第14話「彼女達のお仕事」

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サンゴ海。
朝日に輝き、無数のサンゴに虹色に彩られるその様は、まさに楽園といえましょう。
しかし、そこは海賊の楽園でもあります。
学園からはじき出された無数の暴徒が海を荒らしまわり、
商船から略奪の限りを繰り返します。
そして、今日もまたサンゴ海の傍らで、略奪の限りを尽くす海賊の姿がありました。
「ひー!命ばかりはー!」
「命までは取らねえよ。よーし、引き上げだ!」

サンゴ海をはさむ岩の山の、蛇のようにうねる空洞を抜けた先に、
彼ら海賊の本拠地であり、恐らく彼らしか知らないであろう隠れ港、『パイレーツコースト』が存在するのです。
そこで海賊達は船を整備し、歌を歌い、宴を開き、
彼らは彼らなりの学園生活を楽しんでいるのです。
そして、ごく最近彼らの間に妙な噂が立っているというのです。

朝日に輝き羽ばたくその影。
鳥とは見間違うはずのないほどの巨大で雄大なその影。
目撃していないものは無論信じず、目撃した者でさえ自分の目に半信半疑で、
噂は実体を形取らないまま、ただパイレーツコーストを漂っていました。

学園の各地には『竜の巣』という洞穴があり、そこにはあの幻の生物、ドラゴンが住んでいるといわれます。

サンゴ海を囲む岩山の頂上に人間何十人分がゆうに入るそれは大きな空洞があるといいます。
雲から朝日が顔を覗かせるその時、それは空洞より姿を現すといいます。
そしてそれは、銀鱗を煌かせ、何よりも大きな翼をはためかせ・・・
遥か上空より憂いの目で宴を開く人間達の様子を見ている、といいます。

そして、その生物は伝説上の『ドラゴン』と寸分違わぬ姿である、いいます――



マルディアス学園北部には、広大な乾燥地帯が広がっています。
魅力の欠片もないその乾ききった風景には全く見合わぬ3人の美女が、話し合いしながら歩いていました。
アルドラ「しかし・・・ドラゴンなんてどうやって見つけるんだ?ジュエルでどうにかなる問題じゃなさそうだぞ。」
ディアナ「学園のどこか、となると規模は相当広いわ。これは大分骨が折れそうね・・・」
アディリス「ん〜〜、確かにそうだね〜。・・・あ、そうだ!!こういう時のための秘密兵器があるのよ!!」
アディリスちゃんは明るくそう言うと、黒いズボンのポケットをまさぐり始めました。
アルドラ「お、秘密兵器だって!?」
ディアナ「さすがアディリスさん!頼りになるぅ〜。」
二人の期待の目の中、アディリスちゃんはその秘密兵器を取り出しました!

アディリス「はい、ドラゴンレーダー!!(ぴしゅこあ〜!)
    これで全国に散らばったドラゴンボールの居場所も丸分かりよ!!」

し〜ん・・・
ただでさえ乾ききったこの辺り一帯に、更に乾いた空気が流れてゆきます。
アルドラ「・・・あのー、大変失礼なんですがふざけるのは止めませんか?」
ディアナ「そういう事ばっかしてるとバチが当たるわよ?」
アディリス「にひひ。いいじゃないのぉ〜二人とも!場を盛り上げようしただけ♪」
ディアナ(・・・・・・アディリスったら、やっぱおバカさんね。)
アルドラ(ああ。というか確実に空気を読めてないな。)
アディリス「は〜い、そこのお二人さんコソコソ話はそろそろV−ENDにしてね〜。
   んなことよりも、ちゃんとお姉さん考えたわ!聞いて聞いて!」
アルドラ「はいはい。」
ディアナ「はいはい。」
ほとんど期待のこもってない声に半ば怒りながらアディリスちゃんは言いました。
アディリス「ドラゴンがエロールちゃんの言ったとおり飛び回っているんだったら、
    どこかで新聞沙汰になってもおかしくないでしょ?
    なのにそんな感じのニュース最近一度も耳にした事無いわ。これ、どう思う?」
アルドラとディアナはハッとしました。
確かに、ドラゴンの事なんて学園内では全く話題になっていません。
アディリス「誰か一人が目撃すれば、その話はどんどん広まっていき、無論新聞部の方にも話が回っていくはずだわ。
    それが、そんな様子は全くない。なら、どこか人目につかないような場所、
    あるいは人目についても大衆には伝わらないようなところを飛んでいるのかもね。」
アルドラ「大衆には伝わらないようなところ・・・フロンティアの辺りか!?」
アディリス「そう!さすがアルドラちゃんだね〜。」
ディアナ「よし、じゃあそうと決まったらちょっと遠いけど・・・フロンティアに行きましょうか!」
アディリス「え〜?ダメダメ。船乗ったり雪原通ったりするでしょ〜?
    お姉さん爬虫類だから寒いの嫌いだし、船とかに酔いやすいからそーゆーのカンベンだわー。」
アルドラ「はぁ?でも、そこ経由しないとフロンティアの方までは行けないわよ?どうするの?」
アディリス「にひひ・・・」
アディリスちゃんは不適に微笑み、言いました。

