2 ワイルちゃん「サルーインちゃ〜ん?サルーインちゃ〜〜ん!まったくもう、何処いったんですか〜?」 辺りを見回しても、大声を上げて呼んでみても、影も形も、返事も何もありません。 しばらく経ったその時、ワイルちゃんは道端に落ちている一つのネクタイを見つけました。 派手な赤色のネクタイ・・・こんなネクタイをしている人なんて一人しかいません。 ワイルちゃん「もしかして・・・サルーインちゃん・・・!」 ワイルちゃんに、一つの大きな不安が生まれます。 もしかして、サルーインちゃん例の奴らにさらわれ・・・ 「女の子み〜つけた。」 ガン! ワイルちゃんは、突然背後から誰かに殴られました! ワイルちゃんの頭に鈍痛が走り、膝をついてしまいます。 ワイルちゃん「いったぁっ・・・!だ、誰ですか!?」 膝をついたまま後ろを振り向くワイルちゃん。 そこには、坊主頭で長い耳の、見るからに悪党、という感じの男がいたのです。 ???「しぶといな・・・」 男は、手に持っている棍棒を再びワイルちゃんに向かって振り下ろします。 ワイルちゃん「ちっ・・・あんまり調子に乗らないで下さい・・・!」 ワイルちゃんは、振り下ろされる棍棒に向かって勢いよく手を突き出しました。 その瞬間、棍棒は何かにはじかれたかのように男の手から弾け飛んだ! 棍棒は、男の遥か後方に音を立てて落ちました。 ???「なっ、」 男の顔色が急激に変わります。 ワイルちゃんは一度にやりと笑うと、今度は男の顔面に向かって手を突き出しました。 男の表情が恐怖に引き攣った次の瞬間、男も棍棒と同じように遥か後ろに吹き飛ばされ、倒れました。 ワイルちゃん「・・・馬鹿な真似を・・・さぁ、アナタのアジトに案内しなさい。さもないと、命はありませんよ!」 声を多少荒げてそう言うワイルちゃん。 ???「ひー!命ばかりはー!案内します!案内しますからー!」 声がおかしくなっちゃうほどビビりまくる男。 ワイルちゃんは、男に案内してもらい、おそらくサルーインちゃんが捕まっているであろうアジトへと向かいました。 一方、ミルザくんとオイゲンくんは、女の子を担いでいる男子生徒を追って、 下水道奥深くの謎の部屋の柱の影から、男子生徒たちの様子を観察していました。 赤いローブを身にまとった見るからに怪しい男子生徒たちが、 金髪の女の子を祭壇にのせ、何やら呟きだしました。 「魅惑と誘惑の君、美貌と可憐の主、美女とセレブの王、サルーインちゃんよ! この若い娘の血を捧げます・・・これで、更に美貌を深めてください・・・ なにとぞ・・・なにとぞ・・・」 オイゲンくんはあきれてしまいました。 オイゲンくん(馬鹿かあの変態ども・・・なぁ、ミルザ、どうすr・・・ってあれ?) オイゲンくんの隣にいたはずのミルザくんが、いなくなっています。 オイゲン(ちょ、ミルザどこに・・・ってバカーーーー!!) ミルザくんは、思い切り男子生徒たちの目の前に躍り出ていました。 ミルザ「おい、馬鹿ども!何が若い娘の血じゃー! サルーインちゃんはそんなのに頼らなくても美しいんだこの馬鹿変態どもがぁぁぁ!!」 おそらく何がなんだかよく分からんが我慢できなくなったのでしょう。そう、ミルザ君の正義感は人一倍あるのです。 男子生徒たちが、一斉にミルザくんの方を向きます。 オイゲンくんも、あわててミルザくんの横に立ちます。 男子生徒たちは、声を荒げて言いました。 男子生徒「何だ貴様ら!邪魔をするな!」 負けじと見るザくんも声を荒げて言います。 ミルザくん「邪魔なのはお前らだ!お前らのせいでなぁ・・・サルーインちゃんの評判は下がっちゃって・・・カワイそうにサルーインちゃん・・・ いや、待てよ、そっちの方が僕にとってはいいのか?あれ?何かよく分からないな。ねぇオイゲン・・ ・」 オイゲンくん「しらねぇよ。」 男子生徒「ごちゃごちゃるせぇ!死ね!」 しびれを切らした男子生徒たちが、一斉に術を唱え始めます。 