第17話「ツー・ムーン・ラブ!」

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「赤い月夜も俺の影を映し出さない・・・闇夜は俺を抱く腕さ、
 お嬢ちゃん月のない日は気をつけな、月が出てても防犯だ、
 真昼間でも乞食のガキからほらダッシュ、そこですれ違ったおいらが・・・っと」
赤い月光を受けて掲げた豪奢な腕輪がキラリと光ります。その光が彼の鋭い瞳を通り抜けました。
我々はこの眼を知っている!忘れてた人もいっぱいいる!そう、
それは名脇役ならぬ名盗賊、ジャミルくんです。
ジャミルくん「今日の一番の戦果はやっぱこれかな!う〜んこりゃ一品だ、持ってるものは金しかない
        間抜けどもには勿体ねえよ、おいらがお前の真の居場所を教えてやるさ!
        ファラの細くて白い腕に・・・くうう考えただけでもたまんねー!・・・
        しかし最近何でか戦利品が腕輪ばっかりなんだよな、腕元はもう王侯貴族に引けを取らないのに
        格好は一式100均じゃまるで腕輪に命賭けて全財産注ぎ込んでる腕輪マニアみたいかな・・・
        ・・・服でも調達してやろうかな・・・」
ジャミルくんは今日もそのビジネスを終え夜の南エスタミル寮を一人歩いているところでした。
一匹狼の盗賊、そのねぐらに戻るところだったのです。
ジャミルくん「服ってーとどんなんがいいだろ、俺もミルザ達とつるんでたうちに
        あのセレブ三姉妹の格好を知っちまったからなー。盗むなら超一流がいい!
        ・・・でもあの三姉妹みたいな服ってどこで売ってるんだ?12月31日の夜限定で非販売だろうか?
        ・・・いやもっと近い道があるじゃないか、三姉妹から直接盗む・・・」
ジャミルくんは少しの間考えを巡らせました。と、汗をだらだら流し始めました。
ジャミルくん「ま、まあ・・・あんな格好がファラに似合うとも思えねえしな・・・
        適材適所、そうそう!こんな時の為にこの言葉はある!わははは・・・服のことは後で考えるとしよう、
        今日は腕輪で良いや。こんなに立派な品だもんな!とくにこのはめ込まれた月より見事な宝石・・・」
ジャミルくんはまた、赤い月に腕輪を掲げました。
すると、腕輪の向こうの赤い月に、少し不思議な気持ちが沸きました。
ジャミルくん(・・・・・・?あれ?なんだろ・・・今あの月に、何か違和感が)
ジャミルくんはふと、月から顔をある方に向きなおしました。
南エスタミル寮の観光名物、愛の神殿。
ジャミルくんの瞳には一つの影を捉えました。夜空に向かって壷を差し出している一人の女の子でした。
ジャミルくんはさっと隠れます。なにかやましいことがあるわけではなく、盗賊としての本能なのです。
ジャミルくん(なんだってんだ、こんな夜中に女の子が・・・あぶねーな、ここは南エスタミル寮だぜ?
        持ってるもんはなんだありゃ?壷か?壷を持ち上げて何やってんだ・・・?
        ああ、ダンベルの代用で筋トレか。・・・じゃなくておいらはもー、・・・
        あっあんな服ならファラにピッタリかもしれない!・・・じゃなくておいらはもおおお!)
ジャミルくんは考えました。あの事件、ウハンジ寮長のハーレムはあの愛の神殿の中ではなかったか?
もしかしてあの女の子、またあの種のよからぬ事と関係が―――?
ジャミルくんは放って置けなくなりました。



女の子のほか、周囲に何者かいないか忍び足と猫のような目で探ります。そして女の子の背後に回り、
暗い神殿の中にも誰も居ないか確認しました。
女の子「・・・・・・ふう重い、誰も近くにいやしないわね・・・」
ジャミルくん「誰も居ないな」
女の子「ぎゃあああああああああわわわわやあああああああああああああ!!!!!」
ジャミルくんは鼓膜がミンチになったかと思いました。思わず体勢を崩して倒れます。と、
その女の子もジャミルくんの上に思い切り転んだのです。
ジャミルくん「どえっっっ!!!」
女の子「きゃあーーーーーーーいやーーーーーーいやーーーーーあんた見たのねーーーーーー!!!
     見たのねーーーーーーーいやーーーーーばかっばかっひいいいい
     しかもよく考えたらさっきの悲鳴も聞いたわねーーーーー乙女にあるまじき奇声を知ったわねーーーーー
     いやああああああんた生きて返せないわーーーーーごめんなさいーーーーー!!!(ガン!ガン!)」
ジャミルくん「ちょ・・・ぶっなんなんだぶへっ!」
女の子はのしかかった体勢のまま思いっきりジャミルくんを、両手に持った壷で叩きます。
ジャミルくん「(やばい、殺される・・・!)ちょ、ちょっと待てよおどかして悪かったよ!
         俺は・・・ぐほっ!ちが・・・俺はちょっと・・・」
生死がかかっている時にも悲しいかな、頭の回転の良いジャミルくんは一番無難な道を取ろうとしてしまうのです。
ジャミルくんはウハンジ事件のことをいうとややこしくなると思いました。
ジャミルくん「違うんだよ!俺は・・・、そう、ちょっとあんたの服が可愛いなと思っただけさ!」
女の子「ええっ!」
ジャミルくんはやばい、このとっさの言い訳も結構やばく聞こえる、と思いました。
しかし女の子は壷を叩きつける手を止め、ジャミルくんを見開いた目で見つめました。
ジャミルくん(あれ・・・?もしかして、上手い良い訳だったかな?)
ジャミルくんは女の子の顔が見えました。かなりかわいい娘で、ふわふわの長い髪がジャミルくんの顔に
かかってきました。闇夜の錯覚か、頬が桜色を帯びているように見えます。
女の子はふっと息をつきました。
女の子「いやあーーーーーーあんたあたしに一目惚れねーーーーーー一目惚れなのねーーーーーーー!!
     一目見た相手は次に会った時恋を許されない階級差がお約束のあの一目惚れなのねーーーーーーー
     いやあーーーーーあたし一目惚れなんて信じないわーーーーーーー!!!
     一目であたしの何がわかるのーーーーーあたしがこーーーーーーんなにかわいいからってーーーーーー!!
     かわいいからって一目惚れなんてーーーーーーーそりゃ当然よねーーーーーーーー
     あなたの罪じゃないのねーーーーーーーーーあたしのかわいさが罪なのねーーーーーーーーー
     あたしに一目惚れするのが当然のこの世のセオリーが罪悪なのねーーーーーうふふはは(ガン!ガン!)」
ジャミルくん「ぐへぶほっ!おめえちょっといい気になってんじゃねえかぼふっ(やばい、本当に殺される・・・!)」
ジャミルくんはやはり選択を誤まっていたようです。
その時でした「あっ」
女の子は手を滑らせて、その壷を傾斜させてしまったのです。

