第12話「ダーク2・・・休戦協定」

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マルディアス学園を一望する高きのスカーブ山。
また、タイニィくんの寝床である頂上に人影が一つ。
タイニィくん『何の用だ、エロールちゃんの・・・いやお前は!』
タイラントくん「久しいな、相変わらずの大きく見事な翼だ、タイニィよ」
竜骨と共に燃え盛る炎のオーラをまとった・・・それは人間の姿をしていましたが、
まさしく四寮長が一人炎のフレイムタイラント君だったのです。
タイニィくん『これは珍客が来たものだ!しかもそのような窮屈な格好をしてまでとは嬉しいことだ。
     残念なことに何のもてなしも出来ないがな。さて遠来からの珍客よ、早速用件を聞こうではないか?』
タイラントくん「いやすでにもてなしは受けている。ここからの眺めの素晴らしいことよ!
     まあこんな窮屈な姿にも慣れればなかなか良いものだぞ。どうせお前もしなければならない」
タイニィくん『何?』
タイニィくんは一瞬巨大な翼の動きをぎこちなくさせました。
タイラントくん「緊急事態、生徒会長から召集命令ということだ」
そう言ってタイラントくんはぺラリとエロールちゃんからの召集状を見せました。
タイニィくん『・・・何を言う?つまりお前は、エロールちゃん側の勢力となると腹を決めたわけか?』
タイラントくん「二度言うが、緊急事態だ。お前も来れば分かることだが言っておこう、
     これはエロールちゃん側とサルーインちゃん側どちらにも等しく協力するという形になれる」
タイニィくん『一体どういうことなんだ』
タイラントくん「お前の羽を風に乗せて、水龍、そしてアディリスにも伝えるのだ。
      ・・・さあ、では説明するとしようか」



サルーインちゃん「再びこの男の支配の手が及んだと、そういうわけなのか・・・?」
新聞をじっと見つめて、サルーインちゃんは誰かに問いかけるというより独り言のように呟きました。
ストライフちゃん「アサシンギルドクラブは私の管轄だった・・・
      アサシンギルドクラブを乗っ取られるとは私の責任だ。処分は覚悟している」
サルーインちゃん「待たないかストライフ!私がお前のこの失態を拭って欲しいのは
      お前の考えているような方法でではないわ!私が求めるのは今まで以上に、
      この過失以上の成果を得んがために全ての力を私に捧げることだ!!」
ストライフちゃん「・・・・・・・・・・・私の全てはサルーインちゃんの為に」
サルーインちゃん「分かればよい!・・・まあさーアサシンギルドクラブが乗っ取られたところでさー
      どうってことないでしょ!あれなんかさーなんか暗いオタクども限定会員制の
      私のファンクラブみたいなもんだったしさーアハアハハハアハ」
シェラハちゃん「・・・人が死んでいるのよ姉さん・・・まあ私は慣れてるけど・・・」
ヘイトちゃん「あひゃばひゃはやそれも悲しい話ですわねぇえぇええええ☆★◎」
シェラハちゃん「はっ・・・知らないうちに悲しい話がまた一つ出来ていたのね・・・!
      人が死ぬのも慣れてしまった超絶黒髪の美女の話・・・!メモ!メモッとかなきゃ」
そんなこんな話を4人がしている内に、冥部の最深部からデスちゃんとワイルちゃんが上がってきました。
その顔つきには言い得ぬなにかがありました。
サルーインちゃん「あらデス姉!今日のディナーはどうす・・・ちょっと!コラ無視かよ!」
シェラハちゃん「空気読んで姉さん・・・空気と聞くと悲しい話を思い出すわ・・・
      超盛り上がった合コンで超空気だった男子大学生の話」
ストライフちゃん「あんたが空気を読めよ」
デスちゃん「サルーイン、シェラハ、迷い子となった穢れし魂が落ちていくように決着をつけねば
      いよいよ穢れていってしまうものがある。落とし前は常に己がつけねばならない」
ワイルちゃん「私も同罪の者。共に参ります」
サルーインちゃん「・・・!待ちなさいよ勝手にかっこつけちゃって私達は・・・」
デスちゃんとワイルちゃんはサルーインちゃんの言葉も聞こえぬように冥部の扉まで
毅然として歩いていきます。デスちゃんが扉に手を触れたその時でした。

コンコン・・・

ノックの音。この冥部を訪れるような者などそうそういません。ふいのことに
デスちゃんも驚いて竦んでしまいました。
そして扉が開いたのです。そこには・・・・・・・!



エロールちゃん「いることはもちろん分かっていましたが無作法を。一刻を争う事態なので。
      あなた方も私と同じような心境といった顔をしていらっしゃいますしね」
デスちゃん「生気あるものがここに何をしに来た!・・・はっつい癖で!・・・」
サルーインちゃん「・・・エロールちゃん!」
エロールちゃんとサルーインちゃんの瞳と瞳が合います。エロールちゃんはすっと目を逸らし、
機械的なまでに淡々と、そして威厳を持って話し出しました。
エロールちゃん「ご存知の通り真のアサシンギルドクラブが復活を遂げたと見てよろしいでしょう。
      ご存知の通り、私はこの学園の全てを愛するもの。無論捨て置くわけには行きません」
サルーインちゃん「それでどうした!こうなるまで阻止できなかった私達をなじりにきたか!」
エロールちゃん「私一人の力では無理です」
サルーインちゃん「え?」
エロールちゃんは目を細め、なんとも言えぬ表情でサルーインちゃんの方へと手をかざしました。
エロールちゃん「私とあなた方が手を組まねばならぬ時が来たということです」

