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4 ここは、どこなんだろう 何もない。何も。 人も。物も。色も。光も。闇も。何も・・・ 何も・・・ ・・・声がする。 ”おい!!” 懐かしい・・・でも誰よりもいとおしい・・・ このちょいSっぽい声色・・・Sっぽい・・・ サルーインちゃんだ! サルーインちゃんがいた。 前方三十二歩の距離。誰よりもいとおしい・・・ 微笑んでいる。ちょいSっぽい微笑み。 ああああああああサルーインちゃんはぁはぁはぁはぁ そんなところで何微笑んでるんだいぃぃぃ!!!!こんなところでこんなことしてないで早く帰ろう!! さぁ一緒にはあはあはあはあ!!! えっ、ちょっ、まっ、待ってよ・・・待ってよ、サルーインちゃん!! サルーインちゃん・・・僕のサルーインちゃん・・・ どこへ行くの・・・サルーインちゃん・・! 行かないでよ・・・僕も・・・そっちに行くから・・・ 追いつかない・・・追いつかない! ・・・なんで・・・なんで追いつかないんだよ・・・もうすこし待っててよサルーインちゃん・・ねぇ、お願・・・ ってか、ちょまっ、そんな足速かったんだサルーインちゃん!?っつか何その常識外れた速さ!? ちょまっ、おかしくねっ!?っつかなにかの法則を無視してるとしか思えないよそれ! その走り方とか早さとか!ちょ、まっつ、サルーインちゃん!! あっ、それ反則!!反則どころか、ど、どうやってやったんすかそれ!!え?そんな、えーーっ!? あ、いや、ちょ、ちがっ、待ってってば!! だが・・そんなところも・・・はぁはぁ!!じゃあなくて!!待って!!待って待って!!! 待ってくれよおおお、サルーインちゃああああああああああん!!!!!!!! 『やかましい!!』 は?・・・って、げぼっ!! 頭痛い・・・誰だ、僕をいきなり殴ったのは?出て来い!! 『まったく、こんな所でも騒々しい貧乏人だ。あはあはははは』 あはあはは?ん、この笑い方・・この声・・・このSっぽい笑い方と声・・・Sっぽい・・・ サルーインちゃん!? 『そう、サルーインちゃんさまだ。紛れもなくここにいる私こそが真のサルーインちゃんさまであられるぞ。あはあははは』 ああ、サルーインちゃん!!やっと追いついた!!ってあれ?サルーインちゃんはいまあっちにいったはずじゃ・・・ 『は〜あ?あんなの私じゃないぞ。大方貴様の作り出した私の影かなにかであろう。本物の私は、ほれ、ここにいるぞ。ここ、ここ。』 そうか・・・!そういえば久しぶりだねサルーインちゃん・・・!!ああ、こうやって二人で言葉を交し合えるなんて・・・はぁはぁ!! あれ?サルーインちゃんなんか見たことない服装だね。すごい似合ってるよ!!はぁはぁはぁ!! 『一々『はぁはぁ!!』を語尾に持ってくるな!暑苦しいんじゃボケ!! ・・・さて、貧乏人。一つ聞くぞ。貴様はなぜこんな事態なのにこう暢気に眠っているというのだ?』 え? 『私は今大ピンチなのだ!!まぁ実際のトコ何がなんだかよくわからねーけどとにかくやばいのだ!! なんかしんないけどとりあえずやばい!今そーゆー状況!!なのになんで貴様は眠っておるのだ!?』 え?え?眠る?大ピンチ?ちょっ、話をまとめて・・・ 『くっ、いかんな・・・ダメだ、このままではすぐに消えてしまう。説明は省く。とにかく起きろ!! ・・・いま、いま頼りなのは、お前しかいないんだ!!・・・ミルザ!!』 ・・・・・・!! 『私にはわかる。場所・・・貴様が向かうべき場所・・・。私が導こう。だから起きろ!』 起きるって言っても・・・どうやって・・・ 『とにかく起きるんだよ!!ミルザ、貴様は騎士なのだろう?騎士は何事も諦めず何事にも屈せず正義を貫き悪を挫くと聞くぞ。 今私の周りには厄介な大悪が渦巻いているようだ。放っておいていいのか、寝ていていいのか!気合で起きろ!!さぁ、早く!!』 ・・・!! サルーインちゃん・・・ ”まさか・・・あの、サルーインちゃんが――――” 「サルーインちゃん!!」 ミルザくんは跳ね起きました。 ミルザくん「・・・・・・・・・」 息を荒くつき、どこを見るでもないその目は未だ焦点が定まっていません。 水のせせらぎ。風のささやき。木々の摩擦。 この場所がマラル湖だと把握するのに、ミルザくんはかなりの時間を要しました。 ミルザくん「・・・僕は。」 うわ言のようにそう呟いた後、ミルザくんは己の腹部に何か光る物体がある事に気づきました。 ほぼ無意識のままその光るものを拾い、見つめるミルザくん。 透明な、いや、少し赤みがかかっているキレイな宝石の―― ミルザくん「オイゲン!!ジャミル!!」 ミルザくんはそう叫ぶと、まず寝ているオイゲンくんに駆け寄りました。 ミルザくん「起きて、起きてオイゲーン!!起きて起きて起きてぇぇーーー!!」 パシン!パシン!パシン! オイゲンくん「ぐべらっ!!べらっ!ぼらっ!!・・・な、なんだぁ!?」 ミルザくん「やった、起きた!!実は・・・ああ、ジャミル!!」 ミルザくんはジャミルくんに駆け寄ると、オイゲンくんにしたのと同じように渾身の力を込めてジャミルくんの頬を張りました。 ジャミルくん「ぶっ!!・・・な、なんだぁ!?まだお天と様もおひるね中なのになんだってオイラがこんな時間に・・・」 ミルザくん「二人とも、よく聞いて!!」 オイゲンくん、ジャミルくん「んあー?」 二人の顔は、寝惚けてほとんど正気がないようです。 ミルザくん「今からワロン寮のジャングルに行こう!!融合を阻止するにはワロン寮のジャングルに行くしかないんだ!!」 オイゲン、ジャミルうん「はぇ!?」 唐突なミルザくんのその発言に驚く二人。 ミルザくん「もう時間は残されていない。一刻も早く・・・」 オイゲンくん「ちょっ、待て、待て!なんかいま頭が回らないんだ、ちょっと頭ん中整理するから焦るな! ・・・・・・そうだ、そういえば俺達は月の舟から転落して・・・そうだ、サルーインがアムトのシンボルに!!」 ミルザくん「そうそう、だからエリスのシンボルであるモンスターとの融合は絶対に阻止しなきゃいけない! そのためには今からワロン寮のジャングルに行く必要があるんだ!」 オイゲンくん「どうして?」 ミルザくん「サルーインちゃんが言っていたんだ!!」 オイゲンくん「はぁ?」 