2 ソウルドレインは、全ての人攫いの魂を奪い尽くしておりました。 そして視線を、2人の隠れている岩陰の方に向けます。 すると、岩陰からゆっくりと、大斧を携えたタイラントくんが現れました。 ソウルドレイン「さぁ・・・貴様も魂を・・・」 ソウルドレインの両手が弧を描き、タイラントくんに迫ります。 しかしタイラントくんは、大斧を打槍のように構え、ことごとく弾き返しました。 タイラント「残念だな。我が魂、貴様なぞには勿体無し。」 ソウルドレイン「やるな。ならばこれはどうだ!」 そう言うや、ソウルドレインはダークライトウェブを放ちました。 しかしタイラントくんは、それを潜り抜けるように、一気にソウルドレインに詰め寄ります。 ソウルドレイン「速いな。しかし、獲った!」 潜り抜けるのを見越して、ソウルドレインはもう一方の手でライフブレイクを放っていました。 しかし、タイラントくんの体に触れた感触はあったのに、魂を掴むことができません。 ソウルドレイン「な、何故だ!」 タイラント「残念だったな。我は祝福されている。」そう言ってニヤリと笑います。 そのままタイラントくんは、斧の刃の無い部分で、ソウルドレインを打ち据えようとしました。 ソウルドレイン「ブラックアイス!!」 と、突然ソウルドレインの前に黒い魔法壁があらわれ、斧の一撃を弾き返しました。 タイラントくんの右腕に衝撃が走り、そのまま吹き飛ばされます。 そして、祭壇の周りの柱の1つにそのまま体を打ち付けられました。 タイラント「くっ、魔法壁か!あの愚妹め。まったくもって厄介なモノを作ってくれたな。」 ソウルドレイン「ほう、石化しないとは。貴様石化耐性まで付いているとはな。 大斧の戦士よ。さぁどうするね。」 タイラント「くだらぬ。どのような策であろうと、叩き潰すのみ。」 ソウルドレイン「くはははっ。闇の術法にも斧で向かって来るとは。純粋な戦士型だな貴様。 ならばこの魔法壁に抗う術は無いだろう。さて、私も方針を変えるか。 魂を奪って殺すのではなく、じっくりと殺してから、ゆっくり魂をいただこう!」 斧を振るう音、爪を斧で受ける音、そして魔法壁の反射音が、幾度となく続きます。 それらの音が途切れたとき、タイラントくんはまたも儀式の柱に吹き飛ばされておりました。 一定確率で発動するブラックアイスが発動しなかった時しか攻撃が当たらないため、 ソウルドレインにはダメージが蓄積されません。 逆に、度重なるブラックアイスによる反射に加え、 術法や打撃によるダメージが、少しずつタイラントくんを削っていきます。 その腕から、頭から、血を流しながらタイラントくんは吹き飛ばされました。 しかし、それでもなお、タイラントくんは立ち上がります。その目からは輝きは全く失われておりませんでした。 儀式の祭壇を挟むようにして、二人が対峙しております。 先に動いたのはタイラントくんでした。旋回撃で懐に入り込み、そこからさらに打ち込みます。 しかし、またも魔法盾が発動しました。タイラントくんに衝撃が走ります。 しかし、足を踏みとどまり、なおもソウルドレインを睨みつけています。そこへ、 ソウルドレイン「いい加減、くたばるがいい!!」 左右の爪がタイラントくんを襲います。それをかわし、斧で受け止めます。 しかし、さらにダークライトウェブが浴びせられます。そして体勢を崩した所へ、デスクローが振るわれました。 タイラントくんはまたしても、別の柱に吹き飛ばされます。 ソウルドレインは、さらに悪霊体験で追い討ちをかけました。 ――――しかし。 ソウルドレイン「・・・何故だ。何故立ち上がれる。 ・・・何故、石化も!気絶も!恐怖もしない! ・・・なんなんだ。なんだ。なんだ!なんなんだよ貴様はああああ!!」 タイラントくんは、だらだらと血を流しながらも、ゆっくりと立ち上がってきました。 血で汚れた顔の中に、煌々と輝く瞳と、全く恐怖を感じていない笑みが見て取れます。 タイラント「精神的な状態異常にも、肉体的な状態異常にも屈しない。 臆せず、引かず、前に出て戦うのみ。そう、それが、それこそが。四寮長である証よ。」 ソウルドレイン「四・・・寮長・・・だと?」 そしてタイラントくんは、静かに言い放ちました。 