ジャミルくん(・・・うわっ!)
次にジャミルくんに降ってきたのは殴打の雨粒ではなくなにか液体のような物でした。
ジャミルくん(水!?・・・ん・・・なんだこれ・・・流れるのが遅い。俺の上に覆い被さっているのに
        俺は・・・苦しくない)
その液体を通してみる夜はどことなく明るい感じがしましたが、ジャミルくんの前の女の子は
あまりに明らかな蒼白の色をしていました。
???「誰だそこで騒いでいるのは!」
女の子「―――!」
人ももういない往来の方からの声は警備兵の声です。女の子はさっとジャミルくんから退き、
まるで光が消散したようにそこから逃げていきました。
ジャミルくんはほっとしましたが警備兵が来たのではそうも言っていられない。
いつのまにか自分にかかっていた液体のような物がほぼ消えているのに気がつきましたが
そんなことより、もはやこの距離でこの体勢からでは警備兵を撒くのは不可能だな、今夜の窃盗の件も
あの警備兵は知っているに違いないし俺を捕らえよとするだろう、仕方が無いから少し妥協しよう、
そう考えました。ジャミルくんは手に持っていた腕輪をカンッと道に叩きつけました。
警備兵「なんだっ!?」
思惑通り警備兵は腕輪の方に注意を取られて近づきました。その一瞬の隙にジャミルくんは
木陰へ姿をくらましました。警備兵が目を上げた時にはもうあたりに人影も何も無かったのです。
ジャミルくん(ちぇ!いくら焦ったからといってもやってしまったな、あの腕輪は一番のもうけだったのに!
        しかし他のものを取り出している暇は無かった―――ああ、残念だな!
        全くあの子は大した美人だったが、すごい上玉ほど関わるとろくなことがない!
        ミルザの奴はその辺分かっていないんだよなあ・・・ああ、あの腕輪、おいらのファラのための
        とびきりの物だったのに!あの星がこぼれた様な宝石の白い輝き!)
ジャミルくんは名残惜しげに木々の隙間から投げつけた腕輪を持っている警備兵を見やりました。
その手元から漏れている輝きは、赤い光でした。



ミルザくん「あのさあオイゲン、この肉じゃがおいしいよね」
オイゲンくん「そうだな、お前みたいな田舎のやつほど肉じゃがうまく作れるよな、肉が入ってないけどな」
ミルザくん「うんあのさあ、肉が入ってないのに肉じゃがって言っていいのかなあ」
オイゲンくん「今肉じゃがって言っても何も無いし別にいいんじゃないか」
ミルザくん「肉は怒らないかなあ」
オイゲンくん「肉が怒ったらどうするんだ?襲ってくるのか?でも来ないし平気じゃないか」
ミルザくん「でもここに肉が居ないから襲って来れないんじゃないかなあ」
オイゲンくん「そうだな、肉は歩けないからここまで襲いに来れないのかもな」
ミルザくん「大体僕は肉に縁も因果も全く無いから肉は怒っても僕に関われないんじゃないかなあ」
オイゲンくん「肉屋の前を通っても襲ってこないんならまあそうなんじゃないのか」
ミルザくん「僕は肉に申し訳ないんだよ、オイゲン」
オイゲンくん「じゃあこうすれば、肉が入ってないんだからじゃがって言えばいいんじゃないの」
ミルザくん「そうか・・・そうすればもう肉を怒らせることもないんだね」
オイゲンくん「肉に嘘をついてないから怒られる筋合いがないな」
ミルザくん「・・・でもじゃがに入ってるのはじゃがいもだけじゃないよ、にんじんやたまねぎが怒らないかなあ」
オイゲンくん「じゃあじゃがにんたまって言えば」
ミルザくん「そうか・・・でもこのじゃがにんたまにはお醤油も砂糖も入っているんだよ」
オイゲンくん「お前は全ての料理に使ってる材料名をいちいち組み合わせてろ」
二人はそんな会話はちりほどもなかったようにもくもくと食べ続けました。
ミルザくん「なんだか最近色々考えるんだよ」
オイゲンくん「さっきの考えなくていいことはともかくとして当然のことだな、最近色々ありすぎてる」
ミルザくん「・・・・・・不思議なんだよ、この学園は僕なんかにはそりゃあ敷居が高すぎて
       足を180度開脚しなきゃ跨げない程の学園だったよ・・・でもそれだけで、 
        名門という以外はごく普通の学校だと思ってたしそういう学園生活を送ってた・・・
       でも僕、糸石を捜し始めてからは何か・・・・・・」
オイゲンくん「お前の途切れた言葉の先に俺も同感だな、イフリート先生やクリスタルレイクプールの一件
        ・・・他にもだ、俺達が関わって解決してきたと思ってる事には・・・全部見えていない影があると思う」
ミルザくん「・・・そうなんだ、そしてそれらのことには」
オイゲンくん「常に糸石がまとわりつく」
ミルザくんは頷く代わりに目を閉じました。
ミルザくん「僕は自分が何も考えてなかったことを思い知るんだよ・・・糸石ってなんなのかな、
       僕はただサルーインちゃんのためだけに糸石を追っていた・・・そしてサルーインちゃんのためだけに生き、
       サルーインちゃんのためだけに100点取り、サルーインちゃんだけのために妄想という海に身を投げ」
オイゲンくん「ほぼサルーインちゃんのためになっていないがお前のなかの全ての公式にサルーインちゃんが
        組み込まれていることは知っている。はい今はサルーインちゃんのために頭を動かしましょーねー」
ミルザくん「イエッサー!!そうなんだ、糸石はサルーインちゃんのためにあるんだけどそれは僕にとってのことで
       糸石は他にも使いようがまあ僕には全然ないんだけど糸石はつまり他の目的に使われてはならないんだけどまあ」
オイゲンくん「お前に論理を求める俺が馬鹿でしたからもういい、つまり糸石には多様性があるらしいな、
        しかも随分魅力的なようだ」
ミルザくん「そりゃあ糸石はサルーインちゃんと僕の架け橋だよ君!きっとその架け橋は七色の虹で」
オイゲンくん「その七色のように使い道が多々選べるってわけさ、一色一色に狙ってる奴がいるんだよ」

