第14話「彼女達のお仕事」

TOP / MENU / 1 / 2 / 3 / 4 / 5 / 6 / 7 / 8



   3

ここで、話は少しだけさかのぼります。



【飛竜月 10日:サンゴ海上空】

その竜は、遥か空より、海を見下ろしていました。
人間に興味を持っていた竜は、自分の姿を隠しながらも、人間を見ていたいと考えていました。
そんな竜にとっては、一般の生徒が訪れないパイレーツコーストは、恰好の観察場所でした。
いつも観察していたためか、その竜は、海賊部の生徒たちに特に親しみを感じていました。
海賊行為というものは誉められたものではありませんが、
それは人間にとってのモラルであり、竜にとってはあまり関係のないことでした。
だから、その竜は海賊達の馬鹿騒ぎを見るたびに、とても羨ましくなるのでした。

なので、海賊部の人間がバファル寮にとっ捕まり、懲罰房送りになった話を聞くたび、
竜はとてもやるせない気持ちになります。海賊に親しみを感じている、という理由もありますが、
それ以上にバファル寮に対して、個人的に恨みのような感情があったからです。
・・・その恨みは、もともとは、生徒会長エロールちゃんに対して向けられていたのですが。
坊主憎けりゃ何とやら。
エロールちゃんに対して何かと縁が深く、エロールちゃんの支持率が最も高い
バファルエリアに対しても向けらるようになっていました。

もっとも、それでバファルに対して何かしかけるというでもなく、
その竜は過ごしています。暴れたところで何も意味が無いと考えているのでしょう。

そんな竜の胸のあたりには、輝く宝石がありました。

さて、人好きのする竜は、今日もパイレーツコーストを覗き見ます。
その竜は、最近はパイレーツコーストの状況に、少し心を痛めていました。

内部分裂が、目に見える形で起こっていたからです。

表立って抗争こそ起こしておりませんが、その2派は明らかに相手を快く思っておらず、
いつ爆発するともわからない不発弾のような状況に陥っていました。
竜は、片方の派の人間に対しては特に親しみを覚え、
もう一方の派に対しては、パイレーツコーストの人間でありながらも、嫌悪を不快感を感じていました。
片一方のリーダー格の生徒は、熱血で仲間思い、無駄に人を傷つけることはせず、
さらに最近、ゲッコ族の若者を仲間に迎え入れ、仲良くやっていました。
竜が初めてその光景を見たときは、とても驚いたものです。
と、同時に、自分も彼らと一緒に冒険をできる日がくるかなぁ、と夢見るようになりました。
いずれは人間に、という昔抱いた夢を再び思い起こすようになったのです。

もう一方のリーダー格は、残酷、卑劣、自分以外は仲間ですら道具としか思っていませんでした。
力はありますが、人間としては最低の部類に入るヤツでした。

あの熱血漢がリーダーになれば皆幸せだろうに、なんでそんな単純なことに気づかないんだろう。
竜は疑問を胸に、今日もまたパイレーツコーストを観察するのでした。



【飛竜月10日:パイレーツコースト】

「なんだ?文句あんのかよお前は?」
「あぁ。気にくわねぇなぁ。そんな爬虫類を持ち込んでいるのがな。」

集会所にて対峙する2人の男。その周囲を、日に焼けた海の男達が遠巻きに取り囲んでいます。
囲んでいる男達は、屈強な体に似合わず、迷いと惑いの表情を浮かべていました。

その対峙している男たち。
黒い長髪と長い髭を生やし、背の高い男と、
白い長髪を生やし、背は高くはないが、堅くみっしりとした重そうな体つきの男。
黒髪の男は「キャプテン・ホーク」という通り名で。
白髪の男は「キャプテン・ブッチャー」という通り名で知られていました。

