幕間劇「みんなのゆめ」

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どうもこんにちは。
え、私ですか?
いえいえ、名乗るほどの者じゃございません。
人様の夢を拝見させていただいて、それが好みの夢だと元気になる。
そんなケチな存在です。
昔はこうじゃなかったんですが・・・。
ああ、いけませんな、元気がないと愚痴っぽくなっちゃって。
じゃあ、今日も出かけますか。
夢の世界へ。



〜ジャミルくんの場合〜

気がつくとオイラは宝物庫にいた。
どうやってここまで来たか覚えちゃいないがオイラの事だ、
華麗に罠や衛兵をかわして来たんだろう。そうに決まってる。

ジャミルくん「いいか?ダウド。持ってける物は頂いていくんだ」
ダウドくん「でも、袋がないからたいして持てないよ」
何言ってんだこいつは。盗みにはいるのに手ぶら出来る奴がどこにいる。
ダウドくん「ジャミルも持ってないじゃん」
・・・・・・・・・・・・。なぜだ。
ジャミルくん「こうなったら最後の手段だ」
ダウドくん「なになに?」
ジャミルくん「腹に詰めて帰ろう」
ダウドくん「懐ならもう一杯だよ」
ジャミルくん「違う。文字通り胃袋に詰めて帰るんだ」

一瞬、呆けた顔をした後、ダウドの奴は哀れみの目を向けてきた。
ジャミルくん「てめー!なんだその目は!」
ダウドくん「その、大丈夫?」
ジャミルくん「うるせー!黙って喰え!」
オイラはダウドを押し倒すと、周囲に落ちている宝物を片っ端から押し込んでいった。
ダウド「ジャミッ・・・やめ・・ゲホッ・・・死・・・・」
その時、500メートル先の硬貨の落下音も逃さないオイラの耳が危険を察知した。

カツッカツッ

靴音、少なくともオイラたちの味方じゃないだろうな。
ダウドくん「死ぬ・・・死んでしまう・・・」
ジャミルくん「いつまでやってんだ。ずらかるぞ!」
ダウドくん「いや、まじやばいって。てか何でジャミルはやらないのさ」
ジャミルくん「時間がねえからだ!」
いうが早いかオイラは風船のように膨らんだダウドをひっぱり、宝物庫を飛び出した。
いくつもの十字路を、勘を頼りに走り抜けていくが追跡者は一向に振り切れない。
むしろ靴音の数は先ほどより増えているようだ。
このままじゃやばい。
そう思った矢先、風を感じた。出口が近い。
ジャミルくん「こっちだ!ダウド!」
もはや自力では走れそうにないダウドを思いっきり引っ張り、十字路を右折する。

出口だった。そう、紛れもない出口だ。

問題は足場がないということだけだ。要するに行き止まり。
1メートル先には落ちてる間に遺書が書けそうな崖。

ウハンジ「よーし、賊は袋のネズミだ。縛り上げろ」

衛兵達がにじり寄ってくる。
ジャミルくん「こうなったらダウド、お前飛べ」
ダウドくん「・・・おいらに死ねと?」
ジャミルくん「そうじゃねぇ。飛翔、FLY IN THE SKY 高く羽ばたけ。」
ダウドくん「・・・しっかりしてくれよ!現実逃避してる場合じゃないよ!」
ジャミルくん「オイラは本気だ!右足が落ちる前に左足を上げれば理論上いけるはずだ!」
ダウドくん「無茶だよ!ねぇジャミル、ジャミル、ジャミル、ジャミル、ジャミル!」
ジャミルくん「うるせえな!じゃ別の方法だ。空気を吸い込んでダウドが膨らむ、
       オイラは足につかまる。二人で気球のように飛んで逃げる。どうだ!」

ダウドは呆けたような顔でオイラを見ている。
ったく!理解の遅い奴だ!
ジャミルくん「そんなに難しいことじゃねぇ。Bボタン押してB連打だ!
       ピンクの丸い物体にだってできるんだ。お前にだってできる!」
ダウドはますますわからない、という顔をしている。
ジャミルくん「いいからやってみろ!やつらが・・・」

そこで気づいた。静かすぎる。
オイラは周囲を確認した。昼下がりの日差しがかかるオイラとダウドの部屋だ。
当然衛兵なんかいない。

まずい。

ジャミルくん「えーと、あれだ。今の話はどんな窮地でも諦めるなって話だ!
       諦めちまったらそこで終わりだ。どんな手でもやってみるべきっていう!」
一気に捲くし立ててダウドの顔を盗み見る。・・・ニヤニヤしてやがる。
ダウドくん「さすがジャミル!ピンチの時は風船になって逃げる。すごい発想だ!
      さっそくファラにも教えてくるよ。ジャミルが言ってたって」
ジャミルくん「ごめん、やめて、可哀想な人だと思われる。寝惚けてました、すいません」
ダウドくん「A定の食券4回分でどうかな?」
ジャミルくん「せめて2回で」
ダウドくん「ファラ〜!ジャミルが」
ジャミルくん「だー!わかったよ!・・おまえもちゃっかりしてきたなぁ」
するとダウドはにやりと笑ってこう言いやがった。
ダウドくん「ジャミルが言ったんじゃん。『持っていける物は全部頂いていけ』って」

