そういった所もわかりませんし。
    自分で確かめてきてください。」
デーモンコマンド「随分と適当だな・・・それもマスターのお言葉か?」
セージ「・・・そういう事ですね。」
デーモンコマンド「・・・どうだか。」
セージ「・・・・・・まぁとにかく、あなた達二人では何かと不安でしょう?これを使ってください。」
セージはそう言うと、懐から銀色に光る杖を取り出し、デーモンコマンドにつかませました。
デーモンコマンド「・・・これは霊木の杖?これで何をしろと?」
デーモンコマンドは手元の霊木の杖をじろじろ見回します。
セージ「その杖には魔のモンスター達がいっぱい詰まっています。
    集団戦には結構役立つと思いますよ。・・・個々の実力はあなたに到底及びませんけど。」
デーモンコマンド「なるほど。なかなか用意がいいな・・・」
セージ「叩き割ったりぶち折ったりしないで下さいよ。・・・んじゃ、健闘を祈ります。いってらっしゃい。」
デーモンコマンド「ふん。行くぞ、ラミア。」
ラミア「やっぱあたしも行かなきゃいけないんだ?そーなんだ?」
次の瞬間、デーモンコマンドとラミアの二人は音も無くその場から消え去りました。

広場にはゴブリンセージ一人だけが残されます。
・・・と、ゴブリンセージの背後にある柱の影から、二匹のモンスターが姿を現しました。
ゴブリンセージの取り巻きであるゴブレンジャーの一味のナイト、ソルジャーです。
ナイト「話は終わったカ。」
セージ「うん。ところで早速あの二人を追って黒海までいってくれないか?」
ナイト・ソルジャー「ハァ!?」
セージ「保険だよ。まぁ、無いとは思うけど、万が一デーモンコマンド達がやばくなった時に連れ戻してきてくれ。」
ナイト「エ〜〜〜、またあのこんわぃ海にいくノ〜〜〜?ガクガクブルブル」
セージ「大丈夫さ。ホレ!」
セージは二人に「カムフラージュ」をかけました。
二人の姿が見えなくなります。
ナイト「オ、オオ・・・さすがセージ!」
セージ「二、三時間で切れるし、聴覚感知のお魚達にはあんまり効果は無いと思うけどね
    ・・・あくまで気休め程度ってわけだ。」
ソルジャー・ナイト「は?・・・・・・ちょ、待て待て!もっと安全になる術をかけてくれないとこま・・・」
セージ「いいから早く行けやコンチクショー!!」
ナイト・ソルジャー「ひ、ひぃ〜〜!わっかりましたぁ〜〜〜!!」
セージの怒声に、ナイトとソルジャーはぱたぱたと足音を立て部屋を出て行きました。
今度こそ広場にセージが一人だけ残されます。
セージは一人呟きました。

セージ「さてと、今回もいっぱい盛り上げてくれよ・・・」



マルディアス学園クジャラート舎北部に広がる、『黒海』と呼ばれる湖。
その底の底。高く立ち並んだ岩々の間に、明らかに自然の産物ではない鉄製の神殿のような建物が存在します。
海底に立つ神殿。さしずめ『海底神殿』とでも呼びましょう。
今回のお話は、その『海底神殿』でのお話・・・

「マリーンさん、こんばんは!」
「ウコム学園生徒会長3人娘の一人、マリーンさん!こんばんは!」
「マリーンちゃんこんばんは!!」
マリーン「お出迎えご苦労様。元気でやってる?」

海底神殿。禍々しい海のモンスター達が二つの列を成し、その間を一人の人間が胸を張って歩いています。
周りのモンスター達から『生徒会長』と崇められるその少女は、
前にニンフ像の件でミルザやミニオンちゃん達と関わった、マリーンちゃんでした。
マリーン「寮長の部屋へ案内してちょーだい。」
マンクローカー「はいはい、ささっ、こちらへどーぞ。」



前にも一度説明しましたが、あえてもう一度説明させてもらいましょう。
先程モンスター達の口から出た『ウコム学園』とはマルディアス学園の兄弟校で、
主に魚介類の生徒で成り立っている、海の中の学園なのです。
そして、その学園にいる3人の生徒会長の中の一人が、このマリーンちゃんというワケなのです。