???「お前らすごい会話してるな・・・いやオイゲンよ、お前のその無理やりすぎる論理展開には
      私も鱗が全部落ちる思いだ」

ミルザくん「えっあなたは・・・あっ!」
ミルザくんとオイゲンくんが驚いて目を上げるとそこにはあの四寮長が一人・水龍くんが
人間型の姿で立っていました。
ミルザくん「わあああ、水龍さん!!ど、どうやって入ってきたんですかあ
       僕の家に金目のものがないって知らないなんてあなたそれでも四寮長ですか!」
水龍くん「女体の神秘よりよく知っとるがそんなこと四寮長の資格に全く関係ないわい!!
      この私がお前んちなんかに盗みに来るわけないだろ!私には貧しくても隣に女の子がいるのだ(にっこり)」
オイゲンくん「あんた何しに来たんですか男子校生を敵に回しに来たんですか」
水龍くん「ふむオイゲンお前は賢い、」
ミルザくん「えっやっぱりケンカ売りに来たんですか!でも僕の隣はサルーインちゃんが来ないと出現しないんで
       その売り言葉は駄目ですね、他当たってください」
水龍くん「違う!お前の隣は出現したりなかったりするのかよ!・・・あのなあ話をスマートに進めさせろ!!
      オイゲンが賢いといったのは私が入ってきた方法を理解したようだからだよ、だから方法を聞いてこないのさ」
そう言って水龍くんは天井を指しました。オイゲンくんは目もくれませんでしたが
ミルザくんはぱっと見上げます。ミルザくんの顔に、天井から雫がぽとりと落ちてきました。
ミルザくん「ああ、雨漏りのところ!」
水龍くん「私が水を通してお前達に語りかけられることは先刻承知よな、そしてその進化系で
      十数えぬ程度なら私は水に変化することが出来るのだ、お前のボロ部屋は私にいつでも
      扉を開いて歓迎しているようなものよ」
ミルザくん「なんてことするんですかあ!!天井がもっと痛んじゃうじゃないですか!
       あなたはいつも水の中に居るから梅雨の雨漏りがどれ程辛いか知らないんでしょ!
       一人ぼっちの思春期の少年にとってバケツに落ちるポトリ、ポトリって音がどれ程わびしいか!!
       いちいち僕の妄想への遠海漁業を邪魔するんですよ!!!」
オイゲンくん「わびしいんじゃなくてうざいんじゃねえか」
ミルザくん「ああっ修理代を寮に頼まなければいけないっ!しかもその修理代は僕の
       食費代に回されるから結局修理なんて出来ないんですよわかってるんですか!!
       なんで普通にドアを叩いてくれないんです!!!」
水龍くん「食費代に回されるってお前・・・割と詐欺みたいなことしてるな・・・
      いやすまんロマンチックな登場の仕方に最近凝ってて・・・」
ミルザくん&オイゲンくん「俺達の前にロマンチックに現われてどうする気だ!!」
水龍くん「まあ細かいことを気にするな、女性に気配り忘れるな、という東方の格言があるのだ
      お前達も男を上げたかったら私を見習え、それでだな」
オイゲンくん「そんな格言あるのか?」
ミルザくん「テストに出てきたことはまずない」
水龍くん「それでだな〜お前ら、というよりミルザよ。私達は知り合いで時に協力し合ってきた仲だが、
      これだけで友達になるには十分の前提がある。だがそれ以上に我らには友達になれる
      強いつながりを持っているのだよ、なんだかわかるかな?」
ミルザくん「友達・・・友達と言う言葉をむず痒く思ったことはあれどこんなに薄ら寒く感じだことはないぞ・・・
       あの〜手を肩に置かないでくれますか」
水龍くん「おやおや友達候補にすげなくするものではない、で答えがわかるよな秀才ミルザ」
ミルザくん「僕テストの点にならないような問題は解けないんです。いやまあまじなんですけど」
水龍くん「テストの点数をいくら稼いでも社会では役に立たないし食費代にもならないのだよミルザ!」
オイゲンくん(あ、ミルザがレフトハンドソード抜きたがってる)
水龍くん「だから友達になる前の間柄として教えてあげよう、私達二人はお互い恋の味を知っているのだ」
ミルザくんは少したじろぎました。
ミルザくん「こ、恋の味・・・・・・!」
水龍くん「そうとも!いまさらなことを言って済まぬな、だがそうだろう私達は分かり合える!」
ミルザくん「ああああなたはサルーインちゃんを舐めたことがあるんですかんですかああ!!!」
水龍くん「どうして読解力がそう変な方に突っ走るのだ首に手をかけるな手を!!!
      サルーインちゃんなんか私は舐めたことないしお前も舐めたことないだろどうせ!!!」
ミルザくん「はっ!!!・・・そ、そうですよねよかったまさか舐めたことなんて・・・!
       よかった!・・・どうせ僕も舐めたことないし・・・どうせ僕も・・・ブツブツ」
水龍くん「こいつなんて一元的な見方しか出来ないんだ、なんでお前友達やってられるんだ?」
オイゲンくん「そうでしょ?だからあんたには無理ですよ」
ミルザくん「はっ!!!そ、そうです!僕には友達になってもらう必要はない・・・
       だってもうオイゲンという友達がいるから!!!はいっ終わりです引き取ってください!」
水龍くん「危険からの回避のためにためらいなく親友をだしに使える、まさしくこれこそ親友だなー
      お互いのためにお互いがある、そういうことなのだ。なあミルザ、
      お互いの恋のためにお互いを使うというのはお前にとって悪い案なのかね?」
ミルザくん「こ、恋のために!?」
水龍くんはにっこりと笑います。ミルザくんは目を見開き、オイゲンくんは胡散臭げに沈黙しています。
ミルザくん「・・・ど、ど、どんな契約条件でしょう・・・!?」
水龍くん「顔を近づけないでくれ友人、こんな鼻息初めてだ・・・そして口で語るより
      目で見るほうがはやい事がある、一緒に来い。さあ友人ここが分かれ目よ、
      来るか来ないか、どうするのだ!?」
ミルザくんに衝撃が走りました。オイゲンくんは眉をひそめてミルザくんの肩を叩きます。
オイゲンくん「おい、付いて行ったらもうすでに巻き込まれてたってこともあるんだぜ!
        これは罠だよ、まあなんか最近に比べて生易しそうに思えるかも知んないけど
        これが平常時の危険なんだよ、考えた方がいいぞ」
ミルザくん「考える?オイゲン、君は考えるのかね?」
オイゲンくん「は?」
ミルザくん「もしそこにサルーインちゃんの生写真があるのなら!!!
       たとえ前にまきびしが撒かれていようとも!!!串刺しの罠がある落とし穴があろうとも!!!
       バナナの皮が隙間なく敷かれていようとも!!!前へ進むのが男じゃないのか!!!
       進まぬわけにはいかない、たとえそれがコラだとしても・・・そうだろ!!!?」
オイゲンくん「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
水龍くん「あっぱれな心意気だ、特に最後の部分が」
ミルザくん「オイゲンだって僕が捕らえられていたらそうするでしょ!?ねっねっ!」
オイゲンくん「いや・・・進まないでお前にサルーインちゃんの生写真を見せるよ、
        そうすればお前は勝手にこっちに来ると思うんだ、たとえそれがコラだとしても」
水龍くん「おあとがよろしいようだな。私について来いミルザ、すぐに深い友情が必要なことがわかるよ」
ミルザくん「はいっ!!!背後にピッタリくっついて背後霊の代わりをします!!!」
水龍くんとミルザくんは早速出かけようとしました。
オイゲンくん「待ちなよ、俺も付いて行く」
水龍くん「おや?ミルザがそんなに心配か?そうも見えんな。それともお前も私の話に興味があるのか」
オイゲンくん「・・・別に。友達は多い方がいいだろ、それとも定員オーバーかな?」
水龍くんは整った人間型の顔を微笑ませました。
水龍くん「恋の船に定員などないものよ」



