第9話「ささやく風が渚を揺らせて」

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・・・はあ・・・はあ・・・はあ・・・

下には雄大なるマルディアス学園の一望。上には果てることない蒼穹。
ここはマルディアス学園内に名高い峻峰・スカーブ山の頂上です。
そこにはこの学園のモンスター学部を仕切る四寮長の一人・タイニィフェザーくんの
翼から舞い落ちた羽が不思議な美しさを持って落ちていました。
ラミアちゃん「はあ、はあ、はあ、ついに来たのよ・・・頂上だわ!
    そしてこの羽!この羽さえあれば『風のささやき』をサルーインちゃんに・・・」
???『我が巣で何をしている、魔の主の犬め』
ラミアちゃん「きゃあっ!!ご、ごめんなさーーい帰りまあーーーす!!!」
???『・・・ふん・・・今流行っている勇者の証とかいうやつか?
    そういう風には見えなんだが・・・『風のささやき』とか言っていたな・・・
    まさか使いこなせる気になっているのか?ふん、愚かしい・・・サルーインちゃんとも
    言っていた。サルーインちゃん?まさか』
風が容赦もなく吹きすさぶ、風が美しい羽をさらに舞い踊らせる・・・



ナイトハルトくん「ようこそ騎士団寮からのししゃどの。私とディアナのあのパーティでは
   世話になった。あの日の勇者を、今日はローザリア寮長として歓迎しよう」
ミルザくん「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
無茶、無恥、無鉄砲なミルザくんは幾日とたたずローザリア寮へとやってきて、
ナイトハルトくんに面会を求めていました。あの日の夜目撃してしまったナイトハルトくんの
秘密を暴くがためでしたが、勿論何の策も考えずにやってきて、今になってから後悔しているところでした。
ミルザくん「・・・・・・・・・・・・・・・・・いい天気ですね」
ナイトハルトくん「私は雨の方が好きだ」
ミルザくん「・・・・・・・・・・・・・・そっそうですよね晴れなんてあっついし
   お肌は焼けちゃうしいいことなしですよね!!最低ですよね!!」
ナイトハルトくん「今日はディアナがふかふかにふとんを干してくれている」
ミルザくん「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
はずしまくりのミルザくんの焦燥はさらに加速します。何しゃべったらいいの!?
ていうか僕ここに何しに来たんだっけ!?そんな自問が延々ループします。
ミルザくんはお茶濁しに出されたワインを指して言いました。
ミルザくん「いやーこのワインったら最高ですね!えーと味とか!香りとか!
   えーっとあと透きとおり具合?あーあと色とか・・・・・・・・・・・あっ!」

ミルザくんはこのワインの色を見てアメジストを思い出しました。そしてそこから
更に、サルーインちゃん、運命の赤い糸石、そしてそのなかの一つ『水のアクアマリン』を
このナイトハルトくんが狙っているかもしれないということを!
ミルザくん「(そうだ!!僕はそこを探りに来たんだ!!)・・・いやあ〜このワインの
   素晴らしいことったら!このワインはあのアメジストにも劣らぬ値打ち物にすら
   思えますね・・・?(よし!苦しいがなんとか話をそっちに持っていけたぞ!)」
ナイトハルトくん「そうだな・・・このワインはサルーインちゃんも絶賛していた」
ミルザくん「!!!!!!!!さっサルーインちゃん!!?」
サルーインちゃんの名が出た途端、ちょっと稼動していたミルザくんの頭脳も停止、
頭の中はサルーインちゃんフォーエヴァーラヴそれのみになってしまいました。
ミルザくん「こっ、こっ、このワインをサルーインちゃんが飲んだ!?
   ということはここに来た!?こ、ここにサルーインちゃんをお招きするような間柄!?」
ナイトハルトくん「でもあっちのシャンパンのほうが本当は好きそうだったが。
   シャンパンなど子供っぽいと見栄をはったんでしょうな」
ミルザくん「シャンパーーン!!!(うっ、ここに遊びに来て一緒に飲み交わす仲でしかも
   二本違う酒を飲んでるところからして来遊は一度や二度の可能性は低い!!!)」
ミルザくんはかなり気が動転していましたが、サルーインちゃんのこととなると変に鋭いのです。
ミルザくん(も、もしや・・・いや、やはり、というべきか・・・!!この人も
   『運命の赤い糸石』を探す動機は、サルーインちゃんと結ばれるため!?それが一番妥当だ!!
   それしか考えられない!!だってこの人は金持ちだから金目当てじゃないし女の子には
   もてるし大体ディアナさんという婚約者が・・・ん?あれっ?ディアナさんという婚約者がいるじゃん?
   あれっ?じゃあサルーインちゃんを好きじゃない?ライバルじゃない?あれっ?)