マリーンちゃんがマンクローカーに連れられ案内されたその部屋の中には、
十メートル先の天井に頭が着いてしまいそうなほどに大きい、巨大なイカが待ち構えていました。
マンクローカー「では、僕はこれで。」
マンクローカーが部屋を出て行き、部屋の中にはそのイカとマリーンちゃんだけが残されます。
図太い触手を不規則にうねらせ、まるで髑髏のような顔をしたそのイカは、
傍から見れば邪悪なモンスターにしか見えないでしょう。
しかし、イカはその見た目とは全く裏腹な陽気な声で、マリーンちゃんに話しかけました。
寮長「いやぁ〜、待っていましたよマリーンさん!!へへ、また一段とお美しくなられてまぁ〜。」
マリーンちゃんは、それに驚く様子は微塵もみせずに言いました。
マリーン「久しぶりですわね、ディープテンタクラー寮長。また一段と大きくなっちゃって。」
ディープテンタクラー「へへへ、あっしは大きいのだけが取り柄ですからねぇ。」
マリーン「ところで『闇のブラックダイア』は・・・誰かに盗まれたりしてないでしょうね?」
ディープテンタクラー「へへへ、大丈夫でさあ。寮外入り口周辺には化石魚、デスクローカー部隊が。
           寮内はブレードイリス部隊が四六時中監視し、
           ブラックダイアには守護獣がついています。
           そもそもこんな深海にやってくる物好きな人間はいませんし、心配には及びません。」
マリーン「そうですか。なら安心です。」



ここで説明をはさみますと、
この海底神殿は元々は旧マルディアス学園時代に闇のブラックダイアの隠し場所として建造された神殿でしたが、
今はウコム学園からの留学生専用の海底寮として利用されているのです。
そして闇のブラックダイアはマルディアス学園からのウコム学園との親交の証として、
いまだここに残されているというワケです。



ディープテンタクラー「ところで今日はその事を聞きに来るためだけにここへ来たんですかい?」
マリーン「ええ。あとあなた達の様子を伺いにね。とにかく、みんな元気でやってるようでよかったですわ。
     ・・・・・・マルディアス学園での生活はどう?」
ディープテンタクラー「マルディアス学園の海は華やかさには欠けますが、その分とても住みやすくて快適ですねぇ。
           一部地域ではこんな我々と普通に接してくれる人間がいたりもしますし、
           いい生活送れてますよぉ。」
マリーン「そうですか。それはよかった・・・ウコム様もお喜びになられるでしょう。」
ディープテンタクラー「へへへ、そうですね。一層マルディアス学園とウコム学園の親睦も深まりますね・・・」
マリーン「ですね。では、私はこれで・・・」
マリーンちゃんが身を翻します。
ディープテンタクラー「あらら、もう帰っちゃうんですかい?せっかく特製のたこ焼きを用意しておいたのに。」
マリーン「あら、そう?なら頂いてから帰りますわ。」
マリーンちゃんはディープテンタクラー寮長の方に向き直りました。
ディープテンタクラー「じゃあ、少々お待ちを・・・」
ディープテンタクラー寮長は背後の机の方を向き、
触手をうねうね動かし机の上のたこ焼きのパックを必死で掴もうとします。
ディープテンタクラー「ちょっと待ってくださいな。何分この図体なもんで細かい作業は時間がかかるんでさあ・・・」
マリーン(細かい作業か・・・?アレ・・・)
ディープテンタクラーがたこ焼きを掴もうともがくその様を黙って見つめるマリーンちゃん。
テンタクラーの二本の触手が上手くたこ焼きのパックを挟み、持ち上げた・・・その時でした。

ガチャン


「寮長!マリーンさん!て、て、敵が・・・敵が攻め込んできました!!!」


一匹の山オヤジが、そう叫びながら部屋に入ってきました。
全身血まみれで、見るからに満身創痍の状態です。
それを見たディープテンタクラー寮長は、たこ焼きを床に落としてしまいました。
ディープテンタクラー「・・・!!!!!・・・・・・どうした!?何があったんでい、オヤジ!山オヤジ!」
血相を変えて山オヤジに向かい寄る寮長。
山オヤジ「入り口の化石魚たちも・・・デスクローカー達も・・・みんなあの悪魔にやられた・・・
     なぜだ・・・なぜ突然・・・グヘッ」
うわごとのようにそう呟くと、山オヤジはバタンと倒れてしまいました。
ディープテンタクラー「山オヤジ!!」
触手で揺さぶるディープテンタクラー寮長。山オヤジはぴくりとも動きません。
山オヤジの様を見て、マリーンちゃんの血相が変わります。
マリーン「・・・あ、あくま・・・?ちょっと寮長!警備は万全だって今言ってたじゃないの!これはどういうこと!?」
ディープテンタクラー「し、知りませんよ!とと、とにかくみんなに伝えねぇと・・・」