〜南エスタミル寮〜

暗い商店街の路地裏では、今日も品物を調達している商人たちがいます。
武器商人「ふー、やれやれ。最近の武器は重量ばかり増しているなあ。
       あたた腰が・・・どれ一休みしようかね。・・・・・ん?」
何か風が吹き抜けたような気がしました。武器商人が顔を風の方向に振り向かせると・・・
???「通行の邪魔だぜおっさん!!!」
武器商人「ぶへっ!!!」
何者かに思い切り頭を踏んで飛び越えられました。武器商人は衝撃を受けた頭を抑えます。
武器商人「〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!なんだってんだ!!こ、このやろう〜〜〜礼儀ってもんを・・・!」
武器商人は息を巻いて自らが運んでいた武器を取り出し、去り行く影に切り付けようとしました。
???『通行妨害だ間抜けめ!』
武器商人「――――――!?」
とっさに後ろからの声―――さっき商人の頭を足蹴にした奴が来た方―――から声がしたので、
武器商人は思わず後ろに切りつけてしまいました。しかし武器商人が切ったものは―――
武器商人「猫!?」
武器商人の目には規格はずれに大きいが―――確かに猫の姿が映ったのです。武器商人はたじろぎました、
まさか動物を切るつもりはなかったのです。
???『残像だ』
武器商人「えっ!」
背後からまた先程の声がしました。振り返ると、そこには今しがた見た猫。
傷も何もなく、何か鉄のようなものをくわえていました。
???『人間は遅い。お前ほどにのろい。なのに何故だあの人間は―――からくも俺の追走から
     逃げ延びている。こうしている暇もない、お前、物騒なものを似合わぬ手で振り回すものではない』
武器商人「!」
武器商人は手に持った剣を見ました―――剣のはずでした。しかしそれはもはや鉄の塊に過ぎない―――
へし折られて刃がなかったのです。今気付きました、あの猫の加えた鉄は俺の剣の刃だ!
武器商人「お前は一体――――!」
武器商人が目を上げると、もうそこには大きな猫の姿はありませんでした。
もう風は吹き抜けませんでした。
???『――――――遅かったのか!何故主人がいないのだ!?
     シリルのやつめ、散々もったいぶってこのザマか!―――あいつが『月の光』を一身に浴びたはずなのだ、
     あいつが『アムトのシンボル』を持っている!!!』
ジャミルくん「一体なんだってんだ!!!全く美人は災難の予兆だぜ!」



ミルザくん「すごいんだねえ〜四寮長っていうのは。水の流れに乗って、だけならず
       水の表面に乗ってるだけで流されていけるなんて!!」
ミルザくんは感嘆の声を洩らします。ミルザくんとオイゲンくん、そして水龍くんの奇妙な三人組は
川の上にいました。舟もなく、いかだもなく―――流されている三人が乗っているのは、まさしく水の「上」なのです。
水龍くん「語弊がある、あくまで我らを運んでいるのは水の精。私が水の精に命じなければ
      途端に水の精は気ままな流れの内に戻り、お前達など飲み込まれてしまうわ」
オイゲンくん「俺達にとっちゃなんでも同じことさ、いやなかなかどうして悪い気分じゃないな!」
ミルザくん「あっ川岸に人がいる!!おーーーい!!」
オイゲンくん「手をじたばたさせるなよミルザ、ガキだよなお前」
ミルザくん「あれっどんどん人が集まってくるよ!なんかざわざわしてる!どうしたんだろ?
       やっぱり僕らが水の上を走ってるのが不思議なんだろうか?
       えっへへちょっと鼻が高くなっちゃうね水龍さん!」
水龍くん「岸の人間達の唇を読むとこう言っている、
     『大変だ!川の上に浮いている人影が手招いている!生きてる人間が川の上に立てるはずがない、
      やばい、俺達こっちへおいでって呼ばれてるんだ!
      いやー死にたくない、俺達やり残したことがある、死人はすっこめ、』」
ミルザくん&オイゲンくん「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
水龍くん「・・・さて、そろそろ目的地に着くはずだな、ウソ寮近くの川岸だ」
オイゲンくん「ウソ寮?」



ミルザくん達が目を見上げるとそこはマルディアス学園でも有数の乾いた地域、
ウソ寮内の砂っぽい風景が見えてきました。
ミルザくん「ウソ寮って・・・何があるの?僕ウソ寮って言うと名物は宿屋のいらっしゃいませしか知らないんだけど」
水龍くん「それしか名物がないのだからお前は十分博識だ、とにかく我らが歩みを進めるには
      ウソ寮は通らざるを得ない道なのだな、さあ岸に上がれ、ウソ寮の中心まで歩こう」
オイゲンくん「ウソ寮で何を得るってんだ?しかもその口ぶりだとまだまだ終着点は先ってことらしいな、
        あんたそろそろ肝心のところを俺達に教えるべきだぜ」
水龍くんは二人に目を向け、含み笑いのような微妙な表情を見せました。
水龍くん「そうだな、要は最も重要なのは結果ではなく過程・・・お前達がいくら結果を知ろうと
      私がいなければ過程を辿れぬ。友人達よ、我らが求めるものは二つの月の結婚、
     『エリスのシンボル』と『アムトのシンボル』だ」
ミルザくん&オイゲンくん「『エリスのシンボル』と『アムトのシンボル』?」
水龍くん「そう、そしてそれらの手ががりは・・・古文書!!!」
ミルザくん&オイゲンくん「古文書!!?」
水龍くん「そのいにしえ、マルディアス学園が創設されたばかりの頃に『二つ月のシンボル』のジンクスが流行った。
      そして一人の女学生がその秘密を手に入れマイポエミアン日記にしかと書きとめた。
      しかしその女学生は秘密のダイアリーを隠すため巧妙に表紙の装丁を学術書もどきに見せかけていた!!
      そしてその日が来た。女学生は論文のために大量に借りていた学術書を図書館に返す時、
      間違って自分のポエム日記も一緒に返してしまったのだ!!!」
オイゲンくん「なんなんだその三流悲劇調コントのプロットは!!!」
ミルザくん「僕たち話がさっぱり読めません!!!」
水龍くん「つまり『二つ月のシンボル』の秘密はメルビル寮の名高い図書館の本の中のどれかに記されている!!
      そして私は長い年月をかけてきてその本を突き止めたのだ!!!」
ミルザくん&オイゲンくん「そ、その本は一体!?」
水龍くん「図書館にない」
ミルザくん&オイゲンくん「(ガクッ!!!)馬鹿にしてるんですかあんたはアアァーーーーーーっ!!!
    『二つ月のシンボル』の秘密じゃなくて『二人騎士の神器』の威力を見せたってもいいんですよおおーーーーっ!?」
水龍くん「ま、ま、暴力に訴えるのは男らしくないぞ、ちょ、レフトハンドソードもウコムの矛もちょっとしまえって、
      お前達はまだまだ女心の微妙な揺れを読むような思慮はないようだなーもっと間を見極めたまえ!
      つまり図書館にあるはずなのにないのならこうだ、そもそもこの逸話が作り話であるか、
      だがもう一つあるな、オイゲンお前は図書館から返し忘れた本をすっかり借りパクしたことはないかね」
オイゲンくん「あっ!つまり図書館から借りたままで返した記録のない本!」
水龍くん「理解が早くてよろしい、そして借りた人間の記録から辿っていけばおのずとその本に導かれる」
ミルザくん「借りパクなんてしちゃいけないと思います!本は返済期間までにしっかり返してね!!」
水龍くん「ずれた突っ込みをするなお前は図書委員か。というわけで借りたままだった生徒を辿ると
      その生徒は他の生徒に又貸ししていた、その生徒も又貸ししていた、エンドレスエンドレス、
      終わりがないのが終わりそれが借りパクスパイラル」
オイゲンくん「結構あんたしみじみ言ってるけどなんかあるのか?」
ミルザくん「つまり借りパクスパイラルの中でその本が僕達に回されてくる順番待ちなんですね!」
水龍くん&オイゲンくん「違うわこの重症若年性ボケ!!辿っていけば今持ってる人間がすぐわかるんじゃわい!!」
ミルザくん「あー・・・そうか、つまりその人間がウソ寮にいるんですね」
水龍くん「くっ・・・最後の最後で理解が早いふりされると尚ムカつく・・・!・・・おほん、
      いかにもそのとおりなのだミルザ。さあ納得いったかな?踏み出す準備は?」
ミルザくん「オーケーです!!!」オイゲンくん「はい、はい。行こうぜ」



