第13話「クリスタルレイクプールご招待」

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ミルザくん「サルーインちゃん・・・!どうか無事でいてくれ・・・!」
ナイトハルトくん(ミルザ殿・・・どうか無事じゃなくなってくれないかなあ〜)

ミルザくんとナイトハルトくん、ジャミル達は遂に傷つけるサルーインちゃんの待つ
アクアマリンの洞窟Eに入り込み、中を躊躇もなく駆け抜けているところでした。
ジャミルくん「ぐえ!!!」
ナイトハルトくん「どうしたミルザくん!!♪・・・なんだよオマケのほうかよちっ」
ミルザくん「ジャミル!?」
ミルザくんが見ると、ジャミル君の首にリザードの舌がまきついていることがわかりました。
ミルザくん「これは・・・・・・」
ストライフちゃん「ミルザか!?お前達もここへ来たのか!!」
ミルザくん「ストライフちゃん!?・・・ゲラ=ハ!!お、おい何やってるんだよ
      ジャミルの首から舌をはずしなさい!!」
ゲラ=ハ「はっ!!・・・す、すみません・・・虫に見えたものですからつい
     種族として生き抜くための厳しい自然の本能が」
ジャミル「ゼーハーゼーハー・・・おいゲラハ!!!俺のどこが虫に見えるんだよコラ!!」
ストライフちゃん「色とかじゃないか?」
ナイトハルトくん「耳が昆虫の羽のようにも見えるな」
ミルザくん「何を今更お前触覚あるじゃないか。・・・はっ!!む、虫とジャミルの関連性なんて
      どうでもいい!!それよりサルーインちゃーーーん!!!みんな、行こう!!」
ナイトハルトくん「イクゾー
      (仕切ってんじゃねえよああでもそういわれるとついこう答えちゃう・・・!)」
ストライフちゃん「ふん、行くぞ虫けらども!!」
ジャミルくん「・・・触覚じゃねえよ髪の毛だよ・・・!!ちくしょー俺泣くぞ・・・!!」
ゲラ=ハ「・・・教えてくださいジャミルさん・・・虫と虫けらの違いを学ばねば
     私は人間と友達になれないのでしょうか・・・・・・!!(泣)」
ジャミルくん「うるせえよ何でお前が泣いてんだよ泣く立場は俺だろ!!
      俺は虫でも虫けらでもねえ!!人間なんだ!!・・・なんでこんなところで
      部分だけ見ると感動的な台詞言わなきゃならねーんだよあああ!!!」
ストライフちゃん「おい虫けら何をごちゃごちゃやってる!!さっさと来い!!」
ジャミルくん「うるせええええええええ!!!(泣)」
そう言いつつも駆け出したジャミルくん・・・集結した五人はその身もその意志も一丸となって
サルーインちゃんを救うため冷たさの漂う奥へと向かっていきました。



サルーインちゃん「なんだと!?」
美しい顔を驚愕に歪ませるサルーインちゃん。
スペクター「ふふん、わが正体に驚いたか?さもあらんことよ、美しい乙女!」
スペクターは勝ち誇った堂々たる様子でサルーインちゃんを見返します。
サルーインちゃんはきっとスペクターをねめつけました。
サルーインちゃん「名を名乗れと言ったが自己紹介しろとは言っておらんわ!!
     お前の職業とか趣味とか特技とかまじでどうでもいい!!いきなり初対面で
     名前名乗ったあとに自分の詳細なプロフィール語りだす男って最悪!!初対面で
     千年前の愚痴言い出す男なみに最悪!!つーかごちゃごちゃ言ったから
     名前がどれだかわからなかったわ!!というかよく考えたらお前の名前自体
     どうでもいい!!家に帰れ!!」
スペクターくん(ガーーーーーーーーン!!!)
かなりかっこつけたつもりだったスペクターくんは初めて近づけた女性にいきなり
こっぴどくこき下ろされて、かなりのショックを受けました。
スペクターくん「そ、そんなに長い自己紹介しなかったつもりだもん!!ていうか
     趣味と特技は言ってねえよ!!ていうか趣味と特技なんてないもん!!(泣)
     名前くらい覚えてくれたっていいじゃん!!帰る家なんて僕にはないもん!!(泣)」
サルーインちゃん「だから聞いてねえんだよこの無趣味特技欄真っ白が!!お前壊れちゃえよ!」
スペクターくん「結構細かいところまで聞いてるじゃないか!!(泣)」
スペクターくんは女性への憧れを壮大に崩壊させられたことでかなり激昂してきました。
スペクターくん「もう良い!!わ、私はあなたと掛け合っているほど退屈を
     持て余しているわけではない!!程なく正義面したミルザがあなたを
     救いにやってくるだろう、私の為にアメジストをたずさえてな!!
     ・・・その前にあなたから返してもらわねばならぬものがある、さあ!
     『魔のエメラルド』、その白い胸から返して頂こう!!」
サルーインちゃん「―――――アメジストだとぉ!?」
サルーインちゃんの短い叫びが終わりもしない間にスペクターくんの黒い手が伸びてきました!

ミルザくん「待てーーーーー!!!サルーインちゃんに汚い手で触れるな!!」

スペクターくん「!」
突如レフトハンドソートを左手に、スペクターくんに飛び掛ろうとしたミルザくんが現れました!
スペクターくん「僕手は洗う習慣あるから汚くな・・・じゃなくて来たな!『アクアマリン』よ!!」
ミルザくん「―――――っ!!!」
飛び掛ったはずのミルザくんの前に一瞬にしてあのおぞましい巨体、大イカが出現し
ミルザくんは思い切りその巨体にぶつかって、勢いよく跳ね返されてしまいました!
ミルザくん「――――く!!」
ゲラ=ハ「大丈夫ですかミルザさん!」
ナイトハルトくん「・・・これが転送装置の力か・・・!」
ゲラ=ハに受け止められたミルザくんは即座に体制を持ち直し、
怒りに燃えた目でイカを見据えました。
ミルザくん「邪魔だ!!!そこをどけえーーーーーーーーーーーーー!!!」
ストライフちゃん「ばかな!ミルザ怒りに任せての無謀などやめろ!!」
ミルザくんは今までの経験も忘れて切れないイカに再び飛び掛りました。
水中の戦いではサルーインちゃん救出という第一の目的の為に慎重と冷静とを無くさなかった
ミルザくんでしたが、今は目の前をさえぎる邪魔な壁を打ち壊そうと後先も考えず全力で
立ち向かっていたのです。



きらめく切っ先に全ての力を込めたミルザくんにイカの触手が伸び、その強大な力で
ミルザくんをなぎ払おうとしました!
サルーインちゃん「馬鹿者よさぬか!!やめろ―――!!」
ジャミルくん「駄目だミルザ!!―――――あの捨て身では避けきれない!!あっ―――!!」
ジャミルくんが反射的に目をつむり、そろそろとまぶたを開けると、
カキン!槍を華麗に操り、触手を逸らしてミルザくんを助けたナイトハルトくんの姿がありました。
ミルザくん「ナ、ナイトハルトくん・・・!助けてくれたのか!!
      (怒りに我を忘れたバカな僕を助けてくれるなんて・・・なんていい人なんだ!!
       オイゲンに続く第二の親友が僕の学園ライフに現れたかも・・・・・!!)」
ナイトハルトくん「大丈夫か、ミルザどの。心中察するが今は冷静さこそ必要な時だ。
      今命を無駄にするような若気の至りはよくない。
      (こんな死に方されちゃあ思いっきりサルーインちゃんの心に残ってしまう!
       もっと「あれっ死んだんだー」みたいな?「あれっ髪切ったのー?」って
       髪を切ってから一週間後に言われるあの感覚みたいな?そんな感じで
       「なんかいつの間にか死んでた」じゃなくちゃ駄目駄目駄目!!)」
ミルザくんとナイトハルトくんは構えを直すと、じりじりと慎重に大イカのスキを
見計らおうとします。しかしミルザくんにはもう心の隅に絶望の影が射しはじめていました。
ミルザくん(何度切りつけても無駄だったこの化け物に・・・どう立ち向かう術がある?)
ミルザくんはイカのうねる触手の隙間からのぞく傷だらけのサルーインちゃんの姿を見て
ますます心を痛めました。そのサルーインちゃんはというと、
ストライフちゃんに焦燥した様子で話しかけ始めました。
サルーインちゃん「ストライフ!!なぜお前しかいない、ミニオンは三人だろう!!
      三人揃ってこそのミニオンであろうが!お前ら一匹だとただのゴミって
      いい加減自覚しろよ!!」
ストライフちゃん「そ、それが分散してしまって・・・ってなんかさりげなく
      すごいひどいこと言ってるじゃねえか!!ほっとけよ!!自覚してるよ!!」
サルーインちゃん「自覚してたのか。・・・あああどうでもいい!!何故別れ別れに
      なってしまった!!おのれっそもそもミルザ以外が追ってくることを
      考慮しなかった私のミス・・・じゃないもんエロールちゃんの卑劣な罠だああぁ!!」
ストライフちゃん「エロールちゃんは今回一切関知してません」
ジャミルくん「なんかここまで自分の失敗を認めようとしないですごい脈絡ない責任転換
      出来る人も結構すごいな」
ゲラ=ハ「あの生徒会長にも同情されるべき要素が一つぐらいはあるんですね」
サルーインちゃんが焦りを隠しきれぬその時に耳障りな嘲笑が洞窟に響き渡りました。
スペクターくん「ははははは!!せいぜい足掻いて私を楽しませてくれたまえ!!
      サルーインちゃんも『魔のエメラルド』もアクアマリンも私のものよ!!
      ミルザ、精一杯足掻いて私の可愛いしもべに嬲り殺されたあわれな君からは、
      大切な形見として『幻のアメジスト』を私がちゃんといただいてあげよう!!」
ストライフちゃん「――――ミルザ!?貴様『アメジスト』を持っているのか!?」
戦いの姿勢をしっかりととっていたミルザくんでしたが、言われてはっとしたように
水着の下腹の辺りを探りました。
ミルザくん「そう言えば、一応空き巣も心配だしと思って持ってきたけど、
      首にかけてて目立つような真似してたらそれも強盗されそうだと思って
      ストッキングに入れて腹に巻いて水着の中に隠してた・・・・・・・・」
ストライフちゃん「・・・貧乏人の警戒心とは流石だな・・・・・―――――!!!」

