第7話「幻のアメジスト」

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フリータイム!その宣言がなされた瞬間、会衆は一斉にわああと歓声を上げました。
そう、それは好きな人へとダンスを申しこむ、いわば告白の時間でもあったのです!

ジャミル「さて、と・・・麗しのサルーインちゃんはどこかな〜?」
ミルザくん「えっ!?ちょっと待てよ!君さっきサルーインちゃんのことは
     ファン魂みたいなもんだって言ったじゃないかぁ!」
ジャミル「ばっかだな全校男子生徒の憧れの君、サルーインちゃんにどんだけ
     おバカさん達がたかってるのか見てやろうってんだよ!」
ミルザくん「あ、そっか!・・・おバカさん?」
自分ももちろん含まれるおバカさん発言にミルザくんはちょっとグサッと来ました。
ジャミルくんがサルーインちゃんを探すまでもなく、異常な人だかりの一角は
見て取れました。そして次々にゴミのように投げ飛ばされてゆき、
振られた失格者の山が出来ていく様子も。
ジャミル「ははは!ホントばっかだなああいつら!憧れだの綺麗だのに目を
     眩まされるから近くの幸せが見えねんだ・・・さーて、
     おれは近くのタンポポに早速一踊り申し込んでくるかな!ミルザ、
     まあお前も頑張れよ・・・本当に手に入れたいんだったらな」
そう言ってジャミルくんはファラちゃんの所へと向かっていきました。
その場に留まったミルザくんの所からでも会話までは分かりませんでしたが、
二人の様子がよくよく見えました。ファラちゃんはまんざらでもないようで、
二人して照れたように笑っているのがミルザくんの目に映りました。
ミルザくん「近くの幸せ?・・・確かにサルーインちゃんはプレアデス星雲くらい
     遠いよなあ〜・・・でも近くの幸せって何のことだろ?」

オイゲンくん「おい、ミルザ!」
ミルザくん「はいっ!?ああ、オイゲンか何だよびっくりした」
オイゲンくん「そろそろ作戦に映った方がいいんじゃないか・・・?
     今がチャンスだと思うぜ、皆が皆自分の青春のことで頭がいっぱいだからな」
ミルザくん「よし!そうだな、そうしようかオイゲン。では作戦を聞こう、オイゲン!」
オイゲンくん「・・・え?・・・あの、ミルザくん・・・その、きみ、作戦は?」
ミルザくん「???・・・ん?オイゲンくん、君に策があったんじゃないの?」
オイゲンくん「――――――――――!!!お前な〜〜〜っ!!やっぱり
     何も考えてなかったのか!俺は覚悟はいいかって聞いたろ!!」
ミルザくん「ええっ!?ぼ、僕てっきりオイゲンが全部上手く考えてるもんだと思って・・・!」
オイゲンくん「決行するときっぱり言ったからにはちゃんと考えて俺のちょっとした
     アイディアに乗ったもんだと思ってたのに・・・あーー馬鹿だった
     お前も俺も!!」