心底あきれ返った声を出すオイゲンくん。 オイゲンくん「・・・そ、そりゃどういう意味だ、まさか、あの、なんつーか、妄想テレパシーみたいな・・・」 ジャミルくん「ミルザ、お前そこまで・・・」 ミルザくん「違う、違うんだって!たぶん違う!妄想テレパシーなんかじゃないはず!!きっと、いや、 絶対サルーインちゃんが僕を頼りにしてテレパシーを・・・いや、でもなぁ、確かになぁ僕みたいな貧乏人にまさかなぁ ・・・じゃなくてっ!!絶対これはサルーインちゃんからのメッセージなんだ!!『ワロン寮のジャングル』へと!! この宝石から・・・確かに声がしたんだ、サルーインちゃんの!!」 ミルザくんは先ほどの赤みがかかった宝石を突き出しました。 ジャミルくん(・・・あれ?なんかこの輝き方見たことがあるような) ミルザくん「・・・二人が行きたくないなら、とりあえず僕だけでも今からワロン寮のジャングルへ行く。行かなきゃいけないんだ。」 ミルザくんのその口調は確信に満ちています。 オイゲンくん「・・・そこまで自信持ってるトコ見ると、なんかもうこっちまで信じざるを得なくなっちまうな。」 ジャミルくん「どんな事が起こったってちっともおかしくない、今はそんな事態の真っ只中だしなぁ。・・・あれ?」 ジャミルくんはすぐに腕の違和感に気づきました。 ジャミルくん「あれ、あれ?ない、ないぞ!!うわぁぁぁオイラの水龍様の腕輪がぁぁぁ、ないぃぃぃぃぃ!!!?」 オイゲンくん「なんだよ?泥棒が泥棒されちまったのかよ。・・・・って、そういえば水龍は?エリスさんは?ど、どこへ!?」 ジャミルくん「あの気まぐれドラゴンめっ!突然腕輪ごといなくなりやがってっ!」 オイゲンくん「もう見るからに感じるからに適当で無責任なヤツっぽいもんなあいつ。 ・・・あれ?いなくなった、と言えば・・・どうして俺達寝ていたんだ?」 ジャミルくん「オイゲンも寝てたのか?何でオイラ達こんな草っぱらで並んで仲良く寝てたんだろな。」 ミルザくん「僕達とっくに大人の仲間入りしててもいいくらいの年頃なのにね。」 ジャミルくん「そーいう問題じゃねえよ!」 ミルザくん「・・・あっ、そうだ思い出した!!」 オイゲンくん「何をだ?」 ミルザくん「たしか・・・そうだよ、僕達、舟が落ちた後にエリスさんに眠らせられたんだ。」 オイゲンくん「眠らせられた?・・・そうだったっけ?」 ミルザくん「うん。・・・確かに僕達はエリスさんに・・・」 ―――・・・ほんとうに、ありがとう。でも、もうお眠りなさい。 これ以上あなた達に迷惑はかけられない。・・・後は私たちに任せて・・・――― ―――・・・いやだ!・・・サルーインちゃんのところへ・・・・・・行くんだ・・・――― ミルザくん「二人はすぐに眠っちゃったけど、僕は少し抵抗をした。だから覚えている。 エリスさんは、これ以上あなた達に迷惑はかけられない、と言った・・・」 オイゲンくん「・・・という事は、エリスさんと水龍は二人だけでこの事を何とかするつもりなのか。」 ジャミルくん「・・・ちぇーっ、何だよそれってつまり要するにオイラ達を頼ってくれてないってワケー? 結構色々したのになぁ。なー?」 オイゲンくん「むしろ頼っちゃいけないと思ってるように聞こえるけどな。実際頼れる頼れないはともかくとして。 ・・・せっかくここまで来ちゃったんだから、俺は最後まで付き合ってやってもいいんだが・・・なぁ、ミルザ?」 ミルザくん「うん、もちろんさ!・・・・そのためにも、今から僕達はワロン寮のジャングルに行くんだ! ・・・オイゲンは最後まで付き合ってくれるつもりなんだよね、よかった!さすが!!・・・ジャミルは?」 ジャミルくん「ん、オイラ!?・・・ん〜、このまま家帰っておやすみハイまた明日、ってのも・・・なんか後味悪いしな。 ・・・それに、何より麗しのサルーイン姫君の大ピーンチ!!なワケだから・・・オイラもついていくぜ!!」 ミルザくん「さっすがジャミル!!よーし、じゃあ行こう、ワロン寮のジャングルへぇ!!」 オイゲンくん「おい、ちょっと待てよ。こっからワロン寮のジャングルって・・・よくよく考えると、あの、遠すぎないか?」 ミルザくん「えっ、あっ!」 重大な事実に気づくミルザくん。 ミルザくん「マラル湖から騎士団寮まで40分・・・騎士団寮からブルエーレ寮まで船で30分・・・」 ジャミルくん「ブルエーレ寮から徒歩でメルビル寮まで一時間ちょい・・・」 オイゲンくん「メルビル寮からワロン寮まで船で30分ってとこか・・・」 ミルザくん「合計・・・二時間四十分!?行くだけでも大旅行じゃないか!!」 オイゲンくん「・・・おいおい、どうするんだよ?そんな時間掛けてたら・・・蝕なんてあっというまに・・・」 ミルザくん「・・・それでも行くしかないじゃないか!行かないで黙ってるよりはマシさ!」 オイゲンくん「確かにそーだけれども・・・ええい、ジャミル!なんか持ってないのか!?どこでもドア的なさー」 ジャミルくん「ああ、今俺のポケットからもしそんな感じのものが出てきたらどんなに幸せなことか・・・! というか、今だけじゃなくてもいつも俺のポケットからもしそんな感じのものが出てきたらどんなに幸せなことか・・・!」 ミルザくん「わかるよその気持ち・・・!僕も、サルーインちゃんとの貧富の差を考えるたびに思うんだ、そんな事を・・・ くっ・・・うらやましい・・・のび太くんがうらやましいよ・・・! この上ない勝ち組っ・・・!!勝ち組っ・・・!!短パンメガネの幸せ者っ・・・!!」 オイゲンくん「・・・・・・・・・」 (・・・・・・・・・まだここにいたのか、あの馬鹿ども・・・・・・・・・・・・・・・ しかしあと二人が見当たらないな。・・・・・・まぁ、いいとするか・・・・・ ミルザ、オイゲン。あとあのおまけ。連れていってやろう・・・・・・・・・・ ゲートなぞ帰ればいくらでも置いてある。一つくらいどうってことは・・) ミルザくん「ええ〜いっ、クヨクヨしてたって埒が明かないや、さぁ行くぞみんな!」 オイゲンくん「マジで行くのかぁ?・・・エリスさんと水龍が何とかしてくれるって〜。 蝕が始まるまでワロン寮のジャングルに行くのなんて無理じゃん。ほら見てみろ空を。」 空を指差すオイゲンくん。二つの月が隣り合って輝いています。 ジャミルくん「なんか一気に気が抜けちまったな〜ぁ。」 