サルーインちゃんは眉をひそめ見開いた目でエロールちゃんのかざされた手を見ていました。
しかしパン!と振り払いました。
サルーインちゃん「フン!お前みたいな天然腹黒と手を組むなんてはーい崖から落としてくださーいと
      言ってるようなものだわ!」
エロールちゃん「私はあなた方の力を借りたいのですよ」
デスちゃん「・・・して聞こうか。借りたいといったからには策があるようだが?」
サルーインちゃん「デス姉ー!!」
エロールちゃん「策とは大仰でも少しばかりの考えはあります」
ワイルちゃん「(自覚ありの謙遜ですね・・・はあ〜)聞きましょう」
エロールちゃん「お待ちを。力を借りれるかまだ確定していない時点でお話することは当然出来ません」
ヘイトちゃん「あひゃー抜け目のないことだなァひゃひゃwztww」
ストライフちゃん「それでこちらに信用してもらえると思っているのか?」
シェラハちゃん「信用と聞くと信用の置けない銀行を思い出すわじゃなくて
      なにかしら信頼できる証を見せてもらうのも当然のことよね・・・?」
エロールちゃんは温かみのない微笑をサルーインちゃん一同に返しました。
エロールちゃん「これが信頼の証になるかはわかりません。しかし少なくともあなた方のメリットに
      なることと私は存じておりますわ、四寮長!」
みんな「なに!?」

冥部の門が再び開かれると、そこには四人――少なくとも人間の形をしていました――の姿がありました。
竜骨をあしらい静かな炎に包まれているフレイムタイラントくん。
毒々しく七色に移り変わる翼を背に持ったタイニィフェザーくん。
水のように流れる髪とつむぎ合わせた鱗を纏った水龍くん。
生きているかのような六つの龍をあしらった服を着たアディリスちゃん。
中立を守り、その口を固く閉ざし姿を隠していた四寮長がそこに集結していたのです。
デスちゃん「なんと・・・!」
エロールちゃん「彼らは協力を惜しまぬと言ってくれています。戦力としてこれほどのものは
      ないと思いますが・・・・・・?」
水龍くん(おい、私達はエロールちゃんとサルーインちゃんが一時休戦するならば、との
     条件をつけているはずだぞ!話が違う!)
タイラントくん(黙っておけ、その方が波風を立てずすみやかにことが運ぶだろう)
タイニィくん(流石はエロールちゃん、とでも言っておこうか。嘘も方便とはよく言う)
アディリスちゃん(サルーインちゃんがつけてるあのネクタイ貸してくれないかなー)
サルーインちゃん「・・・・・・なるほどな!よくもぞろぞろとお供を引き連れてきた」
エロールちゃん「彼らの力とあなた方の力をあわせることで影のごときアサシンギルドクラブを
      出し抜くことも出来るでしょう。手を組めば情報源は十分、実戦力は十二分になるでしょう」
サルーインちゃん側一同は顔を見合わせました。サルーインちゃんは目を鋭くしました。
サルーインちゃん「・・・手を出せ!」
エロールちゃん「はい?」
サルーインちゃん「もう一度手を出せと言っている!」
言われてエロールちゃんは、再び手を掲げました。パン!サルーインちゃんはその手の平を叩きました。
サルーインちゃん「これでいいな!決定だ。いま少しばかり手を組むぞエロールちゃん!わかったか!」
デスちゃん「サルーインちゃん・・・」
エロールちゃん「・・・ありがとう」
サルーインちゃん「では早速聞こうではないか?策とまではいかないらしいお前のほんの考えというものを!」



彼ら総勢11名は作戦会議のように冥部の円卓に座り、話を始めました。
水龍くん「アサシンギルドクラブは活動開始して間もないがすでに綿密な計画は立てており、
     すでに動き始めている。次のターゲットはもはや決まっているのだ」
ストライフちゃん「ターゲット?奴らは誰彼構わず死を与えていく組織だと思っていたが」
タイラントくん「それは素地が出来てからのこと。まずは体制を完全なものにしようと彼らは考えている」
デスちゃん「それで次のターゲットとは誰なのだ。もう情報を手にしているのだろう」
水龍くん「無論。ウハンジだ」
ワイルちゃん「ウハンジ!」シェラハちゃん「クジャラート舎の寮長の?何故」
エロールちゃん「ウハンジ寮長は問題も多い人ですが統率者として確かな人物なのです。
      彼が取り仕切っているからこそ盗賊ギルドクラブは大きな顔は出来ずほそぼそと活動しています。
      彼がいる限りクジャラート舎はなかなか崩れないでしょう。
      このように彼がいるとアサシンギルドクラブの拠点のあるクジャラート舎から
      侵食していくのは面倒が多くなるというわけです」
タイニィくん「アサシンギルドクラブにとってウハンジ暗殺など造作もないことだ。だからこそ急を要する」
アディリスちゃん「じゃあ護衛をいっぱい送ろう!」
水龍くん「あほのこアディリス!護衛すら気付かずに息の根を止めていくのが奴らなのだ!」
ヘイトちゃん「ここで策が必要となってくるわけねえぇえA!!!」
サルーインちゃん「そうそれで・・・エロールちゃん?さあさっさと聞こうか。耳はいつでも貸せるのだぞ!」
サルーインちゃんの性急な言葉にもエロールちゃんは微笑んでいました。
エロールちゃん「・・・・・・ダーク・・・に乗っ取られる前の人格は『アルドラ』という娘だとか」
デスちゃん「・・・そうだ。私がお前の用意したミルザの対抗策として使った娘だ」
サルーインちゃん「はあ?なにそれ、なんのこと?」シェラハちゃん「いいのよ姉さんは知らなくて」
エロールちゃん「私はその『アルドラ』という娘に賭けるつもりなのです」
デスちゃん「・・・まさかだろう。すでに乗っ取られてしまっている人格に何が出来る?」
エロールちゃん「では彼女は死にましたか!魂が引き剥がされてあの肉体はもはやダークのものですか?」
デスちゃん「・・・しかし言おう、それは策でもなんでもない賭博だ!」
サルーインちゃん「ちょっとちょっと、話がよく分からなくなってきたんだけど、なんか二人だけで
      了解しあってない?今はウハンジ暗殺阻止の話だろう?だよね?」
エロールちゃん「・・・失敬。ではまずウハンジ暗殺阻止のための私の意見を述べましょう」
全員が息を呑んでエロールちゃんを見つめました。
瞳を閉じたエロールちゃんは、ゆっくりと目を開くと、言いました。
エロールちゃん「まずはミルザです」