タイラント「貴様の相手ももう飽いた。こちらの支度も済んだところだ。 おのれの今いる場所を、よく見てみるがいい。」 ソウルドレインが、その動きを止めました。今居る場所は、祭壇の中央。 そしてその側に、煙を放つ、一筋の線が――――。 ソウルドレインが、辺りを見回しました。地面に細い線が、幾重にも描かれており、その線から煙が出ています。 とにかくその場所から出ようとしたところへ、 タイラント「ヘルファイア」 ソウルドレインの頭上に赤い玉が3つ浮かんだかと思うと、ソウルドレインに向かって熱線を浴びせました。 ソウルドレイン「ぐあっ!!き、貴様、術法を使えたのか!」 タイラント「術が使えぬとは一言も言っておらぬわ。まぁ、もうバレてもかまわないがな。」 そう言うとタイラントくんはニヤリと笑って、『起き上がれ』と指図するように、指を一本、クイッと曲げました。 すると、地面に描かれた細い線から、炎の紐が、何本も空中に浮き上がっていきます。 それは幾重にも折り重なりながら、五芒星の形を描き、中央の祭壇ごと、ソウルドレインを包む檻のようになりました。 ・・・タイラントくんは、戦いながら炎のムチを何本も、地面の中に潜行させていたのです。 ソウルドレインが、炎の紐を断ち切ろうとしますが、逆にその手が焼かれ、悲鳴をあげました。 ソウルドレイン「貴ッ様ァァ!!この炎の力、なぜこれほどの術法が・・・」 ソウルドレインが、タイラントくんの方を見やり、そして、絶句しました。 タイラントくんが、赤い灼熱のオーラを徐々にその身にまとっていきます。 そのオーラの濃度が増すごとに、タイラントくんの放つ威圧感が、先ほどとは比べ物にならないほど増していきました。 ソウルドレイン「そ・・・その身に纏う炎は・・・それが貴様の本来の力だと・・・?」 タイラント「この仕込みが終わるまでは、炎の術が使えるということを匂わすわけにはいかなかったからな。 では改めて自己紹介をしようか。ソウルドレインよ。 我が名はフレイムタイラント。トマエ火山寮の奥深くに隠れ住む者だ。普段はな。」 ソウルドレイン「トマエ火山、四寮長・・・貴様、炎帝か!」 タイラント「そういうことだ。一人連携、フレイムウィップ!」 五芒の形の紐が、一気に中央に収束し、ソウルドレインに襲い掛かります。 そしてソウルドレインの右手に、左手に、胴に、頭に絡みつき、祭壇の中央に縛り付けました。 ソウルドレイン「くそおおおお!!離せ!離さぬかぁぁぁぁ!!」 両手をソウルドレインに向けて、術をコントロールしているタイラントくんは、大きな声で呼びました。 タイラント「デスちゃん!待たせたな!!――――出番だ!!」 デスちゃんが、岩陰からゆっくりと出てきました。その顔色は青白いままでしたが、顔には笑みがこぼれています。 デスちゃん「うまいことやってくれたな。さすがだ。おぬしを信じていたぞ。」 タイラント「お前を守り、スペクターくんを保護し、奴を倒すという約束だからな。 まったく。注文の多いお客様には苦労させられる。」 デスちゃん「ふふふ、言ってくれるな。・・・さて。ではソウルドレインよ。まずはその体を明け渡してもらうぞ。 貴様が不法に得た魂を取り返すのは、その後だ。」 ソウルドレイン「女・・・貴様、思い出したぞ!忘れるものか!! 私を封じ込めたのは貴様だな!!おのれ!おのれえええええ!!!」 デスちゃんは、口汚くののしるソウルドレインに全く耳を貸さず、 呪文のようなものを唱えながら、静かに祭壇の周りをまわりはじめました。 その静かな足の運びは、舞を舞っているようであり、タイラントくんは術をかけ続けながらも、見とれておりました。 そして3周、4周とまわり、最後の5周目が終わろうとしたときでした。 ソウルドレインが恨みの篭った声で、こう呼びかけたのです。 ソウルドレイン「・・・わかった。この体は、明け渡さざるをえないだろう。 だがな。ただでは渡さん。この儀式が完成したとき、私はこの体から離れる。 ・・・その時は女!貴様に真っ先に襲い掛かり、この爪で、その腹を裂いてやろう! 魂を奪うなどと生易しいものではない!この爪をめり込ませ、臓腑を引きちぎってくれる! ・・・タイラントよ。