第14話「彼女達のお仕事」

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   6

――現時刻、メルビル広場

そこには十人と一匹の集団がいました。
パトリック「始めまして。私財務大臣のパトリックと申します。
あなた方はニーサ様の声が直接聞こえたそうですね?」
ミルザくん「はい。頭の中に響いてきました」
パトリック「それはあなた方が強い力を持っている証です。
・・・あなた方に頼みがあります。メルビルに突如現れたモンスター及び、
それを生み出している黒いもやを何とかしていただきたい」
オイゲンくん「何とかって・・具体的にどうすればいいんだ?」
パトリック「私どもにもわかりかねます」
グレイ「自分達で何とかしろと言うことか」
ジャミルくん「結構な難問だな、こりゃあ」
ゴホン、と咳払いしたパトリックは話を切り替えました。
パトリック「黒いもやは、エリザベス宮殿一、二階、市街地、下水に発生しています。
皆さんには各個にそれに当たっていただくことになります。
なお、エリザベス宮殿一階は生徒会長殿とネビルが担当しておられます」
ジャミルくん「俺達はエリザベス宮殿に行こうぜ!」
オイゲンくん「まぁ反対する理由も無いし、いいんじゃないか?」
ミルザくん「僕も賛成だ」

エリスちゃん「私は市街地がいいわ。あの女から一番離れているし」
クローディアちゃん「異論は無いわ」
アル「俺もだ」
ジャン「オォゥケェイ、じゃぁぁ急ぎましょぉう!」

グレイ「俺達は下水か」
ミリアムちゃん「地味な場所ねぇ」
ガラハド「残り物には福があるというぞ」

各チームごとに担当場所が決まるとすぐさま散っていきました。
と思ったら、パトリックの足元に不思議な格好をした猫が歩み寄ってきました。
アル「時に髭の御仁」
パトリック「何でしょうか?猫殿」
アル「海賊と龍はどこにいるのか教えてもらえまいか」
パトリック「ああ、海賊と龍は港から船で出て行ったそうです」
アル「・・・・そうか」
こころなし肩を落としてアルはエリスちゃんたちの跡を追いました。
パトリック「海賊と龍、ヒーロー、更にはしゃべる猫ですか。
今日は本当に変わった事の起こる日ですね」
パトリックは自慢の髭を指先で弄んだ後、エロールちゃんたちの援護に向かいました。



――サンゴ海

その美しく、穏やかな波間を二隻の船が疾走しています。
ブッチャー「どうしたホーーーーーーーーーク!そんなトロイ船で追いつけると思ってんのか?」
『シーデビル』の甲板上からブッチャーが嘲笑します。
海賊A「野郎調子に乗りやがって!」
ゲラ=ハ「キャプテン、彼我の速度差が大きすぎます。このままではいつまでたっても追いつけません。
奴が本格的に攻撃を開始したらこちらの勝利は難しくなります」
ホーク「んなこたぁわかってる。副長がオタオタすんじゃねぇ!奴らの士気が落ちる」
ゲラ=ハ「すみませんキャプテン」
ホーク「なぁに心配するな。手はある」
にやりと笑ってホークは部下に伝えました。
ホーク「横部16門速射砲一斉射だ!奴らにぶち込んでやれ!」
海賊B「アイサー!」
ゲラ=ハは耳を疑いました。
(馬鹿な・・当たるわけがない。それどころか背後を取られてしまう!)
ゲラ=ハ「キャプテン!お言葉ですが・・・」
ホーク「黙ってついて来い。俺は『キャプテン』だぞ?」
ゲラ=ハ「はい」
ホークの瞳に確固たる意思があることにゲラ=ハは気付きました。
(あれは自棄になっている者の目ではない。勝利を確信している者の目だ)
ブッチャー「お?」
突如旋回し、横っ腹を見せ、砲門を向け始めた軍艦を見て、ブッチャーは訝しげな声をあげました。
ブッチャー「・・大砲だと?んなもん当たるわきゃぁねぇだろうが!・・がっかりさせやがる」
ホーク「よっしゃー!撃てぇー!」
備え付けられた砲門から圧倒的な破壊力が発射されますが、
海面を縫うように移動する『シーデビル』にはかすりもしません。
ブッチャー「野郎のケツを取れ!背後からぶっ放してやる!」
高速で旋回した『シーデビル』は軍艦の背後を取りに行きます。
それに対して軍艦も旋回を開始します。
ブッチャー「いまさら遅ぇんだよ!玉ぁ込めろ!蜂の巣にし,がぁ!!」
突如『シーデビル』を激震が襲いました。