ミルザくん「はあー南エスタミル寮ってあっつい!」
バイトでたまたま南エスタミル寮に来ていたミルザくんはパブにぷらっと立ち寄りました。
ミルザくん(うっ酒クサ・・・)
この街全体に対してミルザくんが思っていたことではありますが、なにかむわんとした空気が
漂って、騎士団寮の清涼な感じなど微塵もないのがミルザくんにはそれは苦でありました。
ミルザくん「ちょっと何か飲んだらすぐ出よう・・・」
ワイルちゃん「ミルザさん!ミルザさんっ!」
ミルザくん「ん・・・ん?ワイルちゃん?」
振り返ると、はあはあと息を切らしたワイルちゃんがいました。

ミルザくん「どうしたの?こんなところで会うなんて奇遇だねー、ぼく野菜配達のバイトで」
ワイルちゃん「私はミルザさんを探してたんですよーう!!やっと見つけた・・・はあはあ」
ミルザくん「僕を探してたって?あっ!!!あ、あの・・・さ、サルーインちゃ・・・元気・・・・?」
ワイルちゃん「〜〜〜〜〜〜〜〜ちょっとこっち来て下さい!!!」
ミルザくんはワイルちゃんに思いっきり引っ張られて、人気の少ない裏路地まで連れてこられてしまいました。
ミルザくん「な、なんなんだよーどうしたの本当に!なにか用があるの?」
ワイルちゃん「そうですよ!実は・・・」
ワイルちゃんはミルザくんの耳にそっとささやきました。
ミルザくん「はあ!!??クジャラート舎のウハンジがあんさムグっ」
ワイルちゃん「・・・衝撃の秘密を知った時に大声で内容全部いっちゃう癖を何とかしてください・・・
      (ワイルちゃんがミルザくんの口を抑えたのでした。)決行はおそらく今夜!」
ミルザくん「今夜だって・・・!ど、どうするんだ!?」
ワイルちゃん「どうするか、をミルザさんに頼みに来たんじゃないですか!
      ウハンジ寮長を守ってください。必ずです!その為に私たち・・・あ、いえ私秘密に
      入れるルートを見つけたんですから!水龍の住まう神殿へ通じている排水口です。
      水流の神殿に入りそこから水道を通って排水口から寮長の宮殿に出てください。
      そしてこれが宮殿内の見取り図です。ウハンジ寮長は護衛を殆どつけないことで有名ですから、
      (なにかやましいことがあるんでしょうけど)気をつければ何者にもあやしまれずに
      ウハンジのいる部屋までいけます。そっと入り込み、ベットの下でもなんでも影の射すところに身を隠し、
      暗殺者が来たら倒すのです!」
いきなりの長い説明にちょっと混乱しながらも、ミルザくんはワイルちゃんの話の概要を把握しました。
ミルザくん「・・・わかった!・・・これ嘘じゃなくて本当の話なんだよね?」
ワイルちゃん「嘘なもんですか!きっと影ながら悪を阻止したミルザさんのことを知ったら
      サルーインちゃんったら惚れ惚れしちゃうと思うな〜〜〜〜・・・」
ミルザくん「はうっっっ!!!・・・フォウ!!僕、絶対頑張るよ!!じゃあ早速水龍神殿だーー!!」
正義感で愛の騎士ミルザくんは水龍神殿へと疾走して行きました。

ワイルちゃん(・・・まだお昼くらいなんだけどなあ・・・まず、第一段階終了っと)



夜が更けていました。北エスタミル寮の宮殿の会議室では討論が長引いていました。
ウハンジ「だからタルミッタ寮との折り合いは!!」
ウハンジ寮長のこうした指導者としての声は威厳あるものでした。
ミルザくん(・・・やれやれ・・・会議が長引いてるらしい。これでウハンジの部屋に
      難なく忍び込めるかな・・・)
ワイルちゃんの言うとおりにやり、すでに宮殿内にミルザくんはウハンジ寮長室前の数少ない護衛を
手刀で気絶させた後、見えないような場所まで引きずっていき、その上でウハンジ寮長室へと入り込みました。
ミルザくん(ベットの下って言ってたかなワイルちゃん・・・そこでいっか)
ミルザくんはベットの下に滑り込むと、指でぷすりとシーツに穴を開け、外の様子が見えるようにしました。
ウハンジ「なんだ!!護衛が一人もいないじゃないか!くそっあいつらさぼりくさって!」
先程の会議が上手くいかなかったのでしょう、癇癪気味の声でバン!と乱暴に扉を開けた
ウハンジが入ってきました。「こんな日はあの子を呼ぶ気にもならない」などとぶつぶつ言っています。
ミルザくん(・・・結構夜も深くなってきたな・・・)
ウハンジは下にミルザくんの隠れているベットに入りました。・・・やがて、寝息も聞こえてきました。
ミルザくん(やばい・・・僕も眠くなってきちゃったかも・・・)
眠くなってきたミルザくんでしたが決して見逃しませんでした。霞のような何かがあまりにすばやく
ベットに近づいてきたのです。ミルザくんはベットの下からレフトハンドソードをのばして切りつけました。