スペクターくん「!!」
ミルザくんがそっとアメジストを取り出すと、アメジストは光り輝き、
サルーインちゃんの胸元の奥の『エメラルド』もまた光を放ち、
そしてまた、スペクターくんの『アクアマリン』もスペクターくんの半透明の体の中から
まぶしい光を放ち、その在りかを確と示していました。
ミルザくん「――――――それは『アクアマリン』!!お前の暗黒の体内にひそませていたとは!!」
スペクターくん「・・・・これは!!糸石が共鳴しているというのか!!・・・のれェェ
      わざわざ体内に隠していたものがこんな形でばれようとは!!」
サルーインちゃんの目が光りました。
サルーインちゃん(『アメジスト』は『アクアマリン』と違い持ち主のミルザは支配しきれていない。
      『これだけ近ければ私の魔力が操れる!!!』―――そして『アクアマリン』!!)

サルーインちゃんは目にも止まらぬ様な速さでさっとスペクターくんに『何か』を投げつけました。
――――カン!
スペクターくん「―――――――――――!?」
悪霊系のスペクターくんの体はほとんどの攻撃をもすり抜けます。そしてその時も、
サルーインちゃんが投げたものはスペクターくんの体を通り―――中にあった
『水のアクアマリン』にぶつかってともにスペクターくんの体からすり抜けて行ってしまったのです!
スペクターくん「なにを!!おのれこれで味な真似でもしたつもりか、私の体を離れようと
      そんな近くのアクアマリンなどすぐに取って―――――!!?」
スペクターくんは地に目をやり、その目を疑いました。

自分の体内から飛ばされた『水のアクアマリンが二つある!!』

ミルザくん「・・・・・・・・あ・・・・あれは!」
ナイトハルトくん「アクアマリンが・・・二つある!?同じものがふたつある!!これがわからない!」
ミルザくんは気付きました、サルーインちゃんが投げたのは
『自分が渡したアクアマリンの形を繕った『水の精霊珠』だ』ということに!
スペクターくん「これは・・・一体!!」
サルーインちゃん「ゲッコ族!!『本物のアクアマリン』のほうを舌で取れェ!!!」
スペクターくんが当惑したすぐにサルーインちゃんはゲラ=ハへと叫びました。
ゲラ=ハ「・・・・!!し、しかしどちらが本物が私にもわからな――――あっ!!」
ゲラ=ハは考える前に舌を伸ばし、イカの触手の隙間をすり抜けて二つ並んだ『アクアマリン』の
片方を掴んでいました。ミルザくんのアメジストが光っていました。サルーインちゃんは
一方の『アクアマリン』をアメジストの幻惑の力で虫に見せかけたのです!



ジャミル「ゲラ=ハ!!よくやったはやく―――――・・・!」
ゲラ=ハ「うっ!!!」
掴んだと思った『アクアマリン』はスペクターくんの間髪入れぬヘルクローが、
ゲラ=ハの舌を攻撃し取りこぼした瞬時にスペクターくんの禍々しい爪の中へと
奪い返されてしまいました。
スペクターくん「舌癖の悪いトカゲとは全くいまいましい生物だ・・・!!私から
      くすねられるものと思ったあなたが少しばかり愚かでしたね、破壊の姫・・・!?」
スペクターくんがアクアマリン奪還に無我夢中になっているその時に、
サルーインちゃんは忽然と姿を消していたのです。
ミルザくん「あっあれ!?サルーインちゃんは・・・」
サルーインちゃん「こっちだばかものども!!」
その声はミルザくんの背後から聞こえました。ミルザくん達は驚いて振り向きました。
サルーインちゃんの姿がありました!
サルーインちゃん「『アクアマリン』は一旦諦めるぞ!!今は私の持つ『エメラルド』を
      守り抜くことを優先する!!逃げるが勝ち!!勝つのは常に私!!
      だからこれは逃げではない!!さっさと退却だ!!!」
サルーインちゃんはそういい切ってすたたたたーーーーーと走り去っていきます。
ミルザくん「ま、待ってサルーインちゃーーーーーーん!!君は傷だらけじゃないか!!
      お姫様抱っこして僕が運んであげるからちょっとストップしてーーーーー!!」
ストライフちゃん「さりげなくいい思いしようと思うなさもしい虫けら。仕方ない、ならば従うか!」
ジャミルくん「危険は避けるのが泥棒の基本ってね・・・ちと惜しいが、まあ仕方ねえや!」
ゲラ=ハ「私のミスのせいですみません、すみません!!虫だと思ったのにーーーーー!!」
皆がサルーインちゃんの後に続いていきます。
スペクターくんは『アクアマリン』を握り締め余裕の姿勢を崩しません。
スペクターくん「ふん、なかなかさかしい姫君だ。どうやってあの大イカからすり抜けて
      あちらまで渡ったか見なかったが・・・まだまだこどものずるがしこさよ!!
      所詮私の手中に『アクアマリン』はある!!これがある限り大イカを操り
      どこまでもあなたと取り巻く小人達を追い詰めよう!!大イカ!!転送し、
      入り口で待ち構えるのだ!!行け!!!」

・・・・・・・

大イカは一向に動く気配がありません。スペクターくんは一瞬にして困惑しました。
スペクターくん「どうした大イカ!!行け!!行かないか!!!・・・・
      なぜ動かん!!動け、大イカ!!『アクアマリン』の支配者たる私が――――」
???「残念だったな、『アクアマリン』の支配者よ!」
スペクターくんは上から響いたその高慢にして高潔なる声にばっと面をあげました。
―――大イカの上に優雅に立つ、破壊の女王サルーインちゃんの姿がそこにあったのです!



スペクターくん「なっ・・・・・!!さ、さっきあなたは!!」
サルーインちゃん「少しばかり私は憤っているぞ!!あれを『まやかしの私』と気付くやつが
      全くいないとは!!!この輝くオーラがまるで段違いだっつーの!!!
      お前ら貧乏だからって金惜しんでないで眼鏡買ってこい!!・・・と。
      まあお前ももう察しが付いたことだろうがあれは『幻のアメジスト』の力を借り
      私が作った幻覚。・・・そして奴らには外に出てもらった、
      こんな狭苦しいところではなく『外』で全員集結してもらうのよ!!」
スペクターくん「何を言っているか!何を・・・そ、それよりこの『アクアマリン』は!!」
サルーインちゃんは大胆不敵な彼女にだけ許された微笑を返しました。
そして谷間に手を入れると、すっと取り出したのです、『もう一つのアクアマリン』を!
スペクターくん「―――――――たばかった、最初からたばかったのだなサルーイン!!」
サルーインちゃん「アッハ!!ゲラ=ハに取らせようとしたほうが本物だと勝手に思った貴様が
      間抜けだ、それにどうだ?『本物のアクアマリン』は貴様なんぞより本物の
      私にこそふさわしいと思わぬか?・・・貴様などゴミのような輩には千年早いわ!!!」
スペクターくんはわなわなとその半透明の体を揺らし、意にも介せずサルーインちゃんは
大イカの表面をそっとなでました。
サルーインちゃん「こんな気色の悪いやつをよくもかわいがっていられたものだ・・・
      しかし確かに『真の支配者』には従順なことだな。まあせいぜい用が済むまで
      この私もかわいがってやろう・・・さらばだな!今度はもっと気の利いた
      自己紹介を考えてくるがよい、つかの間のアクアマリンの支配者よ!!」
スペクターくん「待てェ!!!」
スペクターくんが叫んだと同時にサルーインちゃんと大イカは転送して行ってしまいました。
スペクターくんは勢いに任せて偽のアクアマリン、『水の精霊珠』を地に叩きつけました。
スペクターくん「おのれ!おのれ!おのれ!最後までコケにしよって・・・私の手から
      逃れられると思うな!!この六将魔スペクターをコケにした報いは重いものだ!!」
スペクターくんは洞窟の壁をなんの差し障りもなく通り抜けようとしました。

しかし突然!ガッとその身を攻撃されたかと思うと、誰もが去ったと思われたその洞窟内には
まだ一つの人影が残っていたのです。・・・長く黒い槍、ナイトハルトくんでした。
ナイトハルトくん「ここから通すわけにはいかないな、私はここに来た時から気付いていたのだ。
      ここから出せばことは面倒、お前の始末を引き受けるのも悪くはない。
      ・・・・・・今回はミルザに手柄を渡してやるのは致し方ないな、
      私の目的は目先などではなくもっと遥か彼方にある・・・・・
      長期プラン、計画性のない男は結婚相手としてよくない。先見の明を持ち、
      老後まで安心の人生設計こそが肝心。私の人生プランに抜かりはない。
      しかし保険会社はどこがいいのか、いまだにこれがわからない」
スペクターくん「何をぶつぶつボケ老人みたいにほざいている!!私を止められると
      思っているのか!!私は物質など物ともせずに空間を漂う旅人!!
      お前がいくらここに留めようと思っても・・・・・――――――!?」

ナイトハルトくんはニヤリと笑いました。



サルーインちゃん(・・・魔のエメラルド、水のアクアマン、汝ら我が真の力を
      引き出せ・・・このクリスタルレイクの全域に、響けよ!!!
      『幻のアメジスト』、その力を今こそ示せ!!!)