ぐうの音もでなかった。

混乱の感情が心地よい夢でした。
それでは次に行くとしますか。



〜イフリート先生の場合〜

どうすればフラーマ先生は振り向いてくれるのか。
私はもうずいぶん長い間この命題に取り組んでいる。
それこそ暇さえあればいつどこであろうとも。
何かがたりないのだ。一体何が・・・。

イフリート先生「やはり筋肉か?」

通算9574回目の結論に達したとき、
手鍋から勢いよく水蒸気が立ち上っているのが見えた。

イフリート先生「お、いかんいかん」
カップ麺の包装を剥がし、お湯を注ぎに行く。
このところこれが私の主食だ。
正直飽きているが貯金をせねばならんからな。
あいつが言うには女性にもてるには経済力も必要らしい。
そんなことを考えながら容器に湯を注ぐ。

しかし手鍋では上手く注げず、結構な量をこぼしてしまった。

そこで私は重大なことに気づいた。
お湯が越えるべきラインの六割を割っているのだ。
なんということ。このままでは塩辛く固い麺になってしまう。
塩分の多量摂取は高血圧の私にとって危険すぎる。
とりあえず容器に蓋をして、今一度手鍋で湯を沸かし始める。
タイムリミットは五分。
私の手で直接煮沸したい衝動に駆られるがぐっとこらえる。
以前それでやかんを溶解してしまった。

なべ底から少しずつ気泡が上がって来た頃にはすでに二分を経過していた。
火力の低さが恨めしい。

更に二分後、遅すぎる。水を入れすぎたか?
もう限界だ。諦めて容器に水を注ぐ。

一分後

固くて、ぬるいそれは涙の味がした。

焦りと落胆の感情は中々ですが・・少々生活臭が強すぎますね。
それでは次へ。



〜グレイの場合〜

「う〜〜財宝財宝」
今月下美人を求めて全力疾走している僕は世界を旅するごく一般的な冒険者
強いて違うところをあげるとすれば武器に興味があるってことかナー

名前はグレイ

そんなわけでリガウ島にある財宝の穴にやって来たのだ
ふと見ると地面に刺さった刀の前に強靭な鬼が座っていた
ウホッ!いい刀・・・
【ハッ】
そう思っていると突然その鬼は僕の見ている目の前で地面に刺さった刀を抜きはじめたのだ・・・!
【ズズー】
「振らないか」

目が覚めた。
全身に汗だくになっていた。顔に張り付く髪がうっとうしい。
俺は無言で古刀を掴んだ。
(起きてすぐに稽古か?さすがだな)
それには答えず鍛冶室に向かう。
部屋につくと、備え付けてある万力に刀を固定する。

グレイ「あのような面妖な夢を見せて、俺を虜にするつもりか?」
(何を言っている?私は何も・・・)
締め上げる。
(ぎゃああああああああああ!!)
グレイ「折れるのは平気ではなかったのか?」
(戦いの中で傷つくのは構わん!だが、ただ痛いのは嫌だ!)
グレイ「それは好都合だ。貴様が吐くまで締めるのをやめない」
(俺は無実だああああああああああああああああ!!)

極上の悪夢でした。ご馳走様。
もう少しいきますか。



〜ワイルちゃんの場合〜

ミルザさんが私の気持ちを受け入れてくれてからもう一年になります。
私はサルーインちゃん様から休暇を頂くたびにミルザさんと冒険に出かけています。
今日もそうでした。
たぶん油断していたんだと思います。
いつものようにミルザさんは頼りになって、そんなに危険な冒険でもなかったから。

悪路に足をとられて、仕掛け矢の罠にかかったこと。
大した傷じゃなかったから気にもとめていなかったこと。
それが毒矢だったこと。
少し気分が悪いのに心配せないようにと、平気なふりをしていたこと。
純粋なミルザさんは私の様子に気づかなかったこと。
毒に対する手段を持ち合わせていなかったこと。

運も悪かったのだと思います。
足取りが怪しくなってきた私の異変にミルザさんが気づいた頃には、
もう手遅れだったようです。
『人のことばかり考えて自分の事をおろそかにするな』ってストライフちゃんによく叱られてたのに。
また叱られちゃいそうです。

今、ミルザさんは私を抱きかかえて必死に走っています。
こんな時なのにミルザさんの体から伝わる体温に心地よさを感じる自分に苦笑してしまいます。
そんなに無理をしないでください。
もうそんなに苦しくないんです。さっきまではあんなに苦しかったのに。
ミルザくん「僕は馬鹿だ!好きな娘の異常一つ見抜けないなんて!」
そんなに自分を責めないでください。
悪いのは私です。私がドジだったから。