ナイトハルトくん「そういえば、あの時プレゼントしたあの羽をサルーインちゃんはどうしたかな・・・」

ミルザくん「プレゼントオオオ!!!!」
プレゼントの言葉にミルザくんの短絡的な頭は疑問をすべて蹴散らして一つの絶対的結論を導き出して
しまいました。『こいつもライバル!!!』
ミルザくん「・・・プ、プ、プレゼントですって?へえ?サルーインちゃんに?あの超セレブなお人に?
   さぞすごい物なんでしょうねえ〜そうでなければ受け取ってすらくれないでしょうから」
ナイトハルトくん「なかなか素直な人じゃありませんが、喜んでくれたようでしたよ」
ミルザくん「喜んでくれたあーーーー!!!い、い、一体何を差し上げたんです?・・・っは!
   まさか『糸石』を・・・・・・・!?」

ナイトハルトくん「は?・・・いえ、『勇者の証』というのだが、それがスカーブ山に住む
   四寮長の一人、タイニィフェザーくんの羽なのだ。」

ミルザくん「・・・・・・タイニィフェザーくんの・・・羽・・・!?」
四寮長と聞いてミルザくんは上体を乗り出し、目を丸くしました。殆どの人間生徒はあったことのない
モンスター学部を仕切る四寮長・・・もちろんミルザくんも会ったことがありませんでした。
ナイトハルトくん「そう、あの険しいスカーブ山の頂上まで登り、持ち帰った羽です。
   天使でもない悪魔でもない妖しい翼がはばたいて落としていったような、不思議な色をした
   美しい羽だった。あれはサルーインちゃんも痛く気に入られたようだった」
ミルザくん「そっそんな・・・!!(完全に一歩リードされている!!いや、少なく見積もって
   十歩くらい!!・・・ん?)えっあなた、あのスカーブ山に登ったんですか!」
ナイトハルトくん「でなければ、持ち帰れないでしょう。ちょっとした冒険のつもりだった
   この話が、最近は他の生徒の間で噂になっていて困る。『勇者の証』を我先にと、
   向こう見ずにもスカーブ山登攀に挑む生徒が増えているのだ」
ミルザくん「・・・!!!」
ミルザくんは考えました。えっサルーインちゃんが喜ぶようなそんな美しい羽?
しかも噂になっていてスカーブ山に挑む輩が増えている?えっもし羽を手に入れたら
どうするの?サルーインちゃんにあげたら喜ぶんじゃない?えっ先にあげられちゃったらどうするの?
もう僕より先に登りはじめている生徒が何人も・・・・!!!
ミルザくん「ナイトハルトくん!!!」
ナイトハルトくん「!!!!」
ミルザくんはいきなり席から勢いよく立ちました。
ナイトハルトくんも驚いて少し身構えたような素振りを見せました。
ナイトハルトくん「・・・どうしましたか、ミルザどの。トイレなら右の扉です。」
ミルザくん「今日はとても楽しかったです。ありがとう。トイレは清潔にどうぞ。では。」
ミルザくんはそう言ってナイトハルトくんの部屋から退出しました。
そしてすーっと深呼吸をすると、全力ダッシュで走り出しました。

ミルザくん「スカーブ山だ!!!」



サルーインちゃん「だから今日のネクタイの柄は猫だってば!!猫が仰向けにくつろいでる
   マークでしょこれ!!よく見なさいよホラ!!!」
ヘイトちゃん「ちいがああぁう!!!これはさんまですわあぁああぼほだうsd☆★◎!!!
   さんまのヒラキ定食を思い出してごらんなさああアイあい!!さんまのヒラキって
   こういう形でしょ?ホラアアアア嗚呼アアああ!!!これはさんまのヒラキのマァアアク!!!」
サルーインちゃん「安月給のあんた達と違ってこの私はさんまのヒラキ定食など食べたことがないわ!!」
ストライフちゃん「安月給はあんたのお陰なんだがな、サルーインちゃん」
ワイルちゃん「・・・・・・・・
   (黙っていよう・・・あれが「本当は『カメ』のマークですよ」だなんて・・・)」