???「あ、あのー・・・・・・・・・・」

ミルザ&オイゲン「何だよ!!」
???「うわっ!そ、そんな怒らないで下さいよ!」
・・・・・?二人に声をかけたのはどうやら警備兵。それも二人で、なにやら
ばつが悪そうな様子をしていました。
ミルザくん「・・・?ごめん怒鳴っちゃって、僕達に何か用?」
警備兵A「はい、あ、あの・・・お二人方、踊りたい相手の人がいらっしゃらないんでしたら・・・
    ぜひ警備の方を交換してもらえませんか!!俺達イスマス寮の生徒で、
    何だか最近はぐれもののモンスターがイスマスに多いらしくて警備を強化するってことで
    今日は警備兵が一段と多いんですけど・・・それは生徒の中からで、俺達
    くじ引きで当たっちゃって今日のダンスパーティ中警備の羽目に・・・!」
警備兵B「お二人とも、なにやら語り合ってて意中の相手などいないという感じでしたので、
    つい声をかけてしまったんですが・・・どうかお願いします!!
    俺達絶対踊りたい人がいるんです!!」
彼らは運悪く警備兵の任につかされてしまったイスマス寮生らしいです。
ミルザくんとオイゲンくんはちょっと互いを見交わしました。
ミルザくん「ごめん、君達にはとても気の毒だけれど、僕もちゃんと申し込みたい人が・・・」
オイゲンくん「オーケーオーケー!!まかせなって!あんたらちゃんとお目当ての方の
     ハートを射止めてきな!!」
ミルザくん「えっ」
警備兵A「ほ、本当ですか!あっありがとうございます!!」
オイゲンくん「本当だとも!さあ、ぐだぐだやってる暇はねえよ、目当ての薔薇を
     かっさらわれちまわねえうちに、すぐに交換しちまおう」
警備兵B「はいっ本当にありがとうございます!じゃ木の陰で警備服と交換を・・・」
オイゲンくん「よし」
ミルザくん(ちょ、ちょ、オイゲン!どういうつもりなんだよ〜俺サルーインちゃんと・・・)
オイゲンくん(ばか!こんなおいしい話を逃してたまるか?警備兵といったらその通り
     警備してるんだ・・・優勝商品『アメジスト』を警備してるのも彼らなんだぜ?)
ミルザくん(あ・・・!)
ミルザくんとオイゲンくんはささっと警備兵の二人と服をすりかえてしまいました。
警備兵A「ありがとうございました!」
警備兵B「ご恩は一生忘れません!」
そう言って警備兵達は走ってゆきました、意中の君の元へ・・・

オイゲンくん(・・・さて、それで俺達はというと・・・だ)
ミルザくん(『アメジスト』を警備しているのはもはや僕らだ!)
さっそく警備兵と成り代わった二人は動き出しました。
先ほどの警備兵の任を交換してもらった二人の健気なイスマス寮生はというと、
既にサルーインちゃんが投げ飛ばした敗れしつわもの共の山の中の一人となっていました。



アルドラちゃん「・・・フリータイム・・・か。ミルザ・・・」
ディアナ「どう?無事に上手くいってて?好きな人は・・・?」
アルドラちゃん「あんたは!・・・いや、すまない俺は・・・俺にはそんな勇気が出てこなくて・・・」
ディアナ「軟弱者!弱音を吐かないの!もしかしたらこれっきりかもしれないのよ、
     勇気なんてほんの少しでいいのよ、さあ!・・・父と恋人とを欺いて、
     『アメジスト』を盗み出した私の顔も立ててはくれないの!」
アルドラちゃん「!・・・ディアナ・・・」
アルドラちゃんは着飾ったドレスの胸元の奥に隠した、『アメジスト』のあるところに そっと手を触れました。
ディアナ「詩人さんが言っていたのよ、『身に付けるものの魔力が強いほど、
     アメジストの力は一層強く誰もが夢見るような幻を見せる』・・・と!
     今日の盛会はあなたのお陰でもあるのよ、私はあなたに感謝しているわ、
     あなたの喜ぶ顔が見たい!あなたが好きな人と踊っているのを見たいわ!」
アルドラちゃん「ディアナ・・・!」
ディアナ「大丈夫、あなたは綺麗よ!とても綺麗・・・!本当の姿で、
     本当の思いを彼に伝えていらっしゃい!」
アルドラちゃん「・・・ディアナ、ありがとう、ありがとう・・・!」

アルドラちゃんは座っていたイスからすっくと立ち上がり、胸を張って会場を
見渡しました。その姿に、さっきまで彼女をずっと見ていたディアナは
更に美しさが増して見えました。アルドラちゃんは会場へと歩き出し、
男子生徒の踊りませんかという誘いにも耳を貸さず、ひたすらにミルザくんを探し始めました。