「骨の無い連中どもめ・・・」
海底神殿の入り口。黒い悪魔と三日月を背負った女が立っています。
黒い悪魔の体は血に濡れていました。
悪魔の周りには数匹のモンスターが倒れ、また数匹のモンスターが立っています。
マンクローカー「貴様・・・何者だ!」
モンスターの中の一人が悪魔に問います。
悪魔は気だるそうに肩を回しながら言いました。
デーモンコマンド「死に行く者どもに名を名乗る必要はあるまい。だが、せめてもの慈悲だ。
         あの世への土産として私の名をくれてやろう。
         私は魔の島、6将魔が一人、デーモンコマンドだ!」
ラミア「はぁい。そのお供のラミアちゃんでぇ〜っす♪」
モンスター達は別段特別な反応はせずに、再び問いました。
マンクローカー「貴様らの目的は何だ!血か?」
デーモンコマンド「その様な無粋な戦いの目的は好まぬ。私の戦いの目的は主君の命の下のみ!
         そして私が主君より受けた命は・・・運命の糸石、『闇のブラックダイア』を手に入れることだ。」
モンスター達「!!!!!」
目に見えてモンスター達の様子が変化しました。
みな、恐怖の上から明らかな焦りの色を露わにしています。
デーモンコマンド「そうか。やはりここに『闇のブラックダイア』があるのか・・・貴様らはもう用無しだな。死ね」
モンスター達「!!・・・クッ、殺されてたまるか!」
モンスター達が一斉に二人に襲い掛かります!

ラミア「ブラッククラウド!」
モンスター達「!!」
甲高い音が響き、闇の雲がモンスター達の視界を黒く染めました。
マンクローカー「ゲホゲホ・・・何も見えない!」
マグナムフィッシュ「くそぅ、邪魔だこの煙!散れ!」
ボボボボン、とマグナムフィッシュの口から高水圧砲が噴き出されました。
水の砲弾が霧を散らせていきます。
視界が広がり・・・その奥には術の構えを取るデーモンコマンドの姿が・・・

デーモンコマンド「飛べ!」
モンスター達「ヒィ!?」

紫色の魔力がこもったデーモンコマンドの指先が、天井を指し示しました。
瞬間、その場に立っている全てのモンスターが天井めがけて「落ちて」いきます!
モンスター達「ぎゃああああああ!!!」
ドゴォン!
その場に立っていたモンスター達は、みな無抵抗に天井に突き刺さりました。
天井に突き刺さったモンスター達はもうピクリとも動きません。
十匹前後のモンスター達がみな天井からぶら下がっている。それは何とも奇妙な光景でした。
ラミア「やりましたね、デモコマ様。・・・・ところで、あれ、死んでます?」
ラミアちゃんが天井にぶら下がっているモンスター達を指差します。
デーモンコマンド「この程度では死にまい。・・・殺す必要もあるまい。
          彼らにはしばらく眠っていてもらおう。さて、奥へ行くぞ。」
ラミア「ですね。」
その時でした。


『全寮生に次ぐ!寮内に敵が侵入した!!
既に化石魚達が・・・デスクローカー達が・・・山オヤジがやられた。
みな、戦闘体制を取れ!!みんなで敵を倒すんだ!!!』


建物内に何者かの声が響き渡りました。(ディープテンタクラー寮長の声だ)
デーモンコマンド「放送?寮内?・・・ここはモンスター達の寮なのか?」
ラミア「みたいですねぇ。となると結構な数いる事が予想できますねぇ・・・」
デーモンコマンド「フン。あのようなのが何匹来ても大した事はあるまい。
         ・・・だが、念には念をだ・・・あの杖を使ってみるか。ラミア。」
ラミア「霊木の杖ですか?はい、どーぞ。」
ラミアは懐から霊木の杖を取り出し、デーモンコマンドに渡しました。
デーモンコマンドは杖をくるくると回し、杖に己の魔力を集中させました!

ズゴゴゴゴゴ・・・・・・

杖が黒く光り、空間が鳴動します!