オイゲンくん「やばっ、こいつら術を使えるのか・・・おい、ミルザ・・・気をつけ・・・っておい!」 ミルザくんは、敵が術を唱えているのにも関わらず、雄雄しく(?)敵陣に突っ込みました。 ミルザくん「術なんか怖くない!何故ならサルーインちゃんのためだからさっ!」 男子生徒「ペイン!」男子生徒「ペイン!」男子生徒「ペイン!」男子生徒「ペイン!」男子生徒「ペイン!」 ミルザくん「ぐ、ぐっぎゃああーーー!!頭がー!頭が痛いーー!!ペーーイーーン!!」 男子生徒5人の手から発射された5つの黒い閃光が、ミルザくんに直撃します。哀れ! 男子生徒「ぶひゃ〜はははは!!何だコイツバカか!?どひゃはははは!!」 男子生徒5人が、腹を抱えて笑います。 オイゲンくん「バカかお前ら。油断禁物だぜ。」 オイゲンくんは、腰から細剣を取り出すと、おもむろに男子生徒の周りをぐるぐる回りだしました。 男子生徒「なんだ?なんの騒ぎだ?」 男子生徒「踊ってる・・・」 細剣ごとぐるぐる踊るオイゲンくん。 男子生徒たちは、困惑しながら踊るオイゲンくんを目で追っています。 十秒ほどした後、オイゲンくんの動きが止まりました。 男子生徒たちが、変な目でオイゲンくんを見つめます。 男子生徒「な、何をしたんだ?」 男子生徒「えーい、気にするな!術を唱えろー!」 一斉に術を唱え始める男子生徒たち。 オイゲンくんは、にやりと笑い、言いました。 オイゲンくん「やっぱバカだな、お前ら!」 その瞬間、男子生徒5人は悲鳴をあげ、倒れました。 オイゲンくん「殺してはない。安心しろよ。」 ミルザくん「わ〜っ、円舞剣かぁ。オイゲンやるぅ。」 オイゲンくん「あのな、お前はバカしすぎなんだよ!このバカが!バカが!」 ミルザくん「う、うるさい。それよりも、ほら、女の子、目が覚めたみたいだよ。」 サルーインちゃん「ん〜ん・・あれ、何だここは・・・」 ミルザくん「やぁ。大丈夫?」 サルーインちゃん「はっ!?・・・・ん?(どこかで見たことある気がするなあ。)」 ミルザくん「・・・?(なんか誰かに似た雰囲気だなぁ。)」 ・・・・・・ サルーインちゃん「お、おほん。道具ども、いや、貴方達、どうも助けてくれてありがとうございます♪」 ミルザくん「ど、どういたしまして。」 サルーインちゃん「で、では、こんな所に長い間いる訳にはいかないので、さようならです。」 ミルザくん「さ、さようならです。」 金髪の女の子は、すぐに帰っていってしまいました。 ミルザくんがその後姿を呆然と見詰めます。 ミルザくん(なんかあの歩き方・・・どっかで見た気が・・・) オイゲンくん「おい、何やってんだ。空き部屋の娘を探すぞ。」 ミルザくん「う、うん。」 ワイルちゃん「ここ・・・なんですか?」 ワイルちゃんは、坊主頭の男に案内され、謎のアジトにいました。 そこには、『死ね!サルーイン』と書かれた掛け軸や、 サルーインちゃんの写真が貼っており釘が打たれている藁人形や、 びりびりに引き裂かれたサルーインちゃんの写真が張ってあります。 そこには何人かの男がいるのですが、みんな口々に『死ねサルーイン』と呟いています。 ワイルちゃんは、ただならぬ雰囲気を感じ取りました。 男「ここはですね・・・サルーインにこっぴどく振られた人達の溜まり場なんです・・・」 男は、寂しげな口調で言います。 ワイルちゃん「それで何であたしを攫おうとしたんですか?」 男「悪気はなかったんです。ただ、みなさんにサルーインの酷さを伝えようとしたんです。 最近の怪事件は全てサルーインの仕業で・・・サルーインは美女の生き血を吸ってその美貌を保っているのだと・・・ 男と見れば全て道具として扱う魔性の女だと・・・ そうして奴の支持率を下げ、一矢を報いてやりたかったんです。」 ワイルちゃん「ちょっと待ってくださいよ。『サルーインは美女の生き血を吸ってその美貌を保っているのだと』って・・・ それってでっち上げですよね?そこまでしてサルーインちゃ・・・ いえ、サルーインに痛い目を見せたいんですか?」 