ミルザくん(・・・で、どうするんだ?)
オイゲンくん(警備の責任者にあたるんだ。・・・見てろよ)
オイゲンくんは警備兵の一番偉そうな奴に歩み寄っていきました。
オイゲンくん「伝令です!優勝商品『アメジスト』の保管場所が何者かに漏れた
     可能性があるので、別の場所へ移すように、とのこと!」
警備責任者「何だって!おお、ご苦労、早速やらせるとしよう」
オイゲンくん「しばしお待ちを!更に、我々のような末端のものがかの品を移動させる
     ことで怪しまれず、アメジスト移動を誰にも悟られないだろうというお達しです!」
警備責任者「・・・そうか!確かにそうだ、さすがルドルフ様は頭がよろしい!
     ではお前たちこちらへ・・・内密にアメジスト保管場所の地図を渡す」
ミルザくん(・・・・・!オイゲンやっるぅ〜)
オイゲンくん「・・・確かに受け取りました。では・・・
     警備隊長殿に敬礼!報告、万事なんの不穏もございません!」
警備責任者「(先程のこそこそしたやりとりを抹消するために言ったのだな)
     馬鹿者!何もなかったら報告しにせんでよい!自分の位置に戻れ!!」
二人「はっ!!!」
オイゲンくんとミルザくんは敬礼して会場の外の暗い影へと出ました。
オイゲンくん「全く簡単に行ったな」
ミルザくん「いやーオイゲンお前ってすっげー!この調子でちゃっちゃと
     アメジストゲットだな!」
オイゲンくん「・・・・・いや・・・油断はしないほうがいい」
オイゲンくんがそういうと、二人は動き出しました。アメジストの元へ!



アメジストはルドルフ寮長の部屋に直々に保管されていると、地図を見て 二人は解りました。
ミルザくん「そんな所に隠してたら本当にばれてもおかしくないじゃないか、ばかだなー」
オイゲンくん「いや、その逆にそんな安易な場所に保管するわけがない、と
     ちょっとこういうことに慣れた奴は考えるんだよ」
ミルザくん「はあ〜、成る程・・・オイゲン、お前って何者?」
オイゲンくん「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ミルザくん「な、何だよ無口になっちゃってえ〜・・・まじでなんかあるのお前?」
オイゲンくん「いや違う・・・なんでもない、行くぞ」
ルドルフ寮長の部屋の前は5人もの警備兵が厳重に守っていました。しかし
ミルザくんとオイゲンくんは先程のハッタリを同じく交わすと、すぐに部屋の中へと
入ることが出来ました。
ルドルフ寮長の部屋に入ると・・・・・なにやら薄暗く、中央で魔方陣のようなものの
中心に座っている魔術師らしき男が居ました。その男の胸に輝いているのは、
あのチラシで見た巨大な宝石、『アメジスト』のそれでした!
ミルザくん「おおー!」

魔術師「何者だ、お前たち・・・やはり災いが来たか?昨日占っても、一昨日占っても、
     災いがやってくるという結果だった!」

オイゲンくん「何をいってるんだか・・・私達二名は、ルドルフ寮長の命により
     アメジスト移動を言い付けられたものです。・・・あなたは、何故
     アメジストを身に着けているんです?」
オイゲンくんは言ってしまってから無駄なことを聞いたと後悔しました。
しかし率直にその疑問が浮かんだので、つい聞いてしまったのです。
魔術師「アメジストは、というより『運命の赤い糸石』は見につけるものの
     力によってその威力が変わるのだ。アメジストは魔力の強いものが
     つけると更に強く夢より夢のような幻を見せることが出来る・・・
     お前たちもパーティで見たであろう」
ミルザくん「あっ!あのすごい美しい会場は、それではあなたの力だったんですね!」
魔術師「・・・違う!私の魔力ではあそこまですることなど出来ぬ!何かがおかしいのだ、
     何か災いが・・・やはりか!お前たちは災いを連れてきたな!」
ミルザくん「ちょ、ちょ、良く分からないけど落ち着いて・・・」
うわあああああああああああ!!!!
ミルザくん「なんだ!?」
ミルザくんとオイゲンくんが叫びの方へと向きを変えると、バン!と扉が開き、
5人の警備兵は血まみれで倒れ、大量のモンスターたちの姿がそこにあったのです!
モンスター『アメジストの力・・・頂くぞ!!』