貴様は、私が体から離れるまで、術法を緩めるわけにはいくまい。 そこで提案だ。私を逃がさぬか?その代わりに、貴様ら2人の安全は約束しよう。」 タイラントくんの表情が険しくなります。そして、デスちゃんとタイラントくんがお互いを見つめました。 デスちゃん「タイラントよ。奴はこんなことを言っている。・・・私を守ってくれるか?」 タイラントくんは、デスちゃんを真っ直ぐ見据えて、うなずきました。 タイラント「お前を守る。そういう約束だ。」 デスちゃん「ならば。そんな戯言に耳を貸す必要は無いな。」 そう言うとデスちゃんは、その足を再び進めました。場に一層の緊張感がみなぎります。 そして、5周目が終わり、同時にスペクターくんの体が光に包まれました。 その光に焼かれるようにして、スペクターくんの口から、 同じような形をしたモノ、ソウルドレインの本体が吐き出されます。 ソウルドレインは、そのままデスちゃんをにらみ付けて、爪を振りかぶり、一気に襲い掛かりました。 同時にタイラントくんは術を解き、大斧を手にとりデスちゃんのもとへ疾走します。 ソウルドレインの爪が、上空から振り下ろされます。デスちゃんは目をそらさず、それをにらみつけます。 同時にタイラントくんの足運びはさらに速く、無足と言われる領域へ――――。 ソウルドレインの爪が振り下ろされようとしましたが、それがデスちゃんに届くことはありませんでした。 君主の大斧がソウルドレインの腹に、叩き込まれています。 デスちゃんとソウルドレインの間に割って入ったタイラントくんが、その爪を頭にうけながら、大斧を突き出していました。 頭から血を流しながら、タイラントくんの目が光ります。 タイラント「汚れた手で、デスちゃんに触らないでもらおう!!」 ソウルドレインが後ろに飛び、距離をおきました。タイラントくんが、大斧を大きく振り回します。 タイラント「して、次はどうすれば良い?」 デスちゃん「奴を弱らせて、魂を全て吐き出させたのち、煉獄に叩き送ってやる! だから・・・何も考えず、徹底的にぶちのめせ!やれ!タイラント!」 タイラント「了解した。では思いきり行かせてもらおう。」 ソウルドレインの両手が襲い掛かります。それをこともなげにタイラントくんは弾き返します。 さらに今回は、弾いた手に向けて追撃の一閃を放ち、ソウルドレインの爪を斬り飛ばしました。 ソウルドレイン「ぐっ・・・!」 そのままソウルドレインは、もう一方の手でデスクローを放ちます。 タイラント「貴様の戦い方はつまらん。魔法壁に依存しすぎているからな。だから――――」 デスクローがタイラントくんに触れる瞬間、セルフバーニングが発動しました。 タイラント「――――相手も魔法壁を持っているという可能性に気付かない。」 手を焼かれ、悶絶するソウルドレインに、タイラントくんが一歩ずつ近寄っていきます。 ソウルドレイン「ダークライトウェブ!」 タイラント「ヘルファイア」 ヘルファイアが2発。一発はダークライトウェブを相殺し、そしてもう一発がソウルドレインをさらに焼きます。 タイラント「魔法壁も万能ではない。その壁は、術には通じん。そして射突と、」 言うやいなや、タイラントは大斧を投げつけました。同時に、清流のような動きで一気に距離を詰めます。 ソウルドレイン「おのれええ!!喰らうかよ!!悪霊体験!!」 ソウルドレインが、片腕を壊されながらも大斧を打ち落とし、同時に汚れた霊気を叩きつけます。 タイラント「カッ!!」 しかしタイラントは、その霊気を気合いで打ち破り、 ソウルドレインの眼前に迫り、ソウルドレインの顔面を掴みました。 タイラント「接近しての関節技。これにも壁は発動しない。」 タイラントくんが、ソウルドレインの顔面と、首を手で締め上げています。 そのまま、タイラントくんのオーラが一層の激しさを増しました。 ソウルドレインの体から、焼け焦げた匂いと煙が立ち昇ります。 ソウルドレイン「くそおお!!やめろ!!やめてくれえええ!!」 タイラント「見苦しいな。貴様がそんなセリフを口にするか? 貴様に魂を奪われた人たちは、その言葉すら発することはできなかったのだぞ?」 