私は顔を上げてミルザさんの顔を見ました。
ワイルちゃん「ミルザ・・さん」
ミルザさん「ワイルちゃん!?喋っちゃダメだ!すぐに病院へ連れて行くから!」
すいません。これだけは聞かせてください。
ワイルちゃん「私・・幸せでした・・・でも・・ミルザさんは・・・?」
ミルザくん「もちろん幸せだよ!これまでも!これからも!だから!」
十分です。私にはその言葉だけで十分すぎます。

ワイルちゃん「サルー・・インちゃん様・を・・お願い・・」
ミルザくん「ダメだ!ワイルちゃんが自分で仕えるんだ!」
ミルザさんの厳しい言葉は初めて聞いた気がします。
でも、ごめんなさい。

最後に告げるべき言葉は『ありがとう』でしょうか。
それとも『ごめんなさい』?
迷いましたが、もう声が出ませんでした。
だから笑いました。ミルザさんが苦しまないでいてくれるように。

ちゃんと笑えてるかな・・・・・・

暗闇の中、目を覚ましました。
三時過ぎ、朝まで大分時間があります。
頬に濡れた跡がありました。
先ほど見た夢は今も鮮明に私の頭に焼き付いていました。
我知らず笑みが浮かんでしまいます。

はっ!いけません。サルーインちゃん様を差し置いてこんな夢を見るなんて!
ワイルちゃん「夢だから夢だから夢だから夢だから夢だから夢だから夢だから夢だから」
頬を叩きながら呪文のように唱えました。
しかし、手を止めると、にへらと相好が崩れるのを防ぐことが出来ません。

悩んだ末に思い至りました。
ミルザさんは片思い、相思相愛じゃありません。
なら夢くらいいいのでは・・・?

結局、自分を許すことにしました。
すみません、サルーインちゃん様。私は自分に甘い女です。
そう決めると私はベッドにもぐりこみました。
ワイルちゃん「さあ続き続き♪今度はハッピーエンドでお願いします♪」

普通自分が死ぬ夢は悪夢なんですが・・・。
当てが外れちゃいましたねぇ・・・。
朝までもう少し時間がありますねぇ。
次を最後にするとしますか。



〜ヘイトちゃんの場合〜

おっと。この人目覚めが近いようですね。
残念ですが仕方ありませんねぇ。
今日は十分楽しめましたし、ここまでにしましょう。
ではまた、夢の中で会いましょう。

そこの部屋は奇怪なシロモノが足の踏み場もないほど置かれ、
混沌とした雰囲気を醸し出していました。

その奇怪なシロモノの中の一つがカチリと歯車を合わせ鳴動を始めました。
目覚し時計T「アーヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッ(゚∀゚) ヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッ!」
続いて二つ目
目覚し時計Ms「アーヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッ(゚∀゚) ヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッ!」
三つ目
目覚し時計Br「アーヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッ(゚∀゚) ヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッ!」
四つ目
目覚し時計A「アーヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッ(゚∀゚) ヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッ!」
五つ目
目覚し時計B「アーヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッ(゚∀゚) ヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッ!」
最後に一際高いソプラノが加わりました。
ヘイトちゃん「アーヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッ(゚∀゚) ヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッ!」
まだ太陽も登ってない時間に無駄に豪華で迷惑な多重唱の完成です。

バンッ!!!!

ヘイトちゃんのドアを激しく開け放ったのは、
安眠を妨害されすこぶる不機嫌なストライフちゃんです。
ストライフちゃん「うるせええええええええええええええええええええええええ!!!!」
天井から吊り下げた寝袋に潜み笑い続けているヘイトちゃん。
ストライフちゃんはその蓑虫に呵責のない暴力をふるいます。

十分後

騒音のもとは一つ残らず破壊されました。
学園に平穏と静寂が戻りました。
ストライフちゃん「今度やったら喉を切り裂くからな」
静かに恫喝し彼女は部屋を出ました。

更に五分後

ボロボロの蓑虫がのそりと動きました。
ヘイトちゃん「タンクトップにショートパンツで大立ち回り・・・はしたないわねぇぇ:@^-!☆
       わがままなバディがたぁぁぁぁいいへんなことにぃぃぃぃ=!<¥:・m」
蓑虫は壁やら天井に仕掛けてある例の物が捉えた写真を取り出しました。
ヘイトちゃん「・・・こりゃかなわねぇ」
あまりの迫力と圧倒的質量に素で声が出ました。
ヘイトちゃん「いい資金源になりそうねぇぇぇぇ☆ω〆‘*@★!!」
ひとしきりニヤニヤした後、上機嫌で起き上がりました。顔を洗いに向かうようです。
妙なイントネーションの鼻歌を歌いつつ、部屋のドアを開けました。

夜叉がいた。


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