ジャミルくん「・・・・・・ミルザ、『アメジスト』が・・・・・」
ミルザくん「・・・・・・・・光っている・・・・・・・・・?」



―――――洞窟A。
デスちゃん「本当にサルーインはここにいるのか・・・ああ妹よ、こんなことなら
      もうちょっと今まで育ててやった苦労の仕返しをしておくんだった!」
オイゲンくん「・・・・・あんたの愛情は見事に歪んでますね・・・・・
      ――――!?・・・サッサルーインちゃん!?」
デスちゃん「なに!?サルーイン!?」
デスちゃんとオイゲンくんは驚きました。そこにサルーインちゃんの姿をはっきりと
認めたからです!
デスちゃん「・・・おお!!サルーイン、サルーイン!!無事だったのか!!
      人様に心配をかけるなと姉ちゃん昔っから言ってただろうが!!あとで
      謝りに家を回るのがめんどくさいから!!!サルーイン、ああ良かった・・・!」
デスちゃんがサルーインちゃんに触れようとすると、サルーインちゃんは飛び退って
甲高く高笑いをあげました。
サルーインちゃん『アハアハハハハ!!!この骨太姉貴!!牛乳でも飲んでろよ
      成分がカルシウム100%のいいオ・ン・ナ!!アハハアハハハハ!!!』
・・・デスちゃんは唖然として・・・・・・・・その後猛烈に怒りだしました。
デスちゃん「この社会不敵合格妹ーーーーー!!!今度という今度はただでは済まさん!!!
      世間から抹消してくれる世間の晒し者にならぬよう煉獄最下層に
      永遠につないでいてくれるーーー!!!姉ちゃんが永遠に嫌がらせしてやるーーー!!!」
サルーインちゃん『アハアハアハハハハハ!!!』
サルーインちゃんは逃げていき、デスちゃんは全力で後を追います。オイゲンくんは呆然と
しながらも、一応何となく後に続きました。
オイゲンくん(・・・すごいもん見たけど・・・・・・・く、くだらねー・・・・・)
・・・・・こうしてデスちゃんとオイゲンくんは洞窟の外へと向かっていきました。



―――――洞窟B。
シェラハちゃん「悲しい話〜悲しい話〜あ〜も〜めんどくさくて悲しくなってきた」
ワイルちゃん「しぇ、シェラハちゃん!!!サルーインちゃんの一大事なんですよ!!!
      サルーインちゃんのことが心配じゃないんですか!!」
シェラハちゃん「心配と聞くと悲しいことを思い出すわ・・・姉を心配してやまない妹の話・・・・・」
ワイルちゃん「あ・・・・・・ご、ごめんなさい・・・大切なお姉さんを心配じゃないわけが
      ないですよね・・・・・私が浅はかでした」
シェラハちゃん「・・・・・姉さん・・・・・姉さんどこにいるの?姉さんを探してる間に
      悲しい話のネタが全部切れてしまいそうなほどに探してる時間が長く感じるのよ!!
      サルーイン姉さん!!」
サルーインちゃん『悲しい話と聞くと悲しいことを思い出すわ・・・・・』
ワイルちゃん「――――――サルーインちゃん!?」
二人が振り返ると、サルーインちゃんがいつになく気だるげな表情をして、
・・・そうちょうどいつものシェラハちゃんのように、そこに妖しげに佇んでいました。
シェラハちゃん「姉さん!!姉さんなの!ああ、悲しい話リストに載らなくて良かった姉さん!!」
シェラハちゃんが抱きつこうとするとサルーインちゃんはするりと避けて、
シェラハちゃんは豪快に転びました。・・・顔を思いっきり地面に引きずってしまったようです。
サルーインちゃん『いつも悲しい話をしている女の話。いつもいきなり脈絡なくみんなの
      楽しい会話に割り込んできて、超長い自分語りしてその場を闇に落として、
      しかもその話がとてもつまらなくてそれはそれは時間が長く感じるの・・・・・
      そうそう・・・その話のシリーズによく出てくるキーワードが
      『黒髪の絶世美女』なんだけど・・・・・ぷっその顔では言えたものではないわね』
シェラハちゃん「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
むくりと上体を起してサルーインちゃんのほうを向いたシェラハちゃんは、鼻がぺちゃんこに
つぶれ、顔は泥だらけで白い肌が台無し、・・・
そしてなによりその目は怒りで鬼のごとく釣りあがっていました!
シェラハちゃん「パクってんじゃねええええええええバカ姉貴!!!なーにが悲しい話だよ
      ざけんな!!!はあ!?悲しい話だあ!?ふざけんなてめーーーー
      こちとら100冊リスト作ってる玄人なんだよ!!!素人はすっこんでろ!!!」
サルーインちゃん『100冊リストと聞くと悲しいことを思い出すわ・・・・超資源の無駄アハアハハ』
全力疾走で追いかける鬼と化したシェラハちゃんからサルーインちゃんは軽やかに逃げていきます。
ワイルちゃん「ちょ・・・ちょっとなんでいきなり姉妹喧嘩になってるんですか?
      ていうか二人とも早すぎですよ!!待って下さいよもーーーわけなかんない(泣)」
・・・・・こうしてシェラハちゃんとワイルちゃんは洞窟の外へと向かっていきました。



―――――洞窟C。
ヘイトちゃん「アイエェエえエェェ!!!!キャヒヒャアアアアアアア!!!!・・・へえへえ、
      ヘェエエイトオオオォォオ!!!!ガンバ☆・・・へえへえへるふぁああああい!!!」
一人で闘っているヘイトちゃん。
その奇声のお陰で攻撃力は七割り増しで健闘ぶりを発揮していましたが
遂に力果て尽きそうになっていました。
ヘイトちゃん「・・・へェイトはもう駄目です。サルーインちゃん、先立つ不幸を・・・
      ・・・ふっ死に際には真実の自分が見えるといいますが・・・
      このシリアスモードこそ真の私だったのかもしれませんね・・・変態という名の
      仮面を被って私は自分の真の姿を隠してきたのかもしれません・・・・・・」
サルーインちゃん『イヤァyaaaァアアンヘェイトちゃあぁぁああん挫けちゃイヤyaaaaAAアアぁ!!Щ』
ヘイトちゃん「この声は・・・・・・・・サッサルーインちゃん!!!?」
目を瞑りかけたヘイトちゃんに奇声が浴びせかけられました。そう、サルーインちゃんです!
サルーインちゃん『ヘェイトはいっっっツモちょっぴり公害で挫けないオンナノコデショオオ!!!?
      シリアスなんて駄目駄目ン★へェイトにこのサァルーインちゃああぁぁん!!!は
      これからヘイト語を教えて貰おぉうと思ってるのに死んジャイアアアアアアアン!!!』
ヘイトちゃん「・・・・・・・・・・・・・・・・・!!!
      さ、サルーインちゃんがこのヘイト語を教えてもらいたいだと!?」
ヘイトちゃんはカッと目を見開きました。
ヘイトちゃん「サルーインちゃんならキイイイイイっと分かってくれると思って
      ましたわあぁぁあああアアアア℃!!!!へェイトは孤独独逸から逃げるために
      シリアスモードなんて使い分けて自分を偽ってたんですう数ウゥううゥぅううウ!!!
      でももうヘイト語読解者はもう一人じゃなははぁああ愛い!!!ab愛地球博!!!
      サルーインちゃんの為にヘェイトは死にまシェーーーーーーーーン!!!聖林!!!」
サルーインちゃん『一緒に逝きましょおおおおおう!!!!さあ☆逃げるわよぉおオオ!!!』
サルーインちゃんの後に続き真実の自分を見出したヘイトちゃんはすたこらと逃げていきました。
・・・・・こうしてヘイトちゃんは洞窟の外に向かいました。



水上から見る水面は今だ血の煙の名残があり、陰惨な様相を呈していました。
ラミアちゃん「さーて準備は万端ですよ!!行きましょうデコマさま!」
デーモンコマンド「・・・・・待て!!湖面の様子がおかしい」
ラミアちゃん「えっ何ですか!!折角今年おニューの水着に着替えたのに!」
デーモンコマンド「そういう張り切りようか。・・・・・・全員・・・・・あがってくる?」



・・・・パシャッ!!