ブッチャー「なにがあった!」
親衛隊A「座礁でさぁ!砂に完璧に乗りあげっちまってやがる」
ブッチャー「こんな海の真中でだと!ホーク!嵌めやがったな!」
海賊C「『シーデビル』の動きが止まりやした!」
ホーク「よ〜し、それでこそ俺の庭まで鬼ごっこに付き合ってやった甲斐があるってもんだ!」
ゲラ=ハ「感服しました。さすがです、キャプテン」
ホーク「まぁな。さぁ野郎共!タコ野郎がケツの穴を向けてお待ちだ!
一生忘れられねぇくらいぶっといのをぶち込んでやるぞ!」

海賊達『 『 『   応!!! 』 』 』



――サンゴ海、上空

ディアナちゃん「・・・下品ですね」
少し顔を赤くしたディアナちゃんが感想を述べました。
アディリスちゃん「そうかしら?飾らないエロスが素敵だわ〜♪」



親衛隊A「背後を取られちまいました!」
悲鳴に近い声で告げます。
ブッチャー「んなこたぁ見りゃわかる!まだ抜けられねぇのか!」
親衛隊B「砂地じゃ砕くことも出来ねぇ!どうしようもないっすよ!」
ブッチャー「くそったれがぁ!」
再び『シーデビル』に激震が襲い掛かりました。
軍艦に備え付けられた大型衝角が『シーデビル』を貫いたのです。
ホーク「野郎共!白兵戦の準備は出来てるな?迎撃しろ!」
海賊達『 『 『うおおおおおおおおおおお!!』 』 』
ブッチャー「てめぇら!俺達にゃもう船はねぇ!
生き延びるにはあいつらを皆殺しにして船を奪うしかねぇ!行くぞ!!」
親衛隊『 『 『おおおおおおおおお〜〜〜』 』 』

こうして戦いは幕を開けましたが、親衛隊は士気低く、投降する者まで出るほどでした。
戦いは終始ホーク側有利で進められ、ついにはブッチャーただ一人になってしまいました。
ホーク「後はてめぇだけだ。タイマンでケリを着けてやるぜ!」
ブッチャー「てめぇだけはブチ殺してやる!」
ホークは浅瀬に完全に乗り上げた『シーデビル』に飛び移りました。
その瞬間、船の内部から氷の悪魔、『アイス・デビル』が飛び出しました。
アイス・デビルは岩獣拳で衝角を叩き折り、『シーデビル』と軍艦を切り離しました。
ゲラ=ハ「キャプテン!」
軍艦からゲラ=ハが悲痛な声をあげます。
ホーク「ブッチャー、てめぇどこまで汚ねぇ野郎なんだ!」
ブッチャー「おいおい、人聞きの悪い事言うんじゃねぇよ。
こいつはてめぇが船をぶっ壊したから出て来たんだ。
でもって、どうやらこいつはてめぇのことが嫌いらしい。
残念だが俺にゃあとめられねぇなぁ?」
ブッチャーとアイス・デビルがホークに襲い掛かりました。



――サンゴ海、上空

シルバー「見ちゃいられない!助けないと!」
アディリスちゃん「まぁまぁ、あんたが行ったら船が壊れちゃうよ。
ここはおねぇさんにまっかせなさ〜い。
アルカイザー!セルフバーニングよ!」
アルドラちゃん「え?なんで?」
アディリスちゃん「いいから、いいから〜。アディを信じて〜」
不可解に思いつつも炎をその身に纏います。
その横でアディリスちゃんがいそいそと耐火手袋をはめています。
アディリスちゃん「よっし!行くわよアルカイザー!」
アルドラちゃん「え、な、何?うわ!」
アディリスちゃんはアルドラちゃんの足首を掴むとそのまま振り回し始めました。
アディリスちゃん「いっけぇぇぇぇぇぇぇ!『アル・フェニックス』!!」
アルドラちゃん「う、うそだろおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ・・・・」
遠心力による加速で弾丸のような速度でアルドラちゃんは射出されました。
アディリスちゃん「アルカイザーの正義の怒りが頂点に達したとき、全身に炎を纏い突撃する必殺技の使用が可能になる。
これを・・・『アル・フェニックス』と言う!」
タイニィ「必殺技のわりには随分と受動的だったな」
ディアナちゃん「アルドラは大丈夫なのですか?」
アディリスちゃん「大丈夫。
アルカイザースーツは鈍獣に踏まれても壊れない伸縮性と強度を持ってるわ」
タイニィ「中身は?」
アディリスちゃん「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・彼女は強い子よ」
ディアナちゃん「アルドラーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」
シルバー「お前ら海賊以上に無茶な奴らだな・・・」
呆れたようにシルバーは呟きました。