ホーク「んだと?うちの副長に向かって舐めたセリフぬかしゃあがって!
     ・・・へっ。ゲラハはなぁ。有能だし、いいヤツだ。
     お前なんぞよりもよっぽど『人間』ができてるぜブッチャー。
     お前はさっさと猿に戻れよ。お山の大将気取りたいんだろ?」
ブッチャー「るせえ!!だいたいテメェは気にいらねぇんだよ!
       無駄に残酷な事はしねぇ、なんてクソ甘ぇこと言ってやがったり、
       商船に乗ってたガキになつかれたとか言って、ガキに冒険の話をしてやった上、結局何も取らずに帰ったり、
       おまけに、どっから来たともしれねぇ爬虫類の話を聞いて、
       船に乗せただけでなく、人間並みに副長にさせるだぁ?ハッ!反吐が出るぜ!」
ゲラハ「(どう聞いてもうちのキャプテンに非難されるいわれは無いと思うんですがねー)」
ブッチャー「ともかくだ!!ただでさえバファルの締め付けがキツクなってるのに、
       テメェみてーに好き勝手されちゃ統率がとれねぇだろうが!!
       ここは俺が仕切る。俺に従えホーク!!」
ホーク「お前がリーダーだぁ?ハッ!正気の沙汰じゃねぇな。
     誰も言わねぇようだから俺が言ってやろう。お前にはそんな資格はねぇ。
     お前はただ恐怖と力で押さえ込んでるだけだろうがブッチャー!
     お前は海賊ってモンを全くわかってねぇ!いいか?海賊ってなぁ誇り高い海の漢なんだ!
     お前のやってることは、単なる外道なんだよ!海賊なんてもんじゃねぇ!ただのゲス野郎だ!
     俺は海賊を、そんなモンに貶める気はサラサラ無ぇんでな。」
ブッチャー「・・・そうかい。交渉は決裂ってヤツだな。
       テメェとは一度はっきりと決着つけなきゃなんねぇようだな・・・」
ホーク「珍しいな。俺もそう思っていた所だ。お前とモメんのもいいかげん飽きたとこだ。
     そろそろ、ケリつけようや。」
ブッチャー「・・・上等だ。テメェのレイディラックと俺のシーデビル、サシの勝負だ。
       人員は、それぞれの船に初期からいるメンツだけだ。
       場所はサンゴ海!今から5日後の正午だ!文句はねぇな?」
ホーク「あぁ。それまでに今までの生き様を反省しておくんだな。行くぞゲラハ!」

ホークがゲラハくんを連れて集会所を出たのを皮切りに、海賊達がぞろぞろと出て行きました。
そして残ったのはブッチャーと、その側近。
ブッチャー「おう。コルネリオの野郎に知らせとけ。
       飛竜月15日、正午。サンゴ海にイケニエを用意してある。取りに来いってな。」
       ・・・それと、だ。メルビル襲撃に参加するメンツはどれだけ集まった?」
側近がぼそぼそと耳打ちます。ブッチャーはニヤリと笑みを浮かべました。
ブッチャー「クックック・・・15日はホークの野郎の命日にして、海賊家業とおさらばする日だな。
       他のバカどもも、いいかげん気づくだろうしな。バファルとの関係には。
       まぁそん時はもう、コルネリオの坊やが失脚して、パイレーツコーストの場所もバレるんだろうよ。
       誇り高い海の漢だ?バカか!そんなもんに興味はないのさ。
       バファルの金銀財宝・・・商船相手なんてケチなもんじゃねぇぜ!!」



【飛竜月11日:ローバーン舎】

コルネリオくん「そうか・・・いよいよあと4日だな。」
コルネリオくんは、地下の牢屋のさらに奥、他の誰も来ない場所で、密かに作戦の最終調整をしておりました。
もちろんその作戦は、サンゴ海の海賊討伐・・・
・・・というのは建前です。本命は別にあります。

サンゴ海近辺に住まうという、ドラゴンの討伐。こちらの方こそ真の目的だったのです。

コルネリオくんは、ブッチャーから来た手紙に再度目を通しました。
海賊討伐部の全権を譲り受けたコルネリオくんと、海賊の最大派閥の頭ブッチャーは、裏で繋がっていたのです。
ブッチャーが残虐な手口を用いていながら捕まる気配が無いのも、
コルネリオくんが何かと上手く寮の中で出世していったのも、この2人の連携があったからでした。
しかし、コルネリオくんは判っていました。
ブッチャーは、自分以外は道具としか見ていない、と。
コルネリオくんのことも、利用価値が無かったら処分するのだろう、と。
まぁそれはコルネリオくんも同様なのですが。
ただ、コルネリオくんとブッチャーには一つだけ違うことがあります。
コルネリオくんは、今や信仰するワイルちゃんの下僕であるということです。
自分のためではなく、ワイルちゃんのために働く、ということです。
コルネリオくんは、そんな自分をとても幸福だと思うようになっていました。
・・・恐怖によるすりこみって怖いですね。