???「っっっ!!」

ミルザくん「ちょうどすね辺りに入ったな!しかし声を上げないとは本当にプロなわけだ!」
もはや隠れる必要はありません。ミルザくんは躍り出て暗殺者に乗りかかり押さえつけました!
ウハンジ「ん・・・ん〜・・・?」
ミルザくん「まだ目が覚めていないな、衛兵!!衛兵いないのか!不審者を捕らえたぞ!
      ああ、さっきいっぱい気絶させちゃったから・・・・」
ミルザくんの声に、衛兵が二人駆けつけてきました。
ミルザくん「来たか!あの、この不審者がウハンジ寮長を・・・」
衛兵1「あなたですね、ウハンジ寮長を暗殺しようとしたのは」
・・・一瞬ミルザくんには言葉が理解できませんでした。
ミルザくん「は?あの、いや僕じゃなくて、僕が押さえつけてるこいつ・・・」
衛兵1「そいつは衛兵です!」
ミルザくん「ええっ!」
『そいつは衛兵です』と言われてミルザくんは飛びのいてしまいました。衛兵のもう一人のほうが
すばやくその『衛兵』を連れて行きました。
衛兵1(『それ』の後始末はたのむぞォ〜ストライフ!)
衛兵2(お前もちゃんと変装癖でうまくやれヘイト!)
ミルザくんはしどろもどろになりながら残った衛兵になにか言い訳をしようとしましたが、うまく言葉が出てきません。
ミルザくん「違うんです!僕はあの、暗殺者が来るとワイルちゃ・・・い、いや!」
衛兵1「暗殺者の情報はたしかに入っていたのだ!ここまでどうやって入った、他の衛兵を気絶させたろう、
    何よりその左手に持つ凶器!!大変だーーーーーーー!!!暗殺者だーーーーーーーーーーー!!!!」
ウハンジ「んんっ!?・・・・なにっ!?」
ミルザくん「!!!ちっちがう!!」
その大声に大量の衛兵達が駆けつけて来ました。ミルザくんは弁解しようと必死でしたが・・・!
衛兵「暗殺容疑で逮捕する!!!」
ミルザくん「!!!ち、ちがう、本当に違うんだーーーーーーーー!!!」
そうしてミルザくんは連行され、地下牢へと連れられていきました・・・。
衛兵1(イッヒヒィ・・・逃げようとすれば逃げられるのに、自分が無実だと主張しようとするのは
     わかっていたさあ真っ直ぐなミィルザ!さて・・・第二段階終了だなァヘイトちゃん☆ヒヒヒ!)



ミルザが暗殺容疑で捕らえられた!
このニュースは学園中に驚きと共に広まりました。

〜メルビル寮〜
ワイルちゃん「あのモンスター退治で有名なミルザが暗殺!暗殺未遂で逮捕ですよ〜!?
      信じられませんよね!しかもあの恐ろしい『地下牢』に入れられてるとか・・・!!」
〜クジャラート舎〜

ストライフちゃん「われらが寮長・ウハンジがミルザによって暗殺されそうになったのだ!!
      ミルザは今恐ろしい『地下牢』にいる!!当然の裁きだ!ミルザは裁かれろ!!」

〜騎士団寮〜
ヘイトちゃん「あのパーティでの英雄・ミルザがクジャラート舎で暗殺未遂事件を起したのですよ!
      騎士団寮の恥ですね!しかし恐ろしい『地下牢』とは同胞として哀れなものです」



ミニオンちゃん(さあ広まれ・・・!ミルザは『暗殺者』となってしまった!そして『地下牢』にいる!)

オイゲンくん(・・・ミルザ・・・一体どういうことなんだ・・・!?)

サルーインちゃん「・・・・・・・・・・・・・・・」
エロールちゃん「お顔がすぐれませんねサルーインちゃん」
ミルザくんの醜聞がどんどん広がっていく中、ミニオンちゃん達以外の同盟者達は冥部で待機していました。
サルーインちゃん「・・・フン!エロールちゃんのほんの考えで一気に転落したわけだミルザって奴は!
      人を助けてやったら、捕まり、牢に入り、名誉は地よりも下に落ちてゆく!
      惨めなものだなミルザよ!恨むならエロールちゃんを恨むがいい!」
エロールちゃん「ミルザくんが本当に欲しいものは名誉なんかではないのですよサルーインちゃん?」
サルーインちゃん「ええい何をごちゃごちゃ言っている!私は、お前のその聖人面しながら・・・
      結局なにもかもを利用しているところが大嫌いなのだ!!」
デスちゃん「やめないか、サルーインちゃん」
サルーインちゃんの激昂にもエロールちゃんは顔色一つ変えず、他の同盟者達の方が心配そうな顔をしていました。
タイニィくん(雲行きがあやしいではないか、ここで亀裂が入ったらもっとややこしいことになる)
タイラントくん(・・・こんなことで亀裂が入るようでは、サルーインちゃんもエロールちゃんも
      生徒会長としての器ではないということだ)
エロールちゃん「作戦は成功していますよ?ウハンジは殺されずに済んでいます」
水龍くん「はっきりいうが、こんな誤報がこれだけ広がっていればアサシンギルドクラブはこれから
     もっと動きやすくなるぞエロールちゃん?ウハンジだって次すぐにでも狙われるだろう」
エロールちゃん「それは問題では・・・いえ、作戦はまだ進行中です」
たしなめるデスちゃんをも振り払いなおサルーインちゃんの憤怒はエロールちゃんに向かいます。
サルーインちゃん「あくまで道具に過ぎないものを愛しているとのたまい欺く!!
      潔く道具だと認めていればこれだけ虫唾が走ることもないものを!ミルザとてお前にとっては
      一つの道具にしか過ぎないのだろう!こんな境遇に追いやってもお前は今も微笑んでいる!」
エロールちゃん「道具がただの道具のままでいるかは道具自身が決めることです」
サルーインちゃんは次に出る言葉を失ったというように口を閉ざしました。エロールちゃんは
瞳を閉じてすこし息をついた後、目を開き再び話し出しました。
エロールちゃん「私の賭けはこれからです・・・餌は上等不足なし・・・これでやってみましょう、
      必ず・・・・・・・・」
四寮長達は覚悟を決めた顔をしており、デスちゃんはサルーインちゃんだけでなく所々で
悲しい話をしようとしだすシェラハちゃんをたしなめるのに必死でした。サルーインちゃんは厳しい表情をしていました。
サルーインちゃん「・・・・・・それでも、私はお前のやり方が絶対に気に食わん!」
エロールちゃんはサルーインちゃんのほうへ目をやりました。
ほんの一瞬だけサルーインちゃんの瞳とエロールちゃんの瞳が合います。
この一瞬こそ、二人が永遠のライバルである証明でした。



