第7話「幻のアメジスト」

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ミルザくん「聞いてよ聞いてよ聞いてよ聞いてよオイゲーーーーン!!!」
勢いよくオイゲンくんの部屋の扉を開けたのは、目をピッカピカに輝かせ、
なにやらチラシらしきものを持ったミルザくんでした。
しーーーーーーーーーーん・・・・
ミルザくん「・・・あ、そうか、オイゲンは今イスマスへ交流生の一人で行ってるんだった」

オイゲンくん「俺がどうかしたか?」

ミルザくん「うわっ!!・・・と、オイゲン!帰ってきてたのか?」
ミルザくんの後ろにはイスマス帰りのオイゲンくんが立っていました。二人はそのまま
部屋に入って茶を沸かしてお喋りをはじめました。
ミルザくん「見てこれ!見てこれ!イスマス寮開催ダンスパーティの優勝商品!
  『アメジストの首飾り』だって!これだ・・・きっとこれだよ!!僕のさがしてる糸石!」
オイゲンくん「ふーん。で?」
ミルザくん「で???で?っじゃないよオイゲン!これは絶対優勝しなきゃ!早速
  ダンスの練習をレッツ・・・」
オイゲンくん「ばっかだな、お前」
ミルザくん「えっ!?なんで!?僕超必死な奨学生だから学年順位いつもゼロ番代だよ!?」
オイゲンくんははーっ、と溜息をつき、
オイゲンくん「勉強だけ出来て頭は出来てない典型だなオマエ。これはイスマス寮長
  ルドルフの娘ディアナの初彼氏祝いのパーティなんだぜ?ディアナのための、だ。
  まさか優勝商品なんて一番祝いに相応しいものを他の参加者にくれてやると思うか?」
ミルザくん「・・・えっ!」
オイゲンくん「おっと、俺があんまりスレた見方をしてるなんていうなよ?
  実際聞いてきたんだからな、イスマスでのことさ。『優勝商品目当てで人が目一杯集まるだろう』、
  『でもあれを胸に輝かせるのはディアナ様さ、絶対な。それ以外ありえないんだから』
  ・・・と、こんな風な会話さ。」
ミルザくん「・・・そんなー!いんちきだ!!でたらめだ!!ひどいや!大体もしディアナって
  人がダンスが滅茶苦茶上手いとしてもだよ?サルーインちゃんの絢爛たる舞に敵うはずが・・・
  はっ!!サルーインちゃん!サルーインちゃんは参加するんだろうか・・・!?ハアハア」
オイゲンくん「・・・あーまたお前のサルーインちゃん妄想ダイブがはじまった。おーい
  こっちもどってこーい。おい、ミルザ!それでどうするつもりなんだ?
  アメジストとやらが手に入らなくってもいいのかー?」
ミルザくん「はっ!・・・そうだよ、どうしよう?はなから優勝する人が決まってるんじゃ
  どうしようもないじゃないかー・・・」
オイゲンくん「そこを考えるんだよ!おい、それにお前、サルーインちゃんの胸に
  こんな巨大なアメジストを輝かせてみたくないか・・・?」
ミルザくん「・・・・・・・!!!そうだ!なんとかせねば!・・・うーんすり替え、
  司会者になりすまして優勝者を呼ぶときに違う人を呼ぶ、あとは・・・」
オイゲンくん「なあなあ、怪盗ごっこでもしてみるか?」
ミルザくん「え?」
オイゲンくん「見事優勝し胸に幻のように妖しいアメジストを輝せる舞姫、
  サルーインちゃんごとかっさらう・・・?」
ミルザくん「・・・・・!」