ラミア「ひええ・・・セージの奴、どんくらいのモンスターつめたんだぁ?」
その状態が数十秒続き、ある瞬間、突然杖から闇の塊が幾つも飛び出してきました!
デーモンコマンドの周りに闇の塊が分散していき、分裂し、飛び散り、その欠片が徐々にモンスターと化していきます。
ラミア「うぎゃあ!!だ、大迫力ーー!?」
次第に杖の闇の放出は収まっていき、ついには止まりました。
その時には・・・既にデーモンコマンドの周りには、百匹ほどの大量のモンスターが蔓延していました。
モンスター達「グオオオオ!!!」
杖から解き放たれた怪物達は、みな解放の喜びに雄叫びを上げます。
ラミア「あはは・・・随分と雰囲気が暑苦しくなっちゃいましたね。」
神殿内の広場いっぱいに、モンスターがつまっています。
デーモンコマンド「チッ・・・呼ぶ必要なかったかもな。いくら何でも多すぎだ・・・
         まぁ、いい。おい、モンスターども!言葉は分かるか?」
モンスター「グオオオオ!!」
モンスター「ワン!ワンワン!」
モンスター「うぎゃぴいい!!」
モンスター「金星蟹!金星蟹!」
モンスター「ゼリヒヒーン」
デーモンコマンド「・・・通じないのかよ!・・・まぁ、いい。少々めんどくさいが・・・」
デーモンコマンドは気だるそうに一度ため息をつくと、指を額に当て、俯きました。
・・・・・・ヒィン・・・・・・
と、途端にモンスター達が我に帰ったように静かになりました。
次に、モンスター達はそれぞれグループに固まり、枝分かれしている通路を別々に進んでゆきます。
ラミア「・・・・・?デモコマ様、なんかやったんですかぁ?」
デーモンコマンド「・・・魔族はあらゆる意味で優れているという事だ。
         貴様も修行すれば同じような事が出来るかもしれんぞ?」
ラミア「いや、意味が分からないから。」
デーモンコマンド「意味が分からない?それは貴様が馬鹿な証拠だ。
         あるいは人が言った意味を必死で理解しようとしない貴様の怠慢の表れだ!
           ・・・まぁ、指導は後々する事にして、私達も行くぞ。」
ラミア(指導・・・?フッ、デモコマ様もやっぱり男なのね♪)
ボカッ
ラミア「い、イッターーーイ!!突然何をするんですか、デモコマ様ぁ!?」
デーモンコマンド「これが答えだ!」
ラミア「・・・・・・?何でもかんでも遠まわしに言ってりゃ伝わる意味だって伝わらなくなるっつーの!」
デーモンコマンド「フン、それが私の癖だ!」
ラミア「直してください!」
デーモンコマンド「直せる癖など存在しない!私に媚を売るつもりなのならもう少し態度と頭を見直すのだな・・・」
ラミア「・・・(つれないなぁ、もう!)」



――海底神殿各階にて――


シーコッカー達「敵だ!敵だ!敵だ!逃げろ!逃げろ!」
コッカーレル達「逃げちゃダメだろが!立ち向かうんだ!化石魚さん達や山オヤジさんの仇をとるんだ!」

ガンフィッシュ「敵がこの寮内に侵入なんて・・・前代未聞だな!」
甲魚「前代未聞だ!それにしてもなんでいきなり・・・」
ガンフィッシュB「なぜかはわからんが、ウコム様の為にもみんなで闘うぞ!」