暗く、黒いその一室・・・蝋燭の炎さえ恐怖しているかのように揺れています。
ダーク「・・・失敗して、こういう事態になったわけか」
アサシンA「はい・・・どういうことだか我等の邪魔をしウハンジを助けたミルザとか言う」
ダーク「うるさい!!!」
アサシンA「は・・・っ!?」
ダーク「・・・い・・・いや・・・続けろ」
アサシンB「・・・その騎士団寮の生徒が犯人として地下牢に入れられてしまったとか。
      滑稽な話です・・・」
ダーク「・・・・・・・成る程な・・・私が目覚めてまだ間もなく、アサシンクラブの
    基盤はいまだ確固たるものになってはいない。そいつは上手く利用できそうだな・・・
    ウハンジはいつでも消せる。しかし今は待て、再び混沌の学園を作るために用意がいる」
アサシンA「・・・まさかダーク様!」
ダークはマントを翻し、一瞬でその場から消えていました。



・・・ぽちゃん・・・ぽちゃん・・・
ミルザくん「・・・・・・・・・・・・・み・・・・・ず・・・・・・」
ここはミニオンちゃん達が懸命に皆に吹聴していた『地下牢』。裁判があるまで、という
名目上で入れられてしまったミルザくんがいました。手を後ろで縛られています。ぽちゃん・・・と
水の滴る音が聞こえるのに、ミルザくんは二日も水を飲んでいません。ぽちゃんという水の滴る音は、ミルザくんに
渇きをいっそう想起させるだけの苦痛の音でした。ミルザくんはうずくまった体をさらにちぢこめました。
ミルザくん(大体どうしてこんなことになったんだろう?・・・ワイルちゃんから聞いて僕は
      ウハンジ寮長を助けようと思ったんだった・・・ワイルちゃんが僕をはめたのか?
      いや実際に暗殺者は・・・あれが『衛兵』だと衛兵であるその人が言ったんだ・・・
      僕の大きな勘違いで衛兵の人を傷つけてしまったから暗殺者だと間違われてしまったのか?
      ・・・・・ちがう!あの足取り、霞が通り過ぎるようなあの足並みはただの衛兵であった訳がない!
      その証拠にウハンジ寮長はいまだ生きている、僕があいつを阻止したんだ・・・
      ・・・ここの人たちはそれを僕が暗殺をしくじったからだと思ってるけど・・・ああ)
考えることすら苦痛でした。ここには苦痛しかありませんでした。ミルザくんは、どんなに貧乏な時にも
輝きを失わなかった目すら、今は乾いてほんの少しの光もありませんでした。
今彼の暗闇に覆われてしまった心の中で輝きはただ一つのものでした。
ミルザくん「・・・・・・・・・・サルーインちゃん・・・・・・・・・」
その時でした。カツカツと足音が聞こえ、ミルザくんは大きく身震いをしました。牢番だ!
いまだにミルザくんは無実を主張し続けていました。牢番はそんなミルザくんをしたたか打擲し、
真実を吐かせようとするミルザくんにとって恐怖そのものでした。真実しか僕は言っていないのに!
牢番はミルザくんの牢の前で立ち止まり、深く帽子を被って目が隠れたその顔をまっすぐミルザくんに向けました。

牢番「こっちへ来い!鉄格子のほうまでだ!」

ミルザくんは言われたとおりにしました。二日なにも飲食していないミルザくんの鈍った頭では
気付きませんでしたが、そんなことを言われたのは初めてでした。いつもは鍵を開けて入ってくるのですから。
ミルザくんが鉄格子で隔てられただけで牢番と触れられるだけの距離に来た時、
牢番はぐいっとミルザくんの頭を引っ張りました。ミルザくんはああまた拷問かと思ったその時!
ミルザくん「うっ!?」
一瞬何が起こったか理解できませんでした。口に何かをあてられ、頬を伝っていくこの感触は・・・水だ!!
ミルザくんは何がなんだか理解する前にごくごくとその水を飲みました。
その間に目に涙が溜まっていくのがいくのが分かりました。

???「おいおい折角飲ませてやった矢先から水を外に出すことはないだろう?泣くなんてよしなよ!」

ミルザくん「あ・・・ああ・・・その声は・・・・・・オイゲン!」

ばっと帽子を脱ぎ捨てると、そこには確かに親友オイゲンの不敵な笑顔がありました。
ミルザくんは親友を前にして目に輝きを取り戻し、元来利発なその頭も徐々に働き始めました。
ミルザくん「オイゲン!確かにオイゲンだね!ああ・・・!・・・いや、感極まってる場合じゃないんだ、
      君どうやってここまで来たんだい!牢番に成りすますなんてばれたらことだぞ!
      しかももちろん僕を救い出しにきたんだろうが、今そんなことをしたら君まで重罪人だ!」
オイゲンくん「はっはせっかくの感動の再会に冷や水かけるな!それでこそミルザだ!
      まず俺はウハンジ寮長を守るためとの名目で騎士団寮から特使として派遣させてもらった。
      おれがハイリンヒ寮長に頼み込んだんだ。大丈夫、彼もお前の無実を信じてる。
      それでここクジャラート舎ときたら今までウハンジ周りの警備がずさんだったってのも手伝って
      厳重すぎるほどに衛兵をウハンジの方に回してる。馬鹿だねやつらは、ことが起こってからでは
      そんなこと無駄な費えだというのに!まあそれはいい、そのお陰で他はまるでおざなりだ。
      俺は特使ということで丁重な扱いを受けてね、残虐な暗殺者の脱出を防ぐため地下牢の警備に当たりたい
      と言ったら見事地下牢の警備に配置された。そして地下牢に入り込めたってわけだ。
      お前を探してたらこれ以上奥に入ることは禁じられていますってこの服を着てた奴が言ったから、
      蹴っ飛ばしてやってきた!ついでに服と、水も頂戴してきたがね・・・しかし肝心のこの牢の鍵が
      まだ見つかっていない、奴は身に着けていなかった」
ミルザくん「恐らく必要な時だけ持ち出す隠し場所があるんだろう」
オイゲンくん「今すぐ出してやれないのは実にくやしい・・・しかしあと数日俺は特使としてのまま
      このクジャラート舎に居座る。その間に必ず救い出す道を見つけ出す!」