まぁそんなわけで、コルネリオくんは、協力関係にあるブッチャーに対して、
「ドラゴンの討伐に、海賊討伐部の軍事力を利用したい。
ただ、海賊がいなきゃ討伐部は出られない。だから手ごろなイケニエを用意してくれ。」
こう依頼していたのでした。

なぜドラゴン討伐を決めたのか?それもまた、ブッチャーからの情報がきっかけだったのです。

それは、いつものように、ブッチャーと裏で色々と画策していた時でした。
ブッチャー「そういえば、サンゴ海のドラゴンのことは知っているか?」
コルネリオくん「ドラゴン?」
ブッチャー「あぁ。前から海賊の間で見たってヤツぁ結構いてな。
       で、そのドラゴンなんだが、ただのドラゴンじゃないらしいぜ。
       なんでも、風のナントカってぇ宝石を護っているとか・・・」
コルネリオくん「!!!それは糸石じゃなおあf;じhふぁksふじこ」
ブッチャー「あん?糸石だぁ?」
コルネリオくん「な、なんでもない!!ただそのドラゴンには個人的に興味が出たな。
          ・・・それは討伐してもいいものなのか?」
ブッチャー「俺が守り神やしきたりの類に一切こだわらねぇのは知ってると思ってたがな。
       他のヤツが信仰してようがかまうこたぁねぇ。やっちまいな・・・やれるんならな。」

コルネリオくん「・・・あのとき取り乱したのはマズかった。
          しかし、ブッチャーの野郎が糸石を知らなくて幸運だったな・・・まぁいい。
          ブッチャーはまだ利用できる。
          それよりもまずはドラゴンを倒し、一刻も早く風の糸石をゲットしなければ!!」
そしてコルネリオくんは、机の引出しを開けました。
その中には、きちんとした額に入った、一枚の写真がありました。それは・・・

・・・ワイルちゃんの写真でした。それも下着姿・・・
入手経路は言うまでもありませんね?ヒント:ヘイトちゃん、です。

コルネリオくん「必ず糸石をゲットするよぉ〜〜待っててねぇワイルちゅわ〜〜〜ん」

ぶちゅ〜〜〜〜〜っ。

コルネリオくん「ぷは〜〜っ!よーし!ワイルちゃんのために!!
        15日の正午の作戦を成功させるぞ!!メルビルは俺のものだ!!!」

自分の作戦を、ブッチャーに逆手に取られているとも知らず、コルネリオくんは自信たっぷりに吼えました。
――――窓が開いていたのに。

窓の下には、黒いローブを着た男がひそんでおりました。
憎しみに染め上げられているのか、その目は黒く濁っております。
???「・・・おのれ・・・サルーインちゃんに振られた復讐を共にすると言っておきながら、
     サルーインちゃんのミニオンに、媚びへつらうようなマネをしやがって・・・
     裏切り者、コルネリオめ!!!ただではすまないと思え!!」
その男は、メルビルの誘拐事件を引き起こしていた生徒でした。サルーインちゃんに振られたあげく、
アンチサルーインちゃんになった生徒の一人です。名前をマックスと言います。
マックス「・・・確かに聞こえたぞ。15日、正午、メルビル・・・
      貴様が何をしようとしているか知らんが、平穏無事に終わると思うなよコルネリオ!!!」



そして話は現在に戻ります。



【飛竜月15日 午前10時:スカーブ山頂上付近】

アルドラちゃん「つ、ついた・・・疲れた・・・」
ディアナちゃん「はぁ、はぁ・・・ナイトハルトくんですら苦労した道のりですもの。仕方ないわ。」
アディリスちゃん「いやぁー!空気がうまいわ〜〜。おべんと持ってくりゃよかったなぁ。
         はい♪あーんして♪あら、こんなところにご飯つぶ付けて、もう♪(ぱくっ)なんてね〜〜」
ディアナちゃん「・・・元気ですね・・・なんだかんだで、流石は4寮長・・・」
アルドラちゃん「・・・気圧と一緒にテンションも下がってくれるかと思ったが、無駄な期待だったな・・・」
アディリスちゃん「さてと。んじゃあ早速呼び出しましょうか。」
すぅ〜〜〜っと息を吸い込み・・・
アディリスちゃん「出て来い!怪人トリ男!!正義の仕置人、アルカイザーが相手だ!!」
アルドラちゃん「誰がアルカイザーだああああっ!!!」
ディアナちゃん「え、いつの間にそんな!?」
アルドラちゃん「違います!!!」