アディリス「山登りでもする?」



サルーインちゃん「あ〜あ〜、最近暇で暇で暇で暇で仕方ないぞ。もっとシゲキ的なことは無いの!?」
ストライフちゃん「アサシンギルドやクリスタルナイトで散々怪我しておいてそれか。相変わらず元気だな。」
シェラハちゃん「元気というと・・・嬉しい話を思い出すわ!!」
ストライフちゃん・サルーインちゃん「えっ!?」
シェラハちゃん「最近はやりのイメージングチェンジングって奴よ。どう?」
ストライフちゃん「どう?・・・って言われても・・・その、言葉間違ってるとしか。」
サルーインちゃん「どれ、話してみよ。」
シェラハちゃん「元気だけが取り柄だった男の話・・・
      あまりに元気過ぎたために雑巾をしぼった時に勢いあまって腕を複雑骨折させてしまったの。」
サルーインちゃん・ストライフちゃん「もろ悲しい話じゃねえかよ!!」
シェラハちゃん「・・・その骨折が原因で男は死んだ。
      けど、当時その男にいじめられていた女の子は、涙を流して喜んだの。」
ストライフちゃん「いやいやいや、確かにそいつにとっては嬉しいかもしれないけどな」
ヘイトちゃん・ワイルちゃん「じゃんけんぽん!!」
スペクターくん「ぽん!」

今日もサルーインちゃんご一行はいつもの部屋で優雅で豪華で美しいアフタヌーンティーを送っています。
はてさて、今日はどんな話し合いをしているのかな?

シェラハちゃん「どうだった?どう?どう?こっちまで明るい気分になれない?」
サルーインちゃん「・・・悪いが、私の正しい脳味噌では到底暗い気分以外の感情を沸き起こす事はできん。」
ストライフちゃん「嬉しい話はあなたには無理ですよ。これからもとりあえず悲しい話だけで突き進んでください。」
シェラハちゃん「え〜?って事はイメンジングチェンジングなんかやっぱしなくていいって事ね・・・分かったわ・・・」
ストライフちゃん「・・・とりあえずその語弊を何とかしませんか?」
サルーインちゃん「アハアハハハ、シェラハは世間を知らんからな!
         ホラ、私のようにもっとオープンな女になりなさい!?」
シェラハちゃん「・・・・・・遠慮しておくわ。」
ヘイトちゃん「そりゃあぁぁ〜そうよねぇへェェぇぇ〜〜ん♪!◎■!!
     シェラハさんまでサルーインちゃんみたいになったら
     とりあえず世界は破滅ねん!!は・め・つ!!♪■a^^ 」
ヘイトちゃんが大声でそう言うと、サルーインちゃんの笑いが瞬時に止まり、邪神の形相へと変化しました。
サルーインちゃん「・・・・・・・・・・・・覚悟はいいかしら?」
ヘイトちゃん「・・・・・・・・・・・・前言撤回ですわお姉さま。」

スペクターくん「まぁ、でも確かにサルーインちゃんみたいな女の子を世に増やしてはならないと思うね、私は。」
サルーインちゃん「貴様は黙るがよい!!」
スペクターくん「あへぁふぅぅ・・・っ!!」
ワイルちゃん「あーっ、スペクターくーん」
サルーインちゃんの一声にスペクターくんは更にちじこんでしまいました。
サルーインちゃん「アハアハハ、
        まぁ確かにシェラハが私と同じになったらバランス的にちょっと悪くなるかもな!アハアハハハ、」
ストライフちゃん「アンタホントにバランスとか意識してんのかよ!」
サルーインちゃん「モチのロンよ!やっぱバランスにはこだわらんとな。
        私のこの女神のような体系とこの場のこの最高の雰囲気は
        全て私のバランス至上主義より出来上がっているのだぞ。
        まぁ、最近はストライフと今はいないがデスのキャラがかぶり気味になってきているがな!アハアハハハ」
ストライフちゃん「・・・なんか全て自分のおかげみたいな言い方をしているが。」
ヘイトちゃん「別に最高の雰囲気って訳でもないわよねぇぇ@;、、・。」
ワイルちゃん「わ、私はこの雰囲気好きですよ?」
サルーインちゃん「うるせぇぇぇ!!黙れこの下僕どもがぁぁぁ!!!!って下僕といえば!!おい、ワイル!」
ワイルちゃん「あっ!はいはい、何ですかー?」
サルーインちゃん「お前、ずっと前下僕も一人増えたとかなんかぬかしてなかったか?」
ワイルちゃん「あー、そうそう!よく覚えてくれましたねサルーインちゃん!そんなさりげない所がワイル大す・・・」
ストライフちゃん「お前もついに色で男をゲットする事を覚えたか。」
ストライフちゃんが半笑いのまま小ばかにするように言いました。
ワイルちゃん「なっ!ん何言ってるんですか!」
ヘイトちゃん「んもぉぉううゥゥぅぅ!!★◆!
    ワイルちゃんったらしばらく見ないうちに立派でラッパな淫女になっちゃってぇぇへぇぇ!⇒!m9(^Д^) ▲!」
ワイルちゃん「ち、違うって言ってるでしょー!」
シェラハちゃん「淫女というと悲しい話を思い出すわ・・・
     裏ではとても淫乱不埒なのに表ではひたすらそれを隠している見苦しい女の子の話・・・」
ワイルちゃん「違いますっつーの!私は一生処女を守り通します!
      ・・・で、何の話でしたっけ!?」