デスちゃん「こらあああーーーー私の唯一の恥の妹オぉーーーーーー!!!!どこいったああああ
      出てこんかーーーー!!!今からでも姉ちゃんがしつけやり直してくれるーーー!!!」
オイゲンくん「・・・ぷはっ!・・・よくわからねえがサルーインちゃんは無事だったてことか?」
シェラハちゃん「見失った!!見失ったわ!!!どこ行ったの大馬鹿姉貴!!!!
      お前の0点の答案にまつわる悲しい話全集大長編を暴露してやらああああああああ!!!」
ワイルちゃん「あ・・・あれっ?サルーインちゃんがいなくなっちゃった?
      どういうことなんですかもうーーーーーー???」
ヘイトちゃん「・・・ぷふぁふぁあァアアァアア!!!サルーインちゃあぁあああん!!!
      まずはヘェイト語の第一基礎として発音練習ですゥウウ!!!サウェェェアァァァァロロォールノォ
      どォこ行ったんですかサルーインちゃアァアん!!!基礎が大事なんですよ基礎がア!!!」

・・・・・そして。

ミルザくん「・・・・・ぷはっ!!!どうしたことだ!!途中でサルーインちゃんを
      見失ってしまった!!ああっ傷が開いて今も水中にいるとしたら・・・・!!」
ジャミルくん「・・・そんなはずはないはずだぜ!水面に出るほんのさっきまで俺達は
      サルーインちゃんの後を追いかけていたんだからな!」
ゲラ=ハ「一瞬にして消えたように思えましたが・・・一体彼女は人間ですか?」
ストライフちゃん「ちっまた厄介なことになってきたな!・・・・・ん?
      ワイル!ヘイト!それに皆・・・勢揃いで湖面に上がっている?」
サルーインちゃん「揃いも揃って探し物か!真実の私ならここにいる!!」



その声に一斉に一同が振り向くと・・・巨大なイカが水面から浮かび上がったと思うと、
その頂点にサルーインちゃんがあまりにも堂々たる様で立っていました!
ミルザくん「サルーインちゃん!!!」
デスちゃん「こらあああああ何イカの上で気どっとんのじゃこの真性ナルシストの妹がああぁ!!!
      下りてこいやあああ穢れきったその魂この姉が裁いてくれるわああぁああ!!!」
シェラハちゃん「イカの上でもモデル立ちかよいい気になってんなあ姉ちゃんよォオオ!!!
      そんなにイカが好きならデスの姉ちゃんがさばいてくれるってよォオオ!!!
      おいだれか包丁持って来い!!今日の夕飯はイカとサルーインの刺身だ刺身ィ!!!
      悲しい話がまた一つ出来たわああ愛しいイカと共に高級料理になったバカ姉貴の話!!!」
ミルザくん「きっ君たちはなんて話してるんだ!!こんな状況でさ、サルーインちゃんの
      イカの女体盛りだなんては、破廉恥な話はやめたまえ!!!!」
デス&シェラハ「んな話してねえよ破廉恥なのはてめえだよ鼻血拭けよ妄想狂!!!」
ゲラ=ハ「・・・・・・この人たちは・・・何を言ってるのか私には理解できないんですが
     私の人間を理解しようとする努力が足りないんでしょうか?」
ジャミルくん「俺も解らないから見なかったことにしといてやってくれよ」
オイゲンくん「・・・・・・・・俺なんでミルザと友達やってんだろう」
サルーインちゃん(・・・・・確実に水上に上がらせるために幻覚で煽ったのがやり過ぎだったのか?
       こんなに怒ることないじゃん・・・いつものことなんだから・・・(汗)
       ・・・ち、魔力を消耗しすぎている・・・早く済ませねば・・・
       ―――――――『ミルザ!!!』)

ミルザくん(!!!)

ミルザくんの脳に直接響くようなサルーインちゃんの声。『糸石』を持つもの同士だけが
直接心と心で対話できる、これも『糸石』の力の一つのなのでした。
ミルザくん(サルーインちゃん!君は一体・・・そのイカにどうして君が乗っているんだい!?)
サルーインちゃん(私は今『水のアクアマリン』を持っているからだ!!)
ミルザくん(えっ!?)
サルーインちゃん(ことの仔細は今は必要ではない!!今私が伝えようとしていること、
      お前はそれを聞け!!いいか、たとい私が『水のアクアマリン』を持っていたとしても、
      このイカがいる限りクリスタルレイク内から持ち出すことは不可能なのだ!!!
      それはあの幽霊体であるスペクターがわざわざ『クリスタルレイク内』に留まっていた
      ことからも、そういう理由があったからとしか考えられぬ!幽霊体ならばクリスタルレイクの
      外から遠隔操作して、お前が死ねば一瞬にして空間を移動しアメジストを取りにこれるし、
      私がこのイカに捕まればそれも一瞬にして取りに来れるはずなのだから!
      クリスタルレイク内にいる限りこのイカは私が操れる、しかし
      このイカを倒さぬ限り真に『アクアマリン』を手に入れることは出来ない!!)
ミルザくん(・・・・・・そんな!!しかしそのイカをどうやって倒せばいいのか・・・・!!
      僕にも、誰にも、・・・・・その力は今はないんだよ!!!)
サルーインちゃん(自分の力を過信しているからそうなる、身の程知らずめ!!!
      『自分の力』ではないものに目を向けてみよ!・・・クリスタルレイクに阻まれるならば、
      私が逆にクリスタルレイクを道具のように使ってくれる!!)
ミルザくん(―――――サルーインちゃん!?どういうことなんだ!?)
サルーインちゃん(私の言葉、聞けよミルザ!!!お前は私のこれからすることをしかと
      見ておれ、そして私が呼んだら必ず来るのだ、いいか、『来るのだ!!』)
ミルザくんはサルーインちゃんにもう一度心で呼びかけようとしましたが、
すでにサルーインちゃんの心は違う方を向いていました。
サルーインちゃん「ミニオン!!!お前たち揃ったな!来よ!!!私の後に続くのだ!」
ワイルちゃん「はい!?・・・さっサルーインちゃん!?」
サルーインちゃんはイカになにやら命じると、イカはその巨体では考えられぬような速さで
クリスタルレイクのプールを抜け、開発されていない方向へと向かっていきました。

ミニオンちゃん達三人は顔をしかめました。
ヘイトちゃん「何よぉオオサルーインちゃんてばいきなり初日からレッスンサボるつもりかよぉオオ!!!
       待てェエえいヘェイトはそんなに甘ァーいティーチュァーではないわアアァ!!!Å」
ストライフちゃん「今度は何を言い出している公害。それよりあっちは・・・・・
       私達が最初にいた方じゃないか?」
ワイルちゃん「・・・・・・・・・行きましょう、私達はサルーインちゃんの僕!!!」
ミニオンちゃん達は普段はめったに発揮されぬ希少な協調性を持ってサルーインちゃんと
イカの後を追っていきます。
デスちゃん「ええい今度は何をする気か知らんが逃さんぞ愚妹!!!お前の失態の為に
      いっつも土下座するのは姉ちゃんなのだ!!!もう土下座には飽きたんじゃあああ!!!」
シェラハちゃん「はあああふざけてんじゃないわよ馬鹿の姉貴が!!!人を無視してんじゃねーぞコラ!
      イカと逃避行なんて悲しい話でも三流どころだっつうんだよああん!!?だったら私が
      もっと悲しくしてやらあ待ちやがれええええ!!!」
残された憤怒の姉妹二人も後を追います。
オイゲンくん「・・・・・・なんともいいがたい混沌っぷりだが俺達も追おうか」
ジャミルくん「おれ女の兄弟は居なくて良かったなあって心から思った」
ゲラ=ハ「・・・サルーインさんとあのイカの動きは明らかに何か意図があるものに
     思えます。・・・行くべきでしょう」
ミルザくん「――――――行こう!!」
四人がサルーインちゃんの後を追おうとした時、オイゲンくんはちらと木陰に目をやりましたが、
すぐに目を元に向けると、一行と共にサルーインちゃんの元へ向かっていきました。
デーモンコマンド「・・・・・ち、目ざとい奴が居るものだ、見つかったぞ」
ラミアちゃん「ええ!!ラ、ラミアが新品の水着を着たオーラ効果のせいでしょうか!?」
デーモンコマンド「お前に突っ込む気力も惜しいから何も聞かなかったことにして続けるがな、
       どうやらスペクターの奴はぬかったらしい、あのイカを操れていることには
       サルーインが『水のアクアマリン』を持っていることは確実。・・・ばれたとはいえ
       行かねばなるまい、第一あの女からは『魔のエメラルド』も回収しなければならんのだからな」
こうして、全ての人々と思惑は共にサルーインちゃんの元へ・・・。



ワイルちゃん「ここは最初に私達が居たところ!」
ヘイトちゃん「あーアアーあのきゅーーーーーって吸い込まれるところがあるトコロд」
ストライフちゃん「『排水口みたいになってる取水口』だろ。・・・!読めたぞサルーインちゃんの思惑!!
       ―――しかしそれはあまりに!?」
サルーインちゃん「その通りだ、お前たち!」
三人「サルーインちゃん!!!」
サルーインちゃんはイカの上から、威厳を持って言い放ちました。
サルーインちゃん「私はナイトハルトから相談を受けていたことでクリスタルレイクの構造を把握していた。
      水中に入り取水口を三角に囲め!!そうしてトライアングル・フォーメーションの
      力、見せ付けてみろ!!!」
ワイルちゃん「サルーインちゃん!!それは、つまり・・・
       取水口を破壊することによって水を吸引するその大穴にそのイカを!?
       ・・・・・しかしサルーインちゃん『あなた』は!」
サルーインちゃん「いいからやれ!!私の命が聞けないか!!!」
デスちゃん「待てエエエい何をしているか愚妹ーーーーー!!!お前はもうなんもすんな!!!」
シェラハちゃん「超お得悲しい話をリアルタイムでご体験よーーーーーー!!!」
サルーインちゃん「デス姉、シェラハ!!!決してそれ以上来るな!!お願いだからそこで見ていて!」
デス&シェラハ「――――――・・・・・?・・・・・!」

ミニオンちゃん達はすでに水中に入り込み水を吸い込んでいる『取水口』を
見事な三角形に取り囲んでいました。
ストライフちゃん(本当にやるのだな)
ヘイトちゃん(危険なギャンブルこそハマッチャああァうモノ!!!)
ワイルちゃん(私達は自分達の術の勢いで遠くへ吹き飛ばされるんですよ・・・行きましょう!!!)
ミニオン「「「トライアングル・フォーメーション!!!『三柱神・神罰!!!』」」」

ドカーーー・・・ン!!!!!!