タイニィくん「誰だ誰だ、こんなところでやかましい奴らだ。
       ・・・と、思ったが。こんな場所まで来てこんだけ騒がしいのは一人しかいないな。
       何しにきたんだアディリス!」

頭上を何かが横切ったかと思った次の瞬間、輝く大きな翼を広げ、タイニィフェザーくんが頂上に降り立ちました。

ディアナちゃん「はじめまして。4寮長が一人、翼の栄皇タイニィフェザーくん。」
アルドラちゃん「・・・はじめまして。いきなり来てごめんなさい。一つお願いがありまして。」
アディリスちゃん「よう!元気してる!?地上最高峰のひきこもり君。」
タイニィくん「何か用か。世界最深のひきこもり。」

早速このやりとりを聞き、ディアナちゃんは頭を抱えはじめていました。
アディリスちゃんとの同居で、なんだかんだで慣れてきたアルドラちゃんは、
『ここは任せよう』と『無駄だ。放っとけ』の意味を込めて、ディアナちゃんの肩を叩き、首を横に振りました。

タイニィくん「で、頼みとは?」



〜〜〜〜〜説明中〜〜〜〜〜〜

アディリスちゃん「まーそんな訳でさ。あたし達を乗っけて、ぶあーーっとフロンティアまで。」
タイニィくん「断る!!お前、私をタクシーか何かと勘違いしてないか?」
アディリスちゃん「勘違いするわけないでしょ。タクシーは空飛ばないんだから。」
タイニィくん「そういう問題じゃない。」
アディリスちゃん「何よぅ、けちねぇ。今日何かあんの?」
タイニィくん「うっ!いや、特には・・・」
アディリスちゃん「なーーにーーよぉーーっ!だったらいいじゃないの!
           何も予定ないくせに、美女3人のお誘いを断るの!マジで!?
           これで断ったらあんたはひきこもりよ!ニートよ!ネオニートだわ!!」
タイニィくん「黙れ黙れだまらっしゃー!!私はな、関係無い事に人を巻き込むなと言ってるんだ!
        しかもただ巻き込むんじゃなくて、乗り物扱いじゃないか!!」
アディリスちゃん「まったく、頭固いわねぇ。ちっとは水竜みたいなナンパな柔らかさを見習って欲しいわ。」
そういうと、アディリスちゃんはカバンをごそごそと漁りはじめ、ニヤァ〜〜〜っと笑みを浮かべました。
アディリスちゃん「やれやれ・・・他の2人はウブだから、あんまりこの手は使いたくなかったんだけどね。
           良〜い本持ってきたんでゲスよ社長!
           キレイどころが肌もあらわに、よりどりみどり!にひひひ・・・」
アルドラちゃん「え!!ちょっと待てアディリス!さすがにそういう手段はちょっと!」
アルドラちゃんが頬を染めて手をばたばたさせました。ディアナちゃんは既に頭の先まで真っ赤です。
タイニィくん「いや、ちょっとまてアディリス!そんな本はその、なんだ、いや興味はあるんだって何を言わすんだ!
        とにかくしまえ!!」
そしてアディリスちゃんは、頬を染めて、目を伏せながら、そっと本を差し出しました。

