第17話「ツー・ムーン・ラブ!」

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『よくやった、お前はよくやったよマックス!さあおいで、お前は一番の方法の為に上手くやってくれた』
暗闇の中、揺れる水面に気味の悪い緑の光が映っていました。
水鏡を見つめているのはぽつんと小さなセージでした。
セージ「もっともお前は何もしていない!そう、よく何もしなかったのがいいんだよ!
     その体を最適に僕に操らせてくれた、死者ごとく意志は無く生者のごとくの力を持って!
     ・・・気分がいいね、まったくさっきまでの不快さは吹っ飛んだ!」
???「呪いは呪者のほうにも呪いがかかる。とにかく効能が遅いんでストレスをどうしても溜めるのだ」
セージは振り向きました。何も無い。それは間違いだ。暗闇に溶け込もうとその強大な力は
欺けない―――それはカヤキスでした。
セージ「(・・・力が満ちているな)これはこれはカヤキス様、あなたのうつろな目は何もかもお見通しですね!」
カヤキス「それでお前は呪いから乗り換えたのだな。あえて言うが、引っ掛けたつもりは全く無いのだ」
セージ「・・・(あぶねー「呪いと乗りー」を引っ掛けるなんて流石カヤキス様ですね!とかつい言おうとしちゃった)
     その通りです。しかし僕は呪いを諦めたんじゃないんですよぉ、不可能だったんです
     何でか知りませんけどね!しょうがないから違うやり方にしないとなあと思ったら」
カヤキス「思いもよらずいい方法だったわけだ。その方法はいまだ知らんが、お前の呪いが不可能だったわけには
      訳がある。ついついくどい言い方をしてしまう私にも訳がある。
      ワケあり?えっあなたワケありなの?そんな響きについつい引っかかってしまう子羊がまた一匹」
セージ「ご用はなんですか」
カヤキス「因果律が覆されたのだな。原因があって結果があるところを何か違う要素が乱れこんだために
      結果だけになってしまった。結果があって原因があることはない。だからお前には
      結果もないことも当然なのだ」
セージ「ほう・・・大体わかりましたよ。いやだなあ、僕ゲームをやる前にクリアされてたんだ!
     例えニューゲームを選んでもそれはもう違うゲーム・・・」
カヤキス「な、何故わかった私が賞味期限切れの牛乳を処分するのに生ゴミ捨て場まで行くのがめんどくさいから
       適当にお前に押し付けちゃおー☆と思ったことを・・・!!」
セージ「(こいついつか謀殺しよう)いやだなあお茶目さんな将魔さま!
      僕達はいつまでもおふざけしているほど暇じゃないはずですよ・・・今にも宝石たちは
      長く伸ばされた欲深い手に捕まれようとしているんです」
カヤキス「早速で悪いが用件だ。私はお前がなにをしたか知っている。サルーインを『アムトのシンボル』にしたな」
セージ「(どこが早速だこのゴキブリ)用件はおっしゃられる前からわかっておりました。そのとおりでございます」
カヤキス「お前が糸石のためにあれを駒に使うつもりなのもわかってる。しかしそうというからには
      お前は『エリスのシンボル』がどこにあるかも知っているはずだな」
セージ「言葉をお引取り致します、はいその通りでございます、そして『エリスのシンボル』の在り処、
     もちろんお教え差し上げます」
カヤキス「話が早いようで何よりだがそんな簡単に私に受け渡してしまっていいのかな?
      別にお前なんか明日家出してても気付かないだろうがそんなどうでもいい人にも
      ついつい気を使ってしまう教育を受けているのだ育ちがいいから」
セージ「はいはいカヤキス様のお心遣いから育ちの程度が胸焼けするほどよくわかりますよ、
     もちろん僕ごとき者の陰謀など、あなた様の気まぐれの前になんでしょう!
     ・・・しかしカヤキス様、もしよろしければ僕はあなた様の出来心をより愉快にするお手伝いが出来るはず」
カヤキス「・・・ほう、手伝いと」
セージ「家事手伝いじゃないんですよ、お皿洗いとかお掃除とかは自分でやってください」
カヤキス「なんで皿洗いと掃除をしてくれって言おうとしたのがわかったんだ」
セージ「つまりこうです、『エリスのシンボル』の在りかを僕は教え、『エリスのシンボル』の
     奪取のためにあなたの腕となり足となり、そして『エリスのシンボル』を
     強く、最も深くあなた様だけの物とするために考えるのです・・・」
カヤキス「・・・・・・・・・・・・・・・」
カヤキスはがらんどうの鎧の中から鋭い視線を投げかけます。セージはそれでも柔らかな笑みを固く守っています。
カヤキス「よかろう、お前を利用してやることとしよう」
セージ「なんてことでしょう!光栄の至りです、力の限り!」
カヤキス「いや給料分だけの力でいい、時給5ジュエルくらいでいいかな」
セージ「それじゃデコピンするほどの力も使えません。いいんですよ僕の力をあますことなく・・・ふふふ」
セージの笑いが長く漏れていました。その不気味な声は水鏡を一層揺らしているようでした・・・



・・・マルディアス学園に夕日が射し染めようとしていました。
???「そんなバカな・・・赤い月の光がこぼれてしまったの?」
???「そうらしいんだ、風が吹けば木々がざわめき、ざわめきは木々に乗って僕の元へ来る・・・
      しかし今僕の元に来たということは、もうかなり時間が経ってしまっている話だ」
???「アルはどうしたというの・・・こんな時に!では光はどこへ行ってしまったの?」
???「アルは光を追っているはずなんだよ、アムトちゃんはある生徒の上にこぼしてしまったらしいんだ」
???「その生徒、『アムトのシンボル』になってしまったの!」
???「それがわからない、アムトのシンボルになったら呆然として動けないはずだよ、
     『エリスのシンボル』が完成するまでは、光は引かれ合わない」
???「・・・それではその時、別のものに光を封じ込められた」
???「それが一番説明のつく話だ。アルはそれを持っている生徒を追っているはず・・・
     しかし・・・」
風が吹き、沈黙と共に森のざわめきが流れました。
シリルくん「その生徒が今も持っているとは限らない」
エリスちゃん「アムトはどうしたの・・・どうしてアムトはいなくなってしまったの?」



オイゲンくん「いい加減教えろよ、その『二つ月のシンボル』のジンクスってどんなんなんだよ」
オイゲンくんの声が闇夜が垂れる前の空に響きました。
水龍くん「気になるのか?」
オイゲンくん「気になるも何もそれが一番の問題だろ」
水龍くん「気になるのか?気になるのか?気になるのか?あのコが気になるのか?」
オイゲンくん「何の話にシフトしてるんだよ!!!」
ミルザくん一向は迷いの森の入り口付近に来ていました。
しかし迷いの森、既にここがどの辺だかわからなくなっています。
水龍くん「ふう〜〜〜〜勿体ぶれば勿体ぶるほど言うのが勿体無くなってくるなあ〜〜〜
      じゃあ変わりにこの話な!アディリスのとこに行くつもりが干からびて倒れてしまった私を
      とある女の子が介抱してくれて」
オイゲンくん「俺達はもうお前の武勇伝は聞き飽きたんだよ・・・」
ミルザくん「そうですよ、自分ばっかり話して僕のサルーインちゃんラブモーメントはちっとも」
オイゲンくん「それよりはマシだな」
水龍くん「うんわかったお前ら鬱憤がたまってるようだな、ここには水がない。
      ここでお前らにリンチにあったら私のハンサム顔も危険だからそろそろ話してやろう、
      つまり一つの月『エリスのシンボル』ともう一つの月『アムトのシンボル』は
      お互いを結びつける役割を果たす」
オイゲンくん「顔の問題だけで済むと思ってんのかお前」
ミルザくん「ええ!そ、そんな『運命の糸石』みたいのがこの学園にはもうひとつあるんですかあ!?
       しかもそっちは二つ集めるだけなんて・・・」
水龍くん「厳密に言えば本質が違う。『二つ月のシンボル』はお互いを持つ方と持つ方が
       問答無用で愛し合う。例え持ち主が誰であっても、な。『運命の糸石』は全く別だ、
       いくら糸石を集めようとも好きな人と結ばれないこともある――――
       なんでミルザは泡を吹いているんだ?」
オイゲンくん「この泡は打ち砕かれた希望そのものなんだ」
水龍くん「ふーん。まあ泡は気泡だよな。・・・好きな人と結ばれないこともある、
       しかし他に結ばれるものが現われる―――――それが『運命の人』だからだ」
ミルザくん(運命の、人――――)
オイゲンくん(結ばれる、『もの』、ね。成る程・・・)
水龍くん「これが違いだよ、『二つ月のシンボル』は対象を自分で選べるが、
      『運命の糸石』は選べない・・・必ず決まった相手としか結ばれることがない。
      さて私の恋愛アイテム講座は分かりやすかったかな?おやミルザさっきの泡はどうした」
ミルザくん「希望を捨てるわけないでしょ!!元の場所に戻さなきゃっはいっ!!!」
水龍くん「泡を吹くとそれを再び飲み込むという民間療法があるのか。まあいいや
      迷いの森の・・・まあどんな場所か大体の見当はつくな」
オイゲンくん「―――――いや、ここは?」
気がつくと、三人は不思議なところに経っていました。木々が回りに生えておらず、
青白い月明かりが差し込んでいる・・・もう夜は舞い降りていたのです・・・そして
その中心には大きな木がありました。とてもとても大きな木。
ミルザくん「うわあ・・・・・・この木、まるで月に届きそうだな」
オイゲンくん「・・・そうだな、大きくて高くて、一番天辺は一体どんななんだろ・・・」
水龍くん「ああっ!!!一番天辺にかわいいおねーちゃんが!!!!」
ミルザくん&オイゲンくん(ガクーーーーーーーッ)
オイゲンくん「こんな時に願望じみた幻覚を見るなーーーーーちょっと俺が素直に綺麗だななんて
        言っちゃおうかな言っちゃおうかなって瀬戸際に貴様ーーーーーーーー!!!」
水龍くん「うわーーー首に手をかけるな首にお前の大人の階段登る瞬間なんて私の知ったこっちゃねーーーーー」
オイゲンくん「本当のお花畑へ送ってやるーーーー!!!」
ミルザくん「ちょっとオイゲン、本当に女の子がいるよ、僕にも見える」
オイゲンくん「はあ!?その女の子とサルーインちゃんどっちがかわいい?」
ミルザくん「もちろん僕はサルーインちゃん!!!あっでもサルーインちゃんは綺麗でもあるし〜」
オイゲンくん「本当にいるみたいだな」
水龍くん「ちょ、ちょっと首から手を離して、泡が、気泡が・・・」
オイゲンくんが目を凝らすと、確かにそこには女の子がいました。