シェラハちゃん「・・・・・・・・・・ね、姉さん!!!」
デスちゃん「サルーイン!!」
サルーインちゃん(うまく・・・やったな・・・・・・!!)
クリスタルレイク全域が震撼しました。壊されてタガが外れた取水口は水を激しく吸い込んでいき、
――近くにサルーインちゃんが置いた大イカは取水口に吸い込まれそこにしっかりと嵌ってしまいました!



ジャミルくん「なんだあ!?今度はなんだってんだよ忙しい日だな!」
オイゲンくん「・・・・・わかったぞ!サルーインちゃんの作戦は!!
       『取水口』をぶち壊して水の吸引力がでかくなったところにあのイカを嵌めるのか!」
ゲラ=ハ「・・・・・・では彼女はどうなるのですか!?本人はあのイカにくっついているのですよ!」
ミルザくん「・・・だ、大丈夫だ!サルーインちゃんは『水のアクアマリン』を持っている!
      そうである限り水の脅威に打ち負けることはない!!」
(これではまだ終わりではない!!!)
ミルザくん(――――――サルーインちゃんの声!!!?)

サルーインちゃん(ミルザ!!!『来い!!!』)



・・・・・ところかわってスペクターとナイトハルトくんのいる洞窟・・・・・

ナイトハルトくん「・・・・・ふ・・・・・サルーインちゃんがなにか派手にやらかしたようだな。
      ああいう女性にはしっかりとした私のような男性がピッタリ!と大半の少女雑誌は書いている。
      週刊誌から月刊誌まで幅広く購入し研究を怠らない私は偉い人なのだ」
スペクターくん「いい年してよく少女雑誌なんて買い込めるな!!研究ってアホかオメーは!!
      ・・・・・そ、そんなことよりこれは!!!」
ナイトハルトくん「ふっ見苦しいぞ男のジェラシーは・・・・・!本当は少女雑誌を買ってみたくて
      仕方ないくせに!!少女雑誌をレジに持っていく勇気のない奴など真の男ではない!!」
スペクターくん「う、うるせえやい!!どうせ俺は男じゃねーよ!!・・・・ああだから違う!!
      『そんなことよりこれはなんだ!!』」
スペクターくんのその身に、変装の時身につけていたあの黒い鎧・・・その場に散らばったあの鎧、
『カヤキス』と名乗った時の鎧が次々に張り付いてゆくのです!
ナイトハルトくん「・・・・・なかなか頑張ったようだが、お前の唯一の失敗はわざわざ
      本格を気取って『本物のカヤキスの鎧』を着たことだな・・・・・それを盗み出すことなど
      お前のような物質界の法則に縛られぬものには容易いことだったのだろうが、
      身に着けてみて分からなかったのか?その鎧にはお前と似たような・・・そうだな、
      『怨念』が染み付いていることに気が付かなかったのか。それは我が先祖、カール二世から
      伝わるものだ。」
スペクターくん「なんだとお!?わ、私を縛り付けるほどの『怨念』!?・・・あ・・・あ!」
ナイトハルトくん「お前が慎重に策を進めているうちに長く身に着けすぎたということだ。
       幽霊体であったことも災難だったな、肉体を持つものよりも直にそれに触れるのだから。
       その『黒い悪魔』の鎧にお前は侵食され、そして吸い取られていたのだ、徐々にな」
スペクターくんに次々に張り付き、覆っていくその黒い鎧。スペクターくんは動けなくなり、
徐々にその様子も変わっていきました・・・・・まるで黒い悪魔に乗っ取られるように。
スペクターくん『・・・・・私はカヤキスと呼ばれた・・・・・』
ナイトハルトくん「遂に乗っ取られたか。我が先祖にこんなおぞましい出会いとは、流石
       黒い悪魔は伊達ではない。しかしその鎧はすでに時が過ぎて我が物でもあるのだぞ。
       さっさとそいつから剥がれて力を吸い取るのをやめて元に戻れ」
カヤキス『・・・・・私はカヤキスと呼ばれた。私には愛した人がいた・・・・・しかし
     結ばれなかった。私はローザリア舎の為に戦い、鎧は黒く染まり、黒い悪魔となった』
ナイトハルトくん「死人にくちなしと言う、もう気が済んだろう、黙るがいい」
カヤキス『・・・私はカヤキスと呼ばれた!何もかも捨て、ローザリア舎の繁栄の為に戦い、
     気がついたときには、本当に欲しかったものも失っていた・・・・・お前もそうだろう!
     『黒い悪魔』と呼ばれる私の子孫よ、もうその身を黒く染めるのはよすがいい!
     私のようになるのはよせ!本当に欲しいものがあるのだろう!」
ナイトハルトくん「・・・・・先祖どのの欲しいものとは愛した人のことですか?」
カヤキス『そうだ!ただ愛する人と結ばれたかった、お前も愛する人と結ばれる、
     それだけで幸せではないのか?そうだろう!』
ナイトハルトくんは短い沈黙ののち、ちいさく黒い鎧の『カヤキス』に言いました。

ナイトハルトくん「・・・・・凡俗の夢のいじましいことよな・・・・・」

―――ナイトハルトくんの一言に、カヤキスの鎧はボロボロとスペクターくんから
剥がれ落ちていきました。ナイトハルトくんは無表情になり、その鎧を回収しようと
一歩踏み出しました。刹那!
スペクターくん「おのれ!お前もただでは済まさぬ!!!」
弱り果てたスペクターくんが最後の足掻きを見せました。
ナイトハルトくん「―――――!」
ナイトハルトくんがぞっと背中に悪寒を感じると、背後には血の煙のようなものが凝縮して人の形を取り、
ナイトハルトくんにその魔の手を伸ばしてきたのです!
スペクターくん「クリスタルレイクに残った大量の人間どもの死体!!
      これがお前の野望の為に犠牲になった人間どもの怨念よ!!己が罪の重さを知れ!」
ナイトハルトくん「・・・・・・・・・・ふっ・・・雑魚が!」
スペクターくん「――――――なっ!!」
ナイトハルトくんは瞬時にして黒い鎧を纏い、その血の人影を吸い尽くしてしまったのです。
スペクターくん「・・・・・・なんて奴・・・・・・う・・・・・・・・」
ナイトハルトくん「・・・・・・・『カヤキス』・・・お前もなかなか気に入っていたこの姿、
      ・・・・・・・・・・使えそうだな」



サルーインちゃん(ミルザ!!!『来い!!!』)
ミルザくん(――――――サルーインちゃん!!)
ミルザくんは即座に泳ぎだしました、そしてサルーインちゃんの待つ『取水口』のある場所へ!
ジャミルくん「あっおい!ミルザ!?」
オイゲンくん「・・・・・俺達も行くぞ、付いて来い!」
ゲラ=ハ「はい!」
彼らも向かいました、取水口のある場所へ。

先にミルザくんが到着すると、デスちゃんとシェラハちゃんが息を呑んで取水口のあたりを
見守っていました。しかし水の吸い取られている感じは少しもありません。
ミルザくん「デスさん、シェラハさん!!サルーインちゃんは!!?」
シェラハちゃん「あああ、ね、姉さんは何故か出てこないのよ!イヤ、悲しい話は早く終わって!!」
デスちゃん「ここから先へは決して来るなと言われている・・・恐らく取水口に完全に隙間なく
      あのイカは嵌ったのだ、水の吸引が少しもないところがその証拠。
      しかし何故サルーインが出てこないのか?まさか、下手にはさまって・・・!」
ミルザくん「・・・サルーインちゃんは無事です!しかし、まだ終わっていないのだと・・・」
サルーインちゃん(その通りだ!!!)
ミルザくん「!!!サルーインちゃん!!!」
サルーインちゃんからの心話にミルザくんは声で答えてしまいました。サルーインちゃんは
お構いなしに進めます。
サルーインちゃん(このイカは完全に上手く嵌ってくれたわ、しかし『死んでいないのだ!』
      死ななければ意味がない!こうしておとなしく嵌ったままで抵抗すらしないのも
      私の指示だけによるものだ)
ミルザくん(・・・・!まだ死なないというのか!?もう打つ手はないじゃないか!)
サルーインちゃん(ええい何故分からぬか、ばかめ!!私はお前を呼んだというのに!!
      本番はこれからだと言っているのだ!もっと近づけ、来よ!!)