男「・・・いえ、でっち上げじゃありません。」 ワイルちゃん「はぁ?確証は?あるんですか?」 男「ありません。・・・けど、あいつがやったに決まってるんです!そうでなければ・・・ あんな美貌・・・有り得ない・・・ 憎いんです。自分の美貌のためなら人の命までも厭わない奴が!最悪です!」 ワイルちゃんは呆れてしまいました。 間違いなく彼らはクズです。 一方的に決めつけ、それを人に押し付け、グチグチと女々しく・・・ 男「なぁ、あんた。信じてくれますよね?サルーインはクズです!あのクズを生徒会長候補から引きずり下ろすために・・・ 一緒に戦いましょう!」 ワイルちゃん「黙りなさい、下郎。」 男「!?」 ワイルちゃんの目つきが変わります。 男の目が、再び恐怖の色へと染まります。 ワイルちゃん「みなさん、よく聞いてください!!」 部屋の中の、今まで下を向いていた男達がワイルちゃんの方を向きます。 ワイルちゃん「私の名はワイル。サルーインちゃん一の僕です。」 部屋中がどよめきます。 男B「なんだと・・・」 男C「あいつが憎っくきサルーインの僕だと!?」 部屋中の男が、敵意を剥き出しにした目でワイルちゃんを見つめます。 ワイルちゃん「確認します。貴方達はくだらないでっち上げ情報をみなに伝え、 サルーインちゃんの支持率を不正に下げた・・・よろしいですね?」 男B「何を言っている!」 男C「でっち上げではない!」 男達は口々にそういいます。自信満々の口調で。 ワイルちゃん「貴方達はサルーインちゃんに振られた。その腹いせに、こんな事をしている。 ・・・よろしいですね?」 男C「腹いせではない!」 男B「俺達は奴の悪に気づいたからこういう活動をしているんだ!」 ワイルちゃん「・・・そういう言い訳をして美女を攫い、例の行方不明事件に便乗して、 更にでっち上げ情報に拍車をかけさせた・・・よろしいですね?」 男「!」 男B[な、なにを!] 男D「そ、そんなバカな!」 ワイルちゃん「なら・・・邪魔です。貴方達はここで黙ってもらいましょう。・・・よろしいですね?」 男D「ふざけるな!」 男G「奴を捕まえろ!口を利けないようにしてやる!」 数人の男達が武器を手にワイルちゃんへと突進してきます。 男「いけない・・・こいつは・・・こいつは・・・!」 ワイルちゃん「ふぅ♪いっちょあがりって事で。」 アジトの中は、まるで大災害に見舞われたかのように滅茶苦茶な状況になっています。 ワイルちゃんの後ろで、坊主頭の男が腰を抜かしてぶるぶる震えています。 ワイルちゃん「さて・・・貴方はどうします? このままあの男達みたいになるか・・・それとも私達の道具になるか・・・♪」 明るい口調でそう言うワイルちゃん。 男は、歯をがちがち震わせながら言いました。 男「はい、是非、使ってください。あなたの、道具に、させて下さい。」 それを聞いたワイルちゃんは、にこっと大きく笑いました。 ワイルちゃん「なかなか素直ですねっ♪で、名前は何ですか?」 コルネリオ「・・・コル、ネリオです。」 ワイルちゃん「へぇっ!なかなかいい名前じゃないですかっ。今後ともよろしくお願いします!」 コルネリオ「は、はい・・はははは・・・」 苦笑いするコルネリオ。 その時、ワイルちゃんは攫われたサルーインちゃんの事を思い出しました。 ワイルちゃん「そういえばコルネリオ・・・ここに金髪の美女が連れてこられませんでした?」 コルネリオ「はぁ、金髪の美女ですか?記憶にないですね・・・ とりあえず、攫った女性が奥の部屋にいますから、見てみるといいですよ。」 ワイルちゃん「そーですか。ご苦労さん。」 コルネリオは、首を傾げました。 奥の部屋へ向かうワイルちゃん。 ワイルちゃん「助けに来ましたよ〜。」 そ〜っと扉を開けて、中を覗き込むワイルちゃん。 そこには、全く見覚えのない女の子が一人いるだけでした。 女の子「きゃっ!だ、だれ・・・?」 