ブレードイリスA「聞いたか今の?」
ブレードイリスB「聞いた。」
コーラルクラブ達「聞いた。」
アーマージェリー達「聞いた。」
ブレードイリスA「フッ・・・つまりはウコム学園、
         マルディアス学園親交の砦であるこの寮の守護をウコム様、寮長より任された
         ウコム学園最強の精鋭部隊である俺達の活躍の場というわけだ・・・」
ブレードイリスB「ちょっとハク付け過ぎじゃない?僕達精鋭部隊って言っても所詮は蝶々と蟹とお魚の集まりよ?」
コーラルクラブ達「蟹です」
アーマージェリー達「お魚です」
ブレードイリスA「ふん。一角蝶とアニメーションパターンは同じかもしれないがな、俺は蝶じゃない!
          そもそも蝶だからなんだというのだ?強けりゃいいんだよ強けりゃ。」
ブレードイリスB「最初のほうで蝶なのを否定しといて最後のほうでは認めてちゃってるじゃん。ダメダメじゃん。」
コーラルクラブ達「ダメダメじゃん」
アーマージェリー達「ダメダメじゃん」
ブレードイリスA「黙れ!これこそが六法全書に記載されるいわゆる『言葉の綾』という奴なのだ!
         気にするだけ無駄なのだ!
         そんな事よりもいくぞ!この寮を守るのは俺様たちだ!ブレードイリス部隊出動ォーー!!」
ブレードイリスB「六法全書だって(笑)」
コーラルクラブ達「六法全書だって(笑)」
アーマージェリー達「六法全書だって(笑)」
ブレードイリスA「黙れ愚民ども!集団で半笑いをして個人を虐めるなどと醜いまねは
         我がブレードイリス部隊に所属している内は断固として許さぬ!
         さぁ、ゆくぞ!我々の活躍の舞台へ!」
ブレードイリスB「アンタそれが言いたかっただけとちゃうんかと(ry」

守護獣「・・・・・・」
リザードマン「ここからは動かないのですか?」
守護獣「・・・・・・」
リザードマン「そうですね。貴方様の役目は闇のブラックダイアをお守りする事ですものね。」
守護獣「・・・・・・」
リザードマン「・・・分かりました。では、また生きて会いましょう。」
守護獣「・・・・・・」

ディープテンタクラー「これでみんなには伝わったはず・・・!
           敵がいかに強大であろうとも、我が寮の生徒全員でかかれば問題はないはず・・・!」
マリーン「はず、はずで信用がイマイチできないですわね。
     ・・・私はここから出て、マルディアス学園から信用のできる人たちを連れてきましょう。」
ディープテンタクラー「信用のできる人達?マリーンさん、マルディアス学園にお友達がいるんですかい?」
マリーン「ええ。」
ディープテンタクラー「そうですかい・・・しかし、うまくここから出れるかどうか!それが問題でい!
           ・・・敵がどんな奴なのか、敵は今どこにいるのか、それも分からないってぇのに・・・」
マリーン「・・・入り口以外にここから出るとこは無いの?」
ディープテンタクラー「はい、無いんですよ・・・ありゃあ苦労はしないんですがね・・・」
マリーン「・・・そうですか。・・・だけど、ここから入り口はそう遠くないはず・・・
     寮長。入り口まで私を守りきれますか?」
ディープテンタクラー「・・・ウコム様の娘とあらば守りきれない訳がありません。さぁ、行きやしょう!」
マリーン「ええ!」

ガチャン
二人は寮長室を出ました。
寮長室手前の通路をまっすぐ。
道沿いに二つの広場を抜け、3つ目の広場のむかって左側の通路を抜ければ、そこは入り口。すなわち出口!
二人は急いで道を抜けていきます。
最初の通路を抜け、一つ目の広場が見えてきました・・・そこには、10匹前後のモンスター達が!
ディープテンタクラー「て、敵!!」
モンスター「グオオ・・・グオオオオ!!」
モンスター達が二人めがけて一斉に襲ってきました。
ディープテンタクラー「邪魔でい!!どきゃあがれ!!」
4本の触手を鞭のように振り回すディープテンタクラー寮長。
モンスター「グオオ、グオオオオーー!!」
モンスター「うぎゃぴぃ、うぎゃぴーーー!!」
ディープテンタクラー「こちとら怪力には自信あるんでい!!
           何の教育も受けていない野生のモンスターには負けんでーー!!」
力強い触手攻撃に、モンスター達はまるでボウリングのピンのようになぎ倒されてゆきます。
圧倒的な力を見せる寮長に、マリーンちゃんは頼もしさを覚えました。
・・・わずか一分程で、広場のモンスターは寮長の触手攻撃によって殲滅されました。
ディープテンタクラー「はぁ・・・はぁ・・・なんとゆうか・・・久々の運動は意外ときついですねえ・・・」
息切れする寮長。
マリーン「さすがですわ寮長。さぁ、いきましょう!」
ディープテンタクラー「い、行きやしょう!!」
二人は走ります。
二つ目の広場を抜け、最後の三つ目の広場に差し掛かった時・・・
二人の目に二匹のモンスターが映りました。
二匹のモンスター・・・
デーモンコマンドとラミアちゃんが、ディープテンタクラー寮長とマリーンの方を振り向きます。