ウソ寮の中心、寮で一番賑わっているはずながらもこの寮に限ってはうら寂しいような人の少なさです。
水龍くん「あの男だ。もう何ヶ月か前からあそこに立っている」
ミルザくん「あの人・・・ホークさんじゃないか」
水龍くん「ほう知り合いか?」
オイゲンくん「ゲラ=ハも隣にいるじゃないか。何ヶ月か前というとあいつら、あのメルビルの一件から
         すぐにここに来たんじゃないか?」
久しぶり、たくましい海の漢キャプテンホークと海賊達はウソ寮の酒場にたむろしていました。
水龍くん「ちょうどよかった!知り合いならきっと容赦してくれるはずだ!!
      さっ行ってきてくれこの100ジュエル札二枚をおひねりに」
ミルザくん「何か誤解してるんじゃないですか?」
オイゲンくん「その点については俺はそいつを責められないな・・・」
ミルザくん「確かに手に古い本みたいなの持ってるや。三人で行こう」
オイゲンくん「おう。おい四寮長、暴れないでくれ」
水龍くん「いやあああーーーーーーー男はいやーーーーーーーやあらかいねーちゃんじゃなきゃいやーーーーー!!!」
酒場の前でぼうっと立っていたキャプテンホークは気配に気付き、目を上げると
そこにはミルザくんとオイゲンくん、オイゲンくんに引きずられてきた水龍くんの三人がいました。
ホーク「お前らは・・・おおーう!!あの時の!!」
水龍くん「いやーーーーーー「おおーう」のこの響きがたまらなくイャーーーいやーーーおうちに帰してーーーー!!!」
ミルザくん「ちょっと落ち着いてください水龍さん」
オイゲンくん「このおっさんは嫌がってる奴が大好物なんだぜ」
オイゲンくんの言葉に途端に水龍くんは沈静しました。
ホーク「なんなんだ?」
ミルザくん「気にしないで欲しいし知らない方が良いって事あると思うんです。あの、僕達は・・・」
ゲラ=ハ「ミルザさん、オイゲンさん!」
ミルザくん&オイゲンくん「ゲラ=ハ!!」
ミルザくんたちとゲラ=ハは再会の喜びを表しました。
久しぶりだな、お前が海賊になってからなかなか会えないから、などという言葉が飛び交います。
ゲラ=ハ「今日ははるばる騎士団寮から、こんなところまでどうしたのですか?」
ミルザくん「あ、それが・・・僕達、君のキャプテンが持ってる古文書が欲しいんだよ!」
ミルザくんの言葉にゲラ=ハとキャプテンホークは渋い顔をしました。
ホーク「おいおいこれは・・・お前らなんだか知ってるのか?」
ゲラ=ハ「宝探しのための鍵なんて、海賊にしか必要ないものですよ。あなたたちは
      夢見るような冒険の旅より、明日の単位を気にする一般生徒だからです」
オイゲンくん「宝探しの鍵って、いやそれは・・・」
ホーク「一攫千金メディチ家の遺産徳川の埋蔵金!!!」
ゲラ=ハ「幻の青の剣クロスクレイモア前衛のプロテクトスーツ!!!
      私たちの求めるものにはこの古の叡智が必要なのです!!!申し訳ないが、あなたたちには必要があると思えません」
オイゲンくん(・・・・・・なんでこんな大いなる勘違いをされてるんだ?)
ミルザくん(この人たち中身がほとんど思春期の女の子のポエムだと知ったらどんなに・・・あっ)
      「でもそれならどうしてすぐに冒険の旅に出ないの?だってもうその鍵はもってるだろ!?」
ホーク「そりゃ、お前これは伝説の古文書なんだぜ!!ゲッコ達から高い金で売ってもらったもんだ、
     そんなすごいものの中身をすぐ解読できるはずないだろ?ほぼ古代文字なんだ!」
ミルザくん「・・・・・・ええ?
     (古代文字?いやいくら学園創設ごろっていっても言語までさかのぼると思えないんだけど)」
オイゲンくん「・・・・・(いや、よくわからんがこれはチャンスだ)
        だったらちょっとどうです、俺達に少しだけ見せてもらえませんか?
        このミルザは学園有数の秀才で古典はそりゃ好成績だし、この水龍さんにいたっては
        なんと東方の格言にまで通じているお人なんだぜ!もしかしたら、解読できるか、も」
ホーク&ゲラ=ハ「なんと!東方の格言だって!?」
ミルザくん(・・・・・・あのさあ、信じてるの?)
オイゲンくん(ウソとハサミは使いようって本当の格言があるんだよ)
ホーク「それなら・・・もちろんこれは素晴らしい取引だぜ!」
オイゲンくん「はいもちろん!俺達は中身の一部さえわかれば良いんです、ちょっと見せていただいて
        解読できたらそれでよし、あなたたちに解読方法を教えます。
        そしたらこんなところでくだまいてる暇はない!それを持って冒険の海に出ればいいんです」
ホーク「オーゥケーイ!決定だ、お前らに見せるぜ!全く、内容がチンプンカンプンだったんだ」
水龍くん「どれどれ!」
ミルザくん「うわっいきなり力が漲ってますね」
オイゲンくん「・・・・・・・・・・これ・・・は・・・・・・・・」
古文書を一斉に覗き込んだ三人は凍りつきました。
ゲラ=ハ「おお・・・・・!!ミルザさんたちが古代の神秘の前に硬直している・・・!」
ホーク「今目の前で古代のロマンが解き明かされていると思うと・・・!くうっ俺も震えが走っちまうぜ!」
ミルザくん&オイゲンくん(こ、これは・・・・・!)
水龍くん(・・・・・・・・・・・・判読できないのも仕方がないな、思い切り女の子独特のマル字だ)
ミルザくんたちは目の前で生命の誕生を見守るかのような表情をしたホークたちの視線に
冷や汗と脂汗とそれ以外のものをだらだら流していきます。ミルザくんは落ち着いて息を吸い込みました。
ミルザくん「・・・い・・・いづれの御時にか女御、更衣あまたさぶらひたまひける中にいと
       やむごとなき際にはあらぬがすぐれて時めきたまうありけり」
オイゲンくん「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
水龍くん「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ホーク&ゲラ=ハ「おおおっ!!!」
ホークとゲラ=ハは目の色を変えて三人に飛びついてきました。
ゲラ=ハ「すごい!さすがミルザさんです!今の神秘的な発音!なんて素晴らしい!」
ホーク「すげえぜ!本当にこんな謎めいた文字が読めるなんて!一体どういう意味なんだ!?教えてくれよ!」
ミルザくん「え、え〜〜〜とそそれは〜〜〜(やばい適当に言ったけど宝探しに関連した意味なんて・・・)」
水龍くん「・・・こういう意味だ、昔一人の美しい女がいた・・・その女は美しさゆえに
      湖の怪物へのいけにえに選ばれた・・・しかし捧げられた先の怪物は
      それはもう『美男子』で!『優しく気が利き』!『スマートでストイックでちょっぴり照れ屋で』!
      そんな訳でその女はもうメロメロ!ひゃっほういけにえ最高!!と思ったという話・・・」
ミルザくん&オイゲンくん(ガクーーーーーーーーーーーッ!!!)
ホーク&ゲラ=ハ「・・・・・・・・・・・・(呆然)・・・そ、それが宝とどんな関係が」
水龍くん「早まらず聞け!その女は『しかも太っ腹な金持ち』!だったその怪物にいろんな豪華なものを貰った。
      その豪華な宝たちには何より『そんな豪華なものでも出し惜しみせずくれる』!怪物の心がこもっていた、
      だからその女はより大切に思い、ある島に大事にしまっておいた」
ホーク&ゲラ=ハ「おおおおお!!!いきなりロマンの予感が!!!」
水龍くん「次の日その女は階段で滑って頭を打って死んだ」
四人(ガクーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!)
水龍くん「・・・・・・・・で、その女の死体は怪物が丁重に誰も知らないところに葬った。
      だがその女の魂は成仏していない。その女は怪物が自分にくれた豪華な品々を誰も知られず
      海に葬ってしまうのが嫌という未練があるのだ。つまりこの女の魂が縛られた死体の場所を探し当てれば
      その魂は探し当てた者達に自分が隠した財宝の在り処を示すだろうと書いてあるのだーーーー!!!」
ホーク&ゲラ=ハ「な、なんだってーーーーー!!!」
水龍くん「そしてこの女の死体の場所を突き止めるための暗号を解くには!メルビルの図書館で
      勉強中の女学生達に助言を求めよと記されている!!お前達の行く道は決まったのだ!」
ホーク&ゲラ=ハ「(勉強中の女学生?)そ、そうだったのか!!よしそうと決まったら
            出発だお前らーーーーーーーーー!!!」
海賊「オオーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
ときの声を上げ、海賊達はウソ寮をつむじ風のように去っていきました。