ミルザくん「で、でも!・・・・・・・」 ミルザくんは言葉を失いました。 静寂が空間を包み始めました。 ・・・・・・空間が黒く揺らぎます。 ジャミルくん「のわっ!!」 ジャミルくんは尻餅をつきました。 オイゲンくん「どうしたオイゲン?えっ、!・・・何だこれは!?」 ジャミルくんが見た物を、今オイゲンくんが見て同じように驚きました。 俯いていたミルザくんが顔を上げます。 ミルザくん「どうしたの二人とも!?な、何だこれは!?」 ミルザくんも同じように驚きました。 三人の視線がある一点に集中します。 そこにあるものは・・・ 「どこでも・・・・ドア?」 空間がポッカリと口を開けていました。中には全く別の風景が広がっています。 夜の密林・・・星が多い・・・ジャングル・・・ ジャミルくん「お、おいおい、何だよコレは!いまいきなりグワッて出てきたぜ!」 オイゲンくん「超常現象か!?一体これは・・・」 ミルザくん「どこでもドアだ!どこでもドアだよ!ほら見てよオイゲン。別の風景が広がってるよ、 しかもこの風景・・・見覚えある、そうだよ、ワロン寮のジャングルだ、これ!」 オイゲンくん、ジャミルくん「なにぃ!?」 ミルザくん「きっと神様あたりが見かねてこれを出してくれたんだ!いや、違うな、サルーインちゃんが!きっとサルーインちゃんが!」 オイゲンくん「まぁ、それはないだろうが、今ここにこんなものがあるって事は確かなわけだ・・・ ・・・ホントわけわかんねーけど、・・・どうだ、入ってみるか?」 ミルザくん「もちろん!僕は入るよ!!」 ジャミルくん「・・・オイラも入るぜ。こんな体験一生できそうに無いからな、ウン。しっかしホント不思議なことばっかり起こるなぁ、今日は。 船が月の光を渡った。水龍の口の中にワープした。儲けが無かった。 変な女に殺されそうになった。でかいしゃべる猫に襲われた。黒い鎧の怖いヤツに襲われた。」 オイゲンくん「ホンット厄日だなジャミル。同情するよ・・・ ・・・さて、じゃあさっそく入るぜ、準備はいいか?」 二人は勢いよく頷きました。 そおっと空間の穴に足を踏み入れ、体を入れます。 三人が全員空間の穴をくぐったとき、その黒い穴は掻き消えるようにしてなくなりました。 マラル湖の中心にすぅと現れる影がありました。 その目が、鈍い緑色に光っています。 セージ「一足遅かったか!・・・しかしあの穴はまさか奴が・・・相変わらず小癪でむかつくマネをする奴だまったく。 ・・・まぁ、でもいい。結局は自ら死ににいってくれるのと同じだもの。僕が手を出すまでもない。 ・・・もう残る時間は僅かだ。僕も会場に行って宴の準備でも手伝っておくとするかね。ふふ。」 それだけ呟くと、再びセージは姿を消しました。 ・・・ワロン寮ジャングル奥地。 雨林の直中に突如黒い穴が出現しました。 穴の中から、ミルザくん、ジャミルくん、オイゲンくんの三人が出てきます。 ミルザくん「ここは・・・」 ミルザくんの記憶のある風景と今いるこの森の風景が一致しました。 ミルザくん「ここは間違いなくワロン寮のジャングルだ!前一度ワロン寮のジャングルに来たことあったけど、 風景の感じが同じ、本当にジャングルにこれたんだ!」 ミルザくんは感無量のため息をつきました。 ジャミルくん「マママ、マジかよ〜!な、なんか不気味だなぁ・・・」 ミルザくん「きっと・・・あれだよ、サルーインちゃんだよ!きっとサルーインちゃんが!」 オイゲンくん「まぁそれはないだろうが、何者かの手引きは感じるな・・・それにしてもあの黒い感じ、どこかで見た事があるような。」 ミルザくん「とりあえずは結果オーライザッツライトオーイェーってことさ!さあて気合を入れてまず・・・・ まず・・・」 オイゲンくん「まず・・・どうするんだ・・・・・・?」 ミルザくん「・・・・・・・・・」 ジャミルくん「・・・・・・・・・」 ミルザくん「・・・・・え〜と。・・・あれ・・・?」 一瞬ミルザくんの手の内の宝石の破片が少し光ったようでした。 ミルザくん「・・・こっちだ!」 ミルザくんはジャングルのある方向を指差し、そこに向かって歩き始めました。 オイゲンくん「・・??・・・・・・???」 ジャミルくん「おい、ミルザ〜。なんだよ、それごまかしてるつもりか〜?」 ミルザくん「違うんだ、また感じたんだ、サルーインちゃんの・・・」 歩きながら言います。 ジャミルくん「ワケわかんね〜よ〜」 オイゲンくん「もうここまで着ちまったらミルザの言うのを信じて進むしかねえよ。」 ジャミルくん「うわぁ、何か今更になって不安になってきたぜオイラ。」 それから何分歩いた事でしょう。 三人はある気配を感じとり始めていました。 オイゲンくん「・・・感じるか?」 ジャミルくん「ああ。・・・と〜っても嫌な予感がするぜ。・・・泥棒やってるとさ、こういう事よくあるんだよね、嫌な予感するの。 ・・・で、大体数分後には決まって悪いことが起きてんの。 でさ、そうなるたび思うんだよね。『俺ってもしかしたら予言者の素質あるんじゃね?』って・・・」 オイゲンくん「予言者ってガラじゃあないけどな。」 ジャミルくん「なに!このばか!そうやってガラ、ガラってガラばっか気にしやがってよ〜! みんなガラに捕らわれて物事の本質を見抜けないよな、みんな結局はガラなんだよ! ガラ!ガラ!!ガラガラ!お前もガラガラだ!」 オイゲンくん「何をそんなに熱くなってんだよ!しかもガラガラ言ってて何がなんだか・・・」 ミルザくん「きっとジャミルもそのガラ関係で何か嫌なことがあったんだよ・・・そっとしておいてあげなよ。」 ジャミルくん「うう・・・オイラだって昔は・・・」 ミルザくん「・・・それはさておき、近づいてきているよ。僕達は確実に近づいている。 ・・・この感じは・・・あまりいい気はしない。ジャミルの言うとおり・・・やっぱり何か悪い予感が・・・ オイゲン、ジャミル!・・・武器を抜いておいたほうがいい。」 オイゲンくん「そうだな。」 ミルザくんはレフトハンドソードを取り出し、オイゲンくんはウコムの鉾を取り出しました。 ジャミルくん「武器ね。武器、武器・・・武器?」 ジャミルくんは一度、二度懐をまさぐった後、絶望的なある事実に気がつきました。 ジャミルくん「おれ、武器持ってねーーーーーーーー!!」 大げさに両手で頭を抱えながらジャミルくんが叫びました。 