ミルザくんは戸惑いながらも水中に潜り、取水口へと素早く近づいていきました。
近づくと確かに大イカは完全に嵌り、サルーインちゃんは胸元にアクアマリンとエメラルドの
二つの光を持って、水中でミルザくんを待っていました。
ミルザくん(サルーインちゃ・・・・――――――――!?)
サルーインちゃんに近づいた瞬間にミルザくんは何かを突きつけられ、そしてバン!と
サルーインちゃん自らの手で突き放されました!ミルザくんが驚く間もなく、静かに
嵌っていた大イカが大暴れし始め、抜け出そうともがき始めました!
すると自然に取水口には隙間ができ、水の強力な吸引の圧迫が始まったのです!
デスちゃん「おお・・・・・!!シェラハ、ここは危ないもう少し退くぞ!」
シェラハちゃん「でも姉さん・・・・・姉さんはどうしたの!?」
水中に居るミルザくんこそ危険な状況のはずでした、しかし少しも水の流れに
翻弄されることがありません、ミルザくんは胸に突きつけられたものを手の隙間からのぞきました。
ミルザくん(――――――『水のアクアマリン!!!?』)
サルーインちゃん(そうだ!それを持ってもっとこの化け物から離れろ!!)
ミルザくん(サルーインちゃん!?―――――サルーインちゃん!!!)
すでに『水のアクアマリン』を手放したサルーインちゃんは水の吸引に無論耐えられません、
しかももがくイカの触手にその身を絡め取られていたのです!!
ミルザくん(サルーインちゃん!!!)
サルーインちゃん(私から!!!この化け物からもっともっと離れろと言っている!!
      ―――私にもう一度『水のアクアマリン』を渡そうなどという一番バカな真似だけは
      するなよ、バカのミルザ!お前が『アクアマリン』を持って離れれば離れるほど、
      この化け物は取り戻そうと強くもがくのだ!それが逆に隙間を大量に作り、水の
      吸引の力をもっと強める羽目になる!!・・・後は分かるな!?)
ミルザくんはきっと決然とした様子でサルーインちゃんに語りかけます。
ミルザくん(そんな化け物も、こんな『アクアマリン』もどうでもいいんだ!!!
      君が水圧に押し潰されて死んでしまうよ!!もういい!!僕は君に―――)
サルーインちゃん(誰に口を聞いているか!!!私はサルーイン、お前などに勝手に殺されて
      溜まるか!!!――――――私は死なぬ!!!そしてお前は行け!!!)
そのサルーインちゃんの余りの威圧と、切実な響きのこもった語りかけに、ミルザくんの
決意もたじろぎ・・・―――ミルザくんは身を切る思いで大イカから退き始めました!!
サルーインちゃん(・・・・・ばかめ、死なぬわ・・・・・!)
胸に残された『魔のエメラルド』が、サルーインちゃんを守ろうとするかのように光っていました。
大イカのアクアマリンへと向かおうとするそのもがきは、正確な意志を持ったもので
実に強く、取水口から逃れようとするために水を吸い込む隙間は多くなり、
次第にその水の吸引の激しさは壊れた直後並になって行きます。
オイゲンくん「・・・・・・ミルザ!!!・・・・・お前、泣いているのか?」
ミルザくん「・・・・・僕の涙がなんだろう、もっとこの『アクアマリン』をあの大イカから・・・
      サルーインちゃんから引き離さなきゃいけない!」
オイゲンくん「・・・・・・!・・・そういうことなのか!?しかし水圧でサルーインちゃんの
      身が持つわけが・・・・・!いや!」
オイゲンくんはミルザくんのべそ顔を両手でピシャンと叩きました。
オイゲンくん「サルーインちゃんが諦めないように、お前も諦めるんじゃないぞ!!
      サルーインちゃんは助かる!!・・・・・お前は安心してあの化け物を倒す!
      それでいいんだ!!・・・ジャミル!!ゲラ=ハ!頼むぞ!」
オイゲンくんはそう言って水へ潜ると、魚のような速さでどこかへと向かっていきました。
ジャミルくん「・・・・・ミルザ・・・・・!!」
ミルザくん「・・・・・・・・クリスタルレイクの水量が減っていく、ジャミル、
      『水龍の腕輪』の力、頼む!!!」
ジャミルくん「・・・俺にできることならなんだってしてやる!!『水龍の腕輪』よ!!
     もっと、もっと水を!!!」
減っていく水嵩をジャミルくんは補い、その水の圧力が少しでも強くなるようにします。
ゲラ=ハ「・・・・・・・サルーインさん・・・・・・・!」



デーモンコマンド「・・・!ち・・・あの女『アクアマリン』を手放したな!!
     しかし『魔のエメラルド』はどうなる!あれを取り戻さぬことには本末転倒も
     いいところだぞ!!・・・しかしあの水の激流の中に行くことはちとはばかられる!」
ラミアちゃん「ま、魔のエメラルドを水の中になくしちゃったなんていったら〜〜〜・・・
     あたし達マスターにしかられるどころか、首どころか、ひいいい!!!」
オイゲンくん「よぉお前ら!こんな大スペクタクルをこんな物陰で見物とは、
     なかなかいいご身分だな?ええ!?」
ラミアちゃん「きゃあああ!!!な、何アンタ!!!」
デーモンコマンド「・・・先刻の目ざとい奴めか!」
デーモンコマンドは身構えました。オイゲンくんはあくまで強気ながらも、無防備のままに
話かけ続けます。
オイゲンくん「こっちも困ってる、あんたらも困ってる!こりゃお互い助け合う時じゃないのかい?
     俺は交渉しに参ったんだぜ、デーモンコマンドさんよ!」
デーモンコマンド「―――――何故俺のことを!」
オイゲンくん「俺も結構モンスター退治はやるほうでね、あんたの同類は何回か見たことあるぜ。
     いやああんたらは実に手強いね!・・・『重力操作』ってやつがとくにね」
デーモンコマンド「・・・!まさか私に、水圧の操作の真似をしてみろと言うのではなかろうな」
オイゲンくん「ご名答で!」
デーモンコマンド「バカな!・・・そんな真似はしたことがない!第一お前らに
     手を貸すいわれがあるか!」
オイゲンくん「おい!下手に出てりゃいい気になってんじゃねーぞ!こっちもそっちも
     形勢は五分と五分、本当に困ってるのはあんたらじゃねーのかい!
     水圧でサルーインちゃんが押し潰されるとともに、あんたらの大事な
     『魔のエメラルド』まで押し潰されて、砕け散ったらあんたらはどうなるんだ?ええ?」
ラミアちゃん「く、砕け散る!?ひいいいおそろしやおそろしや!!!」
デーモンコマンド「はったりもいい加減にしておくのだな・・・人間の体と至宝の宝石
     『魔のエメラルド』の強度が一緒で溜まるか・・・」
オイゲンくん「まあサルーインちゃんが押し潰されたとしてもだよ、あのイカの化け物の方は
     どうかな?・・・あのイカの化け物が押し潰された時が、『魔のエメラルド』の
     ご臨終だと俺は見積もってるけれどね・・・・・」
デーモンコマンド「・・・・・・・一つ聞くぞ、手を貸せば必ず『魔のエメラルド』をこちらに
     渡す!!これが約束できるのだろうな?」
オイゲンくんは目を鋭くしました。
オイゲンくん「あんたらと一緒にされちゃ困るんだよ、約束は必ず守るぜ」
デーモンコマンド「・・・・・・・・・・・ちっ口の減らんことだ!!!
     サルーインの体だけ圧力の負荷を軽くすればいいのだろう!」
ラミアちゃん「そ、そんな・・・水圧操作なんて出来るんですか?デコマさま〜〜・・・!」
デーモンコマンド「・・・応用でやってみるしかなかろう!!!」
デーモンコマンドは術の構えを見せました。・・・デーモンコマンドの体から力が漲ります!



サルーインちゃん(・・・・・・?・・・・・・・体が楽になっている・・・・?
      ・・・・・まさか私は死んだのか!?死んでたまるか!!!いたっ!!!)
サルーインちゃんが突飛に動こうとすると大イカの触手の締め付けが強くなりました。
意識がすでに朦朧として危うくなっていたサルーインちゃんの体は、デーモンコマンドの
『重力操作』の応用が成功し負荷が非常に軽くなっていたのです!
サルーインちゃん(・・・・・私は生きている、生きているぞ、当然だミルザ!!!

      ・・・――――――そして死ぬのは『貴様』だ!!!)

ミルザくん「・・・・・早く・・・・・早くこっちへ来い!!!
      『水のアクアマリン』はこっちにあるんだーーーーーーーーーーー!!!」



シェラハちゃん「・・・・・・・・・ああ!!!」
デスちゃん「――――――イカが!」

一瞬の出来事でした。巨大な化け物イカの体は一方は『アクアマリン』の方に、
一方は『取水口』のほうに――――吸い込まれる方向と、必死でたどり着こうとする方向に、
真っ二つに引きちぎれたのです。

ジャミルくん「―――――――いよっしゃああああああああ!!!!」
ゲラ=ハ「おお!ゲッコ族の女神よ!!」

ワイルちゃん「ああ・・・・・サルーインちゃんが!!サルーインちゃんの作戦が成功です!!」
ヘイトちゃん「ひゃああああぁああああhhぽおおおおおおおおう!!!」
ストライフちゃん「・・・・・ちっ焦らせてくれたものだ、全く!!」



ミルザくん「―――――――やった、やったよサルーインちゃん!!!
      ・・・・・・・あ!!!」
安心するのはまだ早い!!取水口はイカの体が引きちぎれたことで大きく開き、
水が激しく吸い込まれて行きます!サルーインちゃんは取水口の近くに居る、サルーインちゃんまで
取水口の奥へと吸い込まれていってしまったら!
ミルザくん「うわああああああああサルーインちゃーーーーーーーん行っちゃ駄目だーーー!!!」
ミルザくんが一刻も早く取水口に近づこうとしたその瞬間!
ミルザくん「・・・・・・・・・・・水が!水が割れて道を作ってる!!!」
そう、水が真っ二つに割れ、ミルザくんの居る方まで道を成したのです。
その両側を水に囲われた道から、ミルザくんの方へ、三人の美しい姉妹が一人を真ん中に支えて
歩み寄ってきました。デスちゃんが右で支え、シェラハちゃんが左で支え、真ん中には
ぐったりとしながらも、まさしく勝ち誇った笑みを湛えたミルザくんの大好きなサルーインちゃんが。
シェラハちゃん「悲しい話だわ・・・ちょっと影が薄かったけれど
      私達姉妹だってこれぐらい出来るってこと知ってもらわなくちゃ、ねえデス姉さん」
デスちゃん「なんの魔力も行き通ってない水を操ること程度出来なくては困る。
      ・・・・・全く、妹がご迷惑をかけたな、ミルザ」
サルーインちゃん「・・・アハアハハハアハハ!!!何で私がこいつに迷惑かけたんだ!
      今日のハッピーエンドはぜーんぶこの私の策謀のおかげだ!!!
      感謝しないかミルザ、よしお前ら全員拍手だ!はい喝采だ!!アハアハハハ」
デスちゃん「すぐに調子に乗るんじゃないこの大馬鹿妹!!大体少しは安静に・・・あ」
サルーインちゃんは無邪気に笑い笑ったあと、ふっとくてんと首をたらし、気を失ってしまいました。
・・・・・クリスタルレイクの水はどんどん取水口に吸い取られて、本当に水嵩が少なくなってしまいました。