オイゲンくん「あんなところで何してるんだ?・・・なんか小さい・・・舟みたいのがそばにないか?」
水龍くん「きっと登って降りられなくなっているのだ!!助けに行かなければ!!!
      さてオイゲン私は水中生物なので木の昇り降りなんて技持っていないのだ、
      あのハニーのところまでおんぶして連れてっておくれ」
オイゲンくん「・・・・・それは結局俺が女もお前も降ろす羽目になるという余りに意味のないことだと
        知って言ってるのか貴様・・・」
ミルザくん「な、なんであんなところにいるんだろう、まさかここは飛び降り自殺実況場・・・!?」
水龍くん「なんと!では飛び降りてきたハニーを私が颯爽と受け止めなければ!!!
      でもあんなに高いところからじゃこっちの腕が折れそうだから
      オイゲンお前が私の代わりに受け止めて一瞬の隙に私と交代しようじゃないか」
オイゲンくん「こいつが迷いの森で野垂れ死にってシナリオはどうだと思うミルザ・・・」
ミルザくん「僕そんなサスペンス見ないよ、自分の恋のシナリオを描くのに精一杯だからさ・・・!」
???「あ、あなたたち何故ここにいるの!?どうしてこんな時に・・・」
木の上の人影が声を落としてきました。月の逆光でよく見えませんが、なにか不穏な表情が見えます。
ミルザくん「あ、あの僕らは・・・!」
水龍くん「私達はあなたに呼ばれたのです」
???「ええ!?」
水龍くん「あなたの助けてという悲鳴が心の波に乗って私の胸ヘ届いたんだーーーー!!!
      死んではいけません生きてかわいい男の子と女の子を5人ずつ!!!」
ミルザくん「ちょっとオイゲン静かにさせてよ」
オイゲンくん「任せろ、天からの声だと思うことにするぜ」
水龍くん「ごふっ!!・・・・・・!!!」
???「あの・・・なんなんです・・・?」
ミルザくん「すいません、僕達あやしい者は一人だけなんで安心して欲しいんです!
       僕たちはただ『エリスのシンボル』を探してここまで、あなたは一体・・・!」
???「『エリスのシンボル』!すでに手に入れようとする人達が現われたのね・・・
     でもまだ『エリスのシンボル』は出来ていない」
???『あなたたちは出直さなければならない』
ミルザくん「――――――木がしゃべった!!!」
オイゲンくん「・・・あ・・・あんたたちは、なんなんだ?」
エリスちゃん「私はエリス、生徒会実行委員の一人です。そしてこの木はシリル・・・」
水龍くん「水の知らせで聞いたことがある!木の化身の生徒がいるという」
オイゲンくん「もう蘇ったのか」
ミルザくん「・・・???あなたが生徒会の人・・・そ、それで今そんな高いところにいる
       理由は一体なんだというのですか!?」
エリスちゃん「ああっ・・・集中力を乱さないで!私はこれから月の舟に乗らなければいけないの」
ミルザくん「月の舟!?」

シリルくん『本来なら今だ二つの月のシンボルはまだ光が満ち足りず、手に入れるチャンスには
       まだ遠かったんだ。けれど予期せぬことに『アムトのシンボル』はもう出来てしまった・・・!
       だからエリスちゃんは『エリスのシンボル』の完成のために月の光の軌道に乗り、
       何より早く月の光を拾って来なければならないんだよ』
ミルザくん「・・・え?ええ??・・・あのう僕妄想ってちょっと理解できなくて・・・」
オイゲンくん「お前が言うな!!!」
水龍くん「どうして『エリスのシンボル』なんて完成させなければならないのですかーーーー!!!
      だってもうすでにほんまもんのエリスがいるじゃないですかーーーー!!!
      私はもーーーーあなたさえいれば私はあああーーーーーーーーー!!!」
オイゲンくん「お前ちょっと死んでろよ!!!おい俺が話を聞く!説明してくれよ何言ってんだ!?」
エリスちゃん「あ・・・あ・・・お願いだから騒がないで〜〜〜私の心をかき乱さないで〜〜〜
        月の光の流れはナイーブで〜〜〜ちょっと舵を誤まったら・・・あ」
エリスちゃんの舟が乗り出しました。・・・が、一瞬宙に浮いたと思ったら・・・
すぐに舟は地面に直行落下してきました。
エリスちゃん「いやああああああああああああああ!!!」
オイゲンくん「・・・っ畜生取りあえず舟を蹴って舟から分離しろ!!!あんただけ受け止めて
        俺がウコムの矛で舟の軌道を逸らして安全にする!!!ミルザあの子を受け止めてくれ!!!」
ミルザくん「ええーーーーー初めてのお姫様抱っこはサルーインちゃんって決めてるのにーーーー
       いや初めてどころかぼくの両腕はサルーインちゃん限定なのーーーーーーわーーーーー
       こうなったら柔らかいはらわたの上に落ちてもらって僕は下敷きになろう!!!」
オイゲンくん「お前はそんな妄想上の限定のためにはらわたぶちまけてもいいのかーーーーーー!!!」
水龍くん「ふっガキどもはお呼びでない!私が僅かだが体内に残っている水分を操り
      あの子に水のクッションを作る!!!」
ミルザくん「ええ!!!すっすごい水龍さんってなんてカッコイイんだ!!!」
オイゲンくん「お前さっきと言ってることが違うじゃねえかよ!!ああもういいやとにかく任せた!!!」
エリスちゃん「ふ、舟蹴ったわよ!!・・・きゃあああーーーーーー!!!」
そんなことを言ってるうちにエリスちゃんはますます落下してきていました。
水龍くん「・・・水よ!!母なる水よ!汝の生み出せし生命のため・・・水龍の呼び声に答えよ!!!」
水龍くんの口から水の気がほとばしりました。
『・・・・・・・・りゅう〜・・・』
水龍くん「・・・あれっ?え?何この声?もしかして水?・・・えっいや会話は別にしなくていいんだけど」
『・・・・・・・す〜いりゅうさんよ〜〜!・・・・』
水龍くん「えっなにこの口調?全然神秘がないよ?・・・もしかして水って肝っ玉母ちゃん系?」
『・・・・水龍さんよ〜〜〜おいらを助けてくれ!!!』
水龍くん「!!!!!!!!
      ぐぼーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」
水龍くんの口からいきなり何か人間大の物体が飛び出したのです!