今日も元気にサルーインちゃんとそのミニオンちゃんたちは廊下を歩き、優雅に占領していました。
彼らの通るところどかぬ生徒はおらず、前に邪魔な障害物は決してない、という調子なのでした。
ところが急に、校舎外に通っている通路に差し掛かると突然サルーインちゃんの前に出てきた
一人の女生徒がいました。サルーインちゃんは目を吊り上げ、「どけ、邪魔だ!」と言おうとしましたが・・・

サルーインちゃん「・・・あなた、ラミアちゃん?」
ラミアちゃん「ああっ!覚えてて下さったんですねサルーインちゃん!ラミア嬉しい!」
サルーインちゃん「久しぶりね!そうでもないか?まあよい元気だった?」
ラミアちゃん「はいっ!!ところで折り入って・・・(ごにょごにょ)」
ラミアちゃんはサルーインちゃんの耳にこそこそと何か呟きました。サルーインちゃんはうんうんと
相槌を打って、結構真剣に聞いてあげているようでした。
ストライフちゃん「・・・・・なんだあの女は馴れ馴れしい」
ワイルちゃん「ほら、あのパーティでなんでもサインを求められたらしくて・・・」
ヘイトちゃん「それで仲良くなっちゃったのねぇえええ!!んもおおうサルーインちゃんたら
   単純なんだからぁああdそじjふぇいんd☆★☆」
サルーインちゃん「ミニオン!お前達、ちょっとラミアちゃんが立ち入った話がしたいらしいから、
   先にデス姉とシェラハのところに行っておれ、私も後から行く」
ミニオンちゃん達「えええ???」
ミニオンちゃん達は少なからず衝撃を受けました。あのサルーインちゃんがそこまで親身に
なってあげていることや、特に自分達よりラミアちゃんを優先したことに軽い腹立ちを覚えました。
ミニオンちゃん達「・・・・・(目を見合わせる)」
サルーインちゃん「ちょっと?聞いてないの?聞こえないか!さっさと先に行っているがいい!!」
ミニオンちゃん達「は、はあ〜い・・・・・」
サルーインちゃん「・・・さて、これで邪魔なやつらはいなくなったわよ、話って?・・・・」
ミニオンちゃん達はしぶしぶ立ち去ろうとしつつ、サルーインちゃんとラミアちゃんのほうを
何度も振り返りました。
ストライフちゃん「・・・サルーインちゃんが女子生徒と仲良くしてるなんて
   おかしいことがあっていいのか?」
ワイルちゃん「仕方ないでしょ・・・言われたとおりはやく先に行ってましょうよ」
ヘイトちゃん「自然の摂理に反しているゥゥ!Å★☆サルーインちゃんは女に嫌われて
   ナンボなのにヒイィいいいい!!!★◎鬱●l☆!!」
ワイルちゃん「聞こえたらどうすんですかヘイトちゃん!あーもー悔しいのはわかるけど
   早く行きましょ・・・・・・・・!!!サルーインちゃん!?」
ミニオンちゃん達は慄然としました。『サルーインちゃんが石化している!!』
その石化したサルーインちゃんをニヤリと笑ったラミアちゃんは抱えようとしていました。

ラミアちゃん「これでよしっと・・・はっ!!あんたたち、まだいたの!・・・いや、
   だからどうだというの、遅かったわね!もう手遅れよ!美しきサルーインちゃんの『石像』は
   頂いていくわよォーーーーーーあははははははは!!」
そう言ってラミアちゃんは等身大の美しい石像となったサルーインちゃんを抱え、
ミニオンちゃん達から飛びのいて遠ざかります。
ストライフちゃん「ぬかせ!!」
ヘイトちゃん「待てえぇぇエエぇえぇえぇいいs!!@hby!!」
しかしラミアちゃんはそのまま体育館に入り込んでいってしまったのです。
ミニオンちゃん達が体育館を見渡すと、バスケットボール中の生徒やら、他にも利用者が沢山いて、
ラミアちゃんはそこに紛れてしまったのです。そしてミニオンちゃん達が見つけ出す前に、
ラミアちゃんは窓から外へと抜け出していました。
ラミアちゃん「ふふん、あっけないくらい上手くいったものだわ・・・!これであたしマスターに・・・v
   それにしても・・・重いわねーこれっ!!石化すると重くなるもんなのかしら?
   それともサルーインちゃんって実はこんなに体重が・・・」