そのままタイラントくんは、ソウルドレインの顔面を、引き剥がしにかかりました。 みち、みちみちみち、という音と共に、ソウルドレインの顔面がべりべりと剥がれていきます。 そしてタイラントくんは、瞬発力で一気に引きちぎりました。ソウルドレインの苦悶の叫びがこだまします。 ソウルドレイン「あぁ、仮面が壊れた!魂が、魂がどんどん抜けてしまう!いやだ、いやだああああ!!」 そのままソウルドレインは、空高く舞い上がりました。早く、一刻も早くこの場を離れなければ、そう感じたのです。 デスちゃん「無駄だ。」 そしてタイラントくんは、爆発音がするほど力強く地面を蹴り、跳躍しました。 すでに太陽が沈み、星がまたたく夜の空。そこに高く舞い上がったソウルドレインの背後。 ソウルドレインよりも高い位置に、彼はおりました。君主の大斧を槍のように構え、全身を赤く輝かせた炎の帝王が。 デスちゃん「――――寮長との戦闘からは、逃げることはできない。」 タイラント「斧技、破砕流!!」 ソウルドレイン「うおおおお!!ブラックアイス!!!」 タイラントくんの必殺の一撃と、ソウルドレインの最後の技がぶつかり合いました。 魔の氷壁によって、破砕流の勢いが跳ね返され、タイラントくんの腕や額から、激しく血が流れます。 それでも、タイラントくんの勢いは収まらず、空中で力と力がぶつかり合い、均衡を保っています。 ソウルドレイン「うおお!!おのれの力で落ちろ!落ちろ!!落ちて、くたばれ!!!」 タイラントくんは歯を食いしばりました。その腕に、さらなる力がこもりました。そして、 ぴしっ 今までタイラントくんを苦しめ、ソウルドレインの自信の源となっていた魔法壁にヒビが入りました。 ヒビは止まることなく魔法壁全体に広がっていきました。 それは、ソウルドレインの最期を。そして、この戦いの終わりを示唆しておりました。 タイラント「貴様の非道な行いも、そしてこの慌しい1日も――――これで幕だ。」 ガシャァァァン、とブラックアイスが粉々に砕け散り―――― その瞬間、大斧がソウルドレインの体に深深と突き立てられてました。 そのままソウルドレインの全身が燃え盛ります。目から、指先から、赤い炎が噴出しています。 そして大斧を構えたタイラントくんと共に、ひとすじの赤い流星となって、そのまま地面に突っ込んでいきました。 巨大な爆発が起こりました。倒れている人攫いが何人か衝撃で吹き飛ばされていきます。 デスちゃんは、髪とスカートを手で抑えながら、叫びました。 「タイラント!!!」 ホコリが少しずつ晴れていきます。デスちゃんはホコリの中心にいる人物を見つけ、目を潤ませながら、微笑みました。 全身傷だらけになりながらも、大斧を地面に突き刺して、タイラントくんが立っていたからです。 と、タイラントくんの足元が輝きだし、光り輝く、蛍のような玉がいくつも、浮かび上がってきました。 それは空高く浮かび上がったのち、ウソの村の方向や、祭壇の周りに、降り注ぎました。 タイラント「魂が・・・」 デスちゃん「還っていくのさ。本来のあるべき所へ、な。」 タイラント「あとはこいつの始末だけか。」 タイラントくんが大斧を地面から引き上げます。その先端には、全ての魂を吐き出し、 もはや生気のかけらもないソウルドレインが、突き刺さっておりました。 デスちゃんが、静かに開門を唱えます。 大きく開いた門に向かって、タイラントくんはソウルドレインを抱き上げて行きます。 タイラント「魂を奪わざるを得ない、か。悲しい業だな。そのように生まれてしまったことは同情しよう。 しかし貴様の行為は、この学園では到底許されるものでは無いのだ。 だから、せめて在るべき場所で・・・安らかな眠りを。」 そう言ってソウルドレインを、門の中に静かに収めました。そして門は、ぱたん、と閉じました。 デスちゃん「これで、全て終わりだ。ありがとう、タイラント。」 タイラント「・・・気にするな。まぁなんというか、成り行きとでもいうか・・・」 タイラントくんが照れながら言い訳をしていた時、張り詰めていたものが切れたのか、 デスちゃんからふっ、と力が抜け、そのまま気を失いました。 タイラント「デスちゃん!!」 