ミルザくん「ええ!?ジャ、ジャミル、それはまずいよ、武器が無いだなんて!」 ジャミルくん「よくよく考えたら俺は何かの手違いでここに来たわけだしな!持ってないのも当たり前だが・・・ あっ★そうだ、そうだそうだぁ★ 俺には水龍の腕輪が・・・・・・ねーーーーーーーー!!!!!」 再び大げさに両手で頭を抱えながらジャミルくんが叫びました。 ミルザくん「ご、ごめんジャミル・・・」 ジャミルくん「い、いや、お前が謝る必要はないってミルザ。悔やむべくはあの時腕輪を使ってしまったことか・・・ いや、もっと遡って腕輪を盗もうとしたことが失敗で!?いや、盗まにゃ生きてけない境遇に 生まれたこと自体がそもそもの失敗でつまりオイラの誕生自体が一番の失敗なワケで!?ごごごごめんよ〜」 ミルザくん「ちょっ、悲観的になりすぎだって!大丈夫、生きていけばきっといい事あるって!」 オイゲンくん「そ、そうそう!ミルザの言うとおり!人生楽ありゃ苦もあるさってよく言うだろ?」 ジャミルくん「なんか微妙にずれてるところが逆にオイラの心を痛めつけるよ〜。」 ジャミルくんを慰めながら歩いていき、数分経ちます。 木々の複雑さが減っていき、視界が開けていきます。 それと共に、風の音とも葉擦れの音でも虫の声でも何物でもない何か”別”の音、そして邪悪な気配が強くなってくるようです。 ・・・そして。 ミルザくん「・・・・・・オイゲン、ジャミル。」 オイゲンくん「・・・・・・なんかさぁ、大体予想できたぜ。・・・つまりさ。」 オイゲンくんはギュッと一層強く鉾を握り締め直しました。 ミルザくん「サルーインちゃんが僕達にさせようとしたのはこれだったんだ。・・・確かに。融合を阻止するには一番手っ取り早い・・・」 ジャミルくん「手っ取り早い・・・?・・・・・・これで!?」 三人の視線の先には、底が到底見えぬ程に無限に溢れかえったモンスターの群れがありました。 ミルザくん「いけええええ!!!」 オイゲンくん「うおおおお!!!」 剣閃が、共振剣が、八つ裂きが。 スウィングが、天狗走りが、光の腕が。 二人の、ミルザくんの、オイゲンくんの攻撃が、武器が、無限のモンスターの数を一匹一匹減らしていきます。 ミルザくん「このモンスター達、一匹一匹は取るに足らない単なる雑魚だ! それにしても、このモンスター達・・・この群れ・・・どこかで戦ったことがあるような気がしてならないんだ!」 別の群れに飲まれかかってゆくオイゲンくんに向かって大声で叫びます。 オイゲンくん「ああ、俺もだ。どこかで・・・どこかで・・・うわっ!」 オイゲンくんの頬をモンスターの槍が掠めました。 オイゲンくん「この肉野朗!!」 オイゲンくんの鉾がモンスターの分厚い肉で覆われた腹部を捕らえました。 貫かれたモンスターは、どろりと溶け黄色い小さい光を天に向かい放出させながら消えてゆきました。 天に向かって伸びてゆく小さい光の集まりを少し遠いところから見ていたジャミルくんが呟きました。 ジャミルくん「なるほど、あの光が月の光・・・つまりエリスのシンボルそのものってワケね。 あれが全部天に帰ればもう融合は・・・。・・・のわぁ!?」 モンスターの群れから一匹、ジャミルくんに向かって飛び掛ってくるはぐれ者がおりました! 涎を垂らし牙を剥きワケの分からぬ猛り声を上げながら、ジャミルくんに体当たりを仕掛けてきます。 オイゲンくん「しまったジャミルが!」 薙ぎ払いながら叫ぶオイゲンくん。 気づき叫ぶことは出来ても、加勢しにいけるほど余裕のある状況ではありません。 ジャミルくん「マジかよ、参ったな!こんなところで死ぬなんてオイラごめんだぜ〜! でも逃げるワケにゃあ・・・せめて武器さえありゃ〜!」 ギリギリで敵の攻撃をかわしながら、泣きそうな調子でそう言うジャミルくん。 ミルザくん「大丈夫!?ジャミル!」 ミルザくんがジャミルくんの事に気がつきました。 ミルザくん「待ってて、いまそのモンスターを・・・ぐあっ!」 ミルザくんがジャミルくんの方へと目をそらしていたその一瞬の内に、ミルザくんはモンスターの一匹の体当たりを食らってしまいました。 不意の一撃に尻餅をついてしまうミルザくん。 ミルザくん「くそっ!」 体勢を立て直すまもなくモンスターの踏みつけが倒れているミルザくんに襲い掛かります! ミルザくん(ダメだ・・・モンスターの群れが圧倒的過ぎて避けるスペースが・・食らう!!) ドシャッ 一瞬のことでした。 ミルザくんの周りにいた十匹程度のモンスター達が、一瞬にして切り裂かれ、消滅したのです。 ミルザくん「な・・・!?」 たじろぐモンスター達。 ミルザくんはすぐに気がつきました。いつの間にか自分の目の前にある”男”が立っているのを。 その真っ黒な体は、ほとんど闇に溶け込んでいるようにも見えます。 ???「立て。」 その声。風格。ミルザくんはその男が何者かであるかをすぐに理解しました。 ミルザくんは立ち上がると、怒りと少々の困惑を含めた調子でその男の名を叫びました。 ミルザくん「・・・・・・カヤキス!」 オイゲンくん「カヤ、キスゥ!?」 ミルザくんの声はオイゲンくんの耳にも入ってきました。 オイゲンくん「カヤキスがどうしたミルザァ!!大丈夫かァ!!」 その声はすぐに圧倒的な群衆の波に揉まれ掻き消えてしまいました。 ミルザくん「カヤキス!・・・何のようだ、また僕達を邪魔しにきたのか!させないぞ!!」 カヤキス「・・・生憎だが、今回用があるのはお前達のほうではない。」 ミルザくん「えっ!」 カヤキス「今回の私の敵は、こちらの愚かな肉団子の群れどもだ。」 カヤキスが打槍『カヤキスの鉾』を構え直し、モンスターの群れに向かって打ち付けました。 ミルザくん「えっ!?」 カヤキスの意外な返答にミルザくんは驚愕しました。 カヤキス「見ての通り事情を説明している暇は無い。というか仮に暇があったとしても絶対教えてやんねーけれども、 とりあえず今は私とお前たちは戦う理由がないという事だ。」 ミルザくん「・・・・・・意味が、分からないぞ!戦う理由って・・・お前は・・・」 カヤキス「無駄口を叩くな!無駄口を叩く暇は全て敵を消すことに回せ!!エグドー」 カヤキスはやたら腑抜けた声を上げると同時に戦鬼の如く突きの雨をモンスターの群れに繰り出しました。 