???「重いのなら運ぶのを手伝ってあげましょうか?」

ラミアちゃん「え?」
ドカッ。その時でした、たまたま飛んできた体育館からのバスケットボールが頭に直撃し、
ラミアちゃんは気を失って倒れてしまったのです。彼女に話しかけた人は肩をすくめました。
詩人「おやおや・・・手伝ってあげるどころか、こっちが全部抱えて行かなきゃいかないようですね・・・
   どこへ運ぶのかも聞いておかなかったから、手伝ってあげるご褒美として、
   私の『好きなところへ』運ばせてもらいましょう・・・ふふふふふ」



ミルザくん「はあ、はあ、はあ・・・・・やった!!頂上だ!!!」
その時ミルザくんは愛の力で見事スカーブ山登攀に成功したところでした。
そこからの眺めの絶景なこと!しかしミルザくんにはあまり浸っている時間はないのです。
羽をまずはゲットしなければ!
ミルザくん「新たなるライバル・ナイトハルトくんにつけられている差を少しでも縮めるんだ!
   羽はどこだ!?」

???『我が巣で何をしている、エロールちゃんの生徒よ』

ミルザくん「え?・・・うわあああああ!!!」
ミルザくんが見上げると、そこには毒々しくも美しい翼を誇らかに広げた怪鳥、
四寮長の一角をなす『タイニィフェザーくん』の姿があったのです!
ミルザくん「わ、わ、わ、なんて大きい・・・ぼ、僕は騎士団寮のミルザだ!
   『勇者の証』として、あなたの羽をいただきにきた!」
タイニィくん『こんなものが勇者の証になるのか?ふ、ならばいくらでも持って行くがよい。
   さっきも魔の主の犬が来たばかりだ・・・』
タイニィくんは尊大な態度でしたが、持って行くことは別に意に介しないという様子だったので、
ミルザくんはほっと胸を撫で下ろし、落ちている羽に近づいたその瞬間!
タイニィくん『待て!その羽をくれてやるからには、やはり何かそれ相応のことをしてもらわねばならん!
   お前に頼みがあるのだ、先程来た魔の主の犬・・・人間の姿をして生徒の中に混じっているが、
   あれはモンスターの生徒だ。そいつが私の羽を持ち帰っていったが、なにやら
   よからぬ企みをしているようだった、それを阻止してもらいたい』
ミルザくん「ええっ!!た、ただじゃないんですね・・・いえ、いいですよ!
   これもサルーインちゃんの為だと思えば・・・」
タイニィくん『そう、サルーインちゃんのことなのだ』
ミルザくん「え?なんですって!」
タイニィくん『その女子生徒の姿をしたやつは、なにやら「この羽さえあればサルーインちゃんに
   『風のささやき』を・・・」などと呟いていた』
ミルザくん「・・・・!!風のささやきとは!?」
タイニィくん『私の羽には一つ一つに私の力が宿っている。ある程度高度な魔術師なら、
   その羽を身に着けていれば私の技の猿真似をすることが出来るのだ・・・猿真似といったからといって
   あなどってはいかんぞ!その女子生徒の姿をしたやつは、おそらくサルーインちゃんに
   『石化くちばし』を使おうとしている』
ミルザくん「『石化くちばし』!?まさかサルーインちゃんを石化させようというのですか!?」
タイニィくん『サルーインちゃんはタカビーながらも強い女だが石化には滅法弱いのだ。
   誰かの猿真似でも石化してしまう可能性は十分にある。聞け!今は生徒会選挙で
   学園内がエロールちゃん派とサルーインちゃん派に二分されている。その中で、
   我等四寮長はどちらにも与せず中立を保っている。そこで私の羽の力でサルーインちゃんが
   石化したなどという事態が起こっては、私の立場が揺らぐだけでなく他の四寮長の立場にも
   累を及ぼしてしまう。絶対に避けたい事態だ』
ミルザくん「・・・・・!わかりました、あなた方四寮長の為に・・・そしてなにより
   サルーインちゃんの為に、僕はサルーインちゃんを守ります!」