パアーーーン・・・パアーーーーーーーン・・・

サルーインちゃん「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ん?」
デスちゃん「おお、気がついたか不肖の妹。もうちょっと寝てても良かったかもな。
      あーーーあと千年ぐらい寝てても良かったかもな、まあ体のために姉ちゃんは言ってるんだぞ」
シェラハちゃん「花火の音を聞くと悲しいことを思い出すわ・・・・・お星様まで行けるとか言って
      点火した花火に座って打ち上げられて生死の境まで行った馬鹿な姉の話」
サルーインちゃん「アハアハハハハ珍しくお前の話が面白いな!デス姉そんなことしたっけか?」
デスちゃん「(・・・・・)そんなこともあったな。・・・・・自覚がないのは幸せなり」
サルーインちゃん「というより花火の音だと?・・・本当だ、もう星が出ている・・・夜か」
サルーインちゃんはぱっと起き上がると空を見上げました。星の元で花火が何度も華やかに
咲き、そして散っていきます。・・・なんとなく下を見ると、『水のアクアマリン』が
サルーインちゃんの横にちょこんと置いてありました。
サルーインちゃん「これは・・・・・・・・・」
デスちゃん「ああ、ミルザが置いていったぞ、それはお前が勝ち取ったものだって言ってな」
サルーインちゃん「これは本物か?」
シェラハちゃん「いやだ姉さん疑うの?ミルザさんがかわいそうだわ・・・・・
      どうして悪徳商法もすぐ信じちゃう悲しい姉さんが今回に限って疑うのかしら?」
サルーインちゃん「悪徳商法に引っかかってるのではない!!必死で悪に魂を売ってでも
      金が欲しい貧乏人に施してやってるのだ!!!・・・そんなことはどうでもよくてだな!」
ワイルちゃん「サルーインちゃ〜〜〜ん良かったですぅ〜〜〜本当によくぞご無事で!!」
ストライフちゃん「ワイル涙ぐむなよ、助かったんだから明るい顔をしたらどうだ。
       お前は弱った人の前でしゃべるな公害」
ヘイトちゃん「フガーーーーーーーッ!!!フグーーーーーーーーーーッ!!!フガフギ★☆ÅЭウェw
       (ストライフちゃんに口を塞がれています)」
サルーインちゃん「・・・・・・・まあお前のいいたいことはよく分かってるぞヘイト、安心しろ」
ナイトハルトくん「失礼、三姉妹どの、サルーインちゃんの御加減は如何か」
デスちゃん「ナイトハルトか。・・・・・それにミルザか。よく来たな、何しに来たか知らんが」
ミルザくんは堂々としたナイトハルトくんの後ろで、ちぢこまりながらもやって来ていました。
サルーインちゃん「・・・・・・・・」
ナイトハルトくん「目覚められたのか、実に良かった。どこか痛いところはありませんか。
       もしあったらクリスタルパレス寮の奇跡の風呂で悪いところは全部回復という健康療法が」
サルーインちゃん「聞いたか奇跡の風呂だって!!すごいな!」
デスちゃん「本当にお前は悪徳商法に騙されやすいんだな」
シェラハちゃん「奇跡と聞くと悲しいことを思い出すわ・・・よく考えたら一度も起きた事がない。」
ナイトハルトくんと三姉妹のみんなは金持ちならではの話題で盛り上がり始めました。
ミルザくん(・・・惨めだ・・・・・僕何してんだろ・・・・・お見舞いに来れるような
      立場じゃないのに・・・サルーインちゃんをちっとも守れなくって役立たずで・・・
      ナイトハルトくんに誘われてつい来ちゃったけど・・・・・なんか厚かましすぎるよな・・・)
ナイトハルトくん「ははははははははは。(←見せ付けたかっただけ)」
話題の途中でそうだ、とナイトハルトくんが切り出しました。
ナイトハルトくん「この石を一応あの洞窟から拾ってきました。サルーインちゃんが投げたので
      サルーインちゃんの物かと思いまして・・・・・」
シェラハちゃん「この石は・・・・・」
デスちゃん「・・・・・アクアマリン・・・・・の偽物か?」
ミルザくん「!」
ミルザくんはいきなりドキンとしました。それは自分がサルーインちゃんにあげた『水の精霊珠』!
サルーインちゃん「・・・・・・・・・・ふん、わざわざこんな石ころを拾ってくるとは、
      お前も気の利いた嫌がらせをするものだな!・・・よこせ」
ナイトハルトくん「あ」
サルーインちゃんはぱっと右手でナイトハルトくんの手から『水の精霊珠』を取ると、左手で
本物のアクアマリンを掴みました。
シェラハちゃん「???姉さん、何を・・・」
サルーインちゃん「おいそこのミルザ!!!」
ミルザくん「はいっ!?はいっ、ここ以外にミルザはいません!!」
ミルザくんはいきなりサルーインちゃんに呼ばれてビクッと体を震わせました。サルーインちゃんは
グーに固めた両の手をミルザくんの方へ突き出しました。みんなは不思議そうにその様子を見ています。

サルーインちゃん「どっちが偽物のアクアマリンだと思う?当ててみろ!」

ミルザくん「えっ・・・・・・」
急な問いにミルザくんは当惑しました。だって右手で『水の精霊珠』のほうを取るのを
しっかりと見ていたのに。・・・ミルザくんはおそるおそる、右の手のほうを指差しました。
サルーインちゃん「・・・ふん」
サルーインちゃんは鼻で笑うと、いきなりミルザくんのでこを右の手で殴りつけました!
ミルザくん「〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ・・・・!!!?い、痛い・・・(・・・でもはあはあ!)」
ワイルちゃん「さ、サルーインちゃん?いきなり何してるんですか、その変な問題も一体・・・」
サルーインちゃん「はずれだバカめ!!!お前は一回出直して来い!偽物のほうはくれてやる、
      ありがたく思えよ貧乏人!!!」
ミルザくん「えっ・・・・・・と、わっ」
サルーインちゃんは左手の方のアクアマリンをミルザくんに投げつけました。ミルザくんが
キャッチすると、しっしっと手振りで帰れ!という合図をしました。
ミルザくん「・・・・・・・・・?????」
ミルザくんはショックを受ける前に状況がよく理解出来なくてとぼとぼとその場から去っていきました。
ワイルちゃん「・・・・・・さ、サルーインちゃん?本物のアクアマリンのほうは、あの・・・」
シェラハちゃん「・・・か、悲しい話を目撃してしまったわ・・・手にとって5秒も立たないうちに
     本物がどっちか忘れて偽物のほうを自分の手元に残しちゃった話・・・ああ!
     リアルタイム過ぎて全然悲しい脚色が出来なかったわ!悲しいわ!」
ストライフちゃん「やっぱり誇張して話してたのかよいつもの奇天烈悲しい話群は」
ナイトハルトくん「サルーインちゃん、あなたはやはり混乱しているようだ、ここは
     是非クリスタルパレス寮の奇跡の風呂に」
デスちゃん「・・・・・・・いや・・・サルーイン・・・お前?」
サルーインちゃんは何も言わずぼすっともう一度寝転がってしまいました、
右手にアクアマリンを握りながら。



ジャミルくん「・・・・・花火が綺麗だな・・・・・あーあなんで隣がファラじゃねーんだろうなー」
ゲラ=ハ「すみません。私がファラさんの代わりが出来ればいいのですが・・・」
ジャミルくん「へっ!じゃあお前でちょっと予行練習でもすっか!・・・花火、綺麗だな、ゲラ=ハ。
     ・・・・・でも君のほうが綺麗だよ、ゲラ=ハ。・・・・・・・お前、案外可愛い目してるな」
ゲラ=ハ「な、何故私の名前の部分を変えないんですか・・・!か、からかうのはやめてください!」
オイゲンくん「・・・・・・・お前ら俺が横で寝てること忘れて変なことはじめないでくんない?」
ミルザくん「ただいまあ〜・・・・・・」
オイゲンくん「おお、おっかえり〜ミルザ。はっきり言ってちょうど助かった。・・・何変な顔してんだ?
     ナイトハルトくんに出し抜かれたとかいうショックとはちと違いそうだな」
ミルザくん「(???右手で掴んだ方が、本物だったってことかな?あれ?あっもしかして
     サルーインちゃんってマジックとか出来るのかも?あっそっかーそれで納得)
     ねーねージャミル、水龍の腕輪って水龍さんと通信できるんでしょ?ちょっと
     つなげてくんないかなー」
ジャミルくん「あ?・・・あーうん出来るみてえよ、ちょっと待ってな・・・水龍さんよーーー」
ジャミルくんは水龍の腕輪に話しかけました。
水龍くん『また呼びだしか!!ちょっとお前ら水さすなよ!!ナイトだぞ夜!!ナイト!!
     あっごめ〜んハニーちょっと待って〜ん・・・この時分に何用ぞ!』
ジャミルくん「まあまあ、俺達もちょっと邪魔されちゃったから、な、ゲラ=ハ」
ゲラ=ハ「・・・・・やめてください!ジャミルさんのいけない人っ!」
ミルザくん「(・・・なにがあったんだ?この二人)あのー水龍さーん、ミルザですけどー、
     あのずっと借りっぱなしだった『水の精霊珠』、一回なくしちゃったんですけど、
     今手元に返ってきたんで後で返しに行きますねー、これなんですけどー」
水龍くんからは一時の沈黙が返ってきました。
水龍くん『・・・・・・・ミルザ・・・何を言っているんだ?それは・・・・・・・