ミルザくん「―――――――――オイゲン避けろ!!!!」

ミルザくんの一声にオイゲンくんは体を即座に逸らしましたが、それでも痛みも感じない間に肩がパックリと
深く切られていました。びちゃあと血が噴出します。
ダーク「その必要はない。そいつはここから出してやるさ、俺がな」
ミルザくん「・・・・アルドラ!?」
ダーク「うっ!?」
恐ろしいほどの敏捷さのダークの動きが一瞬鈍りました。そこをオイゲンくんが短剣でつこうとしましたが
それは一瞬のこと、すぐに避けられてしまいました。
ダーク「無駄なことをするな、親友は出してやると言っているんだぞ・・・」
オイゲンくん「おいおい俺はあんたを見たことあるぜ?アルドラ!!新聞にまで載って一躍有名人
      じゃないか、ええ!?真相は知れてるんだよ!ウハンジ暗殺未遂も、お前に何か関連が
      あるんだろうが!人殺しが!」
ミルザくん「・・・・人殺し!?」
新聞を見ていないミルザくんにはオイゲンくんが何を言っているのか分かりませんでした。
オイゲンくんは肩を抑えていましたが、どくどくと血が流れていきます。
ダーク「その名で呼ぶなあ!!すでにそいつはもういない、俺はダークだ・・・」
ミルザくん「ダーク!?なにを言っているんだよアルドラ!!」
ダーク「・・・・く・・・・・・・!」
何故か、ミルザくんに『アルドラ』と呼ばれるとなにか頭がくらりとして視界がねじれます。
ダークは頭を何度も振りました。
ダーク「黙れ!黙れぇ!『暗殺未遂の残虐な囚人』よ、まずお前をこの牢から出してやる、
    お前はこの牢から脱走するのだ・・・死体となってな!」
オイゲンくん「なに!?」
ダーク「恐ろしい囚人が脱走したことで学園中は恐怖におののき、これから全ての殺人は
    『恐ろしき脱獄者』の所行となる!お前の存在は殺人の象徴となるのだ!
    それを隠れ蓑に我らアサシンギルドクラブはこれから先邪魔になる要人達をまず片付けていく、
    全てはお前の仕業となってな!学園中がお前を再び捕らえようとするだろう、しかし無理なのだ、
    俺が今お前を消してしまうからな!そうしてまずは体制を整える、再びアサシンギルドの
    興隆のため、そして我が主君のため・・・!」
ミルザくん「何を言っているんだよアルドラ・・・アルドラ!アルドラだろう!?
      アルドラ、どうしてしまったんだよ・・・殺すとかそんな・・・そんなこという奴じゃなかったはずだ!!」
ダーク「うううっ!!!うう・・・だまれ・・・黙れ、黙れ、黙れ、黙れぇ!!俺は―――!!!」

???「そこまでですね、アサシンギルドクラブの支配者、ダーク」

ミルザくん「!?」
???『ミルザくん、オイゲンくん、そこから下がれ!!』
訳もわからずその威厳ある声に二人が従うと、炎が宙を舞って―――炎を纏った竜骨のモンスターが
ミルザくんのいる牢屋の鉄格子をかみつきで引きちぎりました!
ミルザくん「・・・・・・・・・・・・これは・・・・!」
タイニィくん「久しいな、勇者よ、さあここから出ろ!」
ミルザくん「あなたは・・・!?あっ!?・・・タイニィフェザーさん!?」
ワイルちゃん「ミルザさん!!ああ、こんなに痩せこけて・・・黙っててごめんなさい!」
ミルザくん「ワイルちゃん!?一体、それに・・・」
いつの間にか九つの人影がミルザくんトオイゲンくん、そしてダークを取り囲んでいました!
タイラントくん「ふ・・・一緒くたに噛み千切ってやろうとしたのに、なかなかやるではないか?ダークとやら」
竜骨だったモンスターが魔法のように人間の姿に戻っていきます。ミルザくんトオイゲンくんは
驚愕を隠せません。そして呆然としたミルザくんが見回していると・・・そこには!
ミルザくん「さっサルーインちゃん!?」
サルーインちゃん「フン!苦痛は味わいつくしたか?もうたらふくだろう・・・」
デスちゃん「見事にエロールちゃんの賭け・・・いや紛れもない罠に引っかかってくれたようだな、ダーク」
シェラハちゃん「罠と聞くと悲しいことを思い出すわ・・・
      罠でもなんでもないのに卑劣な罠とか言い訳する兄貴の話・・・はあ」
ストライフちゃん「事を急ぐきさまらアサシンクラブの奴の考えそうなことだな」
ヘイトちゃん「一人殺人者を仕立て上げてすべての殺人をそいつの仕業に見せかける・・・ひkっきょーァヒャヒャ!!」
水龍くん「こそこそやる癖はいつまでも変わらないようだな、アサシンギルドの頭領よ」
アディリスちゃん「お前からは別に欲しいものないなあー」
エロールちゃん「・・・これにて第三段階も終了です。もはやこれまで!」



