第16話「a kidnapping」

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コンスタンツ捕獲場所に着くやいなや、タイラントくんはコンスタンツの状態を確認しました。
タイラント「大丈夫だな。外傷は全く無い。ショックで気絶しているだけか。」
そしてヘイトちゃんを、鬼の形相で睨みつけて言いました。
タイラント「いいか?今からの問いに、正直に答えろよ。嘘をついたら・・・尋問から拷問にシフトするからな。」
ヘイトちゃんが、こくこくこく、と首を縦に振りました。
タイラント「コンスタンツをさらったのは、貴様らか?」
ヘイトちゃんが首を縦に振ります。
タイラント「理由は、火のルビーだな。」
再びヘイトちゃんが首を縦に振りました。
タイラント「それは、我からルビーの在りかを聞いた瞬間から、計画していたことなのか?」
ヘイトちゃんは首を横に振り、言いました。
ヘイトちゃん「いやぁ〜〜最初はぁこっそり頂いちゃうつもりだったんだけどぉ〜〜★○▲」
        乳繰り合ってるの見かけた時にピコーンと閃いたのぉ〜〜jfぁjfl」
タイラントくんが、苦渋に満ちた表情で頭を抱えました。
3人の行き当たりばったりな行動に、もはや呆れて怒る気力も無いようです。
タイラント「・・・では、もし交渉が不成立だったら?コンスタンツに危害を加えるつもりだったのか?」
その問いに、ヘイトちゃんはマッハで首を横に振りました。
ヘイトちゃん「そ、そんなことしないわよぅぉぅぉぅ!同じ女の子に、いくらなんでもそんなぁ〜fぁjf;」
タイラント「本当だな?」
ヘイトちゃんは、首をこくこくと縦に振りました。
タイラント「結局、ルビーしか目に入っていなかったのか。安直というかなんというか・・・。
       いいかヘイト。貴様は『決して届かぬ炎の御許』のプロローグしか聞かなかったから知らんだろうが・・・」
そしてタイラントくんは一息ついて言いました。
タイラント「4寮長の司る4元素は、自然を司る、生命のもとと言ってもいいものだ。
       だが、地震や津波や竜巻のように、過ぎたる力は凶器となる。
       特に、我が司る『火』は、そのままでも破壊に直結する危険度の高いものだ。
       だから、火のルビーは取り扱いには慎重を要し、相応の力のある者が管理しなければならん。」
ヘイトちゃん「危険物取扱二種ならあるけど。」
タイラント「問 題 外 だ! そもそも盗みを計画した時点で犯罪だと認識しろ馬鹿が!!」
タイラントくんが、どこから取り出したのかハリセンでヘイトちゃんの頭をひっぱたきました。
タイラント「――――まぁ。安易に火のルビーの場所を話してしまった我にも責任はある。
       ・・・反省、してるか?」
ヘイトちゃんがシュン、とうつむいて、こくんと力無く頷きました。
タイラント「他の糸石はいざ知らず、これはハッキリと所有権がある・・・要は人のモノだ。
       おまけに危険物ときている。もうルビーを狙おうと思わないと・・・誓えるか?」
一瞬間があきましたが、ヘイトちゃんがこくこくこく、と首を縦に振りました。