ミルザくん「げっ!!!」オイゲンくん「うわ」
エリスちゃんの真下には飛び出してくる物体が!!
エリスちゃん「いーーーーーーーやああああーーーーーーーーーーーー!!!(泣)」
???「ぎやあーーーーーーーーーー何ィーーーーーーー!!?」
その時でした、エリスちゃんの体が途端に狼に変化し、その物体を足蹴に飛び跳ねて着地したのです!
???「ぎゃひっ!!!」
ミルザくん&オイゲンくん「え・・・え・・・???・・・あ、あのお前・・・」
水龍くん「ぜえっ、ぜえっ、こ、こんな汚いもの吐いたなんて私の経歴に傷がついたぞ!!
      ・・・お前!!!」
???「うっひい〜〜〜〜〜〜お、お前らおいらが何したって言うんだよお〜〜〜〜!!!」
ミルザくん&オイゲンくん「ジャミル!!!!!」
飛び出してきたのは、あのジャミルくんだったのです。
ミルザくん「ジャミル、お前なんでこんなところに、・・・こんな来かたで」
ジャミルくん「俺だって知るかい!!こんな来かたでってその言い方が俺の心を刺すんだよーーー!!!」
水龍くん「ぜえ、ぜえ・・・お、お前『水龍の腕輪』で私を呼んだろう!!」
オイゲンくん「なんだって?」
ジャミルくん「そうだよ!!!あんたの水来てくんないじゃん!!!あんたの売りは即配達だろ!?」
水龍くん「どういう例えなんだ私は出前屋じゃないわい!!お前は偶然にも私も水を呼び出している時に
      私の腕輪を使おうとした!!だから水がどちらにも向かおうとしたが当然力の強い私の方に
      引っ張られる、しかし同調していたお前もここまで引っ張られてきてしまったのだ!!!」
ジャミルくん「なに!?はあ!?そ、そういやここは南エスタミルじゃない・・・俺あんたのところまで
        一瞬で引っ張られてきたのか!?」
ミルザくん「よかったじゃないかジャミル、瞬間移動なんて滅多に出来るものじゃないよ」
ジャミルくん「お前が言うと下手な慰めなんだか本気なんだかわからなくて嫌だ・・・」
オイゲンくん「それにしてもあんた・・・エリスさんだっけ、その姿・・・」
四人は一斉にかわいい女の子だったはずの銀の狼の方に目を向けました。
エリスちゃん『・・・そうです、私は狼の化身。先程の人間の姿は借りのものです』
水龍くん「ちっくしょーーーーー狼に化かされたーーーーーーー!!!」
オイゲンくん「一々叫ぶなこのバカ寮長!!!」
ミルザくん「だったら、最初から狼の姿に戻って着地してくれれば・・・」
エリスちゃん『わ、私はあくまで猫ではなくて狼で・・・着地にちょっと自信がないんです』
水龍くん「かわいい・・・!なんだか守ってあげたい・・・!」
ジャミルくん「独身の男は部屋に犬飼ってるっていうからいいんじゃねえの」
シリルくん『エリスちゃんはやく月を追わないと・・・!僕も集中力が切れてきたよ、
       木々は風に揺られるもの、それをコントロールして空への動かぬ堅固な台に出来るのは僕しかいない』
エリスちゃん『ええ、ごめんねシリル、私が月の光の流れに乗れないばっかりに・・・』
オイゲンくん「・・・こいつらは本気で言ってるようだな」
ミルザくん「光の流れ・・・・・?・・・・――――!」
ミルザくんは閃きました。



ミルザくん「ねえエリスさん、僕たちも一緒に月の舟で連れて行ってください!」
エリスちゃん『ええ!?』
オイゲンくん「お、おい何を言ってるんだよミルザ」
ミルザくん「この水龍くんは水の四寮長!川の流れを彼は自在に操ることが出来るんです!
       例え光とはいえ流れの操作に違いがないなら・・・この人は舟の安定に役に立ちます!」
エリスちゃん『四寮長!水の水龍・・・ま、まさか、人間の姿だったから思い及ばなかった!』
水龍くん「(あれ?そうじゃん?私も元々は人外の姿・・・こういう世界だと人間は人間としかくっつかないけど
       人外だと人外同士なら何でもアリ!様々なヴァリエーションが・・・狼だってあめんぼだって!)
       そうですエリス!私は流れの王!流れに乗り!流れに流れ!流れに流れ流れ」
オイゲンくん「俺たちが付いていけなくなったら流れに流して地平の果てに葬り去ればいいのです」
エリスちゃん『・・・なんてコメントしたらいいかわかりませんが・・・でももしかしたら
        私は本当にあなた達を呼んだのかもしれない。あなたたちの力が必要なのかも・・・』
ミルザくん「僕、親切の安売りは大得意なんです!!!任せて!」
オイゲンくん(こいつもう本来の目的忘れてるな・・・)
水龍くん「そういうわけだ、ジャミルお前も来い!」
ジャミルくん「はあ!?ええ?なんなの?なんなわけ?合コンだったら男四女一なんてなんの強奪戦だよ」
水龍くん「合コンじゃないわなんでも話を軽くしてしまうやつめ!!!
      お前は『水龍の腕輪』を持っているんだろう?それがあれば私はマラル湖から水を引き出せる!!
      干からび知らず、パックがなくてもプルプル肌」
オイゲンくん「こいつのためじゃなくて俺とミルザって友達のために付いて来てくれるだろジャミル?」
ジャミルくん「お・・・・・おう・・・・・何かわからんがお前らの間に大きなクレバスが見えるよ・・・
        ・・・しかしミルザお前、アクアマリン持ってなかったの?」
水龍くん「ああ!!!」
ミルザくん「え?持ってるよ!宝物の一番の宝箱は自分自身だよ!・・・ぼ、僕の中にアクアマリン・・・っ!」
オイゲンくん「いちいち遠くに行かないでくれミルザ」
ミルザくん「でもなんで?確かに持ってるけど僕アクアマリンはちゃんと使いこなせないから、
       どうせ水を出そうとしても水の精気のないところじゃ・・・」
水龍くん「あっほーーーーーお前が使いこなせなくてもこの水のプロの私が使いこなせないと思ったのか!?」
ミルザくん「あっ!!!」
ジャミルくん「抜けてんねー、ミルザ」
ミルザくん「ご、ごめん気付かなかった僕、水龍さん水気が減ってたのに・・・・・」
水龍くん「はあ〜、いやいいのだ、どうせ私はアクアマリンを借りたりしないよ、
      それはお前がサルーインちゃんからもらった宝物。他の男が触っていいものじゃない」
ミルザくん「・・・・!す、水龍さん・・・・」
水龍くん「そんな石ッコロより女の柔肌よーーーーー!!!さあエリスその姿じゃこれだけの人数のスペースがない!
      君も人間型に戻りたまえーーーーーーー!!!」
エリスちゃん「・・・・・・・・・・私の隣と後ろと斜め後ろにこの人を座らせないで下さい」
オイゲンくん「必ずあなたを死守します。死ぬのはあっちです。」
ミルザくん「・・・あの手にアクアマリンを触らせないでよかった、ほんとによかった・・・
       ところでジャミルさ、なんで水龍の腕輪を使おうとしてたの?」
ジャミルくん「えっ・・・」
ミルザくん「いやだって普段必要ないでしょ水を呼び出すのと水龍さんとの通信しか出来ない腕輪じゃん。
       ・・・・・・・・あっ・・・・ご、ごめん水道止められたんだね・・・・僕って無神経で・・・」
ジャミルくん「・・・・・俺も貧乏だけどさあ、俺お前っていう自分より貧乏な奴がいて
        ちょっと自信に思っちゃったりしてるんだぜ・・・・・いや、なんでもないんだよ・・・
        てか俺もよくわかんねえんだ、あれがなんだったのか」
エリスちゃん「みんな行きましょう!時間は余るほどない!」
ジャミルくん「おう、行こうぜミルザ!お前ら俺を巻き込んだんだからな」
ミルザくん「あ、うん・・・・・・・・・?・・・・・・」
ジャミルくんはミルザくんの前に走り出しました。ミルザくんは何か、ジャミルの背中に光ったようなものを
見た気がしましたが、目の錯覚だろうと思いました。
ミルザくん「行こう!水龍さん、お願い!」
水龍くん「流れ行く道よ、我らを導き、祝福せよ!」
月夜の空に、一つの小さな舟が浮かんでいました。
ミルザくん「すごい!僕ら、夜空を渡っている!!」



???『・・・ちっ!何故一瞬にして目の前から消えたんだ!?
     ・・・・・工事中の穴なんかないしそこにはまったってことはないよな・・・ふん!
     しかしいくら逃れようとも変わらぬこと!貴様に俺の『牙』を取り付けた・・・
     俺の匂いが離れていく!本来なら己の匂いほど嗅ぎ付けやすいものはないのさ、
     ・・・だが本当に遠くまで行ったらしいな、これはメルビル寮・・・?
     ――――!?俺の牙の近くに懐かしい気配がある・・・!?・・・まさか、
     ・・・・・うっ!?やばい、気配が断絶された・・・だかそれは俺の不注意だ、
     ・・・・・・・・もっと近くに赤い光の気配がある!!?』



