第9話「ささやく風が渚を揺らせて」

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ミルザくんがスカーブ山で詩人に会った、その30分前のことです。
詩人「サルーインちゃん・・・あなたは罪深き人です・・・
   あなたのその美貌、そして性格の醜さにより、何人の男が傷ついた事でしょう・・・
   中には『行方不明になった』や『自殺した』などの物騒な風聞も聞きます・・・
   私は生徒会長・・・そう、私が生徒会長である限り・・・
   この学園でのあなたの存在を無視するわけにはいかないのです・・・」
詩人もといエロールちゃんは、べイル高原の丘でサルーインちゃんの石像を担ぎながら呟いていました。
エロールちゃん「あなたも生徒・・・できるならば・・・この様な事はしたくない・・・
          ですが・・・男子生徒のために・・・これからの学園の未来のために(私のために)・・・
          サルーインちゃん!!この学園から去ってください!!!」

ガン!

エロールちゃんは、サルーインちゃんの石像をべイル高原から蹴落としました。
ばしゃーーーん!と音を立てて、サルーインちゃんの石像が海に落ち、流されてゆきます・・・
エロールちゃん「できることならば、いい細工師かなにかに拾われて、
         人の役に立てればいいですね・・・」
エロールちゃんはそう呟くと、踵を返しました。
エロールちゃん「・・・サルーインちゃん・・・次生まれ変わる事があるのならば・・・
         男をたぶらかさない・・・健全な女の子になってください・・・さよなら・・・うっ・・・」
エロールちゃん「とはいってもですね。罪の無い、サルーインちゃんの取り巻きやミルザくんなどを
          うまく騙しとかないといけませんね・・・
          どーせあの人たちは単純ですしこの私が何か吹聴すれば簡単に信じてくれる事で・・・ん?」

ゴールドマイン寮の庭を歩いていたエロールちゃんの目に、
旅の一団(生徒か?)と思われる集団に、石像か何かが包まれているであろう大きい包みを持った男子生徒が
話をしているのが写りました。


「名を名乗れ。まずはそこからだ。」
ルーイ「ああ、俺はルーイって言うんですが・・・」
グレイ「俺の名はグレイ。」
ガラハド「私の名はガラハド。人は聖生徒とも呼ぶが・・・」
ミリアム「あたいはミリアム!火の術が得意で・・・」
グレイ「ああ、かまわん。話を続けてくれ。」
ルーイ「ええ。実は護衛を引き受けてもらいたいんですが
    是非引き受けてもらえませんか?前報酬なら払いますよ。えっと、ほら。50ジュエル。」
グレイ「ではもらっておこう。(ぱしっ!)どこまで行くんだ?」
ガラハド「お!ジュエル!ねーねー聞いてグレちゃーん。実はね、この前アルツール寮の購買でね、
     すごいカッコいい武器見つけたの。買ってくれないかなぁ?つんつん。」
グレイ「可愛こぶってもぶらなくても買ってやるかハゲ!・・・で、どこにいくんだって?」
ルーイ「ええ、メルビル寮のウnコ・・・」
「あーーーーーー!!みつけとぅあぞぅぅぅギュルェイ!!俺から逃げられると思うなよーーぅ!」
グレイ「げげっ!厄介なヤツが・・・悪い、他のヤツに頼んでくれ!」
「ギュルェイ!!ギュルェイ!!クロォーデぃアすぁんの護衛を早く引き受けてくださいよぅ!」
グレイ「また今度ーーー・・・」
ルーイ「あー、ちょっとグレイさーん・・・・ってギャーー!!ジュエルー!!」


騒ぐだけ騒ぐと一団はどこかへ逃げていってしまいました。
エロールちゃんは、そのやり取りを見たとき、上手く『ぴこーん!』と閃きました。
心の中でほくそえみながら、エロールちゃんは特に大したアイディアでもないアイディアを秘めながら、
ミルザくんの元に向かいました・・・ってことで。