ミルザくん(・・・何がなんだか分からない、けれども、今はこんな奴よりモンスター達を倒すほうが優先的なのは確かだ!) ミルザくん「とりゃあああああ!!!」 気合の入った声をあげ、ミルザくんも群れに再び攻撃を繰り出し始めました。 ジャミルくん「ありゃあカヤキスだ!あれ、でも攻撃しているのはモンスターの方で・・・ぎゃっ!!」 モンスターの体当たりをかろうじて避けるジャミルくん。 ジャミルくん「あ、あぶねーあぶねー!くそっ、どうするよ俺・・・せめて武器の代わりになるもん・・・なんか、なんか無いかなんか!」 執拗なモンスターの体当たりを猿のようにかわしながら、滅茶苦茶に懐をまさぐるジャミルくん。 背中に手を回したとき、なにか固く大きい物の感触を感じました。 ジャミルくん「こ、この感触は・・・ぶ、武器!?」 ジャミルくんは不自然さと違和感を見てみぬ振りして、勢いよく服の中に手を入れ、『武器』を取りました! ジャミルくん「・・・・・・って、これかよ!!」 ジャミルくんは愕然としました。 ジャミルくんの手の中には、いつぞやのデブ猫、アルの牙があるだけでした。 モンスター『グオオオオ!!!』 ジャミルくん「ぎょへえええええ!!!」 モンスターの突進が一層凶暴性を増して行きます。 ジャミルくん「ったく、なんだよコイツは、イカレてんじゃねえのか!?っつかオイラに恨みでもあんのかこいつっ!? やっぱり、あれか、オイラのこのガラが気に入らないってワケ?いけないのはどこだ!? 長い耳か?帽子か?髪型か?走り方か?走り方か?走り方か?クッソー!!」 ジャミルくんはアルの牙をしっかり握り締め、モンスターをギッと睨みつけました。 ジャミルくん「オラ来いよ肉団子、借りは返すぜ!」 吐き捨てるようにジャミルくんが言います。 何かが通じたのかはぐれ者のこめかみに青筋が入ったと思うと、今までで一番の猛り声を上げ飛び掛ってきました! ジャミルくん「よっ、」 闘牛士のようにヒラリと身を捻って突進をかわします。 そしてそのまま牙を振りかぶりました。 ジャミルくん「そ〜らよっ!!!」 アルの牙が、はぐれ者の首筋に深く突き刺さりました。 モンスター『ガッ・・・グアアァァァッ・・・・・・』 醜いうめき声と共に地に倒れ、そしてはぐれ者は消滅しました。 光が解放されてゆきます。 ジャミルくん「ふぅ・・・くー、決まった!!ナイスだぜオイラ!!」 ひとしきり自己満足に浸った後、手の平のアルの牙をじいっと見つめ始めました。 ジャミルくん(・・・ありがとよでか猫・・・まさかお前に助けられるとはな・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・待てよ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・) ジャミルくんの脳裏に、いま一つの革新的な考えが浮かび上がろうとしていました。 ジャミルくん(この牙を使って・・・助けを呼べるんじゃねーか・・・・・・?) そう考えるや否や、ジャミルくんはモンスターの群れが見えなくなるところまで走ってゆきました。 ジャミルくん(ちょい待ってろよミルザ、オイゲン!いま加勢を呼んでやるぜ!!) オイゲンくん「はぁはぁ・・・ぐっ、本当に・・・キリがねぇな・・・!」 休まずに巨大な打槍を振り回すオイゲンの疲労は既に尋常じゃないほどに溜まっていました。 倒しても倒しても一向に底が見えようとしない、無限のようにも思えるモンスターの圧倒的な数が、 精神の疲労をも着々と蓄積させてゆきます。 オイゲンくん「くそっ・・・」 湧くように次々現れるモンスターの群れ。 疲労し体の動きが鈍くなっていく事を実感しオイゲンくんは更に狼狽してゆきます。 己の持つウコムの鉾・・・明らかに先程よりも重い。 オイゲンくん「ケッコー体力には自信あったんだけどな、俺・・・ やっぱ・・・舟の上で神雷打ちすぎちゃったのがいけなかったかな、 挑発にまんまと乗せられちまって・・・バカだなぁ俺・・・」 挑発・・・ ――もはやお前は蚊ほどにもないことがわかった―― ――幸せに家庭を持っていいお父さんになってちょっと頑固なお爺ちゃんになってささやかな葬式を開いてもらえただろう―― ――ついつい死ぬ間際の人にまで人生のアドバイスしちゃうから困る―― ――・・・・・・カヤキス!―― オイゲンくん「・・・ああ・・・」 ギュッと一度強く鉾を握り締め直します。 オイゲンくん「・・・あーーーっ、思い出すだけでもムカムカする、あの糞やろうぁああああああぁぁぁぁ!!!!!!! クソォォォー、あの鎧野朗ぜってぇぶちのめす!!十数回ぶちのめす!!! いついかなる出来事が起ころうとも結果的にぶちのめす!!! ミルザ、そっちにカヤキスがいるんだろ!?今行くからちょっと待ってろおおぉぉぉぉ!!!!!」 オイゲンくんは空に向かって力いっぱいそう叫んだ後、鉾に力を集中させ始めました。 ウコムの鉾に、巨大な力が蓄積されてゆきます! オイゲンくん「神雷!!!」 オイゲンくんの周辺に、神の裁きが落ちました。 ミルザくん「あれはオイゲンの神雷・・・!今日何回目だ、大丈夫なのか!?」 敵を切り裂きながら誰に言うでもなくもなくそう言います。 カヤキス「ふっ、おそらく今のでLP切れて消滅したな・・・。南無。」 ミルザくん「ちょっ、物騒なこと言ってるなよ!」 カヤキス「あの男は表面冷静なようで実際キレやすく後先をあまり気にしない性格のようだからな。 あいつは幸せな結婚生活を送れそうにないな・・・哀れなものよ。 ふっ、しかしたかが人事だというのにここまで心配してしまう私は心が広すぎだな。 広すぎる部屋というのも難儀なものだ。もう少し心の拡張工事でもしてみるべきなのだろうか。」 ミルザくん(なんかウゼェこいつ・・・) 「ミルザ!!どこだ!」 ミルザ「!!・・これはオイゲンの声だ、オイゲン、こっちだー!!」 ミルザくんは群れに飲まれ見えないオイゲンくんに向かって手をふって合図をしました。 しばらくして、ミルザくんの周辺の群れのある方向に道ができあがっていきました。 オイゲンくん「ミルザ!」 オイゲンくんがミルザとカヤキスの前に姿を現しました。 ミルザくん「オイゲン!大丈夫か!!」 剣を振り敵を蹴散らしながらオイゲンくんに向かって言います。 オイゲンくん「ああ、なんとかな。