ミルザくん「へえー、この壷の中に月の光を集める!?」
ミルザくんたち一行は無事月の軌道の流れに乗り空の上。ミルザくんは興味深々に壷を覗き込みます。
エリスちゃん「余り覗き込まないで、一応この壷はエネルギーを吸っているのよ」
水龍くん「うーんまるで熟練された女の魔力のようだなあ」
オイゲンくん「はい、はい」
エリスちゃん「こうして一旦壷に集めた光を更に凝縮できる器に変えるの、
        それが一般に知られる『エリスのシンボル』と『アムトのシンボル』」
ミルザくん「この壷が最終形じゃないんだ!あのさあ使い終わったらこの壷くれないかな、
       たくあん漬けるのにちょうど良さそう」
オイゲンくん「お前そもそも漬物石持ってないだろ」
ミルザくん「石なんか道端で拾うもん」
ジャミルくん「そこが誰の所有地かわからないんだぞ?そこから勝手に持ってきたら立派な窃盗だよ」
ミルザくん「ううう・・・窃盗のプロに言われた・・・
       気付かない振りをして石を勝手に拾ってくることはもうできなーーーーーーい!!!」
エリスちゃん「そもそも壷をあげません。・・・私とアムトは数年に一回こうして仕事をするの、
        これが生徒会での私達の本職・・・」
水龍くん「そうか月の光がエロールちゃんの若さを保つためのエキスだったとは!」
オイゲンくん「若さも何も一応高校生なんだがその発言何となくわかるな」
エリスちゃん「違います、違いますけどあなたの暴言をテープに取ってあの生徒会長に聞かせてやりたかった・・・!」
ジャミルくん「エリスさん・・・涙流すほどなにがあるんすか」
エリスちゃん「こうして月の光を集めシンボルを完成させる、そして蝕の日を待つ・・・
        その日がピラミッドの中の秘宝を求めるものにとっては唯一の挑戦の日!」
ミルザくん「蝕の日・・・・・?」
エリスちゃん「そう、愛の月と獣の月が交わる日」
オイゲンくん「やーーーーーーっと『二つ月のシンボル』の意味がわかったぜ!
        お互いのシンボルが月と月が蝕でどんどん重なりあうように引かれ合うってわけか」
エリスちゃん「まああなたたちどうして知ってるの?二つのシンボルは蝕の力を利用して融合するのよ」
ミルザくん&オイゲンくん&水龍くん「・・・・・・・・・融合?」
エリスちゃん「そう、その融合した形が真の完成型なの、それがあのピラミッドと反応を起せば・・・
        そこからが挑戦の始まりなのよ!・・・・・どうしたの?」
ミルザくん(融合ってさあ・・・あれじゃない?パワーアップするやつでしょ?ちがう?)
オイゲンくん(そうそうそれで融合した同士が二つの人格の中で葛藤するアレだろ)
水龍くん「(つ、つまりこういうことじゃないか?)つまりお互いシンボルを持っていた同士の
       心が融合し、二度と離れることがないということなのだね!?」
エリスちゃん「はい?何を言ってるの?」
水龍くん「・・・・・・・・・・・お互いのシンボルを持ってる者同士は必ず・・・・・」
エリスちゃん「ああ!ええ、そうよ必ず引かれ合うわ!だってシンボルは融合しようとするんだから、
        持ち主はお互い向こうのシンボルに引っ張られるからね、
        でも融合したらお互いもう好きにどこでも行けるわよ」
三人「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ミルザくん(ちょっと、あの、話がどこかなんかとーっても違うような)
オイゲンくん(お互いを持ってる同士が必ず引かれ合って?あれ?融合したらもう好きにどこでもグッバイ?
        えっ?なにこの行きずりの恋にもなってない意味のない引かれ合い)
水龍くん(・・・・・・お前ら何故私を見る・・・私を見るなよ・・・・・やめろよかっこよさは減るんだよ・・・)
     「うわーーーーーーーっ私を見るなーーーーーーー違うんだーーーーなんか手違いがあったんだーーーー
      水の流れからの情報は伝言ゲームであの子彼氏が出来たんだって!が私に届く頃には
      あのせがれうじが襲来したんだって!になっていることなんか日常茶飯事なんだーーーーー!!!」
ミルザくん「そんな情報源ない方がまだマシでしょうが!!!」
オイゲンくん「何でしっかり確かめてから人に言わねーーーんだよ学園内でもトップの地位にいるやつが!!!」
水龍くん「私はちょっとかじった情報をさもくわしげに言うことで
     「すごーい水龍さんって何でも知ってるのねー」ってハニーに褒めてもらうタイプの男なのだ!!!」
ミルザくん「何でそんな恥かしい事堂々と言ってんですかぁ!!ぼくわかりません!!
       ちょっとかじった情報をさもくわしげに言うことで
      「この知ったかぶり!そんな表面だけの空っぽの脳に恐怖を刻み付けてあげるわ!!」
      ってサルーインちゃんに言われてSMプレイでしょそこはァ!!!」
オイゲンくん「俺こっち側の人間になることにしたんでよろしく、ジャミル、エリスさん」
ジャミルくん「・・・これが銀河鉄道でさ、車両が切り離せればはっきり区別つけられるんだけどな」
エリスちゃん「なんなんですかあんたたちは・・・けれどそう・・・融合「してもいいもの」が
        シンボルになればいいけれど、もし融合「してはいけないもの」がシンボルになってしまったら・・・」
オイゲンくん「――――――――?何を言ってるんだ?シンボルになってしまうってそもそも
        シンボルのための型があるんだろ?」
エリスちゃん「確かにシンボルのためだけの型はあるけれど・・・シンボルの本質は結局のところ
        『月の光の力』なのよ、光は何にでも射す・・・光を凝縮してしまえるのは、
         何も専用の型に限ったことじゃないのよ」
ジャミルくんはどこか青白い顔になっていました。
ジャミルくん「――――そういえばこの壷・・・俺が昨夜あそこで殴られたのは・・・こんな感じの・・・
        俺何を浴びた?あの水みたいのはなんだったんだ?水みたいで、柔らかくて、どこか眩しくて―――」
オイゲンくん「・・・・・・じゃ、ジャミル?」
エリスちゃん「あ・・・あなた何を言ってるの?・・・そういえばあなた南エスタミル寮から来たって、
        アルがいてある生徒を追っているはずの―――――」
ジャミルくん「俺、変なでかい猫に追いかけられれそれで水龍の腕輪に助けを―――――」
エリスちゃん「―――――――――!!!」

???『変なでっかい猫だって!俺が!お前そこらの野良猫をかわいーvっていって
     由緒ある血統書付きの猫をプッ変な顔wとかいうタイプだろ!!!』

ジャミルくん「うわ!なんだ!?何で俺が野良猫に共感してしまうたちだと知っている!?」
エリスちゃん「この声は、アル!?―――ジャミルさん、失礼!!」
ジャミル「わっ!」
エリスちゃんはジャミルくんの襟元から手を突っ込み背中をまさぐりました。
オイゲンくん「エリスさん一体―――――」
水龍くん「エリス私にもお前の腕バージョン孫の手しておくれ!」
オイゲンくん「俺が後で孫の手に鉤爪つけたもん改良してかいてやるから待ってろスッタコ!!」
水龍くん「男はイヤーーーーーーーーー腕の毛痛いねん男はイヤーーーーーーー!!!」
ミルザくん「オイゲンその孫の手って使い終わったら僕にくれないかなあ。
       栗拾いに使えると思うんだよね」
オイゲンくん「お前の周辺に栗の木なんかあり得ないだろ!!!うわーーーーーーお前らだ
       お前らがいるから話が進まないんだよーーーーーーー消えてしまえーーーーーー!!!」ギャー
エリスちゃん「これはアルの牙!!ここから声が送られてきているのねアル!!!」
アル『そうだ、聞こえるんだなエリス!・・・なんだって俺が追っていたはずの野郎がお前の隣にいるんだ!?』
エリスちゃん「それは―――」
ジャミルくん「それはこっちの質問が終わってからだな!なんなんだよあんたたちは!
        おいらに何の恨みがあって追いかけてくる、言っとくけどな、盗みの恨みならあきらめなよ
        盗んだものなんかとっくに売り払われて学園各地に旅に出ちまってるんだよ!」
アル『盗んだことにすら気がついていない盗人めが!お前が俺の主人を脅してそのために
    こっちの月の光がこぼれてしまったことはわかっている!!お前からは赤い月の光を感じなかった、
    何か別のものに封じ込めたのだろうが!!』
ジャミルくん「・・・俺が誰を脅したって・・・?ふわふわした髪のかわいい娘のことか・・・?
        おいらはな・・・おいらがな・・・おいらが殺されかけたんだよ・・・・・・!!」
エリスちゃん「ああっ静かな殺意のオーラが全身を駆け巡っている!落ち着いてジャミルさん、
        よくわからないけどアルこれは確かよ、この人は深く関わってしまったけど何も知らないのよ」
アル『俺の主人の行方も知らないのか?こいつ以外に手がかりなんてないんだぞ!』
エリスちゃん「ねえあなた、昨晩のことをもっとよく教えて欲しいの。どうして赤い月の光を被ってしまったの?
        その光はどこにいったの?アムトはどこに?その時あなた何か持ってる物はなかった?」
ジャミルくん「―――俺がたまたま側に寄ったらあの娘が狼狽して壷で殴ってきて・・・その時その娘は
        バランスを崩したんだよ、だから壷の中身をおいらにぶちまけたんだ。
        でもあの中身はいつのまにか消えてた、昨日持ってたもんなんてしけた盗品くらいだよ」
エリスちゃん「盗品!貴金属のものもあったんじゃないの?違う?どんな安いものでもいい思い出して―――
        なにか赤い輝きを帯びていたものはなかったの!?」
ジャミルくん「赤い輝き――――――・・・!」
ジャミルくんの脳裏に蘇りました、あのかく乱の為に投げつけた腕輪、ああ勿体ないことをした、
大した品だったのに―――そんな思いで振り返ったときのあの輝き。
ジャミルくん「赤かった!確かに赤かった、あの腕輪にはめられてた宝石は確かに透明色だったのに!」
エリスちゃん「それだ!それだわ!!その腕輪に赤い月の光が凝縮されてしまったのよ!!
        ああでもよかったただの腕輪で、その腕輪、どうしたの!?」
ジャミルくん「―――――言い辛いことだがもはやおいらの手にもなければ行方もわからねえ!
        あの時地に投げつけて警備兵が拾ったのを見たきりだよ!」
エリスちゃん「・・・・・ああ!」
アル『いや、上等な知らせだ!警備兵というからには南エスタミルの警備兵だな!
    エリス俺は今しがたここ南エスタミル寮で赤い月の光を感じた!!』
エリスちゃん「ええ!では、南エスタミルにもはや『アムトのシンボル』になってしまった腕輪はあるのね!?
        ・・・いえ待って!今しがたですって?どうしていままで感じなかったの?
        アルは今日一日南エスタミル寮にいたはずでしょう!?」
アル『・・・・・アムトのシンボルは一時南エスタミルを離れていたが、再び戻ってきたということでは』
ジャミルくん「・・・何となく読み込めてきたがあんな品が一日のうちに出入りを繰り返すかな?
        どうしたわけだろう、もしも身に付けてる人間が出入りをしているとして・・・
        いいや、昨日盗まれたような盗品、たとえもとの所有者のものに戻っていても身に付けるとは思えねえし、
        持ち主のところに戻ってないなら尚更この時点では警備隊に保管されてるとしか思えないな」
アル『・・・・・全く面倒なことになってるが考えるより感じる方が先にくる!
   『アムトのシンボル』、いやそうでなくともそれに関わるものはこの南エスタミルにあるさ!
   俺は探す!もちろん主人もだ!エリス、お前は自分の本領に専念しろ!』
エリスちゃん「わかっているわ!気をつけなさいねアル!」