「兄ちゃん・・・」
ここは、ドライランド舎の、ノースポイント寮にある、小高い丘。
青年といった風の男と、子供が丘から海を見下ろしています。
兄ちゃん「仕方ないさ。これも神様の与えた試練なんだ・・・
      大丈夫。不幸に耐えていれば、神様はいつか必ず幸せをくれるよ。」
子供「なんで耐えなきゃいけないの?神様は悪い人なの?
    神様はいい人じゃないの?なんで僕達だけこんな不幸じゃなきゃいけないの?」
兄ちゃん「大丈夫だよ。みんなこのくらいの不幸は味わってるものなのさ。我慢すれば絶対幸せは・・・」
子供「何言ってるの兄ちゃん?ケンちゃんは貧乏じゃないよ?てっちゃんはお父さんが生きてるよ?
   ナミちゃんは兄弟みんなで仲良く暮らしてるよ?みんな僕らみたいに不幸じゃないよ?」
兄ちゃん「い、いいかい?人生っていうのは・・・」
子供「なんでみんな平等じゃないの?なんで不幸にならなきゃいけないの?
   幸せでいいじゃん!不幸なんてなくていいじゃん!
   不幸なんて与える神様なんて、大嫌いだ!!兄ちゃんも嫌いだ!!」
子供は大声でそう叫ぶと、泣き出してどこかへ走っていってしまいました。
その場には、兄ちゃんだけが残されます。
兄ちゃん「・・・いつから『平等』なんてそんな難しい言葉を・・・」
兄ちゃんは小さくため息をつくと、再び海を見下ろしました。
兄ちゃんは、目を疑いました。
美しい女性の形をした石像が、ノースポイントの海をどんぶらこ・・・どんぶらこ・・・と流れているのです。
兄ちゃんは、それをみて数日前のことを思い返しました。

”大兄ちゃん!ウコム様がお怒りになるよ!それを売るなんて・・・”
”ウコムが何だ!俺たちに不幸をくれやがったウコムに喧嘩を売って何が悪い!”
”そうだ。いわばこれはウコムへの俺たちの報復だ!”
”中兄ちゃん・・・”
”ねぇねぇ、ウコムさんが悪いの?あのウコムさんが・・・”
”そうだよ兄ちゃん達!父ちゃんの船が難破したのだって、事故で・・・”
”黙れ!その原因となった津波があいつのペット達の戯れにより起きたというではないか。”
”なんだって?”
”そうだ。ウコムは、あんな危ないモンスターを多くの人が行き来する海に野放しにしていたんだぞ?許せるものか!”
”で、でも・・・・・・・・・・か、・・・かあちゃんとよく相談して・・・”
”母ちゃんからも既に了解は貰っている。”
”留守番を頼むぞ。二人とも・・・俺達の帰りを願っていてくれ!!”
”兄ちゃん・・・兄ちゃん!!行かないでぇーーーー・・・・・・”

今そこの海に流れているそれは、兄ちゃん達が盗み出せなかった3つのニンフ像の内の最後の一つ・・・?
家で見た二つの像とは全く違うけど・・・たぶん・・・いや、絶対・・・
兄ちゃんはごくりと息を飲み込みました。

”そうだ。ウコムは、あんな危ないモンスターを多くの人が行き来する海に野放しにしていたんだぞ?許せるものか!”
”不幸なんて与える神様なんて、大嫌いだ!!兄ちゃんも嫌いだ!!”

・・・・・
兄ちゃんは一人でこくんと頷き、その石像を取りに丘を下りました。

「待っていろよ・・・必ず失った幸せを取り戻してやる。その為なら、ウコムも、神も怖くない!!」



ワイルちゃん「そもそもミルザくんって今どこにいるんですかね?」

当ても無しに走るミニオンちゃん達に、ワイルちゃんが水をさすように言いました。
ヘイトちゃん「それが分からないから今探してるんでしょ!?危機感を持ちなさい!」
ストライフちゃん「ミルザとかいうヤツは、何寮出身なんだ?」
シェラハちゃん「騎士団寮・・・」
ワイルちゃん「はれ、何で知ってるんですか?」
ヘイトちゃん「そんな事はどうでもいいでしょ!さぁ、騎士団寮に行こう!」
ストライフちゃん「よしっ!って、ん・・・?」
ストライフちゃんは走りながらヘイトちゃんの顔を凝視しました。
ヘイトちゃん「な、なに?気持ち悪いなストライフちゃんったら。なんか顔についてる?ついてたら取ってくれる?」
ストライフちゃんだけでなく、ワイルちゃんとシェラハちゃんまでもがヘイトちゃんの方を振り向きます。
面々みな不思議そうな顔をして。
ヘイトちゃん「き、気味わるいよみんな。よそ見してると車にぶつかって・・・」
ストライフちゃん「おまえアヒャ語はどうした?」

ヘイトちゃん「!!!!?????!?!?!?!!!!!????!????!?!?!???
       あ、あひゃっ★◎&#♪あひゃうひゃはぁぁぁーーー!!♪★foはぁと
       さぁさぁさじょspds早くサルサル姉さんの石をさがさなきゃうひゃはぁぁあぁぁ%$#&♪!!鬱!!」