タイラント「そうか。ならば――――」



イフリート「う・・・」
オイゲン「おっ、先生が気が付いたぜ・・・」
ミルザ「先生・・・」
イフリート先生は、薄く目を開けました。その瞬間、胸が激しく痛みます。
イフリート「ぐふ・・・骨に、内臓までいっているな・・・これも、あの女子がやったのか?」
ミルザ「女子・・・?ワイルちゃんのことですか?いえ。それはタイラントくんが・・・」
オイゲン「タイラントくんを責めるのはお門違いだぜ。なにせ彼が来なけりゃ、俺達は丸焼けだったんだからな!」
イフリート「タイラント・・・あぁ、四寮長か・・・。流石だ。大した力量だ・・・。
       だが、その間の記憶が無くてな・・・そう、あれはあの女子に一撃を受けて・・・。」
そしてイフリートは、げほっげほっと血を吐きました。
イフリート「・・・ミルザよ、あの女子を呼んでくれないか・・・。
       心配するな・・・私はもはや何もできん・・・。」
ミルザがそれを受けて、後方に視線をやりました。
ストライフちゃんと、ワイルちゃんがゆっくりと歩いてきました。
イフリート「女子よ・・・私はそんじょそこらの連中には負けない自身があった。
       だが現実はどうだ?私は四寮長はおろか、女子三人にも一本とられてしまった。
       ・・・教えてくれ。私は・・・なぜ負けたんだ?」
ワイルちゃんは目を閉じて、思いを巡らせたのちに、ゆっくりと答えました。
ワイルちゃん「私は・・・負けるわけには行きませんでした。友達を守るために。タイラントくんも同じです。
        それに対してあなたは、先生であることを止めました。
        ・・・そう。守るために闘った私達と、守ることを放棄したあなた。
        『守るもののある強さ』の有無。これが・・・勝敗を決めたんだと思います。」
イフリート「・・・誰かを守る強さ、か・・・。」
ミルザ「ワイルちゃん・・・。」

セージ「はい。つまらないお話はそこまで〜〜〜。」

――――突如、イフリート先生の埋め込まれている壁に、黒くて大きい穴が開きました。

セージ「見事にやられちゃったね、『反逆者』。まぁ、また出直そうか。」
イフリート「ヌ・・・貴様は・・・」
ミルザ「・・・お前は・・・その声は!!!!」

セージ「キミに会うのは初めてだね、ミルザ。でもボクは・・・ずっと前から知っていたのさ。キミのことを。」

その穴から、緑色の目をした一匹のゴブリン・・・ゴブリンセージが現れました。

ミルザ「僕を知っているだと?」
セージ「そうさ。ずっと前から知っていたのさ。アクアマリンを見つけた時も、ブラックダイアを得た時も。」
オイゲン「ってことは、てめぇは、イフリート先生の言っていた・・・」
セージ「そっか。反逆者が明らかにしてたっけね。まぁボクに言わせれば、やっと気付いたの?ってトコだけど。」
ゴブリンセージは、子供のように無邪気に微笑みながら言いました。

セージ「ボクの名前はゴブリンセージ。将魔みたいに強くはないけど・・・まぁ一兵卒でもないよ、とだけ教えておくよ。」

ストライフちゃん「このガキが。さっき私たちを焼き殺そうとしてくれたのは貴様だな?」
言うやいなや、ストライフちゃんはヘルファイアを放ちました。
しかし、セージが杖をひょいひょいっ、と動かすと、イフリートの周りの土が動きました。
それによりイフリートの体勢が崩れ、セージの盾となる位置に倒れこみます。
ヘルファイアは、その状態のイフリートに命中しました。

セージ「ふう、こわいこわい。いきなり乱暴だなぁ。とっさに仲間に隠れちゃったよ。」
そのセリフを聞き、オイゲンくんのこめかみに青スジが走りました。
オイゲン「ふざけたこと言ってんじゃねぇぞてめぇ・・・今のは、とっさの動作じゃねぇ。
      自分の盾で防ぐような・・・そう、道具を当たり前のように使うかのような動作だ。そういう奴かよてめぇ!」
セージ「フン。ボクがどんな奴かは好きに想像すればいい。ともかく、反逆者は回収していくよ。ヒドいケガだしねぇ。」
ミルザ「イフリート先生を・・・連れて行くだと!?」
セージ「キミもわからない人だね。彼は先生じゃなくて、反逆・・・」
ミルザ「黙れ!イフリート先生がこんなになったのも、お前のせいだろう!
     先生を連れて行くだと?させるか!!お前を倒し、先生を正気に戻す!!」
セージ「どうやらキミとこのまま話してても意味ないみたいだね。んじゃ、ボク達は帰るよ。」
ミルザ「させるか!!」

