第4話「騎士の誇り」

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「よくやってくれたな!それ、褒美の50ジュエルじゃ。」
「おお!ありがとうございますガトさん!(うっひゃー!高級ロレンジが買えるぅーー!)」

ミルザくんは、今日も放課後の時間をバイトに費やします。
そうして手に入れたジュエルが、一日の生活費でもあるのです。
ミルザくんは、今日もバルハルモンスターで稼いだジュエルを手に、
嬉々として寮へと帰るのです。

ミルザくん(高級ロレンジ高級ロレンジ・・・)
ミルザくんは今日も夕食のことを考えながら、寮への帰路に着きます。
ここはバルハラント。マルディアス学園の最南端に位置して、
生徒達のスケート場や、手軽に出来るバイトがあったりと、
マルディアス学園の南部に主に住む生徒達の、憩いの場になっています。
ミルザくんもその中の一人でした。
ミルザくん「それにしても、まだお腹空いてないし、もう少し運動してから帰るかな・・・」
ミルザくんは、ジュエルを手に入れた記念に、少しスケートをすることにしました。 バルハラント凍結湖スケート場。
特に管理してる人もいる訳ではないので、放課後や休憩時間は連日人で賑わっています。
そして今日もまた人で賑わっています。
男の子や女の子・・・アベックの人もいれば、赤ずくめの怪しい人もみんなスケートを楽しんでいるのです。

ミルザくんは、愛用のスケート靴を履き、氷の床を滑り出しました。
シャーーー・・・
小気味よい音が耳をくすぐり、爽やかな風が全身を撫で回します。
ミルザくんは、滑りに身を任せ、目を瞑りました。
ミルザくん(むふ、むふふ・・・いずれはサルーインちゃんとこうして一緒にスケート出来る日が来るのかな・・・)
頭の中に都合のいい妄想を浮かべながら、一人怪しく笑いながら滑るミルザ君。
ミルザくんは、目を開けました。
そこには、とてつもなく大きい壁が・・・え?
ミルザくん「ぎゃ、ぎゃああああーーーーー!!!」

どっかーーーん!!

ミルザくん「は、はう〜っ・・・」
頭とお尻に鈍い痛みが走ります。
完全なる不注意。
ミルザくんは、変な妄想に浸りながら走っていた自分に罵声を浴びせながら、立ち上がり、目を開きました。
ミルザくん「あれ、ここは・・・」
ミルザくんがぶつかった壁は、立ち入り禁止になっていた凍った城の壁でした。
凍った城・・・ミルザくんがマルディアス学園に入ったその時から、立ち入り禁止でここに建っています。
「使わないならさっさと壊れちゃえばいいのに・・・」とミルザくんは呟きながら、ミルザくんは再び滑り出しました。



既に日は暮れ、夜。
ミルザくんはコブをさすりながら騎士団寮へと帰ってきました。
騎士団寮の門をくぐるなり、旧友のオイゲンがこちら駆け寄ってきます。
オイゲン「おー。おーいミルザ!帰り遅いなあ。探してたんだぜ!」
ミルザくん「ん?どうしたのオイゲン。そんなに急いじゃって。」
オイゲン「10分後に騎士団会議が始まるぞ。早く行くぞ!」
ミルザくん「騎士団会議?なんでよ。金でも獲られた?」
オイゲン「詳しい事は俺も知らん。とにかく、また金がらみの事なのは確かだな。さぁ、行こう。」
ミルザくん「うん。・・・・そういえば、アルドラは?呼んだの?」
ミルザくんは、昨日のアルドラの事を思い出しました。
オイゲン「さぁな。知らねーよあんな奴。どーせまたどっかで煙草でもふかしてんじゃねーの?」
ミルザくん「そんな言い方無いだろー。アルドラだって変な病気にかかって苦しんでるんだぞ・・・」
オイゲン「病気?あの不良娘が?はは、冗談くさい。」
ミルザくんはむっとしました。
ミルザくん「大変そうだったんだぞー!変になって首折れて声が渋くなって・・・」
オイゲン「はいはい。(ありえないだろんな事)とりあえず行くぞ。会議室。」
ミルザくん「あーもー・・・話をよく聞いて・・・」
オイゲン「はいはい。あんよはおはん あんよはおはん」