ウソの酒場は打って変わってがらんとしてしまいました。
ミルザくん「・・・・・・・・・・・・あの〜水龍さん・・・」
オイゲンくん「・・・見事な虚構だと賞賛したいが一部はなんか事実を捏造した話に感じるんだが・・・
        いやそんなことはどうでも良いがあいつら古文書持ってっちゃったぞ、いいのかよ」
水龍くん「ばかめ、既に求めたものを得たからこそ虫を追い払っただけのこと。
      どうやら『二つ月のシンボル』は一つは愛の神殿に、もう一つはどうやら迷いの森に手がかりが
      あるようだな。そしてもう一つ、そのふたつの終着点は・・・ゲッコ族のジャングルらしい」
ミルザくん「ゲッコ族のジャングル・・・?あ、そういえば前ゲラ=ハに聞いたことがある!
       深いジャングルの奥に不思議なピラミッドがあって、それは月が二つあしらってある・・・」
オイゲンくん「おっと、それだな。ゲラ=ハに聞いたことがあるとは、どうやら俺達には縁があることのようだぜ」
水龍くん「成る程、やはりお前達を連れに選んだ私にもなかなか所縁あるようだな。
      ウソからでは南エスタミル寮もメルビル寮も似た様な距離だ。どっちに先に行く?」
ミルザくん「南エスタミルでしょ!だって最後がワロン寮のジャングルなら南エスタミルから回って
       メルビル寮に行けばその後海路ですぐにワロン寮に行けるよ!」
オイゲンくん「俺はメルビル寮だな」
ミルザくん「えっなんでさ、僕の計算した最短距離にけちつける気?よしいいよどっちが何歩かかるか歩いて測ろうぜ」
オイゲンくん「一人でマルディアス学園の歩き方やってろ。メルビル寮から確かめてもしもなく、
        その後南エスタミル寮にもなければ確実にガセってことだ。騎士団寮への帰りが早くなるだろ」
水龍くん「お前なーまだ私を信じてないのか?」
オイゲンくん「さっき見事な嘘つき振りを見せてもらったんでな」
水龍くん「あれは真実だ!!かなり前モンスター生と人間生の交流会があってその時私のところに
      一人の女の子が来たのだ!」
ミルザくん「えっ!そ、その女の子はさっきの話のように・・・!?」
水龍くん「あの女つーんとお高く止まりやがってしょうがないから手懐かせようとたくわえから
      いくつか宝石をやったんだ!いそいそ受け取っていくからむふふ陥落も近い!とか思ってたのにあの女
      次の日私の神殿が濡れてるからって階段で転んであろうことか頭を打って記憶喪失になった!!
      したらどうだ私のことも覚えてないあげた宝石をどこやったか覚えてない
      私の神殿は人間には危ないから交流会は中止!!っきーーーーー尻も触ってない上宝石まで損した!!」
オイゲンくん「はいはい聞いた俺達が馬鹿だったよ」
ミルザくん「自分の恨み言を綺麗に脚色しちゃうあたり誰かに似てるなあ・・・誰だっけ?」