ラミア「あららー、こちらから行かなくても何か出てきちゃいましたねぇー」
デーモンコマンド「大イカに・・・もう一人は人間か。」
ディープテンタクラー「しゃ、しゃべった・・・?貴様ら、ただのモンスターじゃねえな!」
デーモンコマンド「そうだ。我々は貴様らのように主君から一通りの教育は受けているからな・・・
         まぁ、そんな事はどうでもよい。『闇のブラックダイア』の場所をはいてもらおうか。」
ディープテンタクラー「や、闇のブラックダイア!?てめぇら、ブラックダイアが目的か!」
デーモンコマンド「そういう事だ。なんだ?やはりブラックダイアは貴様らにとって大切なものなのか?」
ディープテンタクラー「大切すぎるもんでい!マルディアス学園とウコム学園の関係を保つためにはな・・・
           お前らの好きにはさせねぇぞ!!」
ディープテンタクラー寮長は触手を使いデーモンコマンドに走り寄りました。
デーモンコマンド「ふむ・・・ウコム学園にマルディアス学園ねぇ・・・なるほど、大体読めてきたぞ。」
ディープテンタクラー寮長の触手が、デーモンコマンド目掛けて振り下ろされます!

ガキィン

ガキンディープテンタクラー寮長の図太い触手は、デーモンコマンドの小さい手によって動きを止められました。
ディープテンタクラー「ぐっ・・・」
再び触手を振り上げる寮長。
デーモンコマンド「だが、あいにく私達には関係の無い話だ。」
ガキィン!再び触手の一撃は防がれてしまいます。
ガキィン!ガキィン!ガキィン!
何度も、何度も、寮長はデーモンコマンド目掛けて触手を振り下ろします。
しかし、それら全てデーモンコマンドに軽く防がれてしまいます。
デーモンコマンド「非力だ。非力すぎるぞ。」
気だるそうに言うデーモンコマンド。
ディープテンタクラー「へッ!!て、てめぇだってそうやって防ぐのに必死で攻撃できねえじゃねえか!」
デーモンコマンド「そう思うかね?」
バチィン!
振り下ろされる寮長の触手が、デーモンコマンドの平手によって弾かれました。
ディープテンタクラー「!?」
間髪いれずに、デーモンコマンドは黒い爪をディープテンタクラー寮長目掛けて伸ばしました。
寮長の右目にデーモンコマンドの爪が深く突き刺さります。
ディープテンタクラー「ぐ、ぐぎゃあああ!!」
悲痛な声を上げながら、滅茶苦茶に触手を振り回すディープテンタクラー寮長。
デーモンコマンドは、突然その場から姿を消しました。
ディープテンタクラー「な、なに・・・?」
突然デーモンコマンドが目前から消えた事に困惑する寮長。
キョロキョロと辺りを見回します寮長。と、その瞬間です。
マリーン「寮長!う、後ろにいますわ!」
ディープテンタクラー「ぎ・・・ぎゃああ!!」
寮長の背部に、突然衝撃が走りました!
急いで後ろを振り向く寮長。しかしそこにはまたもやデーモンコマンドの姿はありませんでした。
ディープテンタクラー「!?・・・?・・!!??」
デーモンコマンド「そもそもその図体で私に勝とうとすることが無理なのだ。」