ミルザくんがレフトハンドソードを抜き、一気に間合いを詰めてセージに切りかかりました。

そのとき黒い穴から、黒い影が踊り出てきました。
ガッキィィィン!!
その黒い影が、ミルザくんの一撃を受け止めたのです。

セージ「・・・ありがとう。助かったよ、スペクター・・・いや、今は『カヤキス』かな?」

そのカヤキスと呼ばれた影は、全身を黒い鎧で包み込み、黒い打槍を構えていました。
兜の中は暗く、どのような顔をしているのかは一切わかりません。
そして、全身から黒い瘴気のようなものが噴出し、まとわりついておりました。
上段から振り下ろしたミルザくんの剣を、徐々に押し返していきます。
ミルザ「・・・こいつは・・・!」
セージ「あぁ。彼も将魔の一人さ。一人で来るのもこわいからさ。付いてきてもらって正解だったよ。」
ミルザ「どけ。そこをどけ!!」
カヤキス「・・・・・・・」
ミルザ「くっ、ならば力ずくでどいてもらう!乱れ突き!!」
カヤキス「・・・・・・・!」
連続して繰り出されたミルザくんの突きを、カヤキスは全て弾き返しました。
ミルザくんとカヤキスの間に距離があきます。
ミルザ「こいつ・・・強い!」

ストライフちゃん「・・・おいワイル。あいつ今スペクターって言ってなかったか?」
ワイルちゃん「スペクターくんは、今ヘイトちゃんのドラクエのLV上げやらされてるハズですが・・・
・・・あ、危ない!!」
ゴブリンセージがロッククラッシュを密かに唱えました。ミルザくんの死角から石が落ちてきます。
それを見て、とっさにワイルちゃんがミルザくんを突き飛ばしました。

ミルザ「ワイル・・・ちゃん?」
ストライフちゃん「ワイル!!」
ミルザくんをかばって岩を頭に受けたワイルちゃんが、気絶しています。その頭から、一筋の血が流れていました。

セージ「あはっ。時間も無いことだし、ミルザには寝ててもらおうと思ったのに。自己犠牲?バカだね。」
ミルザ「き さ ま・・・・!!!」
ミルザくんが歯噛みしながら、セージを睨みつけました。
そんなミルザくんを見て、セージは「やってられないよ」と言う風におどけてみせました。

――――ミルザくんの怒りは沸点を迎えました。

ミルザくんが目を固く閉じて、そして、きっ!と見開きました。
レフトハンドソードを一度鞘にしまい、居合の形で一気にセージに向かって走っていきます。
その前に、打槍を構えたカヤキスが立ちはだかり、横一閃になぎ払いました。

ミルザ「うおおおおお!!!」

ミルザくんは、それを跳躍して飛び越えると、そのままカヤキスの頭を踏みつけて、乗り越えていきました。
カヤキス「!!」セージ「へ?」

シュパァァァン

ミルザくんが剣を抜き、走らせました。
一瞬の間があいて・・・

ぴしぴしっと、セージの眉間にナナメに線が走りました。
その線は、明確な傷となり・・・一気に血が噴出しました。

セージ「う、うわ、うわ、うわああああ!!!」

と、ミルザくんの後ろからカヤキスが、打槍でわき腹を殴りつけました。
ミルザくんが横に飛ばされます。

セージ「く・・・!!ミルザァァァァ!!」
するとカヤキスが、眉間を押さえるセージの肩を掴み、顎で向こうの方角を指し示しました。

ヘイトちゃん「んあ!?あんたら何なのよぅぅぅjfぁjfl」
タイラント「貴様らか?黒幕は。まさかそちらから出てきてくれるとはな。」

セージ「・・・ここまで、だね。」
そしてセージは、わき腹を押さえているミルザに向けて、血に濡れた目を向けました。
セージ「ミルザ。この傷は土産として貰っていくよ。今日のことは忘れない。この礼は必ずする。楽しみにね・・・
     そして。糸石は、関わった者の運命を絡み取っていく。望むと、望まざるとに関わらずね。
     覚悟しておくんだね。ミルザ、オイゲン、セレブ3姉妹とそのお付き、四寮長・・・
     ・・・みんなみんな、運命の車輪の中にいるのさ。すでにね。アハハハ・・・。」