デスちゃん「う、う〜〜〜ん?」 タイラント「気付いたか。」 デスちゃんの体が、ゆっくりと揺れているような、心地よい感触につつまれていました。 デスちゃん「タイラン・・・ト?」 タイラント「あまり喋るな。今は体を休めておけ。水を飲むか?我が持ってきたものだから、大分さめてしまっているが。」 デスちゃんの前に、タイラントくんの後頭部が見えました。 タイラントくんが、気を失ったデスちゃんをおんぶしてくれていたのです。 デスちゃんは、タイラントくんから渡された水を飲み干しました。大分生き返る心地です。 デスちゃん「・・・スペクターくんは?」 タイラント「大丈夫だ。すっかり元通りだ。で、事の顛末を話したらだな、 『じゃあほとんどコイツらのせいじゃないか!』と言って、 人攫い達にイービルウィスパーをかけている。これで人攫い愛好会も終わりだな。」 タイラントくんは、そう言って笑いました。つられてデスちゃんも微笑みます。 しかし、デスちゃんは気付いていました。タイラントくん自信の傷には、全く手当てがされていないことに。 デスちゃん「タイラント、ちょっと止めろ。」 言われたとおりに止まるやいなや、デスちゃんはタイラントくんの背中から飛び降り、 そしてデスちゃんの体にまいてある包帯を、はぎとりはじめました。 タイラント「デスちゃん!?ちょ、ま、お前何を!!」 デスちゃん「決まっておろう。お前の傷に巻いておく。応急処置というやつだ。」 慌てふためくタイラントくんに向かって、デスちゃんが冷静に応えます。 タイラント「我は大丈夫だから!き、気にするな!!包帯を元にもどせ!」 デスちゃん「断る!確かに今回は、ほとんどお前に頼り切る形になってしまった。だけど。」 そこで言葉を区切り、デスちゃんがタイラントくんを、きっ、とにらみました。 デスちゃん「私とおぬしは、どちらかがどちらかに寄りかからねばならぬ、そうした関係だったか? 四寮長の一人と、冥部の主は、どちらかが頼り切る、そんな関係なのか? 違うであろう。だから、おぬしが私を心配するように ――――私だって、おぬしを心配する権利があるのだ。」 タイラントくんは、言葉につまって何も言えなくなりました。 タイラント「・・・済まない。ならば、手当てをお願いしよう。」 デスちゃんはそれを聞き、満足げに微笑むと、タイラントくんの頭の傷に包帯を巻きつけ始めました。 デスちゃん「お前は優しすぎる。いつも部下や人の心配ばかりしている。 だがな、一方的に心配されるというのも、相手にとってはツラいものなんだ。 たまには、自分のエゴを優先してみてもバチはあたらないぞ。」 タイラント「了解したよ。心にとどめておこう。しかしやっぱり、お前にはかなわないな。」 そして、タイラントくんの腕と頭に包帯がまかれました。 デスちゃんのおなかのあたり、白い肌が見えていることに気付き、タイラントくんが慌てて目をそらして、言いました。 タイラント「だいぶ復活したようだな。ではそろそろ行こう。ウソの村まではまだ距離があるしな。」 デスちゃん「タイラント」 呼ばれて振り返ると、デスちゃんが両手を広げたまま、全く動こうとしていません。そしてデスちゃんが一言。 デスちゃん「かつげ。」 タイラント「・・・はい?」 デスちゃん「今更歩くのもかったるい。こんなに遠出したのも久しぶりだしな。 だから先ほどのように、私をおんぶして、村まで連れて行け。」 タイラント「え?いや、ちょ、おま、待て、待て!!復活したんじゃないのか!?」 デスちゃん「いやー誰かさんの持ってきた水が、ただの湯ざましとなってたからなぁ。 まーだイマイチ本調子ではないのだよ。それに・・・」 そこで言葉を切り、デスちゃんはニヤリと笑いながら、 デスちゃん「『まだ距離がある』と言ったのはおぬしだろう? そんな距離を体調不良の女に歩けとは、まさか言わぬよな?」 タイラント「・・・・・・・・はい。」 タイラントくんは、がっくりとうなだれて言いました。 満点の星空の下を2人が進んでいます。もっとも歩いているのは一人ですが。 デスちゃん「ほれほれ、もっとゆっくり歩かないか。星が落ち着いて見られないではないか。」 