もうはぐれねぇぜ、それにしてもミルザ・・・あっ!てめぇカヤキス!やっぱりいやがったな!」 オイゲンくんの視線が黒い鎧――カヤキスを捉えました。 カヤキス「オイゲンか、また会ったな。(チッ、LP切れてねーじゃんこいつ)」 オイゲンくん「てめぇ、ここで会ったが百年目!!今度こそぜってーーーぶちのめしてやる!!」 カヤキス「・・・ふん。」 『グオオオオオオ!!!』 オイゲンくん「・・・あっ!」 オイゲンくんは見ました。カヤキスの背後、腕を振り上げ牙を剥くモンスター―― ガッ!!ガッ!! カヤキスは後ろを向くまでもなく、モンスターの顔面を槍の柄で打ち抜き、倒しました。 オイゲンくん「・・・・・・!」 カヤキス「私はいまお前たちと戦うためにここにいるのではない、今の私の相手はこの雑魚どもだ。 分かったら早くモンスターどもを削れ。今は犬の手猫の手嫁の手孫の手全部必要な緊急事態なのだ!」 ミルザくん「そうだ、オイゲン!カヤキスはいま僕達と戦う気はない、カヤキスは無視しろ!」 オイゲンくん「!!・・ったく、どうなってるんだよ!」 オイゲンくんは視線をカヤキスからモンスターに移し変え、鉾を構え直しました。 オイゲンくん「じゃあぶちのめすのはまた後だ!今はこのモンスター達だ・・・うおおお!!!」 戦いは激化してゆきます。 ・・・ワロン寮ジャングル入り口。 ミニオンズとアルは、約30分の時間をかけようやくワロン寮のジャングルへと到着していました。 ゲッコ族「ジャングルの奥地へ行く船だぎゃ、乗るきゃね?」 アル「ああ、急いでるんだ、早く乗らせろ。」 ゲッコ族「・・・ぎぇぎぇっ、猫がしゃべった!・・・あ、あのー、もう一回なんかしゃべってください。」 アル「御託はいいからさっさと乗せろ!!」 ゲッコ族「ひー」 船に揺られながら、ぶつぶつとアルが悪態をつき始めます。 アル「・・・ったく、最近の奴らはしゃべる猫をすぐ物珍しがるから困る。」 ストライフちゃん「ここに来るまででもう何回目を付けられたか分からんな。」 ヘイトちゃん「アンタがでしゃばって人前でベラベラ喋ってンからいけないのよぉぉうう!!★@;・!!少しは自重しなさァァいい!!3!」 アル「すまん、すまんなんだが・・・何かオメーに言われるとすげーむかつくのはなぜだ?」 ストライフちゃん「大丈夫、それは半ば自然の摂理のようなもんだし。」 アル「なるほど」 ヘイトちゃん「あひゃー」 ワイルちゃん「ところでアル。時間的にどうです?船も早く来て予想よりも早くこれましたが・・・」 アル「んー」 少し夜空を見上げた後言います。 アル「十分とは言えないな。何せあのだだっ広いジャングルから人一人を探すワケだからな。 残る時間からある程度はシンボルの位置は予測できそうだが・・・」 ストライフちゃん「アル、できるのか?」 アル「とりあえずは出来るだろうがな、こんなケースは初めてだからあんま自信ねーな。ま、何とかなるだろーよ。」 ヘイトちゃん「ちょっとォォ、いまいち頼りならないわねェアンタ。。。。」 アル「悪かったな。・・・・・・ん?」 突如、アルの目の色が変わります。 ストライフちゃん「・・・・・・?どうした、アル。」 アル「・・・・・・何だ、お前かよ!」 ストライフちゃん「はっ!?」 突如怒鳴りだすアルに驚くストライフちゃん。 ストライフちゃん「な、なんだなんだいきなりアル、どういう意味だそれは・・・」 アル「違う、お前じゃねえ!」 ストライフちゃん「えっ!?」 今度はしっかりこちらの顔を見られながら言われました。 ストライフちゃん「・・・・・・・・・?????」 困惑するストライフちゃん。 と、再びアルがまた何か喋り始めました。 アル「この疫病神め、さっさと失せろ!馴れ馴れしく通信してくるな! そうだ、エリスは?エリスを出せ。・・・は?なに?あんだって?」 どこを向くでもなくアルはそこにいない誰かと話しているように言葉を喋っていました。 ヘイトちゃん「・・・イカれた?」 ワイルちゃん「もしかしたらさっきのあの電話じゃないですかね。まったく分かりづらいにも程があるってものです。」 ストライフちゃん「電話・・・というのか、あれは?」 ヘイトちゃん「妄想テレパシー・・・みたいなもんじゃないの。」 ストライフちゃん「妄想?」 (アンタはもう分かってると思うから色々と省くが、今俺達は・・・そうだな、ミルザとオイゲンってヤツがいてエリスさんの仲間なんだが、 ワロン寮のジャングルでモンスターの群れ・・・『エリスのシンボル』を蹴散らしているんだ。) アル「なんだって!?どういうことだそれは、エリスもそこにいるんだろうな。」 (エリスさんはいない。どこに行ったかも分からない・・・んだが、 ともかく俺達は融合を阻止するためにモンスターの群れと戦っているんだ。 だが、人手が足りねぇ。アンタもエリスのお仲間ってコトは目的は同じだろ、助けに来てくれ!早く!) アル「・・・なるほど、シンボルが引き合うのを阻止するのではなく、根底から条件を変えちまう。片方のシンボルを消しちまおうってことか。 ・・・だがなー、俺はエリスにアムトのシンボルを保護しろと・・・」 (結局は融合阻止に繋がるんだからどっちだって同じだろ!頼むよ!今はまさに猫の手も借りたい状況なんだって。 今俺がこうして喋ってる間にもあいつらは戦ってるんだ、一刻も早く来てくれ、でないと全滅しちまうよ!) アル「・・・そうだな、どーせ行き着くところは同じだし・・・じゃあもうすぐ行くからそこで待ってろよ! あとぜってー俺の牙を手放すなよ。いいか、何があっても手放すんじゃねえぞ。位置が分からなくなっちまうから。じゃあ切るぞ。」 アル「おい、おまえら。」 ミニオンズ「え、あ!」 一人喋るアルを呆然と見つめてたミニオンズははっとしました。 アル「目的変更だ。サルーインは探す必要は無い。」 ストライフちゃん「え?それはどういう・・・」 アル「簡単な話だ、俺達でこれから無数のモンスター達を倒して倒して倒しまくることになるってこった。理解したか?」 ヘイトちゃん「はあああああ????サルーインちゃん捕獲作戦はどうなったのよォォォう!!!!」 アル「詰まる所サルーインを助けるってことには何の変わりもねぇ、安心しろ。 ・・・着いたみてーだな。」 船が、ジャングルの対岸に辿りつきその動きを止めました。 