そして黒い穴の中にセージ・カヤキス・イフリートは入っていき・・・黒い穴は閉じました。

ミルザ「・・・先生・・・先生ーーーーッ!!!」

黒い穴のあった場所には、もはや何の手がかりも無く、ただの岩壁があるだけでした。

――――こうして、夜明け前の長い長い冒険は、終わりを告げました。



ワイルちゃん「う、う〜〜ん?」
ワイルちゃんが、目をしばしばとまばたきします。真っ白い部屋・・・騎士団寮の医務室に、彼女は寝ておりました。
ワイルちゃんは、状況を整理しようとして、そしてどんよりとした気分になりました。
ワイルちゃん「そっか。誘拐犯だってバレちゃったんですよね・・・これから尋問ですか・・・しくしく」
すると、ばたばたばたと走る音がして、ドアがバタン!と開きました。
ミルザ「ワイルちゃん・・・目が覚めたんだね!」
ミルザくんの姿を見て、ワイルちゃんが悲しげに顔をゆがめました。
ワイルちゃん「ミルザさん・・・ごめんなs」
ミルザ「ごめんよおおおおお!!ワイルちゃあああああああん!!!」

ワイルちゃん「へっ?」

ミルザ「君はただ巻き込まれただけだったんだね!!
    そんな不幸な女の子を守りきれないなんて、僕は、僕はああああ!!」
ワイルちゃん「え?あの、ちょっ」
すると、さらにパタパタと足音が聞こえてきました。
ヘイトちゃん「あぁ〜〜おなかいっぱああああいいいい。騎士団寮の食事も結構うまいわああああjlkjlf」
ストライフちゃん「あぁそうだな。お、ワイル目が覚めたのか。」
ワイルちゃん「あのー・・・これはどういう・・・」
僕は、僕はぁぁぁと叫びっぱなしのミルザくんをどかして、ストライフちゃんがワイルちゃんの横に座りました。
ストライフちゃん「これを読め。」
手渡された手紙には、文章がペンではなく、焼印を押したように記されていました。こんな芸当ができるのは一人だけです。
ワイルちゃんは手紙を読み進めました。手紙にはこうありました。



「貴様らのしたことは重大な犯罪行為だ。本来なら退学も止む無しだ。
 だが、貴様らの暴走の責は、安易に火の糸石の話をバラした我にもある。
 それに、貴様らの行動が結果的には、騎士団寮に潜んでいた巨悪を炙り出すことに繋がった。
 よって、フラーマ先生と交渉の結果、誘拐実行と巨悪の暴露でプラスマイナスゼロとすることにした。
 このことを知っているのは我とフラーマ先生だけだ。対外的には・・・
 ・誘拐犯は、イフリート先生を操っていた連中。
 ・貴様ら三人は、我から火の糸石の話を聞き、興味本位で調べてたときに誘拐事件に巻き込まれた被害者。
 と、なっているはずだ。
 ――――助けるのは今回だけだぞ。わかっているな。」



ワイルちゃん「え、てことは・・・まだ学園にいられるんですねぇぇぇ・・・ふええん!!よかったよおおお!!」
ストライフちゃん「泣くな泣くな。っとと・・・証拠隠滅、と。」
ストライフちゃんは弱めのヘルファイアで、今の手紙を焼きました。手紙は灰となり、風に乗って散りました。
と、オイゲンくんが入ってきました。
オイゲン「お、目が覚めたかい。丁度良かった。そろそろ始まるぜ。」



〜〜臨時騎士団会議〜〜

テオドール「今回の事件では、犯人を捕らえることこそできなかったが、
       コンスタンツは無事に戻ってきた。火のルビーも守ることができた。
       イフリート先生のことは残念だが・・・まずは被害を最小限に抑えられた、皆の尽力に感謝したい。」
ノーデン「イフリート先生って、誘拐犯に操られてたんだって?あの人単純だから、催眠術とか弱そうだもんなー。」
プラッツ「まさかそんなことになってたなんて・・・俺悪いこと言っちゃったな・・・。
      イフリート先生は、いまだに行方不明なんだろ・・・?」
ノーデン「まぁ気ィ落とすなよ。あの人はそんな、すぐ死ぬタマじゃねーって。」
プラッツ「そうか・・・そうだよな!!あの人帰ってこね―と体育できねーしな!!!
      ・・・ところでよ、なんでラファエルの野郎がのうのうと並んでるんだ?」
ノーデン「あー。イフリート先生が操られてコンスタンツを連れ出したんなら、
      生徒の力じゃどうやっても止められなかったろうってな。ヤツに責任無しと判断されたらしい。」
プラッツ「なんか・・・イマイチ納得いかねーなー。」