ミルザくんとオイゲンくんは顔を見合わせました。一人はしたり顔で、一人は目をきらきらと輝かせて。



サルーインちゃん「どうしても着ないと駄目だというの!!」
ワイルちゃん「さ、さすがに裸で踊るのはどうかと・・・」
セレブ三姉妹はトライアングル・フォーメーションにも匹敵する『三柱舞』の衣装決めで揉めていました。
サルーインちゃん「ありのままがいいのよ!!ありのままの肢体の揺れるなめらかな踊りがいいんじゃない!!
  ねえシェラハ!!」
シェラハ「・・・ありのままと聞くと悲しいことを思い出すわ・・・ありのままの君を
  僕に見せて欲しいって言った人の話。その人の熱意に、黒髪の絶世の美女は10年分の
  日記を差し出して見せてあげたら、その人は人間というものに絶望して深いジャングルの
  奥へと帰っていったのよ・・・」
ヘイトちゃん「アッヒャぁヒャはヒャ流石セレブさんしまあぁあい!!裸!!
  裸といったら盆踊り!!盆踊りなんて通ですわぁあ!!」
ストライフちゃん「おい、ヘイト、デスちゃんの前で盆踊りとか冗談をいうな。
  なんとなく冗談にならないから。」
デスちゃん「・・・・・・・・・・・・ええい!サルーインちゃん、そんなに
  裸祭りしたいんだったら個人の部でやれ!!」
サルーインちゃん「あーーーーーーーもう!!じゃあどんなのがいいのよーーー!!」
デス&シェラハ「とりあえず布がいい。」
ストライフちゃん「・・・はあ・・・やってられねー・・・」
ワイルちゃん「・・・ストライフちゃんヤケに静かですね・・・」
ヘイトちゃん「諦めついたんじゃあないノーーー??」
ストライフちゃん(・・・これがシンクロナイズドスイミングだったらなあ・・・)

ジャジャーーーーーーーン!!そこでギターの音が響きました。
サルーインちゃん「・・・ん?あっ!あんたはあの時の!」
詩人「ご機嫌麗しゅう、美貌のサルーインちゃんとその姉妹様たち!」
デスちゃん「誰だ?サルーインちゃん」
詩人「名乗る名もなき詩人です、骨のごとき白き肌のデスちゃん。ところで今聞き及んだ
  ところだとなにやら衣装に困っているとか?どうでしょう!その衣装、私に任せてみませんか?」
サルーインちゃん「はあああ!?ふざけないでよ!!貴様、あのワロン等で私の味わった辱めを
  思い出してみるがいい!すっぽんぽんの丸裸を満座に見られたのだぞ!!ええいそんなことは関係ない、
  とっくに衣装など決まっているのだ!!裸ネクタイだ!!」
詩人「何か言ってることに矛盾があるような気がしますがそれは聞かなかったことにしましょう。
  そう、よろしければの話ですよ・・・パーティの当日に三者様とも『なにも着ないで』来て下さい」
デスちゃん「なんだって?どういうことだ?」
シェラハちゃん「・・・もしかして騙して裸の写真を撮って売りさばくなんて悲しいことを・・・」
詩人「今一度いいます、よろしければの話ですが『何も着ないで』来るのです。そうすれば、
  世にも美しい幻のドレスを纏えることでしょう・・・そう、『幻』のね!では、その日を楽しみに」
ジャジャーン!詩人はギターをかき鳴らすと去っていってしまいました。
三姉妹は顔を合わせた後、サルーインちゃん以外は解せぬという顔をして考え込んでいました。
サルーインちゃんはというと、

サルーインちゃん「ばかめ、何も着ないで行くのなんて当たり前だ!」



イスマス寮長の娘ディアナは幸福でした。明日には自分とナイトハルトくんとを祝ってくれる
ダンスパーティが催されます。イスマス寮より少し遠くに行ったところに、海も見渡せる
美しい丘があります。今日、そこでディアナは、高鳴る胸を潮風に揺らされて、
夢心地に時間を過ごしていました。