ミルザくんは悟り、今まで生きてきた中で一番驚きました。おそらくサルーインちゃん派幹部、四寮長、
そして生徒会長というこの学園のトップ達がそこに集結していたのですから!
エロールちゃん「これまでですね・・・『ダーク』?学園の平和を乱すものは、私が許しません。
      あなたはこの素晴らしい学園に必要な人間ではない!」
ダーク「・・・・く・・・!(悪い、分が悪すぎるぞ・・・一人の生徒をここまで苦しめての罠だったとは!)」
ミルザくん「待ってくれ!!アルドラが何をしたって言うんだよ!!」
ダーク「!?」オイゲンくん「ミルザ!!ばかやめろ!」
ミルザくんはダークの前に立って両手を広げました。
悲しくも意志の固い表情をして、集結した学園のトップ達に語りかけます。
ミルザくん「アルドラは最初は普通の女の子だったんだ!!なのに突然こんな姿になって!騎士団寮を追われて!
      アルドラが何をしたって言うんです!普通の子でした、普通に学園で楽しく笑ってる女の子だったのに!」
デスちゃん(・・・・・・・・・く・・・)
ダーク「う・・・・・・う・・・・ううううう・・・・・!」
アルドラ・・・アルドラ・・・その名が何度も響きます。俺は誰だ?主君に人の命を捧げて仕える『ダーク』では
ないのか?アルドラとは誰だ!笑った記憶なんて俺には・・・ミルザ!ミルザ!―――『アルドラ!』
ダーク「うああああああああああああああ俺は、俺はああああああああァあああああああ!!!!!」
ワイルちゃん「ミルザさん!!!避け―――――――」
それは警告の声すら発せられる前に振りかざされたダークの短剣。ミルザくんは気づいてすらいませんでした。
振り下ろされて血が飛び散ったそのとき――

ワイルちゃん「・・・あ・・・・・」
シェラハ「・・・・・・・・・・姉さ・・・」
デスちゃん「サルーインちゃん!!!!」

そう、サルーインちゃんは誰よりもはやくダークがミルザくんを切りつけようとしていることに気がつき、
ミルザくんに体当たって避けさせたのです。しかしダークの刃は、サルーインちゃんの脇腹に深く刺さっていました。
ミルザくん「・・・・・・・・・・・あ・・・」
エロールちゃん「・・・・・・・・・・・・・・・」
サルーインちゃん「・・・ちっ・・・すこし目立とうと思ったら・・・リスクがでかすぎ・・・た・・・」
ミルザくんはやっと事を把握しました。自分がサルーインちゃんに助けられたことを!
ミルザくん「―――――――サルーインちゃん!!サルーインちゃん!!あああ!サルーインちゃん!!」
ミルザくんは気を失ったサルーインちゃんを抱きかかえ、狂ったように何度もサルーインちゃんの名を呼びました。
ダーク(・・・・・ううう・・・ううう・・・『サルーインちゃん』・・・『アルドラ』・・・なんだ?
    この感じは・・・ミルザ・・・・・ミルザ・・・・・・・・!)
『アルドラ』。『サルーインちゃん』。この二つの名を呼ぶミルザ。・・・あまりにも『差』を感じて、
ダークの心の中に何かあまりに冷たい炎が燃え盛っていくのがわかりました。
ダーク「うう・・・ううう・・・・・・!」
シェラハちゃん「ああ、姉さん!!しっかりして!!」
デスちゃん「うろたえるな!まだ致命傷ではない!しかし出血をはやく止めないと・・・!」
ワイルちゃん「サルーインちゃんさまああ!!」
ストライフちゃん「・・・おのれ!!」ヘイトちゃん「うばああああゆるさん!!!」
ミルザくんの膝で抱えられたサルーインちゃんにサルーインちゃん側のみんなが駆け寄ります。
ダーク「・・・・うう・・・・・・・・うううう・・・・・・!!!」
ミルザ「・・・・・・・のれ、おのれ、おのれエエエエエエエエエ!!!!!!!」
ミルザくんはさっき壊された鉄格子の棒を取り、刹那の速さでダークに刺しかかりました!!
ダーク(――――――――――――!!!)

ガンッ

・・・それはダークの頬をかすめました。ダークの敏捷さを持ってしなければ間違いなく額に直撃していたでしょう。
ミルザくん「・・・・・・・・・・・・・はっ・・・!」
ミルザくんは『アルドラ』のことを思い出したように狂気の形相から唖然とした顔に戻っていきました。
ダークは壁に打ち付けられ、頬を血が伝い・・・そして『涙』も伝っていたのです。
ダーク「・・・・・・間違いなく、殺す気だったろう?・・・」
ミルザくん「あ・・・あ・・・・・アルドラ・・・なのかい?」
その場の一同が全員ミルザくんと『アルドラ』に目を注ぎました。
ダーク「・・・『サルーインちゃん』のためなら、『アルドラ』の命を絶つことなど少しも厭わないのだな・・・?」
ミルザくん「・・・・・・あ・・・・・・・・・・・・・・あ」
ダーク「よくわかったよ・・・ああ、よくわかった・・・」
『アルドラ』ちゃんは涙を拭いました。そして顔を上げるとそこには『ダーク』でもなく、『アルドラ』でもない
恐ろしい形相があったのです!!
アルドラちゃん「その女のどこがいい!!美貌か!!その奇跡のような美しさか!!
     だったら醜くしてやる、俺よりも誰よりも醜くしてやる!!!
     生皮剥いでやろうか、それでもミルザ!!お前はその女を愛せるのか!!
     ・・・はは、ははははははは!!!生皮をはぐなんてそんな子供じみたことじゃあ
     つまらないよなあ?俺も・・・お前も・・・『サルーインちゃん』も・・・っふ、
     ははははははははははははははは!!!」
ミルザくん「・・・・・・・アルドラ!!!」
アルドラちゃん「もうアルドラだろうがダークだろうがどうでも構わない・・・だがミルザ、
     楽しみに待っていろよ・・・そのサルーインちゃんと一緒に真っ赤な祝いの日を!!」
ミルザくん「アルドラ!!!・・・なっ!」
ダークの胸の辺りが光り、なんとそこから洪水が巻き起こったのです!!