タイラント「・・・・・・・・」 と、遠くに見えるウソの村が急に明るくなり、楽しげなチャールストンの調べが聞こえてきました。 タイラント「カマの祭りか?再開したのか。」 デスちゃん「謎の病人が軒並み蘇ったんだ。そりゃあ祭りにもなるさ・・・お前のおかげだぞ、タイラント。」 ――――今日は何やらいろいろ疲れる日ではあったけど。 タイラント「まぁ、良い1日ではあったかな?」 ガレサステップの夜空の下、遠くに聞こえる楽しげな音を耳にしながら、タイラントくんはふっ、と微笑みましたとさ。 〜〜〜数日後。 サルーインちゃん「で、デス姉ぇは祭りに行ったのか?」 デスちゃん「あぁ行ってきた。なかなか素朴で良い祭りだったぞ。」 サルーインちゃん「ふーーん、そんなもんかねぇ〜〜。」 冥部の奥深く、いつものように優雅に過ごす3姉妹。 と、遠く離れたところを見ると、ヘイトちゃんとスペクターくんが、何やらこそこそ話しています。 まぁいつものことか、と気にも止めないデスちゃんに、ストライフちゃんがスッ、と近寄りました。 ストライフちゃん「デスちゃん、お耳に入れたいことが・・・」 ヘイトちゃん「あらぁ〜〜〜きれいぃぃlに撮れてるじゃなぁぁぁあああいいいgjskl」 スペクター「へへん、結構上手でしょ!でもホントによかったのかな?2人に写真のこと話さなくて」 ヘイトちゃん「いいのよぉおおお。 2人とも照れ屋さんだからあぁぁぁあ自然な表情を撮るためよぉぉぉおおjfぁj激写boy」 デスちゃん「はっはっは。良 く 撮 れ て る な 」 ヘイト&スペクター「きゃああああああ!!!!jfぁjぁjfぁfデスちゃんいつからそこに!!?」 デスちゃん「タイラントに着ぐるみを貸したりして、まさかそのまま済むまいとも思ってはいたが・・・ スペクターくんをそそのかして同行させたうえ、盗撮させてたとはな・・・」 ヘイトちゃん「・・・へっ、へっ、へっ、ヘイトちゅわわんフラァーーーッシュ!!!」 ヘイトちゃんが懐から閃光弾を炸裂させ、写真を持ってダッシュしました。 冥部の扉を蹴破り、トマエ火山をひた走るヘイトちゃん。 すると、眼前の壁がいきなりぶち壊れ、そこから伸びた腕が、ヘイトちゃんの顔面を掴みました。 ヘイトちゃん「きゅう」 タイラント「話はデスちゃんから聞かせてもらった」 壁からタイラントくんが、そしてデスちゃんが現れました。 2人の後ろで、スペクターくんが、普段よりいっそう小さくなっています。 タイラントくん「まさかとは思っていたが、スペクターくんにこんなことをさせていたとは・・・」 そう言うとタイラントくんは、ヘイトちゃんから写真を取り上げました。 着ぐるみを着るタイラントくん、デスちゃんをおんぶするタイラントくん。 そしてカマの祭りの輪の中に、デスちゃんに腕を引かれて、 慣れない踊りを必死に踊るタイラントくんの写真がありました。 タイラント「よくもまぁ・・・こんな写真はさっさと焼き」 デスちゃん「私が預かる。」 デスちゃんが横から手を伸ばし、タイラントくんから写真をかすめとりました。 タイラントくんの静かな抗議の視線を意に介さず、デスちゃんはヘイトちゃんの方にゆっくり向き直ります。 デスちゃん「さて、どうしてくれるか。まぁ多分おぬしと同意見だろうが。」タイラント「だな。」 ヘイトちゃん「えっ?なになにぃぃぃ??ふたりはいつも以心伝心ん〜〜flf☆★??」 タイラント&デスちゃん「逃がさん・・・・・・」「・・・・・お前だけは!!!」 ヘイトちゃん「きぃぃぃやぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁjfぁjljl新宿品川池袋!!!!」 そしてトマエ火山に、悲鳴と怒号、打撃に斬撃、爆発音に亡者の呼び声が響き渡りましたとさ。 サルーインちゃん「おおー、やるなぁデス姉ぇ。すげー壊しっぷり。」 シェラハちゃん「血は争えないのね・・・悲しいわ・・・」 ワイルちゃん「ヘイトちゃ〜〜〜ん・・・あの2人怒らすなんて、一体何やったんですかぁ〜〜?」 ストライフちゃん「(今夜は祝杯だな。)」 |
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