ハインリヒ寮長 「では、これより会議を始める。テオドール。議題の説明を。」
テオドールさん 「デルスデールの監視棟にモンスターが住み着いた。バルハルモンスターや果樹園のモンスターとは
比べ物にならないほどの強力な敵だ。我々騎士が出陣するべきかどうか、会議をする。」
ミルザくんは耳を疑いました。
ミルザくん 「ねぇ、オイゲン。そんなの会議するまでも無いんじゃないの?」
オイゲン 「ったく、お前は何も分かってないな。出陣するのに金がかかるからみんなしぶってんのさ。」
ミルザくん 「あっ、そっか・・・」
ハインリヒ 「まず、出陣に賛成のものは挙手してくれたまえ。出陣に賛成のものは?」
ハインリヒ寮長がそう言うと、まず真っ先にテオドールさんが手を上げました。
しかし、50人ほどいる他のものは、誰も挙手しようとしません。

ラファエル 「金、金、金!騎士として恥ずかしくないのか!!」

ん?
見習い騎士の中等部のラファエルくんです。
騎士A 「見習いがでかい口を叩くな!」
騎士B 「黙れこのへそ出し小僧が!」
騎士C 「コンスタンツと寝てろ!」
騎士D 「死ね!」
騎士一同から一斉に攻撃されるラファエル君。
ミルザくん 「あ、あちゃー・・・哀れだなー。あいつらもあそこまで言わなくてもいいだろうに。」
オイゲン 「コンスタンツを寝取られたから苛ついてんだろうな。きっと。」
オイゲンは哀れみのため息をつきました。
ラファエルくんはというと、泣きそうな目でハインリヒ寮長に助けを求めています。
ラファエル 「ハインリヒ様・・・助けてください!」
ハインリヒ寮長 「騎士以外の発言は認めない」
フラーマ 「騎士ではないですけれど、発言してよろしいでしょうか?」
ハインリヒ寮長 「騎士以外の発言は認めない」
フラーマ 「ありがとう、ハインリヒ。」
テオドールさん 「では、もう一度言う。出陣に賛成のものは!!」
再びテオドールさんが挙手します。
しかし、それ以外の騎士は誰も挙手しようとしません。

ミルザくん「ぼ、僕も・・・」
ミルザくんは耐えかねて挙手しました。
周りの騎士たちが、ざわめきながらミルザくんの方をを見ます。
騎士A「おい、マジかよ。」
騎士B[バカかミルザ・・・]
ミルザくんは何も言わずに、手を高く上げ続けます。
オイゲン「おい・・・お前一人手を上げたところでどうにもならないんだぜ・・・」
オイゲンが『仕方ねえな』とでも言うように言います。
しかしミルザくんは手を下げませんでした。
・・・沈黙が流れます。
しかし、沈黙はすぐに破られました。

ハインリヒ寮長「反対の意見多数。出陣の意見は否決された。これにて会議は閉会とする。」
ハインリヒ寮長が冷たく言い放つと、騎士たちは一斉に会議室を出ていく準備を始めました。
ミルザくんは、周りをきょろきょろ見回します。
騎士たちはみな口々に罵声を呟きながら帰ってゆきます。
ミルザくん「みんな・・・なんで・・・」
呟くミルザくん。
・・・
次の瞬間、わなわなと震えていたテオドールさんが、帰ろうとする騎士たちに向かって、叫びました。

「私だけでも行くぞ!!騎士の誇りにかけて!!」

しかし、誰一人として反応しようとはしませんでした。


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