――シーデビル甲板

ブッチャーとアイス・デビルの波状攻撃により、ホークは防戦一方になっていました。
ブッチャー「どうした〜ホ〜ク?後がないぜぇ」
その時上空から何か聞こえてきました。
アルカイザー「・・・・・・・・・ぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおお!!!!!」
ドゴン!!
寸分たがわずアイス・デビルに突っ込み、一撃で粉砕しました。
アルカイザーはそのまま甲板にめり込んで暫くピクリともしませんでした。
ホーク・ブッチャー「な、なんだぁ?!」
その声に反応したのかアルカイザーは頭を引き抜きました。
アルドラちゃん「一対一の勝負に伏兵を仕込むような卑怯な真似は私が許さん!!」
能にダメージがあるのか千鳥足になりつつもビシ!っと指を突きつけます。
しかしそれが限界だったのかそのまま倒れ伏しました。
アルドラちゃん「うう・・後よろしく・・・」
ホーク「なんだかよくわからんが助かったぜ!!」
ホークは斧を構えてブッチャーの突撃しました。
ブッチャー「何度も邪魔しやがって・・てめぇなんざ俺一人で十分だぜ!」
ブッチャーもそれに応戦します。
打ち合いが続くと徐々にブッチャーは圧倒されていきました。
ブッチャー「てめぇなんかに、てめぇなんかに!!」
ホーク「セコイ手しか使えねぇ奴が俺に勝てるかよ!」
振り向き様に旋回撃を放ち、斧を粉砕し、ブッチャーを吹き飛ばしました。
ブッチャー「ぐわぁぁぁ!!」
ブッチャーはそのまま海に投げ出されました。

ブッチャー「くそ!!」
海面から顔を出し毒づくブッチャーに縄付浮き輪が投げられました。
ホーク「バファルに突き出されるか、死ぬか。好きな方を選びな」
ブッチャー「どこまでも甘ぇやつだ。だがな」
ブッチャーは縄を断ち切りました。
ブッチャー「俺はてめぇが大嫌いなんだよ」
ホーク「そうかい。そいつは残念だ。オイ!お前ら!」
ようやくシーデビルに渡り着いた部下の海賊達が弓を構えました。
ホーク「やれ」
無数の矢が放たれました。
ブッチャー「く!」
慌てて潜りましたが体のいたるところに矢傷を負ってしまいました。
ゲラ=ハ「死んだでしょうか?」
ホーク「さぁな。生きててもあの出血じゃあ長くはねぇよ」
(仇は討ったぜ、レイディ)
ホーク「よーっし!凱旋だメルビルに帰るぜぇ!」
海賊達『 『 『おおおおおおおおおおおおおお!!』 』 』



ディアナちゃん「アルドラ大丈夫!」
アルドラちゃん「う〜ん」
タイニィ「生きてるようだな」
アディリスちゃん「ね、彼女は強いって言ったでしょ?」
ディアナちゃん「・・・ちゃんと彼女に謝ってくださいね」
怒りを込めた眼差しをアディリスちゃんに向けました。
アディリスちゃん「は〜〜い」
デイアナちゃんはシルバーに向き直りました。
ディアナちゃん「シルバードラゴンさん、お話があるのですが聞いていただけませんか?」
シルバー「話?わたしにかい?」
ディアナちゃん「ええ、実は―――」



――サンゴ海、海中

ブッチャーは海中でもがいていました。
(くそ!海賊が溺れるなんて笑い話にもなりゃしねぇ)
必死に泳ごうとしますが手傷を負った体は鉛のように重く、思うように動きません。
(くそ・・・・・・・・ったれ・・・・・・がぁ)
意識を失う寸前、ブッチャーの目の前を何かが横切りました。

(・・・・・・・人・・・・・・・・・魚・・・・・・?)

それきり彼の意識は途絶えました。


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