ミルザくん「どういうことなんだ!!」
オイゲンくん「なにかにつけられている・・・と思ったがモンスターだったのか!!
     くそっ何故モンスターが会場自体入れたんだ!警護はかなり厚くしてあったはずだ!!」
魔術師「・・・おのれ!君達、どうか聞いてくれ、君達にこのアメジストを託す、
     だからどうか守り抜いてディアナ嬢のもとへ・・・ここは私が預かる!!」
そう魔術師は言うと、ミルザくんの手にアメジストを持たせました。
ミルザくん「えっ!あなた一人でこんな大量のモンスターと!?・・・出来ません!!
     大体出口がモンスター達でふさがれてるドアしかな・・・」
オイゲンくん「つまりこういうことですね・・・ミルザ!!」
ミルザ「うっ!!」
ガシャーーーン!!オイゲンくんはミルザくんを引き寄せると、ガラス張りの窓から
二人で飛び降りたのです!
ミルザくん「うわああああああああああああああ!!!」

ぼすっ!落ちたところは幸い灌木のよく茂っているところで、それがクッションとなり
ミルザくんとオイゲンくんは無事でした。勿論オイゲンくんは計算づくでのこと。
ミルザくん「はあ、はあ、驚いた・・・しかしどうするんだ、アメジスト怪盗ごっこ
     なんていってる場合じゃなくなったぞ!」
オイゲンくん「とにかく他の警備兵に即伝えなければいけない!」
警備兵たち「大丈夫か、お前たち!」
オイゲンくん「おお!」
オイゲンくんとミルザくんが伝えに行くまでもなく、沢山の警備兵が
二人の下へ駆け寄って来てくれました。
オイゲンくん「ちょうど良いところに来てくれた!緊急事態だ、
     モンスターがパーティ会場内に侵入して・・・」
警備兵たち「もちろんとっくに知っているとも」
オイゲンくん「なに?・・・・・・・・・・・・!!!」
警備兵たちは警備服を破り捨てました。そこには・・・大量のモンスターの姿があったのです!
オイゲンくん「・・・・・・・!!!」
ミルザくん「警備兵が・・・!?」
モンスターたち『ばかめ!殆どの警備兵は最初っから俺達の変装だったのさ!!
      さあ、持っているアメジストを寄こせ!!』
ミルザくん「・・・ふっふざけるなあァーーーーーー!!!」
ミルザくんはしゃっとレフトハンドソードを柄から引き抜きました。ここに
二人と大量のモンスターの死闘がはじまっていたのです・・・




アルドラちゃんは数々のダンスの誘いもすげなく無視してミルザくんを探していました。
アルドラちゃん(・・・ミルザ・・・どこなんだ・・・!俺のちっちゃい勇気の灯火が
     消えてしまわないうちに・・・ああ、ミルザ・・・!!)

そんなアルドラちゃんの耳に高慢な高笑いが聞こえてきました。
振り向くとそう、サルーインちゃんです。
サルーインちゃん「お断りだ!!鏡見て来い!!あっちいけ!!壊れよ!!
     あーーーーーーもーーーーーーーキリがない!!貴様ら男子生徒など
     道具でしかないっつーのねえデス姉さん!シェラハ!アハハハハアハハ」
デスちゃん「ほんとはいい気になってるんだろ」
シェラハちゃん「道具と聞くと悲しいことを思い出すわ・・・ラストパーティに向かって
     道具のくせにと嘲った邪神の話。説教はされるわ、話聞いてもらえないわでも
     挫けずに調子に乗ってアハアハアハハと高笑いで戦いに挑んだのだけれど、
     いきなりくちばしという卑劣な罠にかかって石化して、そのままエンディング
     になってしまったの」
デスちゃん「・・・・・まああの笑いながら男共を蹴散らしてる様は邪神にふさわしいかもな・・・」
アルドラちゃんは心から侮蔑しました。
アルドラちゃん(サルーイン・・・あんないい気になってるだけの薄っぺらい
     女のお前はどこがいいんだ!?ミルザ!あいつは人をゴミほどにも思っていない・・・!)