ジャミルくん「・・・俺はなんだかとんでもねえことしちまったみたいだな・・・悪い」
エリスちゃん「あなたは悪くない、私達の落ち度よ、最近の選挙戦の動向のために
        生徒会がぴりぴりしてて・・・そらもう生徒会長のあの扱き使いぶり・・・グルルル!!!
        私達疲れがたまっててついミスを犯してしまうのよ、
        これもそれも悪いのはあの生徒会長の労働基準法違反を恐れない悪魔の心なのよおオオーーーーー!!!」
ジャミルくん「・・・あ、あのさ・・・・・あんたは是非転部情報誌を見るべきだと思うな・・・」
水龍くん「エリス、それほど苦しいのか可哀相に、そんなに辛いなら私のところにこないか
      ちょっと湿った六百坪の新築なんだ、階段で足を滑らせないようにすればほかは全て快適だよ」
エリスちゃん「私魚より肉派なんで」
水龍くん「わかってるよ、緊急時には恋に落ちてしまいやすいが平常時に戻った時にその恋が
      どうなるかわからない・・・お前は私への恋が本物かどうか恐くて
      そんな風に私の好意を受けちゃいけないと思っている・・・
      ああエリス、君とはいつもと何の変わりもない、そんな日に出会いたかったね」
ミルザくん「この人すごい自分に都合いいように解釈できる妄想力があるなあ」
オイゲンくん「お前と友達になれるんじゃないかな」
エリスちゃん「壷の中に光が満ちてきている・・・!もうすぐ完成するわ、『エリスのシンボル』!
        これさえあれば『アムトのシンボル』も、アムト本人の気配も読み取れるはずだわ・・・」



ミルザくん「――――――!?みんな伏せて!!!」
ミルザくんの一声に五人は咄嗟に上体をかがめました。すぐ上で風を切るような音―――
いいえ風を切った、恐ろしい音がしました。
???「よく読んだ・・・だがお前達が生きているのはただひとえに私の美学によるものだと知れ・・・・・
     私がもしみな綺麗に首を落としてやることを望まずに、舟本体を攻撃していれば
     お前達は墜落していたのだ、地獄の底までな」
ジャミルくん「―――――こいつは!?」
ミルザくん「お前は、あの時の!!!」
暗闇の中に青白い炎が浮かび上がったようでした。それはまるで死者の怨念、死者の郷愁―――
そして黒い恐怖の鎧。
???「覚えていたな。それは当然、一度見たら忘れられない、二度見たら目に焼きつき、
     三度見たらあれっこれ恋?と思うようになり、百回見たらどれが本物かわからなくなる。
     我こそはカヤキスだ!」
ミルザくん「えっ!!!やばいよ僕こいつ見るの三回目だよどうしようオイゲン!!!」
オイゲンくん「俺もセリフに突っ込みたいがそこはこらえて武器を構えろーーーーーっ!!」
水龍くん「ちょっと待て!こんな小さなしかも満員の舟上で武器を構えてもバランスを崩さないのは
      一人がせいぜいのところだ!」
カヤキス「心強い後ろ盾がいるようだなひよっこどもよ、そうだせいぜい一人、それも
      射程を長く持つ矛の使い手オイゲンが最良の選択であろう」
オイゲンくん「――――――――っく!!舐めやがって!」
エリスちゃん「こいつ・・・!一体どうやってここまで近づいたのか!?宙に浮けようとなんだろうと、
        私の嗅覚からこれほど近づくまで逃れていたなんて!」
カヤキス「犬か・・・」
エリスちゃん「なんだとおのれ!!!」
カヤキス「鼻がよく利くいい犬のようだな、どうだ私のところで番犬をしないか、
      衣食住、もちろんおやつ付きで服はオーダーメイドだ。最近ワンちゃん用お着替えが流行っていて
      色んなデザインが着られる。専用の獣医さんはもちろん付けるぞ、町の隠れた名医を知っているんだ」
エリスちゃん「うるせーーーー今日はなんなんだ厄日かーーーーーー!!!」
水龍くん「いきなりプロポーズのライバルが現われた」
ジャミルくん「あれがプロポーズに聞こえるのかよ・・・」
ミルザくん「ああっサルーインちゃんにところで私の犬にならないかって言われたい!!!」
オイゲンくん「じ、じ、神雷が出てこないのもみんなこいつらが戦意をそぐからだ・・・!」
オイゲンくんは一応すでにウコムの矛を構えています。カヤキスはその手の中の黒い槍を
ゆらりと動かしました。
ジャミルくん「水龍さん俺達水の力で援護しよう!!!」
水龍くん「ならぬ!オイゲンの真の切り札は神雷だろう・・・水は操れるが結局のところ気まま、
      いくら私達が慎重に動かしてもこちらに水が及んでこないと保証が出来ない、
      もしそこに神雷が来たら全員オダブツだ」
カヤキス「ふ・・・組み合わせが悪かったようだな。条件の合わない夫婦の妥協は・・・悲惨だ」
オイゲンくん「もういいよてめえもそんなこと言って俺を脱力させる戦略なんだろ!!
        みんな敵で俺は最初から一人で戦ってるんだーーーきっとそうだーーーーーー!!!」
ミルザくん「オイゲン疲れてるな」
カヤキス「!」
カキン!槍と矛がせめぎあいます。
カヤキスが間合いを詰めようとしているのに対し、オイゲンくんは引き離そうと精一杯です。
エリスちゃん「きゃっ!」
オイゲンくん「!済まない、くっ・・・狭くて動きが・・・!」
ミルザくん「オイゲンの動くスペースを確保するために舟から飛び降りる勇気のある人挙手はいっ!!!」
ジャミルくん「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
水龍くん「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
エリスちゃん「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
ミルザくん「・・・・・・・あ・・・あれ?誰もいないの?・・・もしかして僕だけ?・・・
       ・・・・・・え、えーっと死ぬ時は一人って、それって、悲しいね・・・・・・・!」
オイゲンくん「・・・手を上げなかった奴らが確かに憎いけどミルザ飛び降りなくていいんだよ、
        飛び降りなくていいから!!!(泣)」
カヤキス「・・・お前はどうやら最近本格的に矛を使い始めたようだな、
      構えは大したものだが型にはまりすぎていて柔軟性がない、結局のところお前に足りないのは
      経験と時間・・・一瞬では決して埋められないものが敗因だ」
オイゲンくん「〜〜〜〜〜一瞬の付け焼刃を舐めない方がいいんだぜ!!!神雷!!!」
オイゲンくんが溜めていた神雷が放たれました、カヤキスに裁きが落ちようとします。
カヤキスはすっと・・・と静かに手を上げます。神雷が直撃しました!
オイゲンくん「―――!?っなんだばかめ!避けられないと知って潔いところを見せたのか!
        ―――――――――き、貴様!!?」
もはやそこは闇夜の虚空と見えたそこには、いまだ恐ろしい気配がありました―――
カヤキスはなんの傷も受けず生きていました。
オイゲンくん「なんで・・・貴様は・・・化け物なのか・・・?」
カヤキス「お前の目に映っている姿こそ真実だぞ・・・・・もはやお前は蚊ほどにもないことがわかった、
      ・・・・・・・・・・それが『エリスのシンボル』のための本質というわけか」
エリスちゃん「!!!」
エリスちゃんはさっと壷を隠すように庇いました。
水龍くん「あの者の目的はエリスの月の光か・・・!一番厄介なこととなった、
      なるほど舟を落とせば月の光がこぼれてしまうからやらないのだな」
ジャミルくん「俺は博打でも水を使ってあの野郎だけを濡らしバリバリに感電させてやろうと思った、
        だがあいつにはなんにもきいちゃいねえ!」
ミルザくん「こいつの力とは、一体・・・・・!?」
カヤキスはもはやオイゲンくんを見ていないようでした。
カヤキス「私の用件はただ一つ・・・・・それを受け取りに参ったのだ」
カヤキスの繰り出される槍が壷付近に集中します!
オイゲンくん「くっ・・・・・!なんて突きの雨!!」
エリスちゃん「おのれ化け物がこの光をなんとするつもりだ!この光は神聖なものだ!!
        お前にふさわしいのは悪霊の光と知れ!!」
カヤキス「私が用があるのはそんな光ごときではない。その光が呼び寄せるもう一つの赤い光だ」
オイゲンくん「神雷!!!」
オイゲンくんの神雷が炸裂します。
オイゲンくん「神雷!!!神雷!!!」
ミルザくん「オイゲン!あいつに神雷は効いていないよ!恐らくあの鎧は電撃を遮断するんだ、
       お前の体力を無駄に使っちゃいけない!」
オイゲンくん「無駄じゃない、いくら電撃を遮断しようとも鎧は金属!これだけ雷撃を浴びれば熱を持つ、
        生身の者なら鎧の中で丸焼きだし霊体であっても熱は効く!!」
カヤキス「・・・・・・・お前は惜しい戦士だ・・・・・・・もし刃を向けたのが私でなければ・・・・・・
      幸せに家庭を持っていいお父さんになって
      ちょっと頑固なお爺ちゃんになってささやかな葬式を開いてもらえただろう」
オイゲンくん「こいつ殺すーーーーーーーーっ
        平凡だけどなんかむかつく他人の人生シュミレーションをするなーーーーーーっ!!!」
ミルザくん「オイゲン疲れてるんだよ、ちょっと自分の幸せな未来を想像して心を休ませてみるのはいいことだよ!」
オイゲンくん「お前はやっぱり敵軍なのかーーーーーーー!!!くそっ神雷!!!」
水龍くん「―――――――いかん、エリスジャミル避けよ!」