テオドール「さて、コンスタンツから、ラファエルと正式に付き合いたいという申し出だが・・・
       わ、私は、わた、わたしは・・・これを許そうと・・・お、思う・・・。」
コンスタンツ「お父様!」
ラファエル「お義父様!」
テオドール「まだ貴様が『お義父様』呼ばわりするのは早いわヴォケ!!!」
ラファエル「ひぃっ!!」

プラッツ「マジかよ!!テオドール先生、なんか怪しいキノコでも食ったのか?」
ノーデン「影で乳繰り合われて、また今回みたいなことになるよりは、安全な騎士団寮内で・・・ってことらしい。
      まぁ苦渋の判断だったみたいだな。見ろよあのテオドール先生の顔。10歳くらいフケたんじゃね?」

テオドール「ゴホン、さて・・・では今回の会議の主題に入ろうと思う。入ってきたまえ!!」
すると会議場のドアが開き、ミルザくん、オイゲンくん、ミニオンズが入ってきました。

テオドール「騎士団寮の生徒として、いち早く行動し、コンスタンツを救い出したミルザ、オイゲン!
       そして他寮の生徒でありながら、事件解決に協力してくれたワイル、ストライフ、ヘイト!
       彼ら5人に、名誉騎士の称号を送りたいと思う!異議あるものは?」
騎士団寮生たち「「「異議なし!」」」

オイゲン「色々あったけど、名誉騎士で特別待遇ゲットか。まぁ終わりよければってやつだな?」
ストライフちゃん「フン、名誉騎士か・・・仕方ないな。貰ってやるか。(・・・本当は犯人なんだが、まぁいいか。)」
ヘイトちゃん「あひゃ〜〜〜jfjfljf特別待遇名誉騎士〜〜〜らぁっきぃぃぃぃぃ!!」

テオドール「満場一致だ。受け取ってくれたまえ。」

    ミルザ「僕たちは――――」
ワイルちゃん「私たちは――――」



【時同じくして。騎士団寮の外れにて。】

フラーマ「騎士団会議には出て行かないの?あなたなら名誉騎士間違い無しよ。炎帝。」
タイラント「遠慮させていただく。今回の事件は我の責によるところも大きい。とても貰える立場ではないさ。
       それに、我は騎士というガラではない。
       ――――色々と、済まなかったな。」
フラーマ「いいえ。貴方はコンスタンツの命を救ってくれた。それで十分すぎるほど、よ。
      ・・・ところで、イフリート先生は、本当に操られて・・・?」
タイラント「我と戦った時は完全に意思を乗っ取られていたがな。ミルザ達の話を聞くと、
       自我がしっかりありながらも、自己矛盾にさいなまれていたようだ。
       精神操作が、2重、3重にかけられていたのかもしれん。・・・厄介ではあるが、救いもある。」
フラーマ「と、いうと?」
タイラント「完全に塗り替える精神操作ではなく、自我と作為が入り混じった状態になっていた。
       と、いうことは、過去の行動は完全な演技というわけではなく、多少なりとも地が出ていたということだ。」
フラーマ「・・・ってことは、あの暑苦しい性格は、地の可能性があるのね。ハァ、やっぱりクラクラしてきたわ。
      ところで、もう一つだけ教えてもらえるかしら。」
タイラント「答えられることであれば。」
フラーマ「あの三人娘を助けた真意について。」
タイラント「言わなかったか?奴らはとんでもないことをしたが、怪我の功名で騎士団寮内部の敵を暴けた。
       我にも多少の責任はあるし。その辺をかんがみて――――」
フラーマ「本当に、それだけ?」
タイラント「――――正確には、あと2つある。
       1つは騎士団寮のためだ。誘拐犯が捕まって誘拐事件が解決すれば、自然と警戒心は薄れる。
       だが、人質は取り返したが誘拐犯が逃げている状態ならば、警戒心は薄れるまい。
       なにせ敵の本来の目的は石だ。再来することは、目に見えているからな。」
フラーマ「なるほど。もう一つは?」
するとタイラントくんは、頭上の青空を見上げるようにして「うーむ、なんというか・・・」と区切ると、
今朝のメンバーのことを思い出しました。ミルザくんとワイルちゃんの。オイゲンくんとストライフちゃんの。
(ヘイトちゃんは?という質問は無しの方向で)
そして、腕組みをして言いました。
タイラント「過ちは、いくらでも反省して修正できる。だが友人関係に入った亀裂は、自分一人では容易に修正できまい。
       ――だから、もし大人がウソをつくことで、若い連中の亀裂を回避できるなら・・・そうした方が良いと思った。
       若い連中には、反省はしても後悔はして欲しくなくてな。うーむ、自分でも何を言ってるかよく分からんよ。」
それを聞いて、フラーマ先生はクスリと笑いました。
フラーマ「炎帝、貴方は変わったわね。なんていうか、人間臭くなったわ。
      戦いの時も、結局ほぼ人間体で押し切ったんでしょ?
      人間を、そして人間体で過ごす事を、とてもいとおしく思っている感じ。
      ――――貴方をそう変えた人は、果たして誰なのかしらね?是非一度お会いしてみたいわ。」
タイラントくんは、その語りかけには応えず、フン、とそっぽを向くだけでした。