『鳥類のひみつ(小学生用)』
3人「・・・・・」
がすがすがすがす

タイニィくん「これでようやく静かになったな。」
ディアナちゃん「ほんとに、ご迷惑をおかけしました。」
アルドラちゃん「ここまで引っかき回して、今更お願いをするのも恥知らずなのかもしれないけど・・・。
          ・・・これは、俺が見えざる敵に打ち勝つためにも、やらなければならない仕事なんです。
          ディアナも、それに信じられないだろうけどアディリスも、
          オレにとても親身になってくれた。オレはそれに応えたいんだ。」
タイニィくんは、じっとアルドラの瞳を見つめていました。
そして、ふっ、と息を漏らして、空を見上げました。
タイニィくん「良い目をしているな。・・・今日はとても良い風が吹く。
        お前たちの仕事に加担する気はさらさら無いが・・・ちょっとぶらりと出かけたくなった。
        そうだな。お前たち人間を2、3乗せようと、私の散策に支障はあるまい。
        ・・・フロンティア、だったな。」
アル&ディ「「あ、ありがとうございます!!」」
アディリスちゃん「いやーん優しいわ〜。そういうところ好きよタイニィ〜♪」
アルドラちゃん「復活早っ!!」
タイニィくん「まったく・・・貴様にだけはかなわんな・・・」
そして、タイニィくんはその翼を大きく広げました。
その背に、アルドラちゃん、ディアナちゃん、そしてアディリスちゃんが乗ります。
タイニィくん「では行くぞ!しっかり捕まっていろよ!」
ディアナちゃん「はい!よろしくお願いします!」
と、アディリスちゃんが、いそいそとCDウォークマンに、スピーカーを付けて音を流そうとしておりました。
アルドラちゃん「・・・おいアディリス、ちょっと見せてみろ!」
嫌な予感を感じたアルドラちゃんが、そのCDを見てみました。
『ドラゴンクエスト3:不死鳥ラーミアのテーマ』
アルドラちゃん「あ〜〜でぃ〜〜〜り〜〜〜すぅ〜〜〜!?」
アディリスちゃん「いやーんアルドラちゃん、目が怖いわ・・・ごめんごめん、ちゃんとマジメにやるから、ね?」
ディアナちゃん「ならばその聖剣伝説2のCDも没収します。フラミーのテーマ流そうとしましたね?」
アディリスちゃん「ちぇっ」



【飛竜月15日 正午:サンゴ海】

その日は、サンゴ海の一体を霧が包んでおりました。
ホーク「チッ、嫌な天候だ。」
ゲラハくん「キャプテン、大丈夫でしょうか?」
ホーク「なーに心配すんな。ブッチャーの野郎をぶちのめすには、ぴったりの天候じゃねぇか。
     頼りにしてるぜ、副長。」
と、霧の向こうに船影が見えました。
ホーク「来やがったか。ったく、時間も守れねぇとはな。」
ゲラハくん「・・・キャプテン!様子がおかしいです!!3時の方向にも船影が見えます!」
ホーク「なんだと!!」
そう言うと、ホークは望遠鏡であたりを見回しました。
ホーク「・・・船が何隻もいやがる。それもただの船じゃねぇ・・・軍艦だ!」
ゲラハくん「軍艦!というとバファル!?」
ホーク「あぁ、間違いねぇ!ブッチャーの野郎、俺達をバファルに売りやがった!」

コルネリオくん「海賊を発見したか。いいか。殺さず捕縛するのだ。囲んで逃げられないようにしろ!
          (あっさり撃破すると、ドラゴンと遭遇できなくなるからな・・・)」



【同日同時刻:サンゴ海〜バファル沿岸】

数隻の海賊船が、海を疾駆しています。
その先頭を走るのは、獣の骨の柄を帆に染め上げた、ブッチャーの操るシーデビル号でした。
ブッチャー「へっへっへ。こんなに走りやすい海ってのも初めてだな。なぁ?」
海賊船は、普段は姿を潜ませながら移動するものですが、
今日のこの船は、まるで競技船のように、バファルに向けての最短距離を突っ走っていました。
ブッチャー「コルネリオ坊やよぅ。俺だってなぁ。糸石の伝説くらいは知ってんだよ。
       あんときヒントをくれてやったろう?俺は伝説なんざにはこだわらねぇってよ。
       力を秘めてるかなにか知らねぇが、一つの宝石より、百万の金貨よ。
       おめぇら、ちゃんと細工はしといただろうな?」
側近「はい。バファル襲撃に参加しなかった海賊船は、全て舵を破壊しておきました。
    決闘に行っていないことが判っても、もはや追ってはこれません。」
ブッチャー「上等だ。」
そう言うと、ブッチャーは拳をぼきぼきと鳴らしました。
ブッチャー「コルネリオの野郎は、俺を利用した気になってやがるか。笑わせやがる。
       風のオパールの情報を流したのはワザとだ。そうすりゃテメェのこった。
       おもだった武力を率いて行こうとするだろうよ。なんせ相手はドラゴンだからな。
       今のメルビルは、もはや裸同然よ・・・くっくっく。」
「見えました!メルビルです!」
マストから声がします。ブッチャーは残酷な笑みを浮かべました。
ブッチャー「いいかテメェら!今のメルビルはなんの手段も持たねぇザルだ!
       存分に喰らってやんな!ここでしこたま稼げば、海賊なんざもうやる必要は無ぇ!
       これを最後の仕事と思え!徹底的にぶち壊せ!!何もかも奪っちまえ!!
       いいか!俺達ゃ!」