???「もう遅いかもしれませんよ?サルーインちゃんがまだ石化していないといえる根拠は?」

ミルザくん「誰だっ!!!」
ミルザくんが振り向くと、ジャカジャーンというギターの音を風に乗せて佇む、
詩人の姿がそこにありました。
ミルザくん「あなたはあのパーティの時の・・・一体いつから僕の背後にいたんです!?」
詩人「私とそんなやりとりをしている暇があなたにはありますか?サルーインちゃんに
   一刻を争う危機が迫っているのでは?」
ミルザくん「はっそうだった!タイニィフェザーさん!僕、行きます!」
タイニィくん『待て!最初の目的を忘れてどうする。私の羽を持って行きたいのでは?」
ミルザくん「あっそうだった!もうどうでもいいけど折角ここまで登ったんだし・・・うわっ」
貧乏性のミルザくんは貰える物は貰おうと羽を取ろうとしましたが、
その羽が自分よりも大きい羽だと気がついて手を引っ込めました。
ミルザくん「こんな大きな羽持っていけないよ!ナイトハルトくんはどうやって持っていったんだ?」
タイニィくん『仕方がない、私が小さくしてやろう、手に掴んでいろ』
言われたとおり大きな羽の一部をミルザくんが掴むと、
タイニィくんの羽は小鳥の羽くらいまでに小さくなりました。
タイニィくん『その身から離れると元の大きさに戻るぞ、気をつけろ!』
ミルザくん「ありがとうございます!これでサルーインちゃんをかっこよく助け、
   その後にこれを驚きのプレゼント・・・完璧なシナリオだ・・・!!」
ミルザくんはまた自分に都合のいいサルーインちゃん妄想をしていましたが、詩人さんの
独り言らしきぼやきで現実に引き戻されました。
詩人「そういえば、メルビル寮の方であやしい石像を持った人がいたなあ・・・
   確かルーイとか言ったような・・・?」
ミルザくん「(!!!!すでにサルーインちゃんは石化してしまっているのか!?)
   ぐずぐずしてられない!!」
タイニィくん『下まで送ってやろう。それ!』
タイニィくんが翼をはばたかせると羽がいくつも舞い上がって、その羽とともにミルザくんは
   フワフワと地上まで降りることが出来ました。
ミルザくん「メルビル寮のあたりだな!!」



ワイルちゃん「た、た、大変ですゥ〜〜〜〜〜〜デスちゃんさま、シェラハちゃんさま〜〜!!!
   サルーインちゃんが『石化』してどこかへ連れ去られてしまいましたあ〜〜〜〜!!」

デスちゃん「なんだと!!どういうことだミニオンちゃん達!!」
ワイルちゃん「そ、それがこの女がうまいことサルーインちゃんに近づいて石化させてしまい、
   さらにはそのサルーインちゃんが行方知れずに・・・!」
ストライフちゃん「おらっ吐かんか!!どこへやった!(こしょこしょ)」
ヘイトちゃん「ヘェイトの秘儀・ゴールドフィンガぁあああア☆歿★!!!(こしょこしょ)」
ラミアちゃん「ひ、ヒイ〜やめて・・・あはははははやめあはひいいーーー知らない、
   ほんとにいつの間にかいなくなってたんだってばあはははやめひいいーー〜」
ストライフちゃんとヘイトちゃんのくすぐり拷問にも、ラミアちゃんの口からサルーインちゃんの
行方が出てきません。
デスちゃん「・・・この女が石化させた、タイニィフェザーの裏切りではないようだな。
   しかしこの様子だと本当に石化したサルーインちゃんがどうなったか知っているとは思えん!」
シェラハちゃん「・・・石化と聞くと悲しいことを思い出すわ・・・密室に閉じ込められた
   二人の男女の話。二人を押し潰そうと天井がゆっくり落ちてくる密室の中で、
   男性は「愛する君を絶対に僕が守るよ!」と言って自らに石化をかけて
   天井を押し留めようとしたのだけれど、普通に天井のが固かったから
   押し潰されて砕け散ってしまい、彼が守ると言った黒髪の絶世美女は
   彼がごたくを並べてるうちに鍵を壊してとっとと外へ出ていたの」
デスちゃん「シェラハ〜〜〜〜〜こんな時までちっとも悲しくない話をするな!!!いや!
   その話しゃれにならんのだぞ!!石化したままのサルーインちゃんが何らかの衝撃によって
   ばらばらに砕け散ってしまったら・・・!!!」
ヘイトちゃん「ヒイィアァーーーーーーーーーーーーばらばらになったちっちゃい破片から
   ちっちゃいサルーインちゃんがいくつも生まれてしまうわあああhしふwhうぇううげd!!!」
デスちゃん「そうだ!!・・・あああちがう!!いやそれも怖ろしいが!!あんなのが
   いくつもいたらたまったもんじゃないが!!!ちがああああああうああもう
   お前らミニオン!!こういう時のためのお守りだろうがなんで守れなかった!!」
ワイルちゃん「わ、私達お守りじゃなくてほんとはしもべなんですけど・・・」
ストライフちゃん「まあ名目上だけで実態はお守り以外の何でもないんだけどな」
デスちゃん「あーーーーーーーーどうするつもりだ!!!どうするんだーーー!!」
ジャカジャーン!!いつになく混乱しているデスちゃんの耳にもそのギターの音は
響きました。そう、再び詩人さんです。
詩人「なんと!麗しのサルーインちゃんがあわれにも石化しているとは!?本当ですか」
デスちゃん「・・・なんか邪魔が入って気を取り直したぞ、なんだか知らんが帰れ!
   お前の知ったことではないはずだ」
詩人「どうなさるおつもりです?まさかしらみつぶしに学園中を探すのですか?」
デスちゃん「・・・手がかりが全くない状態だ!まずは手がかりを探す、我等全員で
   聞き込みだ、お前も手伝うか?」
詩人「手がかり・・・といえば、そういえば妙なことが・・・
   あの名高いミルザくんが「石化、サルーインちゃん、」などと呟いていましたね」