ディープテンタクラー「!!」
デーモンコマンドの声は、頭上から聞こえていました。
急いで視線を頭上に移す寮長。寮長の頭の頂点にデーモンコマンドが胡坐をかいて座っているのがかろうじて見えます。
デーモンコマンド「私は魔族。瞬間移動と飛行は私の十八番だ。
         貴様のその動く事にも一苦労しそうな図体では私を捉えられまい?
         そしてこうして視界の外に入る事も容易いしな。」
ディープテンタクラー「ギ・・・ギギ・・・!」
頭上スレスレを触手でなぎ払う寮長。しかしその瞬間にはデーモンコマンドは寮長の目前に移動していました。
デーモンコマンド「そしてもう一つ・・・貴様のような巨大なモンスターには致命的な弱点がある。・・・それっ!」
ピキィン!
デーモンコマンドの3つの目が突然光りだしました。
その瞬間、寮長は自分の体に違和感を感じました。
ディープテンタクラー「(から・・・体が・・・動かねぇ・・・!!)」
寮長の神経は麻痺していました。思い通りに体を動かす事が出来ません。
デーモンコマンド「そう。貴様のような巨大なモンスターは大概状態異常に弱い・・・体が動きまい?」
ディープテンタクラー「(て・・・てめぇ!な、何をした・・・!)」
寮長の心の声に、デーモンコマンドは答えました。
デーモンコマンド「凝視だ。丁度あの時私の目を見てしまったことが運のつきだったな。」
ディープテンタクラー「(凝視・・!?)」
デーモンコマンド「今のように動きを止めるための『凝視』もあれば、他の用途の『凝視』もある。
           味わわせてやろうか?」
ディープテンタクラー「(誰が・・・味わうか・・・!!つまりは目をつぶりゃあ・・いいんだろ!?)」
寮長は目を閉じようとしました。
・・・しかし、動きません。・・・瞼が、閉じるのを拒絶します。
ディープテンタクラー「(!?)」
デーモンコマンド「神経が麻痺しているのだ。目を閉じる事も不可能という事だ・・・味わえ。『死の凝視』!」
ピキィン!
ディープテンタクラー「(ぎゃ、ぎゃあああああ!!!!!)」
寮長の頭に激痛が走ります!
マリーン「い、一体何が・・・?」
傍から見るディープテンタクラーの様子は、先程と一切変わっていません。
デーモンコマンド「痛感神経に喝を入れてやった。・・・見た目変わらずとも、今奴は地獄の痛みに耐えている事だろう。」
マリーン「な、なんですって・・・!」
デーモンコマンド「その内奴の意識は落ちるだろう。・・・そうなれば次は貴様の番だぞ。」
マリーン「・・・・・・!」

激しい痛みに対する悲鳴で埋め尽くされた寮長の脳内に、かすかに別の言葉が響きます。
・・・・・・マリーンさんを・・・守らなきゃ・・・・・・
意識が遠くなって行く中、寮長の耳からかすかに別の言葉が聞こえてきます。
その内奴の意識は落ちるだろう。・・・そうなれば次は貴様の番だぞ。
・・・俺の意識が途切れれば・・・マリーンさんは・・・・・・ころさ・・・
意識が遠くなっていく中、寮長の口がかすかに動きました。

「マリーン・・・さ・・・ん・・・・・・にげ・・・て・・・・・・」

マリーン「!」
デーモンコマンド「!・・・麻痺の効力が切れかけているのか!?」
マリーン「・・・・・・!」
ダッ!
デーモンコマンドが寮長に気を取られている隙に、マリーンちゃんは入り口の方へ一直線に走り出しました!
デーモンコマンド「チッ・・・!」
全速力で入り口へ向かって走るマリーンちゃん!
「エナジーボルト!」
マリーン「きゃ!」
突然紫色の電撃がマリーンちゃんを襲いました。
衝撃に、尻餅をつくマリーンちゃん。
その背後に、ラミアちゃんが立ちはだかります。
ラミア「あなた人間でしょ?逃げさせないよーん!助け呼ばれちゃ困るもんね!」
マリーン「くそっ・・・!」
キッ、とラミアちゃんを睨むマリーンちゃん。
ラミアちゃん・・・勝ち誇った顔をしています。

と、その瞬間です!

ズガシャアン!
ラミア「ぎゃ、ぎゃあああ!!」

突然、一筋の雷鳴がラミアちゃんに直撃しました!
マリーン「!?」
煙を吹いてバタンと仰向けに倒れるラミアちゃん。
デーモンコマンド「ぐっ・・・何が起こったのだ・・・ぐあっ!」
突如、デーモンコマンドが吹き飛び、壁に激突し、倒れました。
・・・ディープテンタクラー寮長の触手の一撃によって!
マリーン「りょ、寮長・・・!」
寮長は麻痺から解けていました。寮長は叫びました。
ディープテンタクラー「さぁ・・・マリーンさん!逃げて!これが俺の最後の足止めです!!」
コクリと頷くマリーンちゃん。
再び立ち上がり、マリーンちゃんは全力で走り出しました!
マリーン(ありがとう・・・寮長!・・・・・・あの二人を連れて・・・必ずまた戻ってくるから!)