オイゲンくんは力を使いすぎてバランスを崩したのです、最後の神雷は月の舟をかすってしまいました。
オイゲンくん「――――――――!」
カヤキス「お前はまだ若い・・・特に精神は未熟・・・ちょっとはじけて恋でもしてみるべきだが、
      その時間はもうないんだよな、ついつい死ぬ間際の人にまで人生のアドバイスしちゃうから困る」
オイゲンくん「・・・・・・・・っっっ!!!(ブチッブチッ)」
ジャミルくん「あああオイゲンちょっと気を静めてもう忘れようぜ、明日起きたら
        きっといつも通りのちょっと斜に構えたお前がいるさ、きっとそうだからもう休もう」
エリスちゃん「――――――ど、どうしよう月の舟がバランスを失ってる・・・!
        あと5度でも傾いたら、その時は、もう・・・・・・!」
ミルザくん「・・・・・・・・・・・・・・・まじで?」
水龍くん「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ふっ・・・・・
      どうせ落ちるんならぴっちぴちの水着姿のハニーたちのいるプールだーーーーーー!!!
      いやここはもう15禁の枠を飛び越え混浴温泉だーーーーーーーーーーーーー!!!
      いやなんで死ぬのにわざわざ混浴温泉なんてねーちゃんに配慮しなければならんのだ
      死にゆく男に女専用風呂の秘密を教えてーーーーーーーーーーーーっ!!!」
ジャミルくん「あんた取り乱しすぎだよバカ!!!」
ミルザくん「ぼ、ぼ、ぼく流れ星になったらサルーインちゃんのところに堕ちたいです・・・・・!!」
ジャミルくん「お前は愛する人を隕石衝突で殺してもいいのかーーー!!!」
オイゲンくん「ちくしょーーーなんでここにいる四バカがタイニィフェザーじゃねーんだーーーー
        あ゛ーーーーーーーーあの猛毒っぽい翼が天使の翼に見えるーーーーーーー!!!」
水龍くん「どうせ私は15の夜に天使の資格を失ったよウワーーーーーーーーー!!!」
ジャミルくん「15の夜に何があったんだよ!!あああいつもはこっち側のオイゲンまで壊れてるよーーーーー!!」
エリスちゃん「(タイニィ・・・フェザー)・・・水龍さん!あなたは今ここで
        元の姿に戻るのよ!!!」
オイゲンくん&ジャミルくん「えっ!?」
水龍くん「・・・・・!?何を言っているのだエリス!?私は水に住まうもの、そもそも空に縁がないものなのだ
      ・・・口惜しいがもしオイゲンの言うように私が羽のある四寮長だったなら・・・!」
ミルザくん「・・・そうか・・・ここは月の光の流れの内・・・水龍さんはいつも水の中で泳いでいたけど
       それだけじゃない、流れの中で泳いでいたんだ!」
水龍くん「・・・ミルザお前・・・いくらなんでも私とて物理の法則に反することはかなわんぞ!」
オイゲンくん「・・・いや俺達が水の上の流れに乗っていたのはあれはなんだ?
        物理の法則にのっとっていたのか?あれは水の精の力だろ!?」
ミルザくん「この月の舟だって出発の時水龍さんの力を借りて、ここまで来れた・・・・・
       もしかしたら水龍さんなら月の舟に協力してもらわなくても、この流れに乗れるかもしれない!!」
エリスちゃん「水龍さん・・・私も月の光の軌道に乗るなんて本当は初めてだったのよ、
        今私が空を渡っているのはあなたの力があったからこそ」
水龍くん「・・・・・・・・・・・・・・」
ジャミルくん「どうせ落ちたら死ぬんだろ?最後の最後にあがいたっていいじゃん、
        それでもし生き残れたら一瞬女風呂に落ちるなんかよりもいっぱい綺麗なねえちゃんを見れるぜ!」
カヤキス「―――――――まさか、お前達は!」

水龍くん「・・・ふ・・・・・お前達・・・・・・・・
      私は格好つけなければ気が済まないたちなのだぞ!」
その時でした。空に浮かんでいた一隻の舟は地に落下していました。
そして、空に大きな水蛇が浮かんでいました。
カヤキス「――――――――なんと・・・!愚かな・・・・・」
水龍くん『私にしっかりとつかまって!決して離さないで!私がもがいても振り落とされてはならない、
      その手を私の肉に食い込ませろ!!』
ミルザくん「――――――水龍さん・・・・・!」
その空の水蛇は宙でもがいていました。徐々に落ちながらも、しかし宙にしがみ付き決して放さないかのようでした。
カヤキス「・・・・・・・・・・まさか・・・・・・・お前達が・・・・・・
      いや私は知っている・・・愚者が世界を遙かに超え行くことがあるのを!」
ミルザくん「水龍さんの体は月の舟より遙かに大きい・・・もう僕たちの動きを抑えることは出来ないぞ!!
       ここからが本番だ!!!」
カヤキス「ち!」
カヤキスは余裕の体勢を立て直し、先程より間合いを取りました。
水龍くん『やつは宙を自在に動き回れる、私はこうして宙に留まることが出来たがあくまで月の光の流れの中に
      いなければならない・・・ジャミル!』
ジャミルくん「わかった、この腕輪を使い、ミルザを噴射させた水で押し上げあいつの射程も延ばす!」
水龍くん『物分りのいい人間もいるものだ!』
ミルザくんの足元が吹き上がる水で押し上げられました。
ジャミルくんが操作すると水は自在に上へ、下へ、ミルザくんを連れて行ってくれます。
ミルザくん「こいつはすごい!!」
オイゲンくん「ちぇ、今日はミルザにいい方を取られたなあ、だかお前は攻める方、俺は守る方。
        あいつが『エリスのシンボル』の光の壷に狙いを変えようとしても俺が死守する!こいつらを守るついでにな」
オイゲンくんはジャミルくんとエリスちゃんを見やりました。そして水龍くんの体を足でトンと叩きました。
ミルザくん「オイゲンにはいつもかっこいいセリフを取られてるんだからおあいこだろ!?
       ・・・行くぞカヤキス!!!」
カヤキス「・・・こっちがイクゾしたかったけどまあ来い!」
ミルザくんとカヤキスの激しい攻防が始まりました。
エリスちゃん「・・・壷の吸い取る力をマックスにするわ・・・!月の光さえ手に入れれば私達逃れられる・・・
        水龍さんに少しずつ流れの中を下降してもらい真下が水のところに落ちてもらえばいい!
        たとえあんな化け物でも地上に降りさえすればまくことは可能なはずよ!
        さあ壷よ!エネルギーを吸い取って・・・!!」
カヤキスの目元が一瞬光ったようでした。