・・・・・・・・・

部屋の中がしんと静まり返り、みな変な目でワイルちゃんを見ていました。
突然の冷たい反応にきょろきょろとみんなを見回すワイルちゃん。
ワイルちゃん「ちょ、ちょっと、みなさんどうしたんですか?」
みんなは半分冷ややかに半分笑いながら言い出しました。
ヘイトちゃん「まさかワイルちゃぁんがそんな卑猥な言葉使うなんてへェェェ・・・○rLいきましょスペクターくん。」
ストライフ「どこでそんな言葉覚えたんだ?青瓢箪のインテリ娘のくせに・・・ぷぷっ」
シェラハちゃん「卑猥というと悲しい話を思い出すわ・・・でも今日はいいや。」
笑いをこらえながら三人はぞろぞろ部屋を出て行きました。
ワイルちゃん「なっなっ!なんでそんな冷たいんですかみなさ〜ん!私そんなまずい事言いましたぁ!?」
うろたえるワイルちゃんに、立ち上がったサルーインちゃんは、半笑いのままワイルちゃんに耳打ちしました。

ワイルちゃん「―――っっ!?――???!!!!」

ワイルちゃんの顔が爆発したようにボンッと赤くなりました。
サルーインちゃん「アハアハハハ!よく意味も知らない単語のくせに背伸びして使おうとするからだ!
         アハアハハハアハハハハハ!!」
ワイルちゃん「きゃーーーーーーー!!はず、はず、はずかしーーー!!サルーインちゃん助けてーー!!」
サルーインちゃん「よるな変態♪」
こうして今回のサルーインちゃん一行のティータイムは幕を閉じました。



”えーーっ!?あなたバファル舎の舎長とお知り合いなんですかぁ!?”
”ええ。知り合いというより・・・舎長の妹さんとお付き合いしてましてローバーン寮の代表を”
”えー?もうお付き合いしてる子がいるのにサルーインちゃんの事を狙ってたんですか?”
”いえいえ、それとこれはまた別の事でして”
”まぁ、いいです。とにかくサルーインちゃんのために、そして私のために色々頑張ってください!”
”頑張るって・・・何をですか?”
”それはあなたにまかせますよぉー。期待してますよ!では、また!ばいばーい♪”
”・・・・・・・・・”

貿易、商業の発展、邪魔者の排除。
バファルの発展はオレのプランの一部分だ。
いずれ舎長は定年退職を迎える。
その時までに奴に媚を売って媚を売って媚を売って媚を売って
至高の糸石、”風のオパール”はオレが手に入れる!!
オレのために・・・ワイルちゃんのために!

コルネリオ「・・・というわけです。外交を途絶えさせぬためには、海賊の討伐は最優先に行うべき。
     どうか、この私に海賊討伐部の指揮をお命じください!」
ここはバファル舎、メルビル寮の中心にあるエリザベス宮殿の舎長室。
フェル(現バファル舎舎長)「コルネリオは常にバファルの事を考えてくれているのだな。
              よろしい。海賊討伐部の全権利を、そなたに預けよう。」
コルネリオ「これはこれは、ありがたき幸せ。このコルネリオ。全力で海賊を討伐すると約束しましょう!
     ・・・ああ、それと奇妙な噂を耳にしましてね。」
フェル「何かね?」

コルネリオ「最近サンゴ海の辺りに『ドラゴン』が現れるらしいです。」

フェル「ドラゴン!?」
フェルは、驚きのあまり椅子から飛び上がりました。
周りにいる何人かの先生や、バファル舎格寮の代表も、驚きを隠せない目でコルネリオを見つめます。
コルネリオ「ドラゴンは代々学園に伝わる幻の生物。その希少価値は大変高く、
    そして、その鱗は何よりも固く、武器や防具の最高の素材となると聞きます。
    海賊討伐の土産に、ドラゴンをここに持ってくる事を約束しましょう!」
フェルの顔が、みるみる笑みに変わってゆきます。
フェル「お、おお!コルネリオ!分かった。期待して待っておるぞ!」
コルネリオ「大船に乗った気分でいて下さい。・・・では。」
???「コルネリオ!」
部屋を出て公としたコルネリオに、フェル親衛部の部長、ネビルが声をかけました。
コルネリオ「何の用かな?」
ネビル「竜の噂はどこから手に入れたのですか?そんな噂、私は耳にした事がありませんがね。」
コルネリオ「私の情報網は広いからな。それがなにか問題でもあるというのかね?」
ネビル「・・・・・・」
コルネリオ「見苦しいぞネビル。」

舎長室の紅い絨毯を踏みしめ、部屋を出て行くコルネリオ。
その顔は、果て無き野心に満ちていました。


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