ミニオンちゃん達「何ィ!!ミルザだと!!」

詩人「もしかしたら彼こそが瞬かぬ石像となったサルーインちゃんの行方を知っているのかも
   知れませんね。では、私はこれで・・・(ジャジャーン!!)」
そういって詩人はまるで消えたようにデスちゃん達の前から去ってゆきました。
ワイルちゃん「ミルザといえばあいつはサルーインちゃんに懸想しているようだから
   もしかすると石像のまま自分の物にしようとして!?」
デスちゃん「しかしこれで一つでも手がかりを掴んだわけだ。シェラハ、ワイル、ヘイト、ストライフ!!
   総員でまずミルザを探す!!!」
ミニオンちゃん達「はっ!!!」
シェラハ「・・・はっ・・・と聞くと・・・はあ・・・」



???「あのーー、ニンフの像を知りませんかーーー?これくらいの、こんな像なんですけど・・・
   あのーーーーーーー知りませんかーーー?あのーーーーーーーーーーーーーーー?」



ミルザくん「メルビル寮!メルビル寮!」
ミルザくんは走っていました。スカーブ山から降り、ローザリア寮、イスマス寮、ローバーン寮、
ブルエーレ寮、ときて今現在ゴールドマイン寮に差し掛かっているところでした。
ミルザくん(サルーインちゃんが「石化」の毒牙に掛かろうとしている!・・・
     いやもう掛かっているのかもしれない!?ああっはやくしなきゃ!
     僕がサルーインちゃんを救わなければ!)

???「あ、あのーすみません・・・ちょっと護衛を引き受けてくれませんか」
ミルザくん「ん??」
ゴールドマイン寮内を突っ走っていたミルザくんに話しかけるものがありました。
ミルザくんは駆け足の振りは止めずにそこに止まり、その声の方に顔を向けると、
そこにはなにか包みを抱えた男子生徒がいました。
ミルザくん「護衛ですって?(あーもう!早く行かなきゃいけないのにー!)」
???「はい、メルビル寮までぜひ・・・」
ミルザくん「ん!メルビル寮ならちょうど僕も行くところです御一緒しましょう!」
???「本当ですか!ありがてえ、じゃ、早速行きましょう」
ミルザくん「ええ、・・・その荷物重いでしょう!僕が引き受けますよ」
そういって手を差し出したミルザくんにその男子生徒は顔を強ばらせてさっと
荷物を逸らしました。
???「いいんです!この荷物のことはお構いなく!・・・さあ、行きましょう」
ミルザくん「・・・???そうですか?ええ・・・」
そうしてミルザくんと男子生徒はメルビルに向かっていきました。