【臨時騎士団会議場】

    ミルザ「僕たちは――――」
ワイルちゃん「私たちは――――」

ミルザ&ワイル「「辞退します!!」」

テオドール「へ?」
オイゲン「え?」
ストライフちゃん「な?」
ワイルちゃん「ひゃ?」

会場中『ええええーーーーーーーーーーーっっ!!??』

ミルザ「僕たちは、騎士のつとめを完全に果たすことはできませんでした。先生も助けられませんでした。」
ワイルちゃん「私たちも、名誉騎士と名乗るにはまだまだ実力不足です。」
ミルザ「だから」
ワイルちゃん「ですから」
そして、ミルザくんとワイルちゃんは目を合わせ、微笑み、同時に語りました。
ミルザ&ワイル「もっと実力をつけて、名誉騎士にふさわしいその時が来るまで・・・辞退いたします。」
オイゲン「ちょ、ミルザお前何いってんだよーーーー!!」
ストライフちゃん「ワイルーー!!お前どうした!!頭うったのがまだ響くのか!?」
ヘイトちゃん「ワイルちゃあああああん!!そんなああああああlじゃfljfljf!!」
テオドール「・・・・っ!感動した!!まだまだ高みを目指すその姿に感動した!!
       わかった。君達の意見を尊重しよう!
       ・・・つーワケでラファエル!さっきのお前たちの話も白紙な。」
ラファエル「え、ちょ、そんなああああ!話が違いますよ義父さん!!」
騎士団寮生「げひゃひゃひゃひゃ!ざまーみやがれラファエル!!」
ラファエル「やめてよね。君達が(略」
騎士団寮生「なんだとてめーーー!!!!」



【騎士団寮外れ】

タイラント「おい。なんか会議場が荒れ始めたぞ。窓ガラスも割れた。」
フラーマ「あらあら・・・私が行かないと収まりそうも無いわね。それではごきげんよう、炎帝。」
タイラント「うむ、さらばだ。」
フラーマ「・・・ねぇ炎帝。敵はまた近いうちに来るのよね・・・大丈夫かしら?」
タイラントくんは、ワァワァギャーギャーと音のする会議場を見て、そして、ふっ、と微笑みました。
タイラント「大丈夫さ。また狂人どもが魔手を伸ばしてくるだろう。だが――――

       ――――狂人は勇者に打ち倒される。そういうものさ。」

それを聞いて、フラーマ先生はニッコリ微笑むと、小走りに会議場に向かいました。
そしてタイラントくんも、帰路につきました。

タイラント「(次に騎士団寮を救うのは、お前の役目だぞミルザ。できるはずだ。お前が勇者ならば、な。)」


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