ワイルちゃん「きゃっ!だ・・・だれ?」 二人の間に沈黙が流れます。 ワイルちゃんはしばらく何もいう事が出来ませんでした。 ミルザくん「お〜じさ〜ん!」 オイゲンくん「娘さん、助けましたよっ!」 ミルザくんとオイゲンくんは、嬉々とした足取りで空き部屋に入っていきました。 親父「おお、本当か!ありがとう、ありがとう、褒美は勿論たっぷり・・・え?」 親父は、ミルザくんとオイゲンくんの後ろに立っている女を見て、眉をしかめました。 女の子も、親父を見て眉をしかめます。 親父、女の子「誰・・・?この人・・・」 ミルザくん「はっ!?」 ミルザくんは全力で驚きました。 オイゲンくんも驚きの表情をしています。 オイゲンくん「ちょっ、待ってくださいよ。誰この人って・・・女の子はアンタの娘さんで・・・ 親父さんはキミの親だろう?」 親父、女の子「知らない、こんな人!」 二人とも口をそろえて言います。 ミルザくんとオイゲンくんは混乱して何もいえなくなってしまいました。 その瞬間です。 「ぱぱ〜〜〜!!」 突然一人の女の子がこの部屋に入ってきました。 親父「おお!娘よ!!」 娘?「パパ!!」 突然その子とパパがひしと抱き合いました。 親父「すまんな、心配かけて・・・怖かっただろう・・・」 娘「うん・・・もう夜遊びはしないからね・・・」 ミルザくんとオイゲンくんは更に混乱して、口をあんぐりあけてその光景を見ていました。 気がつくと、さっきまであの親父の娘だと思っていた女がこちらをいやな目で見ていました。 ミルザくん「は、ははは・・・」 女の子「もう、最悪!死ね!そもそもこの部屋じゃないし、怪しいと思ってたわ!不快な時間くれやがって、死ね!」 女の子は言いたいだけ言うと部屋を出てしまいました。 ミルザくんとオイゲンくんは、呆気に取られて呆然と扉のほうを見ながら突っ立っていました。 突っ立っている途中に、親父が半ば怒り気味に言いました。 親父「なんだ?なんでここにいるんだ!帰れ!」 オイゲンくん「はぁ・・・結局何も得しなかったな・・・」 メルビル寮2階から夜明け前の空を眺めながら、オイゲンくんが言いました。 ミルザくん「うん。わけわからないよね。僕らが見つけた女の子はあの人の娘じゃなくて・・・ 突然沸いて出た女の人はあの人の娘で・・・」 ミルザくんはため息をつきました。 オイゲンくん「せめて助けたあの女の子から直に報酬もらっときゃよかったな。」 ミルザくん「うん・・・」 「はぁ〜〜っ・・・」 サルーインちゃん「このぶぁっか者がぁぁぁぁああああ!!!!!!」 ワイルちゃん「ぎゃああああ!!!!!」 どごぉぉん!! サルーインちゃんのゴッドハンドパンチでワイルちゃんは数十メートル吹き飛びました。 サルーインちゃん「てめー、何で助けに来なかったのよ!あー、頭が痛いわくそっ!」 ワイルちゃん「ごごごごごごめんなさい、その、一応助けには向かったんですけどその、手違いがあって・・・ ででででもですね、収穫はありましたよ。反対派も潰しましたし、下僕も一人増え・・・」 サルーインちゃん「ごちゃごちゃ言うなぁぁぁぁ!!」 がちゃーん! サルーインちゃんが近くにあった植木鉢を蹴り割りました。 物を大事にしないところは流石セレブですね。 サルーインちゃん「もういいワイル!今回のことで貴様に対する私の評価は地に落ちたと見てちょうだい! 今後一ヶ月私との接触を禁じるわ!」 ワイルちゃん「えええ〜〜〜〜っ!?そんなーー!!」 サルーインちゃん「悔い改めよ!」 サルーインちゃんはそう言うと、モデル走り(?)でどこかへ行ってしまいました。 後には、絶望に打ちひしがれたワイルちゃんだけが残されました。 ワイルちゃん「・・・サルーインちゃぁん・・・何故わかってくださらないのこの気持ち・・・ひぃ〜ん・・・」 「はぁ〜〜っ・・・」 |
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