メルビル寮に着き、ミルザくんは護衛の任務を果たしたのでした。
ミルザくん「じゃあ僕はこれで!」
???「ちょ、ちょっと待ってください」
ミルザくん「はい?(あーもーだから早くしなきゃいけないんだよー!)」
???「ま、まだ護衛の報酬を払っていませんし、今持ち合わせがないんですが、
    これからちょっと出来るんです・・・そこまでご一緒に」
ミルザくん「報酬!?ふっ、そんなものは結構です、ぼくはちょっとした
     親切のつもりだったのですから!では」
恋の為に焦っているミルザくんは金持ちにだけ許されるセリフを捨ててそこを
去ろうとしましたが、それでも男子生徒は手を引っ張ってミルザくんを引き止めます。
???「ま、待って!もう少しですから、ウコム大使館までなんです、
    どうかご一緒に・・・最近メルビル寮の治安も悪いですし、ねっ!?」
ミルザくん「(んーもーしょうがないなあ!)解りました、ウコム大使館までですね!
     そこまでですよ!」
ミルザくんの持ち前の親切心が動いてしまって、ウコム大使館まで
一緒にいくことになってしまいました。

二人がウコム大使館まで来ると、奥のほうに案内され、なにやら物々しい様子の
役人がそこで待っていました。
ウコム役人A「ルーイさんですね!あなたの要求どおり、2000ジュエルで
     引き取ることが決定しました!」
ミルザくん「2000ジュエル!!・・・ルーイだって!?」
ミルザくんは驚きました。それはおよそ10年分のミルザくんの食費だったからです。
そして何より、詩人が言っていた「石像を持った男」の名は確かにルーイではなかったか?
ウコム役人B「それでは、最後に品物の確認をさせていただきましょう」
役人にそういわれて、男子生徒はへへへ、と下品に笑いながら、包みを剥がしました。
ウコム役人「おお!!」
ミルザくん「うっ!!」
そこにあったのは小さく、不気味な醜い形をした(と、今のミルザくんには映ったのです)
紛れもない石像でした!ミルザくんの頭の中は混乱してしかし働きました。
ミルザくん(ルーイ!石像!間違いない、詩人さんの言っていた男とはこの人の
     ことだ!そして2000ジュエルだって!?そんなありえない金額を、
     こんなちゃちで醜い石像・・・『ただの』石像だったら払うわけがない!
     おそらくこの石像・・・この石像が、『サルーインちゃんなのか?』!!)
ウコムの役人が男子生徒に2000ジュエルを渡し、その手から石像を取ろうとしたその瞬間!

???「その像を、離しなさいーーーーーーー!!!」

ミルザくん「!!!」
男子生徒「うっ!」
一人の女の子がミルザくんたちの元へ駆け寄ってきます。それも、大量の
魚系モンスターを引き連れて!
男子生徒「い、嫌だアーーーーー!!これで大金持ちになるんだーーーーーー!!」
???「離しなさい!!」
男子生徒は逃げようとしましたがモンスターに囲まれ、絶体絶命の危機に
陥りました。
男子生徒「あ・・・あ・・・・・・!」
モンスターが男子生徒に食いつかんとしたその瞬間!
ズシャッ―!銀の剣をきらめかせて、颯爽とミルザくんがモンスターをなぎ払ったのです!
男子生徒「ミルザさん!」
ミルザくん「・・・・・・・・」
そしてばっと男子生徒の手から石像を奪い取ると、そこに毅然として立っていました。
男子生徒「ああっ・・・」
???「さあ、石像をこちらへ・・・」

ミルザくん「駄目」

???&男子生徒「え?」
ミルザくん「サルーインちゃんは誰にも渡せなーーーーーーーいさらばだ!!!!」
???「ちょ、ちょっと何言っているんですかーー!!・・・お前達!
    あの人を追いなさい!!」
女の子がモンスターに命令をすると、一斉にモンスターたちがミルザくんを追いかけて
行きます。女の子自身もミルザくんを追いかけてゆきました。
後には、呆然とした男子生徒と、ウコムの役人が残されていました。
ミルザくん「石化するとこんなになっちゃうのか・・・!ああサルーインちゃん
     こんなに醜くなっちゃって!しかもやっぱり君を手に入れたい人から
     付け狙われている!・・・よし、サルーインちゃんは僕が守るぞーーーー!!」
マリーン「その像を、返しなさーーーーーーーい!!!」
かくてここに、大いなる勘違いのもと、ミルザくんとマリーンの追いかけっこが始まったのです・・・
本当のサルーインちゃんの像は一体!?


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