ストライフちゃん「おまえ相変わらずワケ分からん・・・」
ワイルちゃん「あは、そういえばヘイトちゃんったら変装の時も口調変わりますよね。
        シリアスモードってヤツですか?あはは!」
ヘイトちゃん「だまらっさぁぁぁい♪!!#んぁ・・・っていうかちょっと今日貧血で・・・」
シェラハちゃん「シリアスモードというと・・・ってんな単語入った不幸話あるかぁぁぁ!!(がちゃーーん!!)」
ストライフちゃん「やっぱ身内が死の危険だったりするとみんな荒れるもんだな・・・」
ワイルちゃん「ええええええええええ!!??サル-インちゃんが死のきけぇぇぇぇぇんんん!!???!!??」
ストライフちゃん「は、は?お前話聞いてたの?」
ワイルちゃん「あいやーー、あの気の良さそうなミルザさんが、まさかサルーインちゃんを変な目にあわしたり
       殺したりはしないだろうなとは思ってたんで冗談で言ったんで、
       ってかよく考えたら石化って時点で危ないわけで
       そげなこといきなり言われてもああああああああ!!!」
ストライフちゃん「落ち着け!」
シェラハ(あれ?そういえばそうよね。まさかあのミルザさんがそんな事するとは到底思えないし・・・
     あの詩人も『ミルザさんが直接石化したサルーインを持っていた』だのそんな事は言ってないわけだし・・・
     大体あの詩人はなんなの・・・?・・・まぁ、ミルザさんに会ってみるに越した事は無いわよね。)
ストライフちゃん「おっ、見えたぞ。あそこが騎士団寮・・・でいいんだよな?」
クジャラート舎の校庭を抜けて、騎士団寮が4人の目に入ってきました。
ワイルちゃん「わわわ、私に行かせて下さい。一の僕として。一応ミルザさんとは交友関係になってる設定ですから・・・」
焦ったように言うワイルちゃん。
ストライフちゃん「なんだ、四人で行かないの?」
シェラハちゃん「女四人で男だらけの寮に入っていくのって色々勇気があるでしょ・・・?だからよ。」
ヘイトちゃん「も゙う走りだぐない」
ワイルちゃん「んぢゃあ、決まりって事でイッチョ行って来ます!期待して待っててくださいね!」
ワイルちゃんは、騎士団寮へと走っていきました。

残された3人が顔を見合わせます。
ストライフちゃん「そういえば、もうミルザとかいうのを見つけたわけだしあたし達ここにいる意味ないんじゃぁ?」
ヘイトちゃん「ないね。じゃああだじはぢがぐの寮のほげんじづへ」
ストライフちゃん「勝手に行ってこい。・・・で、シェラハさん・・・は、外にいて大丈夫なの?」
シェラハちゃん「大丈夫よ。」
ストライフちゃん「・・・そう。じゃあ、ワイルちゃんとサルーインちゃんのお守りはお願いね。
         実は私、水泳の練習がもう少しで始まっちゃうんだよね。じゃあ、頑張って!」
シェラハちゃん「ええ。」
ストライフちゃんは、もう何事も無かったムードで、どこかへ行ってしまいました。
ヘイトちゃんもふらふらした足取りでクジャラートの方へ歩いていきます。

シェラハちゃん「・・・・・・」

5,6分はしたでしょう。
騎士団寮から、ワイルちゃんが出てきました。
シェラハちゃんの方へ手を振っています。何も持っていません。
ワイルちゃん「はぁ、はぁ・・・あ、あれ?みんなは・・・まぁ、いいや。
         シェ、シェラハさん。ミル、ミルザさんが!騎士団寮にいないんです!!
        その・・・ローザリア舎に向かったという話です!!」
シェラハちゃん「え、そんな遠く!?」
シェラハちゃんが驚いて声を上げます。
ワイルちゃん「はい、どうしましょう・・・一応騎士団寮の港からローザリアへの船は出てるんですけど・・・
        一体何時間かかる事か・・・」
シェラハちゃん「まったく、ミルザさんったら・・・姉さんへの手がかりはあの人しかないって言うのに・・・」
ワイルちゃん「どうします?船でローザリアまで行きますか?」
シェラハちゃん「・・・いえ、ここはあの人の力を借りましょう。」
ワイルちゃん「あの人?」
ワイルちゃんが首を傾げます。
シェラハちゃん「まぁ、正しく言うならあの『モンスター』だけど・・・
         クジャラート舎の守護者とも言われる、モンスター学部四寮長の一人、水竜の元へ!」



マリーン「あ〜、もうっ・・・見失っちゃった・・・サルーインちゃんがなんだかって言ってたわね。
     もう、ワケ分かんないあの男!」
ストライフちゃん「まったく、ミルザってのは人騒がせなヤツだ・・・
         糸石を集めてたり、石化したサルーインちゃんを連れて行ったり・・・」

「って」

マリーン「ストライフちゃん!?」
ストライフちゃん「マリーン!?」


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