ミルザくん「よそ見をするな!騎士精神に反するぞ!!」
カヤキス「!」
ミルザくんのレフトハンドソードは容赦なくカヤキスを追い立てます。
ジャミルくん「ミルザが優勢だ・・・・・ミルザ!!!そこで一気にけりをつけるんだ!!!」
カヤキス「―――――くっ!!」
カヤキスが上方に飛びのきました。ミルザくんはすかさず追います、
カヤキスは体勢を崩している!必殺技を叩き込むチャンス――――!
ミルザくん「逃げを取ったな!!お前の負けだ!レフティホー―――」
カヤキス「実に間抜けなセリフだよミルザ!罠にかかったのはお前の方だ!!!」
ミルザくん「!?
       (なに!?体がおかしい・・・なにかに・・・・ひっぱられて!!!)
        うわあああああああああああ!!!!」
エリスちゃん「!!!ああっ!!!」
なんということでしょう、ミルザくんは思い切り・・・あの『エネルギーを吸い取る壷』に引っ張られていたのです!
カヤキス「わかるか・・・それだけ出力を上げた壷・・・月の光でなくとも大きな力なら吸い取ってしまうのだ!
      私はミルザがその壷の直線上に来るように誘導したのだ・・・
      ミルザは今私を倒すため巨大なエネルギーを練り上げた!!当然なのだよ、
      その壷がミルザを吸い取ってしまわんとすることはな!!!」
ジャミルくん「―――――なんてやつだ!!体勢を崩したのも罠のうちだったとは!!」
オイゲンくん「いけない、本当にもうミルザの半分は『壷の中』に吸い込まれてしまってる!!」
カヤキス「さあエリス!!お前はここまで一緒に来た仲間を見捨てるか?
      それとも『壷の中身』を捨てるか!?その選択見届けさせてもらおう!!!」
エリスちゃん「――――――――ううううう・・・・・・・・・・・!!!
        壷よ!どうか汝が捉えしものたちを解き放て!!!」
エリスちゃんの悲痛な声に、壷の中からはミルザくんと、まるで夜を殺してしまいそうなほどの光とが
飛び出しました。
水龍くん『エリス!!!』
カヤキス「・・・・・・これでいい・・・・・・月の光よ、私のもとに来い・・・・
      私を『エリスのシンボル』とせしめよ!!!」
ミルザくん「―――――――何!?」



・・・・・・つまりこういうことなのです。シンボルの本質は月の光、
月の光さえ凝縮して得てしまえばそれはたとえどんなものであってもまさしく『シンボル』・・・


カヤキス「・・・なるほど」
セージ「しかし大量の月の光を封じ込められるものっていうのは結構多いようで少ない!
    たとえば魔力の宿った宝石などがそうです。しかし容量が足りないことが殆ど。
    シンボルが宝石になった年には大抵融合は失敗するんですよ!だからシンボルつくりってのは
    神経を使う仕事ですねえ」
カヤキス「お前は無駄が多いな。出し惜しみしないようだが、そういうやつが実は金持ちになれない筆頭なのだ」
セージ「申し訳ございません、カヤキス様を見習ってけちになります。
    カヤキス様は容量の足りるようなものをさっさと言えとおっしゃられているんですね、
それは一部の宝石、練成した魔法物質、隕石、群れ、あとは魔力の強い人間ですね」
カヤキス「群れ?」
セージ「いや!いや!最後の例は今回の『アムトのシンボル』ですね、完成してもう動かないでしょう!」
カヤキス「私が最も手に入れるのが容易いものはどれだ?」
セージ「宝石が一番多いでしょうが、それ以上にはずれがあるんで一番面倒でもあります。
    練成した魔法物質はちょっともう間に合わないなあ、隕石は今ではいいやつはほぼありませんよ」
カヤキス「さっさと言え」
セージ「おやおやカヤキス様は僕をからかっていらっしゃる!まさかそんなに近くにあるのに
    あなたが気付いていないわけがない」
そう言ってセージはじっとカヤキスを見つめました。
カヤキス「・・・・・・これか」
セージ「はい僕が言うまでもなく・・・・・・・・・・」



カヤキス「我が鎧は怨念をすすり、欲望をすすり、力をすする!この程度の光、
      朝飯にもならぬものだが――――――だがその後待つのは千億の命にも等しいもの!!!」
エリスちゃん「――――あいつの企みが読めた!!あの鎧は力を吸い取るのね!
        だからオイゲンくんの神雷も吸い取られて効かなかった・・・!
        あの鎧を今回の『エリスのシンボル』にするつもりだ!!」
水龍くん『――――しかしその後待つのが千億の命にも等しいものとは?
      『エリスのシンボル』の力をあれ程過少と言いながら、その後に融合する『アムトのシンボル』の
       力は同等ではないというのか?』
エリスちゃん「・・・いいえ!込められた光は必ず均等の力だわ、そうでなければ融合出来ないのよ!
        ・・・・・・・込められた・・・・・光は均等・・・」
オイゲンくん「・・・・・まさかあいつの鎧のように・・・・・・
       『込められた入れ物』の方の力が強大なのでは・・・・・・!?」
エリスちゃん「―――――――!!!なんてこと・・・盗賊がいつもの働きで盗めるような腕輪が
        それほど強力な器なわけがない!!」
ジャミルくん「―――――『アムトのシンボル』は、別の器で完成していたってことなのか!」
ミルザくん「う・・・い、一体その器ってなんなんだ・・・?・・・カヤキス・・・
       あんなやつの野望にその器を使わせるわけにいかないよ・・・・・!!!」
カヤキス「愚者よ、お前達を賞賛することを私は厭わない。
      しかし愚か者はいつも気付いたときには遅い―――――それをあざ笑わせてもらう!!」
カヤキスの鎧に光がどんどん集まってきます!
ミルザくん「くそ・・・・させるか、させてやるものかーーーーーーー!!!」
カヤキス「その叫びが私への素晴らしい祝福だミルザ!さあ終わりは近く、そして始まる――――
      !?」
一身に月の光を集めていたカヤキス。しかし突如、カヤキスの鎧は全てに投げかけるように
光を跳ね返し、拡散させたのです!
カヤキス「・・・・・・・・・・・!?」
ミルザくん「え・・・・・・・・・・・!」
ジャミルくん「・・・光が散っていく・・・!」
オイゲンくん「・・・・・・・そして地に降り注いでる」
エリスちゃん「――――――えっ・・・なんなの!?この邪悪な気配で満たされた地上は!?」
カヤキス「―――――――――――――セージ!!!」



セージ「そうだ、いいぞ、いいぞ、お前達は僕を頭として動く一つの体・・・ねずみの話を知ってるかい?
     群れとは『ひとつの器』なんだよ・・・お前達の一つ一つが光を宿し、そしてお前達全ては一つの光なのだ。
     ・・・・くははっ気付いた時には遅かったねカヤキス・・・!
     月の光はあくまで敵意もなく純粋な聖気に満ちたもの。お前が今まですすってきたものどもを思い出すがいい!
     あれだけ純然たる邪気と敵意に満ちた鎧に、いきなり月の光を全部取り込もうとて
     邪気と聖気が反発して聖気を吹き飛ばしてしまうのは当然のことなんだよ!!!
     ・・・だが邪悪なるものでもバラバラにされた、ほんのすこしのこぼれた光なら取り込むのは容易い・・・!
     カヤキスお前の失敗は全ての力に区別をつけていなかったこと・・・究極の力はひとつなわけじゃない。
     さあ、あの愚か者がお前達のために光を降らせてくれたんだよ、
     喜んでお食べ・・・・・・・・」



水龍くん『・・・・・地上の邪悪な群れ!あれはモンスターの大軍だ!!』
オイゲンくん「邪悪な気配たちが、次々光を吸い取っていく・・・・・・!?」
エリスちゃん「・・・・・・群れ・・・・・・・まさか・・・・・・
        そんな、私は群れの場合の『シンボル』なんて見たことがない・・・なかった!」
オイゲンくん「・・・・・・・一体どういうことなんだ!?」
カヤキス「・・・・・・私はセージに一杯食わされた、やつは私が自分を侮っていたことを利用した・・・」
ジャミルくん「・・・・・・あんたは一体なんなんだ!」
カヤキス「もはやお前達と争う理由はどこにもない、ここまでだ。無事であったことを天に感謝する時間だ」
ミルザくん「馬鹿にするな!お前は、お前達は一体なんだっていうんだよ!
       人の影を渡り歩いて!!人の心を駒にして・・・!自分達のしてることが、
       どれだけ許されない恐ろしいことかわかってるのかよ!!!」
カヤキス「・・・感傷的な正義論をお前と語る気はない、ミルザ。
      お前がもし本当に傷つきたくなくて、自分の心を大事に大事に守っておきたいのならもう
      糸石に関わることをやめることだ。次の朝日が昇る頃にはお前の平和が戻ってくるだろう」
ミルザくん「・・・・・・・・・!!」
カヤキス「いづれ再びまみえるのは既に決定された結果だ、
      しかしお前の選択によっては私の姿は全く別のものだろう」
ミルザくん「――――――――待て、カヤキス!!」
ミルザくんの叫んだ先にはただ闇夜があるばかり・・・カヤキスは掻き消えていました。
オイゲンくん「ミルザ・・・」
ジャミルくん「・・・・・・・わけがわからねえよな、その気持ちは俺達も一緒だよ」
水龍くん『・・・モンスターの一個の群れが、全体で『エリスのシンボル』だというのか・・・なんてことだ』
エリスちゃん「・・・『アムトのシンボル』が、もしあのカヤキスの言ったように
        とても強力な器のもとに完成しているのなら・・・それは恐ろしいことだわ!
        モンスターの群れが蝕を利用して、強力な器の力と共に一つに融合してしまうのよ!」
ジャミルくん「今はその『アムトのシンボル』を探すのが俺達がいちばんにするべきことだぜ、
       『アムトのシンボル』さえこっちの手にあれば・・・!」
エリスちゃん「けれど融合しないと神殿には入れないのよ・・・
        神殿の中に何があるかあなたは知ってるのミルザ?」
ミルザくん「なにがあろうと、融合を阻止することが一番大事なことだよ」
エリスちゃん「気のムーンストーンよ。あなたが糸石を集めてることは学園中の噂だから知ってるの、
        でも今回の二つの月の蝕を逃したら次に蝕が来るのは4年後―――
        あなたはもうこの学園にいないわ、気のムーンストーンは絶対にあなたの手に入ることはないのよ」
ミルザくん「・・・・・・・・・・」
オイゲンくん「ミルザ・・・・・・」
少しの沈黙がありました。ミルザくんの唇の動きは震えるようなかすかなものでした。
ミルザくん「なにがあろうと、融合を阻止することが一番大事なことだよ」
エリスちゃん「・・・・・・ミルザ・・・・・・」