           「「「「「「  海  賊  !!! 」」」」」



【同日同時刻:メルビル地下 秘密神殿】

マックス「もう、ここに来ることも無いとは思っていた・・・」
そこは、以前(第5話)に、アンチサルーインちゃんの活動拠点としていた場所でした。
ワイルちゃんに徹底的に破壊された、その当時のままになっていました。
マックスは、暗くよどんだ目をしたまま、瓦礫を少しずつどけていきました。
30分ほどして、ようやく地面が見えました。
そして、マックスは黒いペンキを使い、簡単な魔方陣を描いたのでした。
と、なにやら地上の方で爆発音が聞こえはじめました。
マックス「何かは判らんが、始まったか。コルネリオめ・・・。
      どんな策略を張り巡らせたかは知らんが、その通りにいくと思うなよ!!」
そして、マックスの目が、かっ!と見開きました。

マックス「ダリル・ハミル・アゲラ・サルーイン!!
     ダリル・ハミル・アゲラ・サルーイン!!」
・・・魔方陣から、黒いもやのようなものが、吹き出しはじめました。



【同日13時 サンゴ海】

ホーク「くそったれええええ!!」
名うての海賊キャプテンホークも、圧倒的な物量の差にはどうすることもできませんでした。
レイディラック号が、じわじわとその身を削られていきます。
ホーク「バファルの野郎・・・こっちをいたぶっていやがる!!なぶり殺しにするつもりか!」
と、バファルの旗艦から、スピーカーで声が響きました。
コルネリオくん「私は海賊討伐部、総督代理コルネリオである!
          そこの海賊に問う!ドラゴンはどこにいる!?」
ホーク「・・・は?ドラゴンだぁ?」
コルネリオくん「わからんのか?貴様のような木っ端海賊を葬るのに、これだけの武力で来るかよ!
          ドラゴンの居場所を教えろ!それともなにか?お前らの信仰の対象だとでも?」
ホーク「わけわかんねぇこと抜かしてんじゃねぇ!それじゃあ何か!俺達を攻撃したのは、ついでと言うのか!
     ・・・レイディラックを、木っ端だってぇのか!!」

???「そうか、そういうことならば、私も参戦しないとね。」

瞬間、一隻の軍艦の上に、凄まじい落雷が走りました。
その雷はマストをへし折り、軍艦に火災をもたらしました。
軍艦から、次々と人が飛び降りて非難していきます。
しかし、その場の皆は、その上空に目がくぎ付けになっていました。

???「そこの海賊が、こんな目にあったのを見たときは悲しかった。
     でも、人間同士のことに、首を突っ込むのはもうやめようと思っていた。
     ・・・でもね。そこのアンタ。ドラゴンを殺しに来た。そう言ったよね?
     バファルの名のもとに、ドラゴンを殺しに来た。そういうことよね?
     ――ならば私が、ドラゴンの名の元に、貴様らを粉砕し、バファルに逆襲をしても良いってことね?」

バファル兵「ド・・・ドドド・・・」
ホーク「ドラゴン・・・マジか・・・」
コルネリオ「現れたな・・・全艦、全砲門用意!!発射!!!」



【同日同時刻:フロンティア上空〜ローザリア上空】

アルドラちゃん「結局フロンティアには何もなかったなぁ」
ディアナちゃん「最近ヴァンパイアが出た、という騒ぎがあったらしいけど、もう解決してましたしね。」
アディリスちゃん「んじゃ、このままのんびり浪漫飛行といきましょっか〜」
タイニィくん「いや、もう降りろよ。用は済んだろ・・・・おや?あれはなんだ?」
アディリスちゃん「あれは・・・メルビルが、燃えている・・・。タイニィ!!」
タイニィくん「わかった!行くぞ!ただごとではないな。人間たちよ。お前たちも戦闘の準備をしておけ!」
アルドラちゃんとディアナちゃんが目を合わせ、そして同時に頷きました。

そのままタイニィくんは、最大のスピードで飛びつづけます。
その先には、赤く染まった、メルビルの空が見えておりました。


←BACK / NEXT→ / MENU / TOP





SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送