マリーンちゃんは海底神殿を抜け出しました。
寮長は安堵のため息をつき・・・そして倒れました。
麻痺の凝視の効果は切れても、死の凝視の効果は続いていたのです。
デーモンコマンドは立ち上がり、寮長の下へ歩み寄りました。
ラミアちゃんもフラフラした足取りで立ち上がります。
ラミア「・・・・・・そのイカ、死んだんですか?」
デーモンコマンド「・・・いや。『死の凝視』とは名ばかりで、その効用は気絶させるところまでだ。
         ・・・このイカは死んでいない。・・・・・・数日目が覚めないだろうがな。」
ラミア「へぇ・・・・・・ところで、あの女逃げちゃいましたけどいいんですか?」
デーモンコマンド「ああ。助けを呼ばれたところで特に問題はあるまい。」
ラミア「まぁ確かにそうですね。・・・デモコマ様に勝てそうなヤツなんてあんまいなさそうですもんね。」
デーモンコマンド「・・・・・・さぁ、先を急ぐぞ。
         あの大イカのような奴がまだいては先のモンスター達もやばいだろうからな・・・」



てさて、場面は大きく変わって陸上、騎士団寮。
騎士団寮の庭を、二人の男の子が歩いています。
ミルザ「らららら〜〜〜〜たたたた〜〜!!わーい、わーい!!いい天気だ〜〜〜〜!!!!」
オイゲン「・・・今日はいやに上機嫌だなお前は。」
騎士団寮の名士、ミルザくんとオイゲンくんです。
ミルザ「いやぁ〜〜、なんだか活動するのが久々なような気がして・・・」
オイゲン「はぁ?なーに言ってんだお前?俺たち毎日のように活動しているだろうが。」
ミルザ「チッチッチ・・・そういう意味じゃないんだなぁ〜、こ・れ・が!」
オイゲン「・・・・・・相変わらず意味わからんぜお前のマイペースぶ・り・は!」
ミルザ「エクスカリバー!」
オイゲン「と、突然なによ!?」
ミルザ「僕・・・山羊座だよ?」
オイゲン「だから何!?・・・はぁ〜〜、まぁテンション高いのはいいことだ。
     俺は・・・まぁ、その、ミルザのそんな所が結構気に入ってるわけだしナ・・・」
ミルザ「・・・え?何か言った?ごめん、聞いてなかった。もう一回言って?」
オイゲン「・・・いや、もういいです。」
ミルザくんのあまりのマイペースぶりにオイゲンくんはため息をつきました。
・・・日常毎度の事なのですが。
オイゲン「・・・で、俺が数秒目を離した隙に、君はなにやってるのかな〜?」
オイゲンが視線を戻すと、ミルザくんがいつのまにかアクアマリンに頬擦りをしています。
ミルザ「何って・・・見て分からないの〜?うふふ」
オイゲン「いや、まぁ、バリバリ分かりますけども・・・人前でんな事やって恥ずかしくないの・・・?」
周りの騎士団寮生から思い切り見られまくっているミルザくん。
ミルザ「ふっ・・・いずれサルーインちゅわんと付き合いだしたら
    そりゃあもう嫌と言うほど見せ付ける事になるんだろうし、こうして予行演習してるのさっ!」
オイゲン「と、とんだ予行演習だなオイ。」
ミルザ「あ〜ん、サルーインちゃんの指の温もりがおはだに染みる・う・う・う・う」
オイゲン「もうアレから何ヶ月たったと思ってんの?」
ミルザくんとオイゲンくん。
漫才のような問答を繰り返す二人の背後に、何者かが近づいてきていました。
ミルザ「で、最近のところてんブームに伴っての株価上昇の件についてだけど・・・」
オイゲン「あれ?どういう話の流れでその話題になったんだっけ?」

???「ミルザさん?」

ミルザ・オイゲン「わ、わぁぁぁっ!!!」
不自然なくらいに驚き振り返る二人。
と、その人物を目にしたとき、ミルザくんは反応しました。
???「お久しぶりです。お元気でしたか?」
ミルザ「あ、あ、あ、君はもしかしてそのー・・・あの時の・・・あわ、あわわわ、ごめんなさーい!!」
???「あの時の事はもういいんですよ。それよりも今日は貴方にお願いがあってきたんです。」
オイゲン「? ? ?」
ミルザ「あ、そう?そうなの?あはは、ごめんなさいね。・・・ところで、名前聞いてなかったけど・・・君、名前は?」

マリーン「そういえば自己紹介がまだでしたね。私、マリーンっていいます。」


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