ジャカジャーン!ギターの音が背後で響きました。そう、アルドラは初めて出会う、詩人です。
詩人「お美しいお嬢さん!あなたのその輝く姿は、あのサルーインちゃんにも引けを取らないでしょう!」
アルドラちゃん「・・・・・はっ!!皮肉か?
     (悔しいが、そんなことはあり得ないんだ、絶対・・・あの女は本当に綺麗だ)」
詩人「皮肉だなんて、まさかでしょう!あなたは美しい、サルーインちゃんに劣らず、
      いや!サルーインちゃんより美しいはずです!」
アルドラちゃん「なに?まさか、もうよしてくれ惨めになるだけだ・・・」
詩人「あのサルーインちゃんを良く見てください!本当に美しいですか?皮一枚は美しくても、
      中身は?美しいですか?何よりも醜いものが見えるんじゃないですか?
      あの姉妹達を見なさい!美貌に物を言わせて、男達をいいように弄んでいる
      彼女達は真に美しいものですか?」
アルドラちゃん「・・・・・・・・・・・・・・・あいつらは・・・女のクズだ!」
詩人「そうですか?あなたがそう思うのならば、それが真実です・・・
      真実を皆に見せてあげたくありませんか?本当のサルーインの、醜怪たる姿を!!」
アルドラちゃんは体をこわばらせ、目を見開き、サルーインちゃんを見つめました。
アルドラちゃんのドレスの胸の辺りから光が発し、アルドラちゃんの瞳の色は、
まるでアメジストのように光をきらめかせました。



ストライフちゃん「ふざけるなああ虫けらヘイトがあぁ!!!全部お前のせいだこの虫!虫!虫けら!!」
ヘイトちゃん「ヘェイトはぜぇえんぜん悪くないもーーーーーーん!!スットライフが悪いんだもォん
      ストライッフがわぁるいんだもおおおおおおおおおん!!☆◎ж!!」
ストライフちゃん「人の名前をアヒャ語で発音するなあああぁ!!!!!!!!!」
ワイルちゃん「ちょっと、ちょっと、もうやめましょうよ、もう過ぎたことでしょ、
      あーんもうフリータイムなのにこの二人のせいで全然お誘いがこなあい・・・泣」

ガシャーーーーーーン

ワイルちゃん「なんだ!?」
生徒A「きゃあああああああああああ!!」
生徒B「モンスターだあああああああああああああ!!!」
ストライフちゃん「モンスターだと?何故だ?ワイル、何かモンスタークラブに作戦はあったか?」
ワイルちゃん「なにもないはずです、こいつらは・・・別の所属!」
ヘイトちゃん「あひゃあぁぁぁああ!!パーティをぶち壊しとは無粋なやつらだなァ、
      もうちょっと衝撃的じゃないとォオ!!ヘイトが変装とく時みたいに☆★☆」
モンスター『アメジストを持っている「ミルザ」はどこだああ!!』
ワイルちゃん「ミルザだって!?ミルザさんが既にアメジストを??!」



詩人「さあ、よく見て、あの醜い姿を!醜い、醜い、サルーイン!
      ミルザをたぶらかす、真実は醜いサルーインを!!」
アルドラちゃんはかっと目を見開きました。
ガシャーーーーーン!それと同時にモンスターたちの襲来があったのです。そして・・・
生徒C「逃げなきゃ!・・・ここ、この会場なんか暗くなってないか?」
生徒D「そんなこといってる場合じゃ・・・!・・・いや・・・確かに暗く・・・おぞましいような」
サルーインちゃん「アハ、アハ、アハハハハハ・・・・?」
生徒H「あ・・・あ・・・」
サルーインちゃん「ん?なんだというのだ。折角この私に近づけたんだからもうちょっと
      ましな喜び方を・・・」
生徒達「化け物だァーーーーーーーーーーーー!!!!」
サルーインちゃん「はあ!?おい、ちょっと待ててめーら!!あっ化け物級の美しさってことか♪
      アハハハハハハハハハハ」
デスちゃん「いや違うサルーインちゃんこれは・・・!」
シェラハちゃん「サルーイン姉さんだけじゃないわ・・・私達も・・・!」
サルーインちゃん「何だっていうんだ!・・・・!!!!」

サルーインちゃんたちは気が付きました。自分達が・・・世にも禍々しい、醜いモンスターの
姿になっていることを!