     まさしく『水のアクアマリン』ではないか!』

ミルザくん「え???」
ミルザくんは一瞬ぽかんとした後・・・勢いよくばっと手の中の宝石を見つめました。
ミルザくん「・・・・・・・!え!?・・・やっぱり!?・・・・・・サルーインちゃん?!
     あの問題は一体・・・・・!」
オイゲンくん「・・・・・・ま、その場に居合わせなかったからよくわかんねえが、
     もしかしてそれ、サルーインちゃんからお前への初めてのプレゼントなんじゃねえの?
     ・・・・・・・・・ミルザ!!」
ミルザくん「・・・・『水のアクアマリン』・・・・!・・・サルーインちゃんから、
     僕へのプレゼントオオォオ!?」
クリスタルナイト・・・その夜とある一角では男子生徒4人が一人のお祝いに大盛り上がり、
とある一角では、戦いつくした破壊の姫君がぐっすりと眠っていました・・・きっと楽しい夢を見ながら。

こうして、一大イベント『クリスタルナイト』は夜も更け・・・・・・幕を閉じたのでした。



次の日。いつもと同じ学園生活が始まります。

ミルザくん「ああっサルーインちゃんからのプレゼェエエンツ!!!(すりすり)
     僕、これがあればもうお米とかなくても愛だけで生きていける!!(すりすり)」
オイゲンくん「おいおいミルザ〜、サルーインちゃんからの折角のプレゼントに
     そんなに頬擦りしてたら汚くなっちまうだろ〜?もっと綺麗に保管するべし!!!」
ミルザくん「はっ!!!そうだった!!僕ったら脂ぎった肌をこすりつけるなんてなんて
     正義に反する真似を!!!いつでも清潔が正義の第一条!!(ふきふき)
     アクアマリンは常に磨くべし!!!(ふきふき)」
ジャミルくん「おいおいミルザ〜、そんな拭いちまったら折角付けて貰ったサルーインちゃんの指紋が
     落ちちまうじゃねえか〜?好きな人の指紋もゲットしとかなくていいの〜?」
ミルザくん「はっ!!!僕はなんて愚かしい真似を!!!ああっサルーインちゃんの指紋が
     すでにない!?ああ!!好きな人の指紋も分からない僕に恋する資格なんてなーーい!!」
オイゲンくん「(指紋なんて普通わかんねえよ変態かよ)・・・いや!まだ残ってるぞ!ほら!ここ!」
ミルザくん「えっどこどこ!・・・はっ!!本当だ!!ああっ奇跡!!神様は僕を見てる!!!
     今から指紋を採取だ!!!我が家の家紋にしよう!!ああっなんて薔薇色人生!!!」
ジャミルくん「(勝手に家紋は犯罪だろ・・・)・・・おい、つーかあれミルザ本人の指紋だろ」
オイゲンくん「いいだろ、自分の指紋なら家紋にしても別に犯罪じゃねーだろうし」
ジャミルくん「・・・お前のミルザいじめも結構すげーな♪」
オイゲンくん「いやいや、指紋とか言い出しちゃう君もなかなか♪」
ミルザくん「ああーーーーーーっ僕ってもしかして学園で一番幸せって自惚れてもいいよね!!!?」
ゲラ=ハ「・・・・・・人間って、やっぱりまだよくわからない・・・・・・」



ところかわってここは冥部。コンコン・・・
デスちゃん「生気あるものがここへ何しに来た!!!」
???「いえごめんなさい、生気ないんです、ごめんなさい、全然ないんです」
デスちゃん「ないのか。それは済まなかった。うん、まあ入ってちょっと死んでいけば?」
サルーインちゃん「アハアハハアハハハ!!!デス姉ーーー誰だよ!・・・ん?あれっお前・・・」
サルーインちゃんは気付きました。それはマスコットサイズまで小さくなっていますが、
その真っ黒な幽霊のような姿は、まさしくあの『スペクターくん』だったからです。
サルーインちゃん「どうしたんだお前?ちっちゃくなったなー身長欄は1.5メートルぐらい
     サバ読まないときっついなー」
シェラハちゃん「サバを読むと聞くと悲しいことを思い出すわ・・・いっつも
     5、6歳サバ読んでるんだろって言われる黒髪の絶世美女の話・・・・・
     彼女は言った人たちの致命的な性格を直してあげようと心から一生懸命に
     五寸釘を打つの・・・・・・・うふふふふふふ」
デスちゃん「こいつは気にしなくていい。・・・サルーイン、こいつは先日の時の?」
サルーインちゃんはデスちゃんの質問に頷きました。
デスちゃん「・・・・・ということは『糸石』を狙うあの・・・・・」
スペクターくんは小さな体で必死に叫びました。

スペクターくん「そう!!私は『ウェイ・クビン』が六将魔が一人、スペクターなり!!

     ・・・だったんですが・・・うっ・・・あの『黒い鎧』にほとんど魔力と精神の力とを
     吸い取られ、こんな姿に・・・!!うっ泣いてもいいですか・・・!!」
サルーインちゃん「初対面かそこらでいきなり甘えてくる男は最悪だな!」
スペクターくん「・・・うっうっうっ・・・・!!!ううう!!!(泣)」
シェラハちゃん「サルーイン姉さんを仮にも苦戦させたような相手がこの姿とは、
     よほど魔力と精神を吸い取られてしまったのね・・・ゴースト系のモンスターは
     その大部分が魔力と精神ですものね。泣くのも仕方ないわ・・・」
デスちゃん「・・・それでお前は何をしにここへ来たわけだ?もしすると『ウェイ・クビン』を
     裏切り、私達の勢力下に入らせてくださいとでも言いに来たか?・・・歓迎するぞ?
     六将魔ともなれば、持っている情報はただならぬものだろうからな・・・」
スペクターくん「私がマスターを裏切るだと!!・・・いやちょっとそこまでまだ思い切れて
     ないんだけど・・・で、でも実は!」
サルーインちゃん「決断力のない男はどうしようもなく最悪だな!」
スペクターくん「・・・・・・うううぐすん・・・・うええええん!!!」
シェラハちゃん「そうよデス姉さん、六将魔という程の高地位に居る者の突然の脱退を
     認めるとは思えないわね、姉さんの言うとおり情報を外に洩らされてはまずいのだから
     ・・・・・あなた、もしかして追われてる身なのではなくて?」
スペクターくんはここぞとばかりに口をまくしたてました。
スペクターくん「いいや!!違うんだ!私が追われているならまだいいのだ!・・・いまここにいる
     『スペクター』はもうすでに『スペクター』ではなくなってしまっているのだ!
     ・・・・・何故ならこのわずか一日にして『私に成り代わってしまった者が居るから』!!!」
三姉妹「―――――――・・・・・!?」
ガタガタガタ・・・
ワイルちゃん「ただいま帰りましたーーーーアイス一杯買ってきましたよーーー!」
ヘイトちゃん「色々試しましょォオおおおう!!!☆★☆ィヒヒヒャ楽しみィ!!vv
       (ぶちっ)んあァん!?なんかふんぢゃった!」
ストライフちゃん「・・・・・なんだこいつ・・・マスコット?」
ワイルちゃん「・・・!きゃあああかわいいーーーーどうしたんですかこれ!?わ、私貰っても
     いいですかあ!?」
スペクターくん「・・・・・・・・・・・・・・・・・・(気絶)」
三姉妹「・・・・・・・・・・・・・・・・お前らって大事なところでぶち壊すよな」



・・・雷鳴がいつにも増して鳴り響くような、そんな魔の島・・・
リザードロード「・・・ふん、失敗してマスターにお咎めのお呼び出しか?」
???「仕方がないな、反省している。独断でマスターの名を知らしめようとまでしてしまったからな」
デーモンコマンド「お前の尻拭いをさせられた私の身にもなってみろ!・・・しかしお前、
      その格好が随分気に入ったらしいな?あの時からずっとその『鎧』をつけているじゃないか」
???「・・・ふ・・・まあな・・・私の幽霊体は武器にもなるが諸刃の剣にもなる。
    真の姿を隠す・・・ふふ・・・ただの気休めのためだかな、これからはこの姿で行こうと思っている」
ギイイィ・・・扉が開かれました。
ウェイ・クビン「・・・・・エメラルドが無事戻ってきただけ良かったと言うものの・・・・・
     ・・・この度の失敗は本来なら万死に値するところだ!!しかしわしは
     お前の力を買っている・・・良いか!!今後はお前をわしの監視下に置く!直接のわしの
     命令に忠実に従うこと!!それ以上の増長は許さんぞ、『スペクター』!!」
???「御心のままに・・・・・・そうそう、この鎧を着るものは『カヤキス』と呼ばれるそうです
    ・・・・・マスター、今後よろしければそう呼んでいただけませんか?」
ウェイ・クビン「・・・?何でも良いわい!いいか、一週間の謹慎だ!!よいな『カヤキス』!」
『スペクター』と呼ばれた黒い鎧・・・そして今『カヤキス』と変わったその黒い鎧の下で、
瞳が鋭く冷たい青の光を放っていました・・・・・。


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