のそりとアルが立ち上がります。 アル「しっかりついてこいよ!」 ストライフちゃん「え、ちょっ・・・」 船を降りジャングルにたつや否や、アルはある方向目掛けてダッと走り出しました。 ワイルちゃん「え!?ア、アルどうしたんですか・・・」 ストライフちゃん「一人でどっか行くな危ないぞ!」 戸惑うミニオンズ。 アルは走るのを止めると振り向きミニオンズを怒鳴りつけました。 アル「だーかーら、ついて来いっつってんだろ!!のんびり歩いている暇はねえんだよ!!」 ヘイトちゃん「何よ、ついてきて欲しいなら初めから言いなさいよぅーー!!@;」¥!」 アル「だから言っただろ!!さぁ行くぞ!」 アルが再び走り出しました。 ヘイトちゃん「まったく、いっつも行動が唐突な猫ね、これだから最近の猫はぁもうっ」 ストライフちゃん「説明している暇はないとかいつも言うが最低限の説明は最低欲しいよなぁ。まったく困ったものだな最近の猫ケラは♪」 ワイルちゃん「とりあえずついていきましょう!」 ミニオンズ三人も、アルについて走り出しました。 ジャミルくん「よっしゃ、やったぜ!!」 ジャミルくんは牙を握り締めながら小躍りしました。 ジャミルくん「ミルザ、オイゲン、オイラちゃんと役にたったぜ・・・。 まったく、ここ最近一番の幸運とピコンヌだったな、まぁ流石俺様とでも言うべきか・・・」 言いながらジャミルくんは近くの石に腰掛けました。 ジャミルくん「でもあの猫を信用しても大丈夫なのかなあ?でかくて喋るってだけで戦えるかどうかは・・・」 足をくすぐる葉も気にも止めずに再びジャミルくんは独り言を再開しだします。 ジャミルくん「・・・いや、信用できるできないじゃなくて信用しなきゃいけないんだ。 猫の手も借りたいって自分で言ったじゃねーか、そうだ、猫の手があるだけでありがたいんだ・・・」 必死に自分に言い聞かせます。 ジャミルくん「とりあえずこの牙を手離さねーようにしないとな。こんなちっちゃい牙、 無意識に落として気づかないまま、なんてコトはよくある・・・。」 過去今自分で言ったような失敗を何度かしたコトがあるジャミルくんは、 牙を懐に入れようとはせずに、手に持ち食い込むまで力強く握り締めました。 手の平を伝う尖った痛みで、牙の存在を忘れないようにしたのです。 ジャミルくん「後はここで待ってるだけでいいのか・・・?いや、とりあえずモンスターの所に様子を見に・・・ いや、万が一のことがあっちゃーダメだ、オイラはここで来るまでひたすら待っているんだ・・・」 ジャミルくんの今の頭の中は友人二人のことで一杯でした。 ジャミルくん「ミルザ、オイゲン・・・頑張ってくれよ・・・。あと、俺は逃げたワケじゃねーからな・・・誤解してんなよ・・・。」 呟くジャミルくん。 その時でした。 「一本羽のついた帽子に緑の髪の毛のチビ。えーと、こいつか。」 ジャミルくん「!?!?」 唐突に背後から声。 ジャミルくんの心臓が爆発したように熱くなります。 ジャミルくん「だっ・・・」 勢いよく振り向きます。 人がいました。 大剣を振り上げていました。 ジャミルくん目掛けて―― ジャミルくん「なっ――」 ドシャッ ???「何だよ、避けんなよ。ウゼェな。」 男は大剣を砕けた岩から引き抜きながら言いました。 ジャミルくんは困惑しながらも軽く距離をとり、言いました。 ジャミルくん「なな、なんだアンタいきなり!?そそ、そんなモン人目掛けて振り下ろしてさっ、何のつもり?!」 ???「テメーらを消しにきたんだよ」 さらりと言いました。 ジャミルくん「消す!?」 ???「わかんねえかよ、てめえらがいちゃ神殿が開かないんだろ?俺は神殿に用があるんだ、 だからてめーらをここで消しちまおうってハナシ。」 ジャミルくん「はぁ!?」 ジャミルくんはこの男の言っている意味がほとんど理解できませんでした。 ただ、今自分が命の危険に晒されているという事だけは嫌々理解してもいました。 ???「しらばっくれてもムダだぜ。・・・どうしたよ?あー、まさかちょっとブルっちゃってる?情けねーなぁ、 でも安心しろって。あんま痛めつけて反応を楽しむとか俺、そーゆー趣味はないから。」 意味深に被られた銀色の仮面の下から、くぐもった笑い声がもれ出てきます。 ???「首でも胴体でも一発でチョンぎってそれでお終いよ!!」 ジャミルくん目掛けて勢いよく飛び出しました! ジャミルくん「ちょ、まっ!!俺はっ!!」 無論仮面の男は聞く耳を持ちませんでした。 ジャミルくん「ぎゃっ!!」 大剣の一撃をかろうじて避けるジャミルくん。 男は間髪入れず二撃目、三撃目をジャミルくんに浴びせかけていきます。 ジャミルくんは一々悲鳴を上げながら、一つ一つ必死に飛び退るようにして攻撃を避けていきます。 ジャミルくん(なんだってんだよ、一体!!ワケわからねぇ、しかもあの攻撃、岩が真っ二つだぜ。 あんなの食らったら一発で骨ごと断ち切られて・・・じょ、冗談じゃねえぞ!!) 嫌な汗が顔を伝います。 仮面の男は唐突に攻撃の手を休めると、ニワッと不気味に口を歪ませました。 ???「随分必死じゃん?ウケるぜ。・・・・もしかして戦えないの?お前?」 ジャミルくん「・・・・・・さぁね。」 肩で息をしながら、それでも少し余裕があるようにジャミルくんは言いました。 ジャミルくん(どうする?どうする?どうする? 武器も無い、手放す危険性があるから牙を武器にして攻撃するわけにはいかない、どうする?どうする?) 知恵を総動員しても、そう容易に打開策が思い浮かびません。 ???「あらら、そんな冷や汗いっぱいかいちゃって。足もガクガク震えてるし。怖い?俺が怖いのかい?ぼっちゃん。」 嘲るようにそう言った後、仮面の男は一人馬鹿笑いを始めました。 しかしジャミルくんには悔しさだとか怒りだとかそういう感情は沸いてきませんでした。 ジャミルくん(そうだ笑うなら笑え、この状況を抜け出す方法をオイラが考え付くまでずっと笑っていやがれアホ。 ・・・今の内に逃げるか?いや、逃げれば自分の位置を把握できなくなる。 ミルザ、オイゲンの戦っている場所に戻れなくなってしまえば本末転倒だ、いや、ならば何か道しるべがあれば・・・) ???「もしかして武器とか持ってない?見た感じ術も使えないっぽいなァ。 真夜中のジャングルに手ぶらで入ってきたわけ?