???「あの三匹がモンスターの親玉だ!!」
生徒達「きゃあああああああ!!」
三姉妹「・・・・・・・・・・・・・・!」
生徒達は混乱し、恐怖し、三姉妹達の側から逃げてゆきました。しかし、
中には勇敢な生徒もいたのです。
生徒V「くそ、モンスターの親玉めえ!食らえ!!」
三姉妹「きゃっ!!!」
武器を振り回す生徒達に囲まれ、三姉妹は訳のわからないままモンスターと生徒達との
真ん中に取り残されてしまいました。
デスちゃん「どうなっているんだ、これは!!!」



ツフ「腕が鳴るねえ!!!」
アルベルト「ちょ、ちょ、僕を担ぎながらスピアーなんて・・・うわあああああああ!!」
突如襲来したモンスターたちにも、果敢に立ち向かい人々がいました。
ディアナ「女も戦うのがイスマス寮の規則・・・ディアナ、参る!!」
ナイトハルト「イクゾー」
以外にも腕の立つ人々が生徒側にもいて、もう一巻の終わりかと思われたモンスターの
襲来にも、パーティの生徒達は極少数ながら互角に渡り合っていました。
ワイルちゃん「汚名挽回の好機到来じゃないですか?」
ストライフちゃん「仕切り直しといったところだな」
ヘイトちゃん「前座はこれまでよォオオ!!我々の本当の華麗なる舞、見よ!!」
三人「トライアングルフォーメーション!!」
赤い情熱の舞が次々とモンスターをなぎ倒してゆきます。その華麗さに、
この危急の事態も忘れて見惚れている生徒達もいました。
ミニオンちゃんたちの華麗なる熱情のリズムが、殆どのモンスターたちを
撃破してしまいました。
・・・・わあああああああああああああああ・・・・・・
ここではじめてミニオンちゃんたちは、本当に観客から歓声が頂けたのでした。
三人は顔を見合わせ、にっと笑ってから最後の決めポーズをジャンッ!!と決めました。



モンスター『くそー・・・予想外だ・・・これはこっちの分が悪いぞ・・・』
???「はあ、はあ、やっと会場だ!!」
モンスター『ん?・・・ミルザだ!!』
ミルザくん「はっ!こっちにもモンスターがいたのか!」
ミルザくんたちがモンスターを全滅させ会場へたどり着くと、こちらにもモンスターの大群がいたのです。
会場は禍々しく歪み、なにかおぞましい生き物の胃の中のような様を呈していました。
オイゲンくん「だが大半は既に倒れているらしい!ミルザ、後始末くらいの余裕はまだあるな?」
モンスター『何をごちゃごちゃ言っている!!『幻のアメジスト』、渡せ!!!』
生徒K「ミルザだ!!」
生徒達「ミルザ!!!」
バイトでモンスター退治をよくやっているミルザくんはすでに生徒達によく知られていました。
生徒達が救いを求める目で彼を見つめる中、ミルザくんとオイゲンくんはそれに答えるように
モンスターを切り裂いてゆきます。
モンスター『お、おのれぇ〜・・・お前達、ここは一旦引くぞ!』
そのモンスターの一声に、モンスターたちはさっさと逃げてゆきました。
しかし一向に会場の禍々しい雰囲気が消えません。

???「こっちにモンスターの親玉がいる!!」

その時叫びがあがりました。ミルザくんたちが振り向くと、そこには
三匹の世にも禍々しいモンスターがいたのです。
ミルザくん「・・・な、なんて・・・醜い・・・!あれがモンスターの親玉か!?」
詩人「そうです、彼らを倒さないことにはこのパーティは破滅の儀式に変わるでしょう!」
ミルザくん「・・・あなたは!?」
詩人「私などにかかずらっている暇はありません!サルーインちゃんはすでに
     「『あの化け物』に喰われたのですよ!」」

ミルザくん「――――――――――――――――――――!!!!」



アルドラちゃんは考えていました。
なんて醜い、人を嘲り、愚弄し、利用し、支配し、ゴミほどにも
思わない女達・・・この世でもっとも醜いものではないか!そんな女に何故ミルザを
奪われなきゃいけない!ミルザは俺のものだ、俺がミルザを幸せに出来る、
―――――俺はミルザを愛してるんだ!!
ミルザくん「おのれぇえええええ!!!!よくも!!よくも!!!
     僕はサルーインちゃんを愛していたんだーーーーーーーー!!!!」
アルドラちゃん(――――――――――!!!)