シェラハちゃん「っくしゅ!・・・誰かが噂をしているのね・・・
          噂と聞くと悲しい話を思い出すわ・・・学園の噂の的だった黒髪の絶世美女の話、
          余りに美しすぎるその姿から目を逸らすために人々はついつい正反対の噂を立てちゃうの。
          男子生徒をもてあそんだ、自殺者百人切り、不幸不幸詐欺、常にポケットに忍ばせたヒップエレキバン」
デスちゃん「世の中真実を見極める人間がいっぱいいてまだまだ捨てたものじゃないな」
サルーインちゃん「つうか常にポケットに忍ばせたヒップエレキバンってのはこっちも初めて知ったな。ふん!(パリン」
そんな優雅な会話も久しぶりの三姉妹。今日も冥部はセレブリティなティータイムです。
デスちゃん「サルーイン、おとなしいのは良いことだが破片をちらかすんじゃない。
        お前に掃除させようと思っても掃除機を持たせれば凶器になるし、
        ほうきを持たせればまたがってスカーブ山の頂上から飛び降りるんだから」
サルーインちゃん「あはあははデス姉!家を綺麗さっぱりしたい時は火の鳥で一掃するという主婦の知恵があるのだ!」
デスちゃん「家全部片付けてどうする!主婦は火の鳥なんか使えんわ!お前がガスコンロを使えないように!」
シェラハちゃん「サルーイン姉さんは最近宝石を壊すのに余念ないのよねえ」
シェラハちゃんの言葉どおり、サルーインちゃんは見るもきらきらしい宝石の山を前にして、
手に掴んでは「ふん!」とばかり粉々にしていきます。
デスちゃん「これにはまってくれたお陰で破壊癖が家具や日用品に及ばなくて何よりだ」
ヘイトちゃん「家具が日用品が壊される十ううぅぅうう万倍かかってるのにィ・・・д」
ストライフちゃん「お前にすら備わっている金銭感覚がこの人たちにはないんだ・・・」
ヘイトちゃん「ダイヤモンドは砕けないなんていったあのヒトはウソツキよぉおおお!!!泣&l☆鬱!!」
ヘイトちゃんとストライフちゃんは呆然と砕かれていく貴重な宝石たちを見ています。
ワイルちゃんはいそいそとその破片を拾って行きます。そのワイルちゃんの肩にはちょこんとスペクターくんが。
スペクターくん「ワイルちゃん一通り砕いて飽きた後に掃除機で片付ければいいじゃないかあ、
      なんでわざわざ手で拾ってるのさ?」
ワイルちゃん「だって破片でも綺麗でしょう?これ使えますよ、この大きさちょうど良いです、
      スペクターくん用のお洋服の装飾に使えばすごく綺麗な晴れ着が出来ますよ!」
スペクターくん「(ガーーーーーーーーーーン!!)ワ、ワイルちゃん!!君って奴ァ!!君って奴ァーーー!!
          こんな僕に宝石!!?宝石!!うおおお一カラット百万するような宝石を
          全身に纏えるなんてこの大きさでなければ不可能!!うおおおーーーー小さいとこんなにも
          自尊心を満たすのが簡単なんだあああ!!!ワイルちゃん、君って天才だよ☆」
ワイルちゃん「・・・・・・・((青筋)作ってやるのやめようかな)っいた!」
ワイルちゃんが咄嗟に手を持ち上げました。宝石の破片で切ったのです。
サルーインちゃん「!大丈夫かワイル?!」
シェラハちゃん「宝石の破片で指を切ったのね・・・悲しいことを思い出すわ・・・
          ガラスの破片で指を切った黒髪の絶世美女の話。指を切った彼女に駆け寄って
          傷口を舐めてくれた男の子がいたの。けれどその男の子は黒髪の絶世美女が
          自らの血に毒を仕込んでいたためにそりゃあもうポックリ」
デスちゃん「何でお前はそんな体張った意味のない無差別殺人してるんだ」
ワイルちゃん「大丈夫ですよこれくらい!ちょっとドジしちゃって・・・ごめんなさいサルーインちゃん!」
サルーインちゃん「おのれえぇぇ宝石め私の可愛い下僕を!!!!!ゴッドハンドだ!!!」
ストライフちゃん&ヘイトちゃん「きゃーーーーーーーーー宝石の山がァーーーーー!!!(泣)」
サルーインちゃんの愛の怒りによって発動したゴットハンドにより、あれだけあった宝石は
見事砂塵と化してしまいました。
サルーインちゃん「あはははははワイル仇は取ったぞ!!!」
デスちゃん「馬鹿もーーーーーん一個ずつやれって姉ちゃんがゆーとるだろうが
        なんでお前は小さな傷に見合った薬を塗ってあげるとか絆創膏を貼ってあげるとか
        ささやかな愛を表現出来んのだ!!」
サルーインちゃん「愛!それはビックバン!!」
デスちゃん「ビックバンは宇宙で起きるのもだ私の部室で起きるものじゃなーーーーい!!!
        あーもうワイル新しい宝石買ってこいまた違うもの壊し始めるから!!!予算は十億ジュエルだ!!!」
ワイルちゃん「わ、私はそういうリッチマンのなわばりは苦手なんですってばァ〜〜〜〜
         私にはスーパーで肉じゃがの用意を買ってるときが一番ほっとする一時なのに〜〜〜(泣」
スペクターくん「ワイルちゃんの平和が壊されていく・・・」
ストライフちゃん「さっきからとんだ世界名作劇場のヒロインだなワイル・・・」
ヘイトちゃん「こんな世界名作劇場なら今頃子供達はみんなヘイトだと思うわん☆」
スペクターくん「あれっワイルちゃんがさっき指を切った破片・・・色が違う」
スペクターくんの言葉に一同は一斉に先程の破片を見ました。
スペクターくん「さっきはダイヤモンドだから、透明だったんですよ」
デスちゃん「赤くなってるな。ワイルの血を吸ってしまったんだな、たまにこういうことはある、
        貴石というのはその希少性により不思議な力を持つものだ」
ストライフちゃん「そんな不思議な力を持ったものをああいうひとのおもちゃにあてがって心は痛みませんか?」
デスちゃん「心が痛いのより生活が不便な方が私は嫌だ」
ヘイトちゃん「みいぃんなーーーーーR2!!お客さんよん招かざる客よん☆★+;@@l」
サルーインちゃん「何だまたエスタミル寮のゴミどもか!」
最近三姉妹の元にはエスタミル寮のウハンジ寮長から使者が訪れるのです。野心家のウハンジ寮長、
何か新しい事業のために学園トップレベルの資産家三姉妹から資金を借りたいということなのでした。
サルーインちゃん「ヘイトやつらの耳元で歌って踊って来い!!」
ヘイトちゃん「いやああぁァァあん遂にヘイトの一人舞台ですのねえぇえ!!!VW
         きっと華麗にデヴューを果たして見せますわアァァああ見守っててねプロデューサー☆Å$!!!」
デスちゃん「あほサルーインこんな近くでヘイトに歌われたんじゃ私達姉妹も明日変死事件でニュースの中だわ!!」
シェラハちゃん「悲しいことを思い出すわ・・・抜け駆けは・・・許されないのよヘイトちゃん・・・」
デスちゃん「あほシェラハハープを持つなハープを!!!お前ら二人に歌われたら絶滅だわ!!ええい部屋に入れろ!!
        もう金輪際来ないようにきっぱり断ってくれるわ、いや逆に金輪際出られなくしてやってもいい」
ワイルちゃん「デ、デスちゃんさま鎌を構えないで下さい鎌を・・・そ、それではお入りください!」
冥部の扉が開かれました。エスタミル寮からの使者は、正装を警備服と兼ねている為にいつも厳しい様子です。
使者「扉を開いてくださって感謝感激です、話を少しはお考えになってくださったのですね」
サルーインちゃん「バカめ扉の向こうがいつも明日への一歩だと思うなよ!ふっ!」
デスちゃん「なにをちょっといい事言った気になってる。ウハンジ寮長の使者よ、
        今日は直接お伝えしよう、私達にあなた方を支援する気はなく―――」
使者「お待ちください、確かに未来の成功を担保に金を借りられるものではありません。
    私達は誠意の証として、これを担保にあなた方からご援助を頂きたく思いまする」
三姉妹&ミニオンズ「―――――――?」
さっと白く上等な絹に包まれたものが差し出されました。使者の手がはらりと絹を払うと、
そこにはかなり見事な腕輪がありました―――――はめ込まれた非常に大きい宝石は、赤い輝きを放っています。
サルーインちゃん「おい!貴様我ら姉妹をなんと心得る!?こーーーんな物お前ら貧乏人の借金を
           一ジュエル単位で数えたって足りないほど私達は持っとんのだボケ!!ゴミ箱にだってつまってるわいあはは」
デスちゃん「これは中々の品だな・・・物の性質はともかくおそらく歴史的な値打ちがある」
シェラハちゃん「まあ驚いたわ、こんなもの博物館以外にもあるのねえ、知らなかったなんてまた不幸が一個」
サルーインちゃん「・・・・・・・歴史なんて壊してやる!!!歴史なんて壊してやる!!!」
ワイルちゃん「さ、サルーインちゃん落ち着いてください、歴史を壊してから家具を壊しましょうよ、ねっ」
使者「おっしゃるとおりでございます。これは南北エスタミル寮が一つだった頃からの秘宝です。
    今は分断されてしまった二つの伝統工芸の極意がここに刻まれております。
    全マルディアス学園内が欲する幻・・・それがこの腕輪なのでございます。
    この宝の中の宝こそ、我らの誠意とあなた方の美貌にふさわしい!特にサルーインさま、
    この赤い輝きがどれ程あなたを際立たせることか!」
サルーインちゃん「うん!?いやあうんお前貧乏人にしては目に入ってるほこりが少ないようだなあははあは」
ストライフちゃん「この人いい気にさせるのって世界で一番簡単なことなんじゃないだろうか」
デスちゃん「そうだなあ、サルーインにいいだろうな。よしいいだろう、お前の親分に金をくれてやろう。
        大した金じゃないし返せなくなられても別に問題ないし」
スペクターくん「何ジュエルなんですか?」
シェラハちゃん「あなたの命の百万個分くらいの値段ね」
スペクターくん「・・・理解できすぎて心が崩壊しそうだ・・・」
ワイルちゃん「あ、あのう〜本当にいいんですかあ?そんなすごい品でもサルーインちゃんにあげたらどうせ・・・」
デスちゃん「だって今サルーインのおもちゃの方が切れてるからなあ。五秒くらい変わりに遊べるだろ」
ワイルちゃん「ぜ、全マルディアス学園中が欲する幻が、ああっ!」
使者「私達の心がご理解いただけたようで嬉しい!ではサルーインさま、どうか契約の証として
    この私めにこれをあなたの腕に通させて下さることをお許しください!!」
サルーインちゃん「はあ?何ぃ?」
使者「男女の結婚ではお互いがお互いに指輪をはめる慣習がございます。同じように、
    エスタミルには成立の証として話を持ちかけたものが、話を受けたものに贈り物を
    自らつけさせて頂くならわしでございます。あなたのご期待に答えます、という意味を持ちます」
デスちゃん「・・・・・聞いたことがなかったが、面白い風習だな」
ヘイトちゃん「置いて行きなさいイイィィィ゛ィ゛ーーーーッ!!!そんな簡単にセレブ三姉妹の
        半径十めいとる内に入れると思ってんのーーーー!!!発動するわよぉオオ!!!@л」
ストライフちゃん「何がだ」
デスちゃん「サルーイン好きにしろ、どうせ腕輪をつけてもらうとしたらお前だし」
使者「ああっけれど私は恐ろしいもしこれほど眩いサルーイン様のお手前にこの私などが行ったら
    太陽に焼かれるがごとく溶けてしまいそうな気がして・・・!」
サルーインちゃん「ようし恐怖に打ち勝って近うよれ!!♪」
ストライフちゃん「この人って・・・」
使者はどこか重げな足取りでサルーインちゃんに近づきました。
サルーインちゃんの手首に美しい腕輪が通されます。
サルーインちゃん「ほーーう・・・」
デスちゃん「似合うなサルーイン、お前は赤が一番だな」
シェラハちゃん「悲しい話を思い出すわ、黒髪の絶世美女に一番似合うのはやっぱり黒なんだけど
          黒い宝石ってもてはやされないの・・・わかってない・・・あいつらわかってないわあ・・・」
ワイルちゃん「サルーインちゃん綺麗ですわ!見て下さいなこの宝石の輝き、
         まるでサルーインちゃんの元、命が芽生えたよう!」
サルーインちゃん「うん?どれ」
サルーインちゃんは赤い宝石を覗き込みました――――――
使者『かかったな間抜けめ!!!』
サルーインちゃん「!?」
突如赤い光が冥部中を照らしました。
デスちゃん「何ッ!?貴様!!」
使者『は、は、は!やりました、そうよくやった!やりました、そうよくやった!
    帰ります、帰っておいで!!』
ストライフちゃん「―――――――待たないか貴様!!」
ストライフちゃんがウインドウカッターを投げつけました。僅かに惜しい、エスタミル警備服が吹っ飛びます。
ワイルちゃん「――――あいつは!!!」
ワイルちゃんが追おうとした刹那、一瞬にして光が部屋に充満し、
三姉妹とミニオンたちは目を開いてることも出来なくなりました。
―――ワイルちゃんが僅かに目を見開けた時、もはやそこにあの使者の姿はありませんでした。
ストライフちゃん「―――――――・・・一体!デスちゃん、この腕輪には一体・・・ああ!」
ヘイトちゃん「サァルウゥゥインちゃあーーーーーーーーん!!!!ヾ」