大した怖いもの知らずじゃん♪」 ジャミルくん(どこに行っても同じようなジャングルだ、位置を把握することなんて簡単じゃねえ、 逃げて巻いてここに戻ってくるなんて不可能だ・・・ならばミルザ、オイゲンのとこに逃げたら? ・・・ダメだ!面倒を持ち込むことはできねぇ・・・ いや、どのみちこいつは俺を殺した後ミルザ、オイゲンも狙うつもりだったんじゃないのか? 最初あいつは特徴から俺を探しているみたいだった。それにヤツはさっき『てめえら』と言ってなかったか!?) ???「・・・おいおい、人が話しかけてるってのに、ばっちりシカト?・・・なってないんじゃねぇの?そういう所さあ!?」 大剣を構え直し、ジャミルくんに突進してきました! ジャミルくん「くっ!」 ジャミルくん目掛けて物凄い勢いで振られる仮面の男の大剣。 重い風切り音がジャミルくんの耳を叩きつけます。 ジャミルくん(あぶねぇ!あぶねぇ!!・・・そうだ、あいつさっき『てめえらがいちゃ神殿が・・・』とか言っていた! きっと神殿と融合には何か関係があるんだ、そして知っているんだやつは。俺達が融合を阻止しようとしているコトを・・・ ヤツは融合を阻止してほしくない。もしかしてあの黒い鎧のヤツの仲間か?) 思考のパズルが無理やりにでもどんどん埋まっていきます。 ジャミルくん(ならどのみち戦うことになるんじゃないのか?面倒を持ち込むといっても所詮結果的には同じなわけで・・・別に・・・ あーくそっ!!よくわかんねー!!ワケわかんねーー!!) 頭をガリガリ掻きながら今一度仮面の男を真っ向から見据えました。 男の仮面の下の目が、キュウッと細まります。 ???「・・・すばしっこいねぇお前。・・・いつまで逃げてられる?もう一回いくぜぇ?」 剣を再び構え直します。 そして、長い舌をダランと出したと思うと。深くゆっくりと舌なめずりを・・・ ジャミルくんは、背筋に何かとてつもなく冷たい何かが通ったような感じを覚えました。 ジャミルくん(ダメだ・・・・・・。 怖 す ぎ る ) 即決しました。 ジャミルくん「へ・・・へへ、」 一、二歩ゆっくり後ずさります。 少し間を置いた後、ある方向へ向かって一気に走り出しました! ???「なっ!」 突然の事に仮面の男は驚きの声を上げました。 あっという間にジャミルくんは闇と木々にまぎれ仮面の男の視界から消えうせてしまいました。 呼吸を止め、足の力を総動員し、ひたすらにミルザとオイゲンのいるあの地点へ向かって全速力で”逃げ”続けるジャミルくん。 冷たい風が凄い勢いで顔に覆いかぶさってきます。 しばらく経った後、ジャミルくんはふと後ろを振り返りました。男の姿は見えません。 ジャミルくん(な、なんだ、撒いちまったのか!?) ジャミルくんは走るのをやめその場に止まりました。もう一度振り返ります。姿が見えません。 ジャミルくん(撒いちまったなら撒いちまったでそれに越したことはねえが・・・) 安心するべき状況なのですが、あまりにあっさり事がすんでしまったことに、違和感と不安が拭えません。 そわそわ辺りを見回してしまいます。あの男の姿は見えません。虫のさえずりと風の音以外の物音もありません。 ジャミルくん(おいおい、マジか?まさか、本当に撒けちまったのか?) 言いようの無い不安と恐怖。 ・・・・それは的中しました。 「ん〜、甘い甘い。」 ジャミルくん「!?」 およそありえない方向からその声はしたのです。 ジャミルくんはその方向を振り向きました。 背後。下。足の下。 突如、足元からゴボリとあの仮面の男が現れました! ジャミルくん(なんだってぇぇぇ!!!!???) 仮面の男は右拳を腰ダメに構え、勢いよくジャミルくんの腹を殴りつけました。 ジャミルくん「がばっ!!」 ジャミルくんの体が浮きました。 男が拳を離すと同時に、ジャミルくんは地面に突っ伏しました。 ジャミルくん「ガハッ!ゴホッ・・・!」 腹を押さえのたうち回るジャミルくん。 吸い付くような腹部の痛み。喉から焼けたものが出ていきます。 ???「ハッハッハ!!無様な、どうだ?ビックリしたかよ!?」 ジャミルくんは涙目のまま、嘲笑しながらこちらを見下ろす仮面の男を睨み付けました。 そのジャミルくんの顔を見た途端、男の嘲笑が、爆笑へ変わりました。 ???「ひゃっひゃひゃひゃひゃ!!!!おーおー、かわいそー!!痛かったか?あーん!?」 ジャミルくん(!!・・・この・・・やろっ!嘗めやがってよォ・・・・・・!) 涙で視界が霞んでゆきます。 ジャミルくん「・・・・・・!!(や、やった・・・!すげぇぜ俺・・・!)」 倒れた男を見て、ジャミルくんは喜ぶと同時に少しだけ自分の行動に後悔し始めました。 ???「テメェ!!」 男が立ち上がるのはすぐでした。 ジャミルくん(・・・そりゃ、そうだよな。・・・まだ状況は根本的には何も変わってねぇ、だが大分時間は経った、 このまま耐え切ってれば・・・必ず助けが来る!それまで持ちこたえることができれば・・・) ジャミルくんは立ち上がった仮面の男をキッと見据えました。 仮面の下の目が、先程よりも一層赤く鈍く光っているようです。 ???「うぜぇ・・・うぜぇうぜぇ、やってくれるじゃねーかよぉオイ!!雑魚が粋がりやがって、すぐに殺してやるぜ!!」 大剣をジャキッとこちらに向かって構えました。 先ほどとは違い、隙の無い、無駄の無いしっかりした本気の構え。 ジャミルくん(もう逃げきることはできねぇ、攻撃を死に物狂いで避けるんだ!!やってやる、 今まで泥棒やってきて何回こーゆー絶体絶命を抜けてきたと思ってるんだ、俺ならできる!!) 自らに言い聞かせます。 仮面の男が向かってきます! 『そこまでだ!!』 ジャミルくん、???「!!?」 辺りに、今までその場にいなかった何者かの声、ジャミルくんには全く聞き覚えの無い声が―― ???「・・・何の、用だよ、」 仮面の男は、その声に覚えがあるようでした。 男がある方向を向きます。その先には、一人の・・・いや、一匹のモンスターが立っておりました。 ジャミルくん「な、なんだってんだ、一体。」 ???「邪魔すんじゃねえよ、セージ!!」 セージ「あなたの相手はそいつじゃない、ソードスレイブ様!!」 |
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