ガサッ

ディアナ「! 誰なの!」
???「くっ・・・見つかったか。いや決して怪しいものじゃない」
ディアナ「顔を見せなさ・・・きゃ!」
その不審者は顔を上げました。ディアナが短く叫んだ理由はそこにありました。み、醜い!
アルドラちゃん「ふ・・・そんな反応も仕方のないことだな・・・あんたが明日のパーティの
  主役、ディアナさんだろ?」
ディアナ「・・・(はっ!私ったらなんて反応を・・・)そ、そうです私がディアナです、
  あなたは・・・」
アルドラちゃん「ふ・・・俺は誰だろうな・・・・・・羨ましいな、俺にも好きな人がいたんだ・・・
  ・・・いや、今でも好きだ!でも、こんな姿になっちまって・・・明日のパーティにも
  彼は来るかもしれない、そう思ってこんなところまで来ちまったが・・・ばかだよな・・・
  俺みたいなやつがそんな華やかでめでたいパーティに出れる筈がないのに・・・な」
ディアナ「・・・!あなたは、生来の姿ではないの?・・・好きな人が、明日のパーティに
  参加するの?」
アルドラちゃん「多分な・・・優勝商品アメジストはミルザ・・・いや、俺の好きな人が
  追い求めてたものだ・・・きっと来るだろう」
ディアナ「・・・・・・・・諦めるのはおよしなさい!あなたもパーティに出るのよ!」
アルドラちゃん「えっ?」
ディアナの言葉に自嘲気味だったアルドラちゃんは驚きの色を見せました。
ディアナちゃんは毅然と、慈愛のこもった感じで、かつこっそりと言いました。
ディアナ「あのアメジストには不思議な力があるというのよ・・・幻を見せるというの。
  明日、明日一日だけ、あの石の力を借りて元の姿に戻って好きな人に会いなさい!」
アルドラちゃん「・・・!?ば、馬鹿なことを!確かに魔術を助けてくれる道具はいくらもある!
  でもそこまで出来るものは・・・しかもそういう道具だって自分で装備してこそだ、
  しかも優勝商品は誰も触れないようなところに保管してあるはず・・・
  そんなものの力を借りようったってどんなウィザードでも無理だ!」
ディアナ「私はパーティ主催者の娘よ?・・・だから『あなたが一日身に付けるのよ』!」



夜も更けて、明日のパーティを控えるイスマス寮長の一室では、ルドルフ、ナイトハルトくん、
アルベルトくんの三人が、ダーツに興じていました。
ルドルフ「(カッ!)・・・うむ、惜しいな。しかしナイトハルトくん、君のような人が
  ディアナの初カレになってくれるとは、全く親として嬉しいあまりだよ」
ナイトハルトくん「いや、こちらこそ告白を受けてもらって嬉しい。しかしここ数日
  パーティの予告をしてからモンスターがイスマス周辺に集っているとか。
  警戒をゆるめてはいかんな(カッ!)」
ナイトハルトくんのダーツは、ものすごく中心に惜しいところにささりました。
アルベルトくん「お見事です!僕もナイトハルトくんのように、えいっ!(カッ!)(カッ!)」
ルドルフ&内藤「おお!完全に中心だ!」
ルドルフ「やるではないかアルベルト・・・・と?」
爽やかに白い歯を輝かせた笑顔でアルベルトくんは、ゆっくり、ゆっくり、前ヘと倒れていき、
急にバターンと倒れてしまいました。
ナイトハルトくん「これは・・・アルベルトのつむじから、薔薇が咲いている」
ルドルフ「違います、刺さってるんです完全に中心に。・・・なにか紙が結んである」
アルベルトくんのつむじに見事的中した薔薇に付いていた紙を開くと・・・

  『麗しのアメジストの君、
       花々の舞の中より頂戴せん            マスター☆M』

ルドルフ「・・・・・・・・・・・・・・!!た、大変だァーーーーーーーーーーー!!!」



ミルザくん「・・・ダーツの的の中心に当てようとしたのに、あの妖精みたいな男の子が
  急に出てくるから・・・」
オイゲンくん「・・・まあ命に別状はないだろ・・・しかしここまでやっちまったんだぜ、
  ミルザ、覚悟はいいんだろうな?」
ミルザくん「覚悟なんて、サルーインちゃんに恋したときからいつでも出来てるのさ!」

さてはて、最後にアメジストを手に入れるのは誰か?最後に笑うのは・・・神のみぞ知る!


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