サルーインちゃん「―――!!!」
醜く変わった自分に襲い掛かってくる生徒達を三人で蹴散らしていた姉妹達でしたが、
サルーインちゃんに今までとは違う程の覇気の青年が銀の剣を持って立ち向かってきました。
その時何かを叫んでいたような気がしましたが、それは他の生徒の騒ぎ声で聞こえませんでした。
サルーインちゃん(やられる――――!!!)
サルーインちゃんは抵抗しようとする前にすでにそう悟りました。

しかしその時です。
ミルザくんの目の前の化け物は幻のように美しいサルーインちゃんの姿に変わったのです。
ミルザくん「あっ!?」
ドサッ・・・
・・・ミルザくんは、突然のことに剣先を逸らそうとバランスを崩し、
そのまま『化け物』・・・サルーインちゃんにのしかかってしまったのです。
生徒達「あれ・・・・っ?」
生徒達は会場内を見渡しました。あの禍々しい感じは消散しましたが・・・
先ほどまでの素晴らしすぎる幻想の会場の趣は消えて、なんだか普通というか、
なんだか夢の世界から戻ってきたかのような、そんな感じになっていました。
ミルザくん「・・・サルーインちゃん・・・?」
サルーインちゃん「おまえは・・・」
ミルザくんは今何が起こったのか混乱してよく掴めずにいました。しかし
サルーインちゃんの次の一声で、はっとしました。
サルーインちゃん「下がらないか!身の程知らずめ!」
ミルザくん「はいっごめんなさい!!」
条件反射的にサルーインちゃんから身を引いたミルザくんでしたが、いきなりぶッと
鼻血をふきだしてしまいました。サルーインちゃんは一糸もまとわぬなんともあらわな姿だったのです。

ミルザくん「さ、さ、さ、・・・」
サルーインちゃん「なんだったんだ全く・・・」
デスちゃん「それよりサルーインちゃん・・・私達・・・」
シェラハちゃん「裸と聞くと・・・裸・・・きゃああああ!!!!」
サルーインちゃん「ん?あれっ」
三姉妹は一人残らず完全な裸体をその場に晒していました。おおお!と男子生徒たちの
鼻血がふきだすことふきだすこと。シェラハちゃんは結っていた髪をばさりと垂れました。
シェラハちゃん「私の髪にくるまって!姉さん達!・・・ああ今日はなんて悲しい日なの!!」
そうして三姉妹はそそくさと逃げ帰ってしまいました。ミルザくんはとめどなく流れる鼻血を
気にすることもなく、呆然と夢心地のなかにいました。
ミルザくん「・・・今日はなんて素晴らしい日なんだ・・・」
ルドルフ「あのー、妄想中すまないんだが、ミルザくんだね?」
ミルザくん「・・・はっ!はい!僕がミルザです!」
ルドルフ「なにやらさっきモンスターたちが君が『アメジスト』を持っていると言っていたようだが
     ・・・どういうことかね?」
ミルザくん「はっ!(あー、もうしらばっくれられない)えーと、これですね!?これ・・・」
ミルザくんが懐から『アメジスト』を取り出し、ルドルフに渡そうとした瞬間!

パリン・・・

ミルザくん「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ルドルフ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
・・・なんと、『アメジスト』は砕けてしまっていたのです!それも当然でしょう、
ディアナがすり替えた偽物なのですから。しかしそれを知らぬ会場の人々は、騒然としました。
生徒W「アメジストは本物じゃなかったのか!?」
生徒J「すべてルドルフ寮長のうそっぱちだったのか!?」
ざわざわ・・・・
ディアナ(まずいわ・・・こんなことになるなんて・・・もっと丈夫な石にしておけば
     よかった・・・ああ、このままじゃお父様が窮地に立たされる!)