ジャミルくん「・・・・・ん!?あっ背中の牙が何か言ってるぜ!」
エリスちゃん「・・・・・・・アルだわ!どうしたのアル?」
アル『赤い光の気配の正体を見つけたぜ!ミニオンとかいう女の三人組だよ、
    何かしらんがウハンジ寮長をたずねて来たらしい、だが納得のいく返事がもらえなかったそうだ』
ミルザくん「ミニオン!ミニオンちゃん達!?」
アル「俺はこのうち一人と顔見知りだったから話がスムーズにいったんだ、
   どうやらこいつらも『アムトのシンボル』に関わってしまったらしい、
   ウハンジ寮長の使者と名乗るやつらがこいつらのところにやってきて、
   その主人に腕輪を差し出したらしいんだな」
エリスちゃん『腕輪!!ジャミルの言っていた腕輪ね!!!』


ストライフちゃん「・・・・・顔はハンサム猫なのに一本牙がない・・・」
ヘイトちゃん「あれじゃ流し目の微笑みもカッコが付かなくて拾って貰えないわあぁああ☆!!!℃*☆」
ワイルちゃん「それじゃお魚も満足に食べられないでしょうに可哀相・・・」
スペクターくん「でも大丈夫!最近しっかりほぐれておいしい猫缶があるからね!!
         種類を色々教えてあげるよ、なんたって僕の主食ですから!!」


アル「うるせーよお前ら中途半端な憐れみしやがって!最後のやつはそんなこと明るく言うんじゃねえ!!
    そうだなエリス、その使者は警備兵の格好をしてたらしいからほぼ間違いないだろう」
エリスちゃん『その腕輪はどうなったの!?その人たちが持ってるの!?』
アル「・・・いや・・・こいつらの主人が持ってることには持ってるが、
     その腕輪にもうアムトの力は込められていない。どうやら容量がギリギリだったらしいな、
    もっといい器を見た瞬間飛び出したのか・・・こいつらも浴びたし、
    だから俺がこいつらに赤い気配を感じたんだが――――――
    こいつらの主人にアムトの力が入ってしまったらしいんだ」

エリスちゃん「・・・・・・・・・・・・・・ミルザ」
オイゲンくん「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ジャミルくん「・・・まさか、あの、サルーインちゃんが・・・」

ミルザくん「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・アムトのシンボル」



アル「えっおいなんだよ!?こいつらに付いていってこいつらの主人を保護しろお?
    それは俺の領分じゃないぞ!俺の主人の居場所だって今だわからないんだよ・・・
    お前のシンボルならアムトの力を引き付けるから主人の居場所もわかるだろうが、
   『アムトのシンボル』じゃアムトを引き付けないんだよ!磁石のおんなじ極だからさ!
    ・・・・・・・・・なんだそれは・・・・それはマジなのか?」
ワイルちゃん「どうしたんですかあ?」
ヘイトちゃんちゃん「なによもォオオーーーッ長電話ネエこれだから最近の猫はっ‘、;*@」
アル「・・・おいおまえら・・・俺はどうやらお前らと協力しなきゃいけないらしいんだ・・・
    お前の主人を守るために、ひいてはマルディアス学園を守るために、だ
    ・・・・・・・お前達の主人の元に連れて行け!」
ミニオンズ「・・・・・・・・・・・???」



シェラハちゃん「姉さん?どこに行くつもりなの?姉さん?
         どうして私の子守唄が効かないのかしら・・・姉さんがとっくに子供じゃないからかしら・・・
         ここはもう心を鬼にし、身内の情なんて捨て漆黒の帳を・・・
         ああっこれは悲しい話がまた一個ではなくて!?」
デスちゃん「何でお前はそう独り言で盛り上がれるんだ複数としゃべる時は
       どん底に落とす勢いの暗さのクセに!!・・・サルーイン?どうしたんだ?
       どこに行くつもりなのだ?何で答えない!・・・はっ!い、今頃になって
       無視という処世術を覚えてしまったのか・・・・・!!あの成績の悪い子が!!」
シェラハちゃん「こちらから言わせてもらえば何でデス姉さんって一人でしゃべらせておくと
         昔を懐かしむおばあちゃんみたいになるのよ。・・・サルーイン姉さんったらどこいくのよ〜
         私達も一緒に連れてってくれなかったらまた悲劇が一個!!・・・・」
ふらふらと冥部を出て行くサルーインちゃんの後を二人の姉妹が追っていきます・・・
冥部はがらんと静まり返っていました。そこに突如現われました。
???「へん!ここの姉妹らはちと魔力が強すぎるのさ、だから僕が標的に選んだわけなんだけどね・・・
     残りの二人に残りカスが気付かれたらさあ大変だ、マックスの痕跡は一切消させてもらうよ。
     ・・・やれやれ僕がお掃除だなんて!・・・いつも予兆があるな、
     あの馬鹿カヤキスとの会話!全く本当に馬鹿馬鹿しいものだが予兆が全て見通せるようになれば・・・
     ―――――――そこにいるのは誰だ!」
その影、セージは振り返りました。・・・なにか赤い装束の・・・この姿はどこかで見たことがある。
セージ「・・・君はミニオンの一人かい?」
???『・・・・・・私は・・・行かなくては・・・誰か・・・誰かのところへ・・・
     そうだ・・・・・アクアマリンだ・・・アクアマリンを持ってるやつのところがいい』
セージの目は見逃しませんでした。その赤い人影の胸の部分で透明な宝石の破片が光ったこと・・・
セージ「ああそうかい、お出かけしたいの?でも駄目だね、君を行かせるわけには・・・・・っ!!」
セージの言葉がまだ終わらぬ内にその人影は一瞬にして消えたのです。
セージ「・・・やられたな!あれは殆ど霊体なんだ!くそ、面倒な欠陥にならなきゃいいがね、
     しかしサルーインというのは大した悪足掻きのようだな、あんなものを残すなんて・・・
     ちっ手駒は少ない、これだけ根幹に関わりそうなことには直接この僕が追わなければ!
     あれはシンボルと化すほんの一歩手前で切り離したサルーインの意志だ!」



水龍くんのマラル湖にミルザくん達は落ち、無事地上に帰ってきていました。
エリスちゃん「・・・水龍くんどうだったの?」
水龍くん「確かにあらゆる場所から流れてきた水の精たちは、ある似たような形をしたモンスター達が
      同じ方向を目指して進んでいたと言っているな。だがそれが
      森へ帰ったとか映画の列に並びに行ったとかユートピアを目指してとかもう滅茶苦茶で」
エリスちゃん「・・・あなたは親切なんだろうけど後半部分は言わない方が好感度アップだと思うわ」
水龍くん「ミルザは寝てるんだな」
エリスちゃん「私が無理矢理寝させたのよ、オイゲンとジャミルの二人も魔法でね。
        私達と違い人間の生徒なのよ、月の光の軌道上であんな戦いをして消耗しないわけはないね・・・」
水龍くん「エリスお前のせいではないよ」
エリスちゃん「・・・ありがとう水龍くん、でもわたしここまでしてもらって、あの子達や、
        あなたに恩返しできるかどうかわからなくて・・・」
水龍くん「ミルザが恩を返してもらいたくて恩を売ってるのではないのはわかっているはずだ」
エリスちゃん「・・・・・・・でも・・・・・・・・・・」
水龍くん「私は見返りのない一善なんて空しくってやってらんねーーーけどさもーーーーーー」
エリスちゃん「わかったわかったわよお返し楽しみに待ってなさいよ」

―――――――いやだ!サルーインちゃんのところに行くんだ!

エリスちゃんの耳の奥で、自分が魔法で眠らせる直前のミルザくんの悲痛な声が蘇ります。
エリスちゃん「(ミルザ・・・私出来ることはなんでもするつもりよ、もう作られてしまった
        『二つ月のシンボル』・・・もしそれを融合させなくてもあのピラミッドの扉を開く方法が
         あるとしたら・・・・・)・・・・・あるとしたら・・・・・・アムトを探さなきゃ」



・・・・・・・ちょっと時を巻き戻してメルビル図書館
女生徒「・・・・『そんな夢見ちゃってもいいよねマイダーリンそんなカモミール』・・・・」
ホーク「もういい、もういいんだ!!!もう古文書の中身なんて俺たちはもうよっっくわかったんだ!!」
ゲラ=ハ「夢が一杯!一杯つまってる事はわかったんです!!!
      でもあまりに一杯過ぎる夢が男達の夢を押し潰してしまうものなんて私たち知らなかったんです〜〜〜〜!!!」


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