ミルザくん「―――――――――!!!」
オイゲンくん「い、一体!?」
水龍くん『皆、私につかまれ!!』
モンスターの姿に戻った水流くんは地下牢中を満たしていく水のなかで、全員を乗せて排水口の方へと向かい
その巨体で無理やり壊して地下水脈に出て、急いでマラル湖の水面へとみんなを連れて行きました。



ミルザくん「・・・ぷはっ!!・・・サルーインちゃんは!!」
デスちゃん「水龍、神殿へ連れて行って手当てを・・・出血が酷い!」
水龍くん『水の中のせいで出血を早めてしまったな・・・すまない』
シェラハちゃん「わたしも行きます!」ミニオンちゃん達「私達も!!」
水龍くんとシェラハちゃん達は神殿内へと向かって行きました。
オイゲンくん「・・・・!どういうことなんだよ、これは!あんな魔法があるか!?」
エロールちゃん「・・・・・あれは・・・・・『水のアクアマリン』の力・・・」
ミルザくん「――――――――!?なんだって!『糸石』の!?」
タイラントくん「水は苦手なんだが・・・しかし確かにあれほどの力、水龍ですら引き起こせないだろう
     ・・・そうでなければ説明がつかないといったところだな」
タイニィくん「何故アサシンギルドクラブがアクアマリンを!・・・いや、『ダーク』は気がついていない
     ようだったぞ、人格が変わってから力が発動した!」
アディリスちゃん「私にはわかるが、あれは『女』の人格だったぞ」
デスちゃん「・・・・・・事態はどうやら私達が考えているよりずっと複雑なものらしい・・・・」
???『タイラント様、フレイムタイラント様ーーーーーー!!』
タイラントくん「なんだ?・・・使い魔か?こんな遠方まで一体どうした」

使い魔『トマエ火山が乗っ取られたのです!!』

―――――・・一同に衝撃が走りました。
タイニィくん「なんだと!!」
アディリスちゃん「ど、どういうことだ!」
タイラントくん「・・・詳しく、的確に説明してみろ・・・」
使い魔『は、はい、いきなり水系のモンスターたちの大群が押し寄せてきたのです!
    私達はあらん限りの力で応戦しましたが・・・いえ、応戦しようとしたのです!
    しかしいつの間にか、あっという間に皆があちらのボスに服従してしまったのです!
    正気を保っているのは私を含め、極少数・・・!』
タイニィくん「・・・アサシンギルドお得意の洗脳だ!!」
アディリスちゃん「水系の・・・ボスとはあの女か!?この短時間に四寮長の中でも
      一番統率の取れているタイラントの配下を乗っ取るとは!?」
エロールちゃん「統率が取れている組織こそトップが倒れれば脆いものなのです。
      あなたをいつまでも留守にさせるべきではありませんでした、タイラント
      ・・・しかし『糸石』があるとはいえおそらく瞬間移動を使うとは」
タイラントくん「アクアマリンだからこそたまたま私のところが狙われたのだ。
      アクアマリンを持つ者に私達は無力。エロールちゃんの失策ではない」
エロールちゃん「・・・・・いいえ・・・・『アルドラ』がこう出るとは・・・・
      全て私の失敗です・・・(あーあそこでサルーインちゃんがしゃしゃり出なきゃあ)」
デスちゃん「・・・アクアマリンを何故持っているのか?アサシンギルドクラブとの関連性は
      一体なんなのか?・・・疑問を解決する前に、トマエ火山に向かわねばならぬようだな」
ミルザくん「・・・・・サルーインちゃんは・・・・・!」
ミルザくんが神殿を見ると、水龍くんたちが出てきました。サルーインちゃんも一緒です!
ミルザくん「さっサルーインちゃん!」
水龍くん「私と魔力の高いこの四人で癒しの水の重ね掛けをしたら十分に回復した。不幸中の幸い、
     刺された場所も悪い場所ではなかったのだ。今は貧血気味なぐらいだろう」
サルーインちゃん「おのれえええええあの野郎!!この私に!この私に傷をつけるとは〜〜〜!!!・・・うっ」
シェラハちゃん「ね、姉さんちょっとあんまり騒がないで休んでて・・・!」
サルーインちゃん「そうは行くか!!この恨みはとっととさっさとはらしてくれる!!
     ええい、あの野郎の場所はどこだあああ!!!・・・・ふう・・・・(くらっ)」
ワイルちゃん「サルーインちゃん〜〜お願いだから安静にしていてくださいよ〜〜〜」
ストライフちゃん「駄目だな、布団で静かにしてるっていうのが学園中で一番似合わないひとだからな」
ヘイトちゃん「その気持ちよっっつくワカルあひゃーーーー!!!」
タイニィくん「・・・戦力は減ったと思ったら元に戻って11人か」
エロールちゃん「いいえ、13人ですわ。勇敢なる生徒が二人」
そう言ってエロールちゃんはミルザくんと肩の傷を塞いでいるオイゲンくんを見ました。
エロールちゃん「さあタイニィフェザー、元に戻り翼を広げてください。・・・勇士達をトマエ火山へ!」

ミルザくん(・・・サルーインちゃん・・・もう誰にも君を傷つけさせない・・・僕が君を守る!!)

マルディアス学園の空には大きな翼が飛んでいきました。・・・・・トマエ火山へ!



ディアナ「・・・今日はなんだかご機嫌がよろしいのね、ナイトハルトさん」
クリスタルシティ寮・・・新婚のような生活を送るディアナとナイトハルトくんのカップルは、
今日も人もうらやむようなラブラブっぷりです。
ナイトハルトくん「ん?ふふ・・・そうか?」
ディアナ「そのワインをあけるくらいですものね・・・真っ赤・・・なんて綺麗なんでしょう。
     私にも飲ませてくれないような、大切にしていたワインですものね」
ナイトハルトくん「済まないディアナ、しかしこんなことで私の愛を疑ってもらっては困る」
ディアナ「・・・わかってますっ。さあ、私は少し洗濯物をしなくちゃ・・・」
そう言ってディアナはナイトハルトくんの部屋から出て行きました。
ナイトハルトくんは微笑んでいました。そしてなにやら独り言を呟きました。
・・・・・ビンだけに思うようにはさせていられないからな・・・・
ナイトハルトくんは真っ赤なワインをカラン・・・カラン・・・と揺らして呟きました。
ナイトハルトくん「サルーインちゃん・・・・・・・・・・・・・」
それと同時に手からグラスを落とし、ガシャン・・・と大理石の床にワインがこぼれました。
真っ赤なワインが真っ白の大理石に、つーとゆっくりつたってゆきました・・・。


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