ナイトハルト「みな、静粛に!」
ナイトハルトくんの一声に、会場はしんと静まりました。ナイトハルトくんは続けました。
ナイトハルト「今日私とディアナを祝うために集まっていただいた方々に
     このような不祥事、誠に面目ないことと思う。しかし、私はこれを好機と受け取り、
     愛するディアナに、幻のアメジストなどよりも、これを送りたい」
そういってナイトハルトくんはディアナに近づいてゆき、すっと何かを取り出しました。
生徒達「あれは・・・」
ディアナ「・・・!これは、ナイトハルトさん!」
ナイトハルト「そう、銀の指輪だ。受け取ってほしい・・・私と婚約をして欲しい!」
わあああああああああ・・・・会場が一声に沸きあがりました。
ルドルフはアメジストのことなど忘れ涙を流して大喜び。ミルザくんはほっとしました。
ミルザくん「しかし砕けちゃうなんて・・・これも糸石じゃなかったってことかなあ・・・
     はあーいつになったら糸石に近づけるんだろう?」
???「ミルザ・・・」
ミルザくん「うわっ!!!・・・・ん?・・・!!アルドラ、アルドラかい!?」
ミルザくんの側には『すでにダークちゃんの姿に戻った』アルドラちゃんが立っていました。

ミルザくん「アルドラ、アルドラなのか!?一体今までどうしていたんだ、一体・・・」
アルドラちゃん「これ、やるよ・・・」
ミルザくん「え?・・・!!」
アルドラちゃんが差し出したものこそ、正真正銘、本物の『幻のアメジスト』でした。
ミルザくん「これをどうして!!・・・そうだ!アルドラ、これには幻を見せる力が
     あるらしいんだよ!これを君が使えば前の姿でもいられるかも・・・」
アルドラちゃん「いいんだ・・・今の俺には、この姿こそふさわしい」
ミルザくん「アルドラ!?一体・・・はっアルドラ!!」
アルドラちゃんはアメジストをミルザくんに押し付けた瞬間にミルザくんの目の前から
消えうせてしまいました。アルドラちゃんは押し付けて触っている最後の瞬間に、『幻のアメジスト』の
力を借りたのでした。
ミルザくん「・・・アルドラ・・・」

会場は祝いだ酒だの大盛り上がり。ミルザくんは途方にくれて、左手に『アメジスト』を持っていました。
ヘイトちゃん「・・・今回もなんか他のやつらに飲まれちゃったって感じィ☆★☆??」
ストライフちゃん「・・・一番目立ちが出来ないのは私達の運命かもな」
ワイルちゃん「・・・まあ脇役は脇役らしくよい味出してろってことですかね・・・はあ〜」



数日後・・・
ミルザくんとオイゲンくんはイスマス寮へ、先日のパーティでのモンスター退治の
恩賞で、イスマスへと来ていました。しかしイナーシーと呼ばれる湖で思わぬ嵐になり、
着いたのが夜になってしまっていました。イスマス寮の庭園で二人は彷徨っていました。
オイゲンくん「こんな夜じゃどこがルドルフ寮長のいる客間ヘの道かわからないな」
ミルザくん「案内人くらい置いといてくれればいいのに・・・あっあそこ明かりがついてる!」
ミルザくんとオイゲンくんは明かりのついた部屋に近づくと、中に人がいるのを認めました。
しかしそれはルドルフではなく、鏡を見ているナイトハルトくんでした。
ミルザくん「ナイトハルトさんか。婚約か、いいなあ〜・・・次探そう、次」
オイゲンくん「待て!・・・あいつ、なにしてるんだ?」
ミルザくん「なにって・・・鏡見てるんでしょ?美形だからさあ〜はは」
オイゲンくん「鏡に話しかけるものか?」
ミルザくん「え?」

・・・・・
・・・・・そう、・・・じったが、何とか上手くおさま・・・石は持っていかれた・・・
多分ウェ・・・・・・の配下だと・・・しかしアクアマリンの在りかを・・・あの・・・為に・・・

ミルザくん「・・・・・・・・・・!?」
オイゲンくん「・・・・・確実に独り言じゃないな、しかもアクアマリンときたもんだ・・・
     ミルザ、こいつはもしかして、お前の強大なライバルかもしれないぞ・・・?」
かくしてミルザくんの前に新たなる敵が立ち塞がったのです。
ナイトハルトくんという謎の強敵が・・・。


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