デスちゃん、シェラハちゃん双方も、ミニオンちゃん達も無事な中、サルーインちゃんは目を閉じて横たわっていました。
ワイルちゃん「サルーインちゃん!サルーインちゃん!!サルーインちゃん、起きてください!!」
シェラハちゃん「取り乱さないで、よくご覧なさいワイルちゃん、姉さんは気を失ってるだけ、無事よ」
デスちゃん「・・・・・・一体なんなんだ」
ストライフちゃん「こっちのセリフでしょう、私達はともかくあんたたち二人、それにサルーインちゃんほど
           魔力のあるものがなんであの腕輪は怪しいって気がつかなかったんです!」
デスちゃん「怪しいと気付く?この腕輪は何も怪しいことなどない」
ヘイトちゃん「ナンですって!+」
シェラハちゃん「さっき見たでしょうワイルちゃんの血を吸い取った宝石を、
          あのように古くいわくある貴金属という物には力が宿って当然なの。価値があれば価値があるほど
          力なんて宿っているのが普通のことなのよ」
デスちゃん「これほどのものならさっき位の光を宿らせていてもおかしくはない」
ワイルちゃん「でもサルーインちゃんがこうして倒れているのですよ!」
デスちゃん「確かに・・・宿っていたものがいきなり開放されるというのもおかしいが、
        あの光はなんら邪悪なものはない。むしろ聖なるもの、無害だな」
スペクターくん「聖なるものがこの人に無害ですって?」
デスちゃん「・・・・・・・精神はともかく体に影響は全くないはず。サルーインは心配ないはずだが・・・
        しかしさっきの下郎はなんだ?意味深なことを捨て置きおって」
シェラハちゃん「どうもあの男はおかしかったわ、最後の方、まるで声が重なったような・・・
          違うわね、片方の腕からもう一つ気配がしたような」
ワイルちゃん「・・・あ、あのさっきの男、私知ってます」
全員が一斉にワイルちゃんを見ました。床の透明な破